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Ⅲ.サード・コンタクト
26.初日の夜はのんびり
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父さんが帰ってきてから皆で和やかに夕飯を囲む。
今日の夕飯は平たく言うと唐揚げ定食だ。
白いご飯に茄子とお揚げのお味噌汁。
キャベツの千切りにジューシーな唐揚げ。
副菜は青菜炒めとさっぱり春雨サラダ。
今日は大学芋も作ったわよと言って、母さんが小皿に入れてくれたけど、ラフィの口に合うかな?
「いただきます」
そう言って皆で和気藹々と団らんしながらの食事。
城ではまずありえない光景だと思うけど、大丈夫かな?
そう思って様子を窺うとなんだか二人ともとっても楽しそう。
よかった。
食事も全部口に合ったようで、母さんに作り方とかも積極的に聞いていた。
部屋に戻ってから、明日は服だけじゃなく調味料の類も買いに行きたいって言ってたから、もしかして持って帰る気満々?
「え~?でもさ。持って帰れるの?」
いつも俺は五分だけ意識が飛んでる感じだから、向こうの持ち物は持って帰れたことはない。
服とかもそうだけど、ラフィから折角買ってもらったスタンガン風の短剣も多分ラフィが管理してくれてるはず。
だからこっちのものを持って帰るのは無理じゃないかって思ったんだけど、そこはエマーリン同伴の強み。
マジックバッグという異世界アイテムに放り込んでおいたら持って帰れるんだって。
すごい反則技!
「こっちで気に入ったものを全部向こうで普及したいって言ったら、面白そうだってすぐ協力してくれたぞ?」
「へぇ。あの人、本当にノリがいいよな」
そうして話してたらエマーリンさんがお風呂から上がったみたいで、次ラフィ君行ってらっしゃいと母さんから声がかけられた。
でもここでエマーリンさんが、勝手が結構違ったから二人で行ってきた方がいいとか言い出した。
そう言えば向こうもシャワーはあるけど、魔石とか使って作動させてたっけ。
でも蛇口ひねるだけだし、大丈夫だよな?
そう思ったけど、ここで母さんが『そう言えばエマーリンさん、最初に冷水かぶって悲鳴上げてたわね』とか言い出した。
うん。最初は一緒に行こう。
「じゃあラフィ、一緒に行こう」
「ああ」
そして脱衣所で服を脱いで、洗濯機にポイッ。もちろんラフィの服はネットに入れて洗濯だ。
洗濯機にもラフィは興味津々で、どんな作りになってるんだろとか言いながら滅茶苦茶見てた。
そう言えばこういう物の構造とかが載ってる図鑑みたいなのを昔持ってたな。
まだあるかどうか後で母さんに訊いてみよう。
もうどうせ見ないし、もし残ってたらラフィにあげてもいいかもしれない。
それから一緒にお風呂に入って温度設定の仕方と蛇口の説明をして、赤い方がお湯、青い方が水だって教えてあげた。
お湯は設定温度の湯温で出てくるけど、一応手で温度確認してから使った方がいいっていうのもちゃんと教えておいた。
極まれにあっついのが出てくるから。
そうそう。言い忘れてたけどうちのお風呂は流石に城のお風呂みたいに二人で浸かれないから、一人が浸かってる間に一人が洗うって感じで交互に浸かった。
それでもラフィは全然文句も言わなくて、郷に入れば郷に従えって言うしな的なことを言ってた。
えっと実際には『鏡の教えには鏡で応えよ』だったっけ?
よくわからなかったから意味を聞いたらまんま『郷に入れば~』と一緒だった。
どこの世界にも似たような言葉はあるんだなと思った。
「でもこの入浴剤っていうのは便利だな。粉でサラサラって入れるだけで効能があるなんて変なの」
こっちの方が魔法みたいだってラフィは言うけど、こういうのも文化の違いなんだろうな。
あと、石鹸は兎も角シャンプーとリンスもうちは全員使う種類が違うせいで風呂場に溢れてて、その種類の豊富さに驚かれた。
何が違うんだって聞かれたけど、髪質によって合う合わないがあるから皆自分にあった奴を使ってるだけだって答えておいた。
だって成分とか細かい話はよく分からないし。
ちなみにラフィは迷わず俺と同じシャンプーを使ってた。
俺が使ってるのはハーブ系のやつで、爽やかサラサラになるやつなんだけど、匂いも気に入ったみたいだ。
「へぇ。ハーブのシャンプーか…なかなかいいな」
これも持って帰りたいって言いだしたから、明日は日用品の買い物で終わりそうだなってこっそり笑ってしまった。
行く場所は『uniクロ』『スーパー』『ドラッグストア』『本屋』くらいでいいかもしれない。
どうせ五日もあるんだし、ゆっくりこの世界を満喫してもらおう。
そして湯上りにドライヤーで髪を乾かしたらこれにも驚かれた。
これも欲しいから買いに行きたいって言われたけど、基本的にこっちの機械って電気で動くから持って帰っても使えないと思うんだけどな。
「あの風魔法と火魔法を付与したタオルで十分じゃない?」
そう。俺もラフィの部屋で過ごしてから知ったんだけど、あっちでは付与魔法が施されたタオルで髪を乾かすから別にドライヤーはいらないんだ。
でもラフィはこの片手で持つ感じがいいんじゃないかとぶぅぶぅ言っていた。
なんだか面白い。
それから俺の部屋に戻って色んな本を手に取ってみたり、文具を興味津々で見てみたり、鞄の造りなんかも見てた。
なんだか目につく物が全部興味を引かれているらしくて、そりゃあもう目が輝きっぱなし。
やっぱり異世界だと新鮮でついつい色んな物に興味が出るよな。
(わかるわかる)
俺もそうだし。
そんなこんなで一日目はあっという間に終わりを迎えて、さあ寝ようとなったんだけど、俺がベッドを譲ろうとしたらあっさりと断られた。
でも流石に王子を床には寝かせられないし、俺が布団で寝るよって言ったんだけど、ラフィは全く首を縦には振ってくれなくて、結局ジャンケンで決めることに。
勝った方がベッド。負けた方が床の布団。
で、結局ラフィがベッドになったんだけど、なんだかすっごく不満そうだったから、笑ってこう言ってみた。
「明日はエマーリンさんにここのベッドで寝てもらって、俺とラフィは客間の部屋で布団を並べて寝ないか?その方がいっぱい話せそうだし」
それを聞いたラフィは忽ち機嫌を直して『そうしよう!』って二つ返事で言ってくれた。
ラフィと話してると本当に楽しい。
明日からもラフィの喜ぶ顔が沢山見られますように。
そんなことを思いながら俺は眠りについた。
今日の夕飯は平たく言うと唐揚げ定食だ。
白いご飯に茄子とお揚げのお味噌汁。
キャベツの千切りにジューシーな唐揚げ。
副菜は青菜炒めとさっぱり春雨サラダ。
今日は大学芋も作ったわよと言って、母さんが小皿に入れてくれたけど、ラフィの口に合うかな?
「いただきます」
そう言って皆で和気藹々と団らんしながらの食事。
城ではまずありえない光景だと思うけど、大丈夫かな?
そう思って様子を窺うとなんだか二人ともとっても楽しそう。
よかった。
食事も全部口に合ったようで、母さんに作り方とかも積極的に聞いていた。
部屋に戻ってから、明日は服だけじゃなく調味料の類も買いに行きたいって言ってたから、もしかして持って帰る気満々?
「え~?でもさ。持って帰れるの?」
いつも俺は五分だけ意識が飛んでる感じだから、向こうの持ち物は持って帰れたことはない。
服とかもそうだけど、ラフィから折角買ってもらったスタンガン風の短剣も多分ラフィが管理してくれてるはず。
だからこっちのものを持って帰るのは無理じゃないかって思ったんだけど、そこはエマーリン同伴の強み。
マジックバッグという異世界アイテムに放り込んでおいたら持って帰れるんだって。
すごい反則技!
「こっちで気に入ったものを全部向こうで普及したいって言ったら、面白そうだってすぐ協力してくれたぞ?」
「へぇ。あの人、本当にノリがいいよな」
そうして話してたらエマーリンさんがお風呂から上がったみたいで、次ラフィ君行ってらっしゃいと母さんから声がかけられた。
でもここでエマーリンさんが、勝手が結構違ったから二人で行ってきた方がいいとか言い出した。
そう言えば向こうもシャワーはあるけど、魔石とか使って作動させてたっけ。
でも蛇口ひねるだけだし、大丈夫だよな?
そう思ったけど、ここで母さんが『そう言えばエマーリンさん、最初に冷水かぶって悲鳴上げてたわね』とか言い出した。
うん。最初は一緒に行こう。
「じゃあラフィ、一緒に行こう」
「ああ」
そして脱衣所で服を脱いで、洗濯機にポイッ。もちろんラフィの服はネットに入れて洗濯だ。
洗濯機にもラフィは興味津々で、どんな作りになってるんだろとか言いながら滅茶苦茶見てた。
そう言えばこういう物の構造とかが載ってる図鑑みたいなのを昔持ってたな。
まだあるかどうか後で母さんに訊いてみよう。
もうどうせ見ないし、もし残ってたらラフィにあげてもいいかもしれない。
それから一緒にお風呂に入って温度設定の仕方と蛇口の説明をして、赤い方がお湯、青い方が水だって教えてあげた。
お湯は設定温度の湯温で出てくるけど、一応手で温度確認してから使った方がいいっていうのもちゃんと教えておいた。
極まれにあっついのが出てくるから。
そうそう。言い忘れてたけどうちのお風呂は流石に城のお風呂みたいに二人で浸かれないから、一人が浸かってる間に一人が洗うって感じで交互に浸かった。
それでもラフィは全然文句も言わなくて、郷に入れば郷に従えって言うしな的なことを言ってた。
えっと実際には『鏡の教えには鏡で応えよ』だったっけ?
よくわからなかったから意味を聞いたらまんま『郷に入れば~』と一緒だった。
どこの世界にも似たような言葉はあるんだなと思った。
「でもこの入浴剤っていうのは便利だな。粉でサラサラって入れるだけで効能があるなんて変なの」
こっちの方が魔法みたいだってラフィは言うけど、こういうのも文化の違いなんだろうな。
あと、石鹸は兎も角シャンプーとリンスもうちは全員使う種類が違うせいで風呂場に溢れてて、その種類の豊富さに驚かれた。
何が違うんだって聞かれたけど、髪質によって合う合わないがあるから皆自分にあった奴を使ってるだけだって答えておいた。
だって成分とか細かい話はよく分からないし。
ちなみにラフィは迷わず俺と同じシャンプーを使ってた。
俺が使ってるのはハーブ系のやつで、爽やかサラサラになるやつなんだけど、匂いも気に入ったみたいだ。
「へぇ。ハーブのシャンプーか…なかなかいいな」
これも持って帰りたいって言いだしたから、明日は日用品の買い物で終わりそうだなってこっそり笑ってしまった。
行く場所は『uniクロ』『スーパー』『ドラッグストア』『本屋』くらいでいいかもしれない。
どうせ五日もあるんだし、ゆっくりこの世界を満喫してもらおう。
そして湯上りにドライヤーで髪を乾かしたらこれにも驚かれた。
これも欲しいから買いに行きたいって言われたけど、基本的にこっちの機械って電気で動くから持って帰っても使えないと思うんだけどな。
「あの風魔法と火魔法を付与したタオルで十分じゃない?」
そう。俺もラフィの部屋で過ごしてから知ったんだけど、あっちでは付与魔法が施されたタオルで髪を乾かすから別にドライヤーはいらないんだ。
でもラフィはこの片手で持つ感じがいいんじゃないかとぶぅぶぅ言っていた。
なんだか面白い。
それから俺の部屋に戻って色んな本を手に取ってみたり、文具を興味津々で見てみたり、鞄の造りなんかも見てた。
なんだか目につく物が全部興味を引かれているらしくて、そりゃあもう目が輝きっぱなし。
やっぱり異世界だと新鮮でついつい色んな物に興味が出るよな。
(わかるわかる)
俺もそうだし。
そんなこんなで一日目はあっという間に終わりを迎えて、さあ寝ようとなったんだけど、俺がベッドを譲ろうとしたらあっさりと断られた。
でも流石に王子を床には寝かせられないし、俺が布団で寝るよって言ったんだけど、ラフィは全く首を縦には振ってくれなくて、結局ジャンケンで決めることに。
勝った方がベッド。負けた方が床の布団。
で、結局ラフィがベッドになったんだけど、なんだかすっごく不満そうだったから、笑ってこう言ってみた。
「明日はエマーリンさんにここのベッドで寝てもらって、俺とラフィは客間の部屋で布団を並べて寝ないか?その方がいっぱい話せそうだし」
それを聞いたラフィは忽ち機嫌を直して『そうしよう!』って二つ返事で言ってくれた。
ラフィと話してると本当に楽しい。
明日からもラフィの喜ぶ顔が沢山見られますように。
そんなことを思いながら俺は眠りについた。
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