21 / 43
Ⅱ.セカンド・コンタクト
20.ドキドキ
しおりを挟む
「ユウジ!どこまで行くんだ!」
暫く俺に連れて行かれるがままだったラフィがある程度歩いたところで俺を引き留めてきたから、それに合わせて足を止める。
「ラフィ…」
「エレンドスの言ったことなら気にしなくていいぞ?あいつはいつもあんな感じだから」
「いつも?」
「そう。王宮はストレスが溜まる場所だからな。主従関係だけど俺が言いたいことは言えって言って、ああいうことも許してるんだ。その方が気楽でいいだろ?」
腹の中で不満を溜め込まれるより口に出してもらった方がわかりやすくていいってラフィは言うけど、本当にそれでいいんだろうか?
いくらなんでも酷いと思う。
「それより、さっきは…キスして悪かったな。嫌じゃなかったか?」
「…え?」
「その…男同士だし、抵抗があったんじゃないかって思って……」
そんな風に気遣ってくれるラフィに俺は思わずジーンと胸が熱くなってしまう。
「いや、全然!ラフィは男前だし、今日だってロープで降りる時とかもカッコ良過ぎてドキドキしちゃったくらいだし?!むしろ役得だったんじゃないかな?!うん!気にしなくていいから!」
あれは事故だし、寧ろ俺なんかとキスさせちゃってゴメンって思って、必死に言葉を探して気にしてくれるなと口にするけど、言えば言う程自分でも何を言ってるのかわからなくなってしまった。
でもラフィは「役得なんだ?」って言ってちょっと嬉しそうに笑ってくれたからきっと俺の気持ちは伝わったはず!
役得って言葉はラフィも確か木の小屋から降りる時使ってたしな。うん、問題ない!
そう結論付けたんだけど────。
「じゃあ…」
そしてニコッと笑ってラフィはとんでもないことを口にしてきた。
「今度からはユウジへの御礼はキスにするな!」
「…………へ?」
「だって役得って言ってくれたし、喜んでもらえるかなって」
(んんんんん??)
全く予想していなかった展開に俺は全くついていけなくて、思わずラフィの顔を二度見してしまう。
「いつもユウジには感謝してるから、これからはいっぱい御礼させてくれよな」
唖然呆然…。どうしてこうなった?
でも元はと言えば自分の発言が原因だし、こんなに無邪気にキラキラ王子スマイルで言われたら俺…断れないんですけど?!
(確かに嫌じゃなかったけどさ…)
それでも何かがおかしい気がする。
でも言えない。
そんなモヤモヤを吹き飛ばすかのようにラフィが明るく笑いながら俺を促してくる。
「俺も嫌じゃなかったし、ユウジとはやっぱり気が合うな!」
嬉しそうに笑うラフィに「ま、いっか」と思わせられるのは何故だろう?
親友パワーとでも言うんだろうか?それとも王子だから変なカリスマ性でもあるのかな?
いや、きっと全く淫靡な感じがしないからだな。
第一王子に誘われた時は気持ち悪いって泣きたくなったけど、ラフィはそんな感じで言ってこないから平気なんだ。
でも素直に受け入れるのかと問われたなら当然NOだろうと思って、俺は曖昧に笑うことしかできなかった。
でも────そんな空気を読んだのかラフィは別の提案もしてきてくれる。
「あ、もちろんキスだけじゃなく欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれていいから。ユウジになら俺、いっぱい貢ぐからな」
「いやいやいや?!貢がなくていいよ!」
お金は大事!
それくらいならキスの方がマシだろ?!
タダなんだから!
そう口にしたらじゃあそうするってちょっと残念そうに言われた。
貢ぎたかったのかな?まさかな。
でも王族ってもしかしたら基本的に金品で御礼がしたいものなのかも。
ラフィもなんだかんだで王子様だしな。
でも俺、一般庶民だからそう言うのはちょっと…。
ゴメンな?
とは言えそうなると益々キスを拒否しにくくなった気がするぞ?
(俺、墓穴掘ってないか?)
まあ…そうは言ってもラフィだって本気で言ってるわけじゃないだろうし、うん。意識しすぎない方がいいのかもしれない。
キスって特別なものだしな。
ラフィは冗談も好きだし、気にし過ぎたら負けな気がする。
結局俺はそう割り切ることにして、さっきとは別の道でラフィと一緒に城へと帰った。
こうして歩く時の距離感だって変わってないし、ラフィの態度も何も変わってないし。
それでも────そんなラフィに俺が勝手にドキドキしてたのは内緒だ。
***
【Side.エレンドス】
ユウジが主を引っ張って行った後、僕は茫然とその場に立ち尽くしていた。
(まさかあんなに鮮やかにユウジを手に入れにかかるなんて……)
召喚前は主であるラフィ王子は我儘だし傲慢だから、言ってもあの条件の相手を手に入れるなんてできっこないと思い込んでいた。
召喚後も色々あって友人同士になったようだけど、所詮友人の枠を外れないものだと思っていた。
でも……一緒にいればいるほどに二人の距離はどんどん近づいていて、ユウジは知らず知らずのうちに主の掌の上で踊らされていた。
実にスマートに懐柔し、好印象を与え、警戒されないように自然なイチャイチャを楽しんでいる主。
まさか自分の主が仕事だけじゃなく恋愛まで器用にこなしてくるなんてと悔しい気持ちでいっぱいだった。
それは兎も角、確かにさっき躓いてこけかけたのは自分だし、ユウジを巻き込みかけたのも自分だ。
ちょっとあわよくば受け止めてくれたユウジとお近づきになれたらって思ったのもまた事実。
男だけど可愛いし、ちょっと味見がてらキスくらいしてもいいんじゃないかとか下心もなくはなかった。
それなのにそれを察知してか主はユウジをグイッと自分の方へと引き寄せてそれを阻止したばかりか、絶妙な位置でユウジを待ち構えていて、半分狙ってその唇を奪ったのだ!
これが確信犯と言わずして何と言う?!
横目でちゃんと見てたんだぞと言ってやりたい。
たまたまユウジが顔を上げなければ未遂で済んだ、そんなちょっと偶然を狙った悪戯────。
だからまさか本当にキスできるとは本人も思ってはいなかったんだろう。
チュッと狙い通りユウジとキスできたことが信じられないって顔で驚いて、照れながらも嬉しそうににやけている姿に腹が立った。
先に狙ったのは僕なのに!
だからつい責めてしまったのだけど…そんな自分にユウジは怒ってしまって主を連れてその場から去っていってしまった。
主がプッとこちらを笑ってる姿が憎たらしい。
きっとここから主の猛攻が始まるのだろう。
(~~~~っ!主なんてユウジにその腹黒さがバレて嫌われたらいいんですよ!)
どうせもうこの道は避けて帰るんだろうと踏んで、悔し紛れに悪態を吐きながら城へと帰る。
(はぁ…僕もエマーリン様にユウジみたいに素直で可愛くて思いやりがある優しい相手、召喚してもらおうかな…)
トボトボと歩きながら、僕はそっと溜息を吐いたのだった。
暫く俺に連れて行かれるがままだったラフィがある程度歩いたところで俺を引き留めてきたから、それに合わせて足を止める。
「ラフィ…」
「エレンドスの言ったことなら気にしなくていいぞ?あいつはいつもあんな感じだから」
「いつも?」
「そう。王宮はストレスが溜まる場所だからな。主従関係だけど俺が言いたいことは言えって言って、ああいうことも許してるんだ。その方が気楽でいいだろ?」
腹の中で不満を溜め込まれるより口に出してもらった方がわかりやすくていいってラフィは言うけど、本当にそれでいいんだろうか?
いくらなんでも酷いと思う。
「それより、さっきは…キスして悪かったな。嫌じゃなかったか?」
「…え?」
「その…男同士だし、抵抗があったんじゃないかって思って……」
そんな風に気遣ってくれるラフィに俺は思わずジーンと胸が熱くなってしまう。
「いや、全然!ラフィは男前だし、今日だってロープで降りる時とかもカッコ良過ぎてドキドキしちゃったくらいだし?!むしろ役得だったんじゃないかな?!うん!気にしなくていいから!」
あれは事故だし、寧ろ俺なんかとキスさせちゃってゴメンって思って、必死に言葉を探して気にしてくれるなと口にするけど、言えば言う程自分でも何を言ってるのかわからなくなってしまった。
でもラフィは「役得なんだ?」って言ってちょっと嬉しそうに笑ってくれたからきっと俺の気持ちは伝わったはず!
役得って言葉はラフィも確か木の小屋から降りる時使ってたしな。うん、問題ない!
そう結論付けたんだけど────。
「じゃあ…」
そしてニコッと笑ってラフィはとんでもないことを口にしてきた。
「今度からはユウジへの御礼はキスにするな!」
「…………へ?」
「だって役得って言ってくれたし、喜んでもらえるかなって」
(んんんんん??)
全く予想していなかった展開に俺は全くついていけなくて、思わずラフィの顔を二度見してしまう。
「いつもユウジには感謝してるから、これからはいっぱい御礼させてくれよな」
唖然呆然…。どうしてこうなった?
でも元はと言えば自分の発言が原因だし、こんなに無邪気にキラキラ王子スマイルで言われたら俺…断れないんですけど?!
(確かに嫌じゃなかったけどさ…)
それでも何かがおかしい気がする。
でも言えない。
そんなモヤモヤを吹き飛ばすかのようにラフィが明るく笑いながら俺を促してくる。
「俺も嫌じゃなかったし、ユウジとはやっぱり気が合うな!」
嬉しそうに笑うラフィに「ま、いっか」と思わせられるのは何故だろう?
親友パワーとでも言うんだろうか?それとも王子だから変なカリスマ性でもあるのかな?
いや、きっと全く淫靡な感じがしないからだな。
第一王子に誘われた時は気持ち悪いって泣きたくなったけど、ラフィはそんな感じで言ってこないから平気なんだ。
でも素直に受け入れるのかと問われたなら当然NOだろうと思って、俺は曖昧に笑うことしかできなかった。
でも────そんな空気を読んだのかラフィは別の提案もしてきてくれる。
「あ、もちろんキスだけじゃなく欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれていいから。ユウジになら俺、いっぱい貢ぐからな」
「いやいやいや?!貢がなくていいよ!」
お金は大事!
それくらいならキスの方がマシだろ?!
タダなんだから!
そう口にしたらじゃあそうするってちょっと残念そうに言われた。
貢ぎたかったのかな?まさかな。
でも王族ってもしかしたら基本的に金品で御礼がしたいものなのかも。
ラフィもなんだかんだで王子様だしな。
でも俺、一般庶民だからそう言うのはちょっと…。
ゴメンな?
とは言えそうなると益々キスを拒否しにくくなった気がするぞ?
(俺、墓穴掘ってないか?)
まあ…そうは言ってもラフィだって本気で言ってるわけじゃないだろうし、うん。意識しすぎない方がいいのかもしれない。
キスって特別なものだしな。
ラフィは冗談も好きだし、気にし過ぎたら負けな気がする。
結局俺はそう割り切ることにして、さっきとは別の道でラフィと一緒に城へと帰った。
こうして歩く時の距離感だって変わってないし、ラフィの態度も何も変わってないし。
それでも────そんなラフィに俺が勝手にドキドキしてたのは内緒だ。
***
【Side.エレンドス】
ユウジが主を引っ張って行った後、僕は茫然とその場に立ち尽くしていた。
(まさかあんなに鮮やかにユウジを手に入れにかかるなんて……)
召喚前は主であるラフィ王子は我儘だし傲慢だから、言ってもあの条件の相手を手に入れるなんてできっこないと思い込んでいた。
召喚後も色々あって友人同士になったようだけど、所詮友人の枠を外れないものだと思っていた。
でも……一緒にいればいるほどに二人の距離はどんどん近づいていて、ユウジは知らず知らずのうちに主の掌の上で踊らされていた。
実にスマートに懐柔し、好印象を与え、警戒されないように自然なイチャイチャを楽しんでいる主。
まさか自分の主が仕事だけじゃなく恋愛まで器用にこなしてくるなんてと悔しい気持ちでいっぱいだった。
それは兎も角、確かにさっき躓いてこけかけたのは自分だし、ユウジを巻き込みかけたのも自分だ。
ちょっとあわよくば受け止めてくれたユウジとお近づきになれたらって思ったのもまた事実。
男だけど可愛いし、ちょっと味見がてらキスくらいしてもいいんじゃないかとか下心もなくはなかった。
それなのにそれを察知してか主はユウジをグイッと自分の方へと引き寄せてそれを阻止したばかりか、絶妙な位置でユウジを待ち構えていて、半分狙ってその唇を奪ったのだ!
これが確信犯と言わずして何と言う?!
横目でちゃんと見てたんだぞと言ってやりたい。
たまたまユウジが顔を上げなければ未遂で済んだ、そんなちょっと偶然を狙った悪戯────。
だからまさか本当にキスできるとは本人も思ってはいなかったんだろう。
チュッと狙い通りユウジとキスできたことが信じられないって顔で驚いて、照れながらも嬉しそうににやけている姿に腹が立った。
先に狙ったのは僕なのに!
だからつい責めてしまったのだけど…そんな自分にユウジは怒ってしまって主を連れてその場から去っていってしまった。
主がプッとこちらを笑ってる姿が憎たらしい。
きっとここから主の猛攻が始まるのだろう。
(~~~~っ!主なんてユウジにその腹黒さがバレて嫌われたらいいんですよ!)
どうせもうこの道は避けて帰るんだろうと踏んで、悔し紛れに悪態を吐きながら城へと帰る。
(はぁ…僕もエマーリン様にユウジみたいに素直で可愛くて思いやりがある優しい相手、召喚してもらおうかな…)
トボトボと歩きながら、僕はそっと溜息を吐いたのだった。
40
お気に入りに追加
665
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる