1 / 11
1.妹の婚約者に近づく女
しおりを挟む
俺はジェレミー=アクオス。
アクオス公爵家の嫡男だ。
最近妹の婚約者である第二王子、ガイナー=ディーヴァルに纏わりついてくる女が一人いることに気が付いた。
ガイナー王子は俺と同い年でクラスも同じだからすぐにわかったのだけど、どうやらその女は最近転入してきたどこぞの庶子らしい。
なるほど。
身分が低いから王子に対する礼儀もなっていないし、婚約者がいる相手にべたべた触ってくるわけだ。
これはしっかり忠告をしておかないと。
そう思って、何度も何度も陰で忠告してやった。
『ガイナー王子は俺の妹の婚約者だ。気軽に話しかけるな』
『王族にベタベタするのはマナー違反だ』
『教科書を借りにきたなんて見え透いた口実を使ってわざわざこちらのクラスまでくるな。王子に会いに来ていることくらいバレバレだ』
こうやって都度言ってやったのに、彼女はどんどん王子との距離を詰めてきた。
なんでもガイナー王子は生徒会長だから彼女の面倒を見るよう先生に頼まれたのだとか。
本当か?
あり得ない。
そう思ったから忠告し続けたのに、あの女は一向に態度を改めなかった。
だからいい加減俺も腹が立ったんだ。
「いい加減身の程を弁えろ。ガイナー王子に近づくなと何度言わせれば気が済むんだ!」
ドンッ!と肩を軽く押しただけのつもりだった。
けれど彼女は『キャッ!』と言いながら廊下に尻もちをついてしまう。
「うぅ…申し訳ございません」
ウルウルと潤む目で見上げられるが、はっきり言って俺は手を貸す気は一切ない。
ちょっとやりすぎたかもしれないが、これだけやっておけばいい加減反省して態度を改めるだろうと思ったからだ。
それなのに────。
「ジェレミー?」
何とその場に王子が居合わせてしまった。
見ると目を見開いて驚いた様子でこちらを見ている。
そして状況をザッと見て眉をしかめた。
状況的に俺が彼女を突き飛ばしたのが丸わかりだったからだろう。
「何をしている?!」
他の生徒会メンバーまで一緒だったため、俺は副会長であるテレンスに鋭い声で責められた。
そして会計のアドラが尻もちをついている女に手を差し伸べ、心配そうに声を掛ける。
「クララ嬢。大丈夫ですか?」
「はい…ありがとうございます」
そう言って女はよろめきながらもなんとか立ち上がった。
どうやら怪我はないようでホッとしたが、それだけだ。
特に罪悪感などはない。
そんな俺にガイナー王子が冷たい声で再度声を掛けてきた。
「ジェレミー。少し向こうで話を聞かせてもらおうか?」
そう言って俺を生徒会室へと連れていき、ソファに座らせた後、事情聴取とばかりに話を切り出してくる。
「それで?クララ嬢に何をしていた?」
「……忠告をしていただけです」
「忠告?何を?」
「妹の婚約者である貴方に必要以上に近づくなと、そう警告するのはおかしいですか?」
おかしくはないはずだ。
そう思い、真っ直ぐに目を見てそう言い切る。
そんな俺を見て、ガイナー王子は不機嫌そうな顔になり、責めるように言ってきた。
「言いたいことはわかるが、それなら言葉で言えば済む話だ。何故暴力をふるった?」
「暴力をふるったつもりはありません。ちょっと押したら転んだだけです」
それに言葉で散々言ってもこれまで聞いてこなかったのは向こうの方だ。
俺は悪くない。
だからそう言ったのに、それを聞いた王子は低い声で『全く反省する気はないようだな?』と言って俺を睨みつけそのまま立ち上がったかと思うと、俺の腕を掴んで問答無用で引っ張り立たせ、奥の扉へとそのまま足を向けた。
奥の扉を開けたその先にあったのは仮眠室だ。
仮眠室には当然ながらベッドがある。
王子はそこへと俺を放り投げ、部屋の鍵をかけるとすぐさまこちらへとやってきた。
「ジェレミー。お前は甘やかされて育ちすぎて痛みというものを知らないようだな?」
そう言いながら俺の腕をひとまとめにして頭の上へと押さえつけてくるガイナー王子。
もう片方の手は俺の制服のボタンをはずしにかかっている。
一体何をするつもりなんだろう?
「痛みを知らないというのは罪なものだ。お前が二度とあんな酷いことができなくなるよう、俺がお前に痛みというものを教えてやろう」
「……え?」
驚く俺にうっそりと笑い、王子は徐に俺の乳首を捻り上げた。
「ひぃっ?!」
スススッ…と指で胸元を擽るように辿られた後で思い切りつねるように捻り上げられ痛みに悲鳴を上げる。
「やっ…!は、離してっ、離してくださいっ!」
「ダメだ。これはお仕置きだからな」
いつもは品行方正で笑みを絶やさないガイナー王子。
そんな王子をどうやら俺は本気で怒らせてしまったらしい。
「しっかり躾けてやる」
そう言って笑った王子の笑みはいつもとは全く違う笑みで、俺の上にのしかかってくるその姿は肉食獣のようにも見えた。
アクオス公爵家の嫡男だ。
最近妹の婚約者である第二王子、ガイナー=ディーヴァルに纏わりついてくる女が一人いることに気が付いた。
ガイナー王子は俺と同い年でクラスも同じだからすぐにわかったのだけど、どうやらその女は最近転入してきたどこぞの庶子らしい。
なるほど。
身分が低いから王子に対する礼儀もなっていないし、婚約者がいる相手にべたべた触ってくるわけだ。
これはしっかり忠告をしておかないと。
そう思って、何度も何度も陰で忠告してやった。
『ガイナー王子は俺の妹の婚約者だ。気軽に話しかけるな』
『王族にベタベタするのはマナー違反だ』
『教科書を借りにきたなんて見え透いた口実を使ってわざわざこちらのクラスまでくるな。王子に会いに来ていることくらいバレバレだ』
こうやって都度言ってやったのに、彼女はどんどん王子との距離を詰めてきた。
なんでもガイナー王子は生徒会長だから彼女の面倒を見るよう先生に頼まれたのだとか。
本当か?
あり得ない。
そう思ったから忠告し続けたのに、あの女は一向に態度を改めなかった。
だからいい加減俺も腹が立ったんだ。
「いい加減身の程を弁えろ。ガイナー王子に近づくなと何度言わせれば気が済むんだ!」
ドンッ!と肩を軽く押しただけのつもりだった。
けれど彼女は『キャッ!』と言いながら廊下に尻もちをついてしまう。
「うぅ…申し訳ございません」
ウルウルと潤む目で見上げられるが、はっきり言って俺は手を貸す気は一切ない。
ちょっとやりすぎたかもしれないが、これだけやっておけばいい加減反省して態度を改めるだろうと思ったからだ。
それなのに────。
「ジェレミー?」
何とその場に王子が居合わせてしまった。
見ると目を見開いて驚いた様子でこちらを見ている。
そして状況をザッと見て眉をしかめた。
状況的に俺が彼女を突き飛ばしたのが丸わかりだったからだろう。
「何をしている?!」
他の生徒会メンバーまで一緒だったため、俺は副会長であるテレンスに鋭い声で責められた。
そして会計のアドラが尻もちをついている女に手を差し伸べ、心配そうに声を掛ける。
「クララ嬢。大丈夫ですか?」
「はい…ありがとうございます」
そう言って女はよろめきながらもなんとか立ち上がった。
どうやら怪我はないようでホッとしたが、それだけだ。
特に罪悪感などはない。
そんな俺にガイナー王子が冷たい声で再度声を掛けてきた。
「ジェレミー。少し向こうで話を聞かせてもらおうか?」
そう言って俺を生徒会室へと連れていき、ソファに座らせた後、事情聴取とばかりに話を切り出してくる。
「それで?クララ嬢に何をしていた?」
「……忠告をしていただけです」
「忠告?何を?」
「妹の婚約者である貴方に必要以上に近づくなと、そう警告するのはおかしいですか?」
おかしくはないはずだ。
そう思い、真っ直ぐに目を見てそう言い切る。
そんな俺を見て、ガイナー王子は不機嫌そうな顔になり、責めるように言ってきた。
「言いたいことはわかるが、それなら言葉で言えば済む話だ。何故暴力をふるった?」
「暴力をふるったつもりはありません。ちょっと押したら転んだだけです」
それに言葉で散々言ってもこれまで聞いてこなかったのは向こうの方だ。
俺は悪くない。
だからそう言ったのに、それを聞いた王子は低い声で『全く反省する気はないようだな?』と言って俺を睨みつけそのまま立ち上がったかと思うと、俺の腕を掴んで問答無用で引っ張り立たせ、奥の扉へとそのまま足を向けた。
奥の扉を開けたその先にあったのは仮眠室だ。
仮眠室には当然ながらベッドがある。
王子はそこへと俺を放り投げ、部屋の鍵をかけるとすぐさまこちらへとやってきた。
「ジェレミー。お前は甘やかされて育ちすぎて痛みというものを知らないようだな?」
そう言いながら俺の腕をひとまとめにして頭の上へと押さえつけてくるガイナー王子。
もう片方の手は俺の制服のボタンをはずしにかかっている。
一体何をするつもりなんだろう?
「痛みを知らないというのは罪なものだ。お前が二度とあんな酷いことができなくなるよう、俺がお前に痛みというものを教えてやろう」
「……え?」
驚く俺にうっそりと笑い、王子は徐に俺の乳首を捻り上げた。
「ひぃっ?!」
スススッ…と指で胸元を擽るように辿られた後で思い切りつねるように捻り上げられ痛みに悲鳴を上げる。
「やっ…!は、離してっ、離してくださいっ!」
「ダメだ。これはお仕置きだからな」
いつもは品行方正で笑みを絶やさないガイナー王子。
そんな王子をどうやら俺は本気で怒らせてしまったらしい。
「しっかり躾けてやる」
そう言って笑った王子の笑みはいつもとは全く違う笑みで、俺の上にのしかかってくるその姿は肉食獣のようにも見えた。
127
お気に入りに追加
2,304
あなたにおすすめの小説

30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません
月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる