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Ⅲ.サード・コンタクト
37.母さんの観察力は凄かった。
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「ただいま~」
「おかえりなさい」
「おかえり、ユウジ」
学校から帰ってきたら母さんとラフィがお出迎えしてくれた。
なんだか変な感じ。
「事情説明はちゃんとしておいたから」
ラフィはそう言ってくれたけど、普通に考えて信じられる話じゃないことくらい俺にだってわかる。
逆に一発で信じたらそっちの方がおかしいし、簡単に詐欺に合いそうで怖い。
「母さん。大丈夫?」
「ええ!もちろんよ!」
何が勿論なんだか。
呆れたように溜息を吐いて、『俺も着替えたらちゃんと説明するから』と言って一旦部屋に戻った。
そしてリビングに戻ってきたんだけど、そこではエマーリンさんも一緒に仲良く三人でお茶をする姿が。
「優次。今日はおやつにキャロットケーキを焼いたのよ。ラフィ君も気に入ってくれたようでよかったわ」
「キャリーがこんなおやつになるなんて考えたことがなかったです。美味しい!」
「まあ。ラフィ君の国ではニンジンはキャリーって言うの?面白いわね」
なんだか凄く仲良しなんだけど?!
「母さん?!」
「なぁに?」
「いや、何じゃなくて…」
俺は呆れながらもう一度自分の口で事情を話そうと口を開いた。
「信じられないかもしれないけど、ラフィ達は異世界から来てて、そこのリアル王子様なんだ!」
でも何故かそれを聞いた途端母さんは思い切り笑い出した。
「アハハッ!優次ったら、本当に説明が下手ねぇ…!」
「え?!」
母さん曰く、いきなりそんな風に切り出されたら『何馬鹿なことを言ってるの?』で話はおしまいよとのこと。
「はぁ~。あらかじめラフィ君達から説明されてなかったらそのまま笑い飛ばしちゃうところだったわ」
「えぇ?!本当なのに!」
「だから、貴方の場合は説得力がないからダメなのよ。その点ラフィ君は流石王子様ね。分かってるわ」
何がダメだったんだろう?
こんなのどう言ったって信じられる話じゃないのに…。
「まあまあ。ちゃんと信じているから安心しなさい。私がラフィ君の話を信じようと思ったのにはちゃんと理由もあるし」
『流石に何も知らないままいきなりこんな話をされても母さんは信じなかったし、詐欺を疑ってたわよ』と笑って言った。
「まず最初に、二人は五日間一緒にここで過ごしたでしょう?」
「うん」
「私、不思議に思ってたのよ」
「何を?」
「買い物」
「買い物?」
「そう。だっていっぱい買った~って言う割に手ぶらで帰ってきたんだもの。最初はびっくりしたわよ」
「え?」
「だから最初は服とか色々困るんじゃないかって思ったのに、ちゃんと毎朝違う服を着て朝ご飯を食べに来るのよね」
洗濯物もちゃんと出てくるし、その割に俺の部屋や客室にその服はその後見当たらない。
母さん的には不思議だったらしい。
「魔法って言うのがあるなら納得だわって思ったの」
「な、なるほど?」
確かに言われてみると理解はできる。
「それにね?日本語が凄く堪能なのに、日本に住んでたら普通に知ってそうなことを何も知らなかったでしょう?家電の一つ一つに驚いて、優次は不思議に思うこともなく逐一説明していたし、テレビでやってた野球だってラフィ君は初めて見たって感じで全く知らないみたいだったわ」
「うっ…」
「遊園地も水族館も行ったことがない、それどころか映画がどんなものなのかさえ知らない。どんな田舎に住んでてもその場所がどういった場所なのかくらいは知っているはずでしょう?」
「うぅ…っ」
「それでいて二人のテーブルマナーはとっても綺麗で、特にラフィ君に至っては動きも凄く洗練されているから明らかに庶民ではありえないって思ったのよ」
だから詐欺師の類ではないって母さん的には確信していたらしい。
ただの虚言だったら最初の衣服の件も説明がつかないし、日本語が堪能なのも魔法の影響なのかしらってちょっと思えたんだとか。
「それにね?もしこれが嘘だったら五日後に簡単に嘘だってバレるわけでしょう?だから取り敢えず素直に信じて週末を待とうって思ったのよ」
「そ、そうなんだ…」
自分の母親ながら観察力や考察力が凄い。
それと同時に肝が据わってるな~って感心してしまった。
「その…母さんは心配じゃない?」
「心配?貴方のこと?それともこれから先のこと?」
「…どっちも」
俺がもうこっちにずっとはいられないことに関して、不安や心配はないのかと思って聞いたんだけど、母さん的にはそれほど心配はしていないらしい。
「エマーリンさんもラフィ君もいい人だから、貴方に酷いことはしないと思うしね。その点は信用してるわ」
そう言ってから、『ただね…』と話が続く。
「大学に行くか行かないかはちゃんと自分で考えなさい」
大学か…。
まだまだ先の話だし、全く気にしたことはなかったなぁと思い至る。
普通にこっちに住んでたら大学に行って就職して一人暮らししてって感じになってたはずだけど、確かに言われてみたら向こうに住むなら大学に行く意味があるのかどうかすらわからない。
「大学でやってみたいこととかがあるなら行けばいいけど、そうでないならそっちの国で色々学ぶのもありだと母さんは思うわ」
確かに言われてみればその通りだ。
俺はラフィの国のことはほとんど知らないし、向こうの常識を学ぶ方が大事な気がする。
あっちに住むのならその知識は大事だろう。
「今日から五日しっかり考えて、また父さんや母さんに教えてちょうだい」
「……わかった」
だから俺は神妙にそう答えたんだけど、あり得ないことに母さんは夕飯の席で父さんや兄さんへの説明を大きく省いて、『優次がね、ラフィ君に見初められて高校卒業したらお嫁に行くことになっちゃったのよ~』なんて言い出したから思い切り吹き出してしまった。
『だから将来的に優次はラフィ君の国で過ごすことになるから、よろしくね』ってなんだそれ?!
そんな言い方されたらラフィも困るだろ?!
え?!なんで照れくさそうなんだよ?!
そう言えばラフィの気持ちとかそういうの聞くのを完全に忘れてた!
「優次。ラフィ君と仲が良いって思ってたけど、本当に…?」
「う~ん…。でもそっか。日本にいるよりラフィ君の国で幸せになる方が優次的には幸せなのかなぁ…?」
しかもなんで父さんも兄さんもそのまんま受け入れてるんだよ?!
おかしくない?!
うちの家族大丈夫?!
「おかえりなさい」
「おかえり、ユウジ」
学校から帰ってきたら母さんとラフィがお出迎えしてくれた。
なんだか変な感じ。
「事情説明はちゃんとしておいたから」
ラフィはそう言ってくれたけど、普通に考えて信じられる話じゃないことくらい俺にだってわかる。
逆に一発で信じたらそっちの方がおかしいし、簡単に詐欺に合いそうで怖い。
「母さん。大丈夫?」
「ええ!もちろんよ!」
何が勿論なんだか。
呆れたように溜息を吐いて、『俺も着替えたらちゃんと説明するから』と言って一旦部屋に戻った。
そしてリビングに戻ってきたんだけど、そこではエマーリンさんも一緒に仲良く三人でお茶をする姿が。
「優次。今日はおやつにキャロットケーキを焼いたのよ。ラフィ君も気に入ってくれたようでよかったわ」
「キャリーがこんなおやつになるなんて考えたことがなかったです。美味しい!」
「まあ。ラフィ君の国ではニンジンはキャリーって言うの?面白いわね」
なんだか凄く仲良しなんだけど?!
「母さん?!」
「なぁに?」
「いや、何じゃなくて…」
俺は呆れながらもう一度自分の口で事情を話そうと口を開いた。
「信じられないかもしれないけど、ラフィ達は異世界から来てて、そこのリアル王子様なんだ!」
でも何故かそれを聞いた途端母さんは思い切り笑い出した。
「アハハッ!優次ったら、本当に説明が下手ねぇ…!」
「え?!」
母さん曰く、いきなりそんな風に切り出されたら『何馬鹿なことを言ってるの?』で話はおしまいよとのこと。
「はぁ~。あらかじめラフィ君達から説明されてなかったらそのまま笑い飛ばしちゃうところだったわ」
「えぇ?!本当なのに!」
「だから、貴方の場合は説得力がないからダメなのよ。その点ラフィ君は流石王子様ね。分かってるわ」
何がダメだったんだろう?
こんなのどう言ったって信じられる話じゃないのに…。
「まあまあ。ちゃんと信じているから安心しなさい。私がラフィ君の話を信じようと思ったのにはちゃんと理由もあるし」
『流石に何も知らないままいきなりこんな話をされても母さんは信じなかったし、詐欺を疑ってたわよ』と笑って言った。
「まず最初に、二人は五日間一緒にここで過ごしたでしょう?」
「うん」
「私、不思議に思ってたのよ」
「何を?」
「買い物」
「買い物?」
「そう。だっていっぱい買った~って言う割に手ぶらで帰ってきたんだもの。最初はびっくりしたわよ」
「え?」
「だから最初は服とか色々困るんじゃないかって思ったのに、ちゃんと毎朝違う服を着て朝ご飯を食べに来るのよね」
洗濯物もちゃんと出てくるし、その割に俺の部屋や客室にその服はその後見当たらない。
母さん的には不思議だったらしい。
「魔法って言うのがあるなら納得だわって思ったの」
「な、なるほど?」
確かに言われてみると理解はできる。
「それにね?日本語が凄く堪能なのに、日本に住んでたら普通に知ってそうなことを何も知らなかったでしょう?家電の一つ一つに驚いて、優次は不思議に思うこともなく逐一説明していたし、テレビでやってた野球だってラフィ君は初めて見たって感じで全く知らないみたいだったわ」
「うっ…」
「遊園地も水族館も行ったことがない、それどころか映画がどんなものなのかさえ知らない。どんな田舎に住んでてもその場所がどういった場所なのかくらいは知っているはずでしょう?」
「うぅ…っ」
「それでいて二人のテーブルマナーはとっても綺麗で、特にラフィ君に至っては動きも凄く洗練されているから明らかに庶民ではありえないって思ったのよ」
だから詐欺師の類ではないって母さん的には確信していたらしい。
ただの虚言だったら最初の衣服の件も説明がつかないし、日本語が堪能なのも魔法の影響なのかしらってちょっと思えたんだとか。
「それにね?もしこれが嘘だったら五日後に簡単に嘘だってバレるわけでしょう?だから取り敢えず素直に信じて週末を待とうって思ったのよ」
「そ、そうなんだ…」
自分の母親ながら観察力や考察力が凄い。
それと同時に肝が据わってるな~って感心してしまった。
「その…母さんは心配じゃない?」
「心配?貴方のこと?それともこれから先のこと?」
「…どっちも」
俺がもうこっちにずっとはいられないことに関して、不安や心配はないのかと思って聞いたんだけど、母さん的にはそれほど心配はしていないらしい。
「エマーリンさんもラフィ君もいい人だから、貴方に酷いことはしないと思うしね。その点は信用してるわ」
そう言ってから、『ただね…』と話が続く。
「大学に行くか行かないかはちゃんと自分で考えなさい」
大学か…。
まだまだ先の話だし、全く気にしたことはなかったなぁと思い至る。
普通にこっちに住んでたら大学に行って就職して一人暮らししてって感じになってたはずだけど、確かに言われてみたら向こうに住むなら大学に行く意味があるのかどうかすらわからない。
「大学でやってみたいこととかがあるなら行けばいいけど、そうでないならそっちの国で色々学ぶのもありだと母さんは思うわ」
確かに言われてみればその通りだ。
俺はラフィの国のことはほとんど知らないし、向こうの常識を学ぶ方が大事な気がする。
あっちに住むのならその知識は大事だろう。
「今日から五日しっかり考えて、また父さんや母さんに教えてちょうだい」
「……わかった」
だから俺は神妙にそう答えたんだけど、あり得ないことに母さんは夕飯の席で父さんや兄さんへの説明を大きく省いて、『優次がね、ラフィ君に見初められて高校卒業したらお嫁に行くことになっちゃったのよ~』なんて言い出したから思い切り吹き出してしまった。
『だから将来的に優次はラフィ君の国で過ごすことになるから、よろしくね』ってなんだそれ?!
そんな言い方されたらラフィも困るだろ?!
え?!なんで照れくさそうなんだよ?!
そう言えばラフィの気持ちとかそういうの聞くのを完全に忘れてた!
「優次。ラフィ君と仲が良いって思ってたけど、本当に…?」
「う~ん…。でもそっか。日本にいるよりラフィ君の国で幸せになる方が優次的には幸せなのかなぁ…?」
しかもなんで父さんも兄さんもそのまんま受け入れてるんだよ?!
おかしくない?!
うちの家族大丈夫?!
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