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Ⅲ.サード・コンタクト
32.ちゃんと話そうと思ったのに~!
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「ユウジ!今日はどうする?」
朝からキラキラ無邪気な笑顔で俺にそんなことを言ってくるラフィ。
あれ?昨日の夜の出来事ってやっぱ夢だったかも?
そう思って固まってたら何故かまたチュッとキスされた。
「ユウジ?お~い?目開いたまま寝てるのか?ちゃんと起きないと、もっとキスしちゃうぞ?」
「……っって、ラフィ?!だから、なんでそんなに俺にキスするんだよ?!」
「え?ユウジが好きだから?」
サラッと言ってきたけど、なんだそれ?!
それって友情的意味で?それとも恋愛的意味合いで?!
挨拶っぽく軽い感じでされたからよくわからない。
ここはちゃんと確認しておかないとと思って、意を決して聞こうと思ったんだけど、それより先に『何を騒いでるの?』ってキッチンから母さんが声を掛けてきた。
「優次?起きたんなら騒いでないでさっさと支度しちゃいなさいよ?今日も遊びに行くんでしょう?」
「は、は~い!」
どうやら内容までは聞こえなかったようだけど、そうだ、ここは家の中だった。
聞くなら出掛けてからだ。
「ラフィ。あ、後でちゃんと話そう?」
「ああ」
ニコッと笑うラフィはいつも通り変わらないのに、どうして俺ばっかり動揺してるんだろう?
なんとなくだけど、その態度からラフィの気持ち的には確固とした答えがあるような気がしてならないんだよな。
(もし…もしもだけど……)
ラフィが恋愛的意味合いで俺を好きとかだったら俺はなんて返事をしたらいいんだろう?
ラフィのことは好きだし、ドキドキさせられるけど、これが恋愛的に俺もラフィが好きかって言うと実はよくわからない。
ラフィのことは大好きだし、ラフィと過ごす時間も大好きだ。
だからラフィとずっと一緒にいたいとは思うけど、そもそも友情との違いがわからないから困る。
この二つの違いってなんだろう?
手を繋いだりキスしたりデートしたりすること?
(…………困った)
もしそうならどれもラフィとは嫌じゃない。
これまでを振り返ってもラフィに嫌悪感を抱いたことはなかった。
だからこそ困る。
だって、もしその気持ちを俺が受け入れちゃったら、ラフィとの関係がこれまでと変わるかもしれないってことだろ?
でも断った場合下手をしたら傷つけて、二度と会わないとかそんなことになったり…?
(それは嫌だ…)
考えるだけで胸が痛い。
(俺…どうしたらいいんだろう?)
いや。でもまだ何か決定的なことを言われたわけでもないし…。
モヤモヤした気持ちのまま朝食の席について、母さんの「今日はどこ行くの?」って話を適当に聞き流しながらひたすら手を動かし続けてたら喉に詰まった。
「ぐっ、ゴホゴホッ!」
「ユウジ!大丈夫か?」
そう言ってラフィが背中をさすって麦茶を勧めてくれる。
やっぱり優しい。
「優次ったら大丈夫?ラフィ君は優しいわね。そうだ!今日の予定は特に決めてないのよね?今映画で面白いのがやってるらしいわよ」
「そう言えば話題作の『ブラッド・コンパクト』とかもう上映中だっけ?大迫力のアクション映画!」
「そうそう。あれ面白いらしいんだよ。父さんの会社の人も観に行ったらしくて、お勧めだって言ってたな……」
家族が横でそんな話をしてるからか、エマーリンさんが食いついた。
大迫力の映像っていうのに興味が惹かれたらしい。
でも大丈夫かな?
ジェットコースターとは違うから平気?
昨日一昨日はラフィの希望で遊園地と水族館に行ったから今日はエマーリンさんの希望の場所に行くのはありかもしれない。
俺も映画なら変にラフィを気にしなくてもいいかもしれないし、うん。悪くない。
そう思いながら映画を観に行って、飲み物とポップコーンを買って指定席に座った。
ちなみに二人とも暗くなった館内に最初はびっくりしたみたいだけど、すぐに目の前のスクリーンに宣伝のための映像が流れ始めたからホッとしたように腰を落ち着けていた。
向こうでは暗殺者対策で剣とか持ち歩いてるけど、ここでは丸腰だから暗い場所は落ち着かないんだとか。
確かに言われてみたらそれはそうなのかも。
言ってもラフィは王子だし、向こうは帯剣も割と普通。
平和な日本だとあり得ないけど。
それから映画館では静かにと言うのもちゃんと教えてあげて、無事に映画鑑賞をした。
もうね、二人とも大興奮だった。
勿論声は出さなかったけど、目がスクリーンに釘付け。
俺はあんまりアクションは見ないんだけど、それでも最後の方は結構のめりこんで観てた気がする。
端的に言うと面白かった。
「最高!なんだあれ、カッコいい!」
映画が終わって最初のラフィの感想がそれだった。
「凄かったですね。あれはあちらでは味わえない娯楽です」
エマーリンさんも目をキラキラさせて大絶賛。
その後カフェに入ってお昼を食べたんだけど、はっきり言って映画の話しかしてない。
「あ~本当、来てよかった」
五日間楽しすぎるってラフィはご満悦。
エマーリンさんも付き合いできただけだったけど、来てよかったですと笑ってた。
なんだったら一人ででも頻繁にやってきそうな空気を感じる。
向こうの貴金属も売れるってわかったから換金してホテルに泊まるとかも可能だし、やってやれないことはなさそう。
それからショッピングモールで追加のお土産を見て回り、おやつにみたらし団子を買って食べたらあっという間に一日が終わってしまう。
ちゃんとラフィと話す時間を取らなきゃと思いつつ、段々と『このまま今回は流すのもありかも』という気がしてきて、なんとなく成り行き任せに。
でもそんな事を考えていたからバチが当たったのか、夕飯を食べてから二人が俺の家族にお礼を言い、俺が見送りと称して公園まで送って来た際、思いがけないアクシデントに巻き込まれたんだ。
「ユウジ。お世話になりました」
俺に笑顔で礼を言うエマーリンさん。
「ユウジ。ありがとな」
同じく笑顔で楽しかったと言ってくるラフィ。
次はいつ会えるだろうか?
(このままちゃんと話さず見送って、本当にいいのかな?)
そう思ったからちょっと悩んだ末に思い切って声を掛けたんだけど……。
「ラフィ。俺…」
その瞬間、エマーリンさんがまだ何もしていないにもかかわらず俺達三人を囲むように水色に光り輝く魔法陣が足元へと広がった。
それと同時にエマーリンさんが焦ったように俺に叫んだ。
「ユウジ!魔法陣から出てください!早く!」
「え?!」
「ユウジ!急げ!」
ラフィの焦った声。
エマーリンさんの舌打ち。
そんなものと共に、何が起こったのかわからないまま俺はその水色の光へと飲み込まれてしまったのだった。
****************
※次話はエレンドス視点です。
宜しくお願いしますm(_ _)m
朝からキラキラ無邪気な笑顔で俺にそんなことを言ってくるラフィ。
あれ?昨日の夜の出来事ってやっぱ夢だったかも?
そう思って固まってたら何故かまたチュッとキスされた。
「ユウジ?お~い?目開いたまま寝てるのか?ちゃんと起きないと、もっとキスしちゃうぞ?」
「……っって、ラフィ?!だから、なんでそんなに俺にキスするんだよ?!」
「え?ユウジが好きだから?」
サラッと言ってきたけど、なんだそれ?!
それって友情的意味で?それとも恋愛的意味合いで?!
挨拶っぽく軽い感じでされたからよくわからない。
ここはちゃんと確認しておかないとと思って、意を決して聞こうと思ったんだけど、それより先に『何を騒いでるの?』ってキッチンから母さんが声を掛けてきた。
「優次?起きたんなら騒いでないでさっさと支度しちゃいなさいよ?今日も遊びに行くんでしょう?」
「は、は~い!」
どうやら内容までは聞こえなかったようだけど、そうだ、ここは家の中だった。
聞くなら出掛けてからだ。
「ラフィ。あ、後でちゃんと話そう?」
「ああ」
ニコッと笑うラフィはいつも通り変わらないのに、どうして俺ばっかり動揺してるんだろう?
なんとなくだけど、その態度からラフィの気持ち的には確固とした答えがあるような気がしてならないんだよな。
(もし…もしもだけど……)
ラフィが恋愛的意味合いで俺を好きとかだったら俺はなんて返事をしたらいいんだろう?
ラフィのことは好きだし、ドキドキさせられるけど、これが恋愛的に俺もラフィが好きかって言うと実はよくわからない。
ラフィのことは大好きだし、ラフィと過ごす時間も大好きだ。
だからラフィとずっと一緒にいたいとは思うけど、そもそも友情との違いがわからないから困る。
この二つの違いってなんだろう?
手を繋いだりキスしたりデートしたりすること?
(…………困った)
もしそうならどれもラフィとは嫌じゃない。
これまでを振り返ってもラフィに嫌悪感を抱いたことはなかった。
だからこそ困る。
だって、もしその気持ちを俺が受け入れちゃったら、ラフィとの関係がこれまでと変わるかもしれないってことだろ?
でも断った場合下手をしたら傷つけて、二度と会わないとかそんなことになったり…?
(それは嫌だ…)
考えるだけで胸が痛い。
(俺…どうしたらいいんだろう?)
いや。でもまだ何か決定的なことを言われたわけでもないし…。
モヤモヤした気持ちのまま朝食の席について、母さんの「今日はどこ行くの?」って話を適当に聞き流しながらひたすら手を動かし続けてたら喉に詰まった。
「ぐっ、ゴホゴホッ!」
「ユウジ!大丈夫か?」
そう言ってラフィが背中をさすって麦茶を勧めてくれる。
やっぱり優しい。
「優次ったら大丈夫?ラフィ君は優しいわね。そうだ!今日の予定は特に決めてないのよね?今映画で面白いのがやってるらしいわよ」
「そう言えば話題作の『ブラッド・コンパクト』とかもう上映中だっけ?大迫力のアクション映画!」
「そうそう。あれ面白いらしいんだよ。父さんの会社の人も観に行ったらしくて、お勧めだって言ってたな……」
家族が横でそんな話をしてるからか、エマーリンさんが食いついた。
大迫力の映像っていうのに興味が惹かれたらしい。
でも大丈夫かな?
ジェットコースターとは違うから平気?
昨日一昨日はラフィの希望で遊園地と水族館に行ったから今日はエマーリンさんの希望の場所に行くのはありかもしれない。
俺も映画なら変にラフィを気にしなくてもいいかもしれないし、うん。悪くない。
そう思いながら映画を観に行って、飲み物とポップコーンを買って指定席に座った。
ちなみに二人とも暗くなった館内に最初はびっくりしたみたいだけど、すぐに目の前のスクリーンに宣伝のための映像が流れ始めたからホッとしたように腰を落ち着けていた。
向こうでは暗殺者対策で剣とか持ち歩いてるけど、ここでは丸腰だから暗い場所は落ち着かないんだとか。
確かに言われてみたらそれはそうなのかも。
言ってもラフィは王子だし、向こうは帯剣も割と普通。
平和な日本だとあり得ないけど。
それから映画館では静かにと言うのもちゃんと教えてあげて、無事に映画鑑賞をした。
もうね、二人とも大興奮だった。
勿論声は出さなかったけど、目がスクリーンに釘付け。
俺はあんまりアクションは見ないんだけど、それでも最後の方は結構のめりこんで観てた気がする。
端的に言うと面白かった。
「最高!なんだあれ、カッコいい!」
映画が終わって最初のラフィの感想がそれだった。
「凄かったですね。あれはあちらでは味わえない娯楽です」
エマーリンさんも目をキラキラさせて大絶賛。
その後カフェに入ってお昼を食べたんだけど、はっきり言って映画の話しかしてない。
「あ~本当、来てよかった」
五日間楽しすぎるってラフィはご満悦。
エマーリンさんも付き合いできただけだったけど、来てよかったですと笑ってた。
なんだったら一人ででも頻繁にやってきそうな空気を感じる。
向こうの貴金属も売れるってわかったから換金してホテルに泊まるとかも可能だし、やってやれないことはなさそう。
それからショッピングモールで追加のお土産を見て回り、おやつにみたらし団子を買って食べたらあっという間に一日が終わってしまう。
ちゃんとラフィと話す時間を取らなきゃと思いつつ、段々と『このまま今回は流すのもありかも』という気がしてきて、なんとなく成り行き任せに。
でもそんな事を考えていたからバチが当たったのか、夕飯を食べてから二人が俺の家族にお礼を言い、俺が見送りと称して公園まで送って来た際、思いがけないアクシデントに巻き込まれたんだ。
「ユウジ。お世話になりました」
俺に笑顔で礼を言うエマーリンさん。
「ユウジ。ありがとな」
同じく笑顔で楽しかったと言ってくるラフィ。
次はいつ会えるだろうか?
(このままちゃんと話さず見送って、本当にいいのかな?)
そう思ったからちょっと悩んだ末に思い切って声を掛けたんだけど……。
「ラフィ。俺…」
その瞬間、エマーリンさんがまだ何もしていないにもかかわらず俺達三人を囲むように水色に光り輝く魔法陣が足元へと広がった。
それと同時にエマーリンさんが焦ったように俺に叫んだ。
「ユウジ!魔法陣から出てください!早く!」
「え?!」
「ユウジ!急げ!」
ラフィの焦った声。
エマーリンさんの舌打ち。
そんなものと共に、何が起こったのかわからないまま俺はその水色の光へと飲み込まれてしまったのだった。
****************
※次話はエレンドス視点です。
宜しくお願いしますm(_ _)m
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