【完結】妹の婚約者は、何故か俺にご執心。

オレンジペコ

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1.妹の婚約者に近づく女

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俺はジェレミー=アクオス。
アクオス公爵家の嫡男だ。
最近妹の婚約者である第二王子、ガイナー=ディーヴァルに纏わりついてくる女が一人いることに気が付いた。
ガイナー王子は俺と同い年でクラスも同じだからすぐにわかったのだけど、どうやらその女は最近転入してきたどこぞの庶子らしい。
なるほど。
身分が低いから王子に対する礼儀もなっていないし、婚約者がいる相手にべたべた触ってくるわけだ。
これはしっかり忠告をしておかないと。
そう思って、何度も何度も陰で忠告してやった。

『ガイナー王子は俺の妹の婚約者だ。気軽に話しかけるな』
『王族にベタベタするのはマナー違反だ』
『教科書を借りにきたなんて見え透いた口実を使ってわざわざこちらのクラスまでくるな。王子に会いに来ていることくらいバレバレだ』

こうやって都度言ってやったのに、彼女はどんどん王子との距離を詰めてきた。
なんでもガイナー王子は生徒会長だから彼女の面倒を見るよう先生に頼まれたのだとか。
本当か?
あり得ない。

そう思ったから忠告し続けたのに、あの女は一向に態度を改めなかった。
だからいい加減俺も腹が立ったんだ。

「いい加減身の程を弁えろ。ガイナー王子に近づくなと何度言わせれば気が済むんだ!」

ドンッ!と肩を軽く押しただけのつもりだった。
けれど彼女は『キャッ!』と言いながら廊下に尻もちをついてしまう。

「うぅ…申し訳ございません」

ウルウルと潤む目で見上げられるが、はっきり言って俺は手を貸す気は一切ない。
ちょっとやりすぎたかもしれないが、これだけやっておけばいい加減反省して態度を改めるだろうと思ったからだ。
それなのに────。

「ジェレミー?」

何とその場に王子が居合わせてしまった。
見ると目を見開いて驚いた様子でこちらを見ている。
そして状況をザッと見て眉をしかめた。
状況的に俺が彼女を突き飛ばしたのが丸わかりだったからだろう。

「何をしている?!」

他の生徒会メンバーまで一緒だったため、俺は副会長であるテレンスに鋭い声で責められた。
そして会計のアドラが尻もちをついている女に手を差し伸べ、心配そうに声を掛ける。

「クララ嬢。大丈夫ですか?」
「はい…ありがとうございます」

そう言って女はよろめきながらもなんとか立ち上がった。
どうやら怪我はないようでホッとしたが、それだけだ。
特に罪悪感などはない。
そんな俺にガイナー王子が冷たい声で再度声を掛けてきた。

「ジェレミー。少し向こうで話を聞かせてもらおうか?」

そう言って俺を生徒会室へと連れていき、ソファに座らせた後、事情聴取とばかりに話を切り出してくる。

「それで?クララ嬢に何をしていた?」
「……忠告をしていただけです」
「忠告?何を?」
「妹の婚約者である貴方に必要以上に近づくなと、そう警告するのはおかしいですか?」

おかしくはないはずだ。
そう思い、真っ直ぐに目を見てそう言い切る。
そんな俺を見て、ガイナー王子は不機嫌そうな顔になり、責めるように言ってきた。

「言いたいことはわかるが、それなら言葉で言えば済む話だ。何故暴力をふるった?」
「暴力をふるったつもりはありません。ちょっと押したら転んだだけです」

それに言葉で散々言ってもこれまで聞いてこなかったのは向こうの方だ。
俺は悪くない。
だからそう言ったのに、それを聞いた王子は低い声で『全く反省する気はないようだな?』と言って俺を睨みつけそのまま立ち上がったかと思うと、俺の腕を掴んで問答無用で引っ張り立たせ、奥の扉へとそのまま足を向けた。




奥の扉を開けたその先にあったのは仮眠室だ。
仮眠室には当然ながらベッドがある。
王子はそこへと俺を放り投げ、部屋の鍵をかけるとすぐさまこちらへとやってきた。

「ジェレミー。お前は甘やかされて育ちすぎて痛みというものを知らないようだな?」

そう言いながら俺の腕をひとまとめにして頭の上へと押さえつけてくるガイナー王子。
もう片方の手は俺の制服のボタンをはずしにかかっている。
一体何をするつもりなんだろう?

「痛みを知らないというのは罪なものだ。お前が二度とあんな酷いことができなくなるよう、俺がお前に痛みというものを教えてやろう」
「……え?」

驚く俺にうっそりと笑い、王子は徐に俺の乳首を捻り上げた。

「ひぃっ?!」

スススッ…と指で胸元を擽るように辿られた後で思い切りつねるように捻り上げられ痛みに悲鳴を上げる。

「やっ…!は、離してっ、離してくださいっ!」
「ダメだ。これはお仕置きだからな」

いつもは品行方正で笑みを絶やさないガイナー王子。
そんな王子をどうやら俺は本気で怒らせてしまったらしい。

「しっかり躾けてやる」

そう言って笑った王子の笑みはいつもとは全く違う笑みで、俺の上にのしかかってくるその姿は肉食獣のようにも見えた。


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