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Ⅱ.セカンド・コンタクト
18.木の上で食べるなんて想定外!
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風が気持ちよく吹き抜ける広々とした公園で、ラフィがおすすめの場所と言って示したのは大きな木の上にある秘密基地のような場所だった。
小さな小屋みたいなのがあちらこちら太い枝にしっかりと固定されていて、その中には小さいながらもテーブルと椅子がちゃんと備え付けられているらしい。
それだけその木は物凄く大きくて、俺はびっくりして目を丸くしてしまった。
(こんなの、見たことない…)
しかも何処にするって訊かれて適当にじゃああそこでって指定したら、ラフィは「そこから垂れ下がってるロープを掴んだら勝手に引き上げられる仕組みになってるから」と言って先に上に登ってしまう。
(ええっ?!)
正直物凄く怖いんだけど?!
そうやってちょっとビビっていると、上からラフィに早く来いよと呼ばれてしまった。
(ここは覚悟を決めて…っと)
そして意を決してロープをしっかりと握ると、すぐさま上へと引っ張り上げられる。
「うわっ!」
どうも魔法っぽいんだけど、初めての体験にドッキドキだ。
もしかして降りる時も似た感じなんだろうか?
ちょっと考えるだけで怖いんだけど…。
そんなこんなでご機嫌なラフィを前にお弁当を早速広げ、俺は自分を落ち着かせるようにそっと水を飲んだ。
「美味い!!」
ラフィは卵焼きを一口食べた瞬間、目を輝かせて嬉しそうにそう口走った。
「え?甘い?いや、ちょっとしょっぱい?不思議な味だけど凄く美味しい!」
「ああ、それ?ちょっと砂糖入ってるんだ。甘じょっぱい卵焼きが好きだからそっちにしたんだけど、ダシで味付けしただし巻きとかもお勧めだから、今度作ろうか?」
「え?!また作ってもらえるのか?」
「うん。ラフィさえよければだけど」
「食べる食べる!約束な!」
そしてラフィはウキウキしながら他のものも美味しいと言って本当に嬉しそうに次々口の中へと運んでいく。
その際、これはあの料理に似てるとか、この味付けは初めて食べたとか色々聞けたのでこっちの食事情も何となくだけど把握することができて俺的にも満足。
「はぁ~美味しかった…」
満足げに食べ終わったラフィに俺は思わずクスクス笑ってしまう。
こんなに清々しいほど綺麗に食べてもらえると作り手としては嬉しいものだ。
「口にあって良かった。そう言えばラフィは好き嫌いは?」
「俺?一応あるけど、ユウジが作ったやつだと全然大丈夫だった」
そう言って、ほらあれって言いながらホイル焼きが入ってたところを指さす。
「ククリーナが使われてただろ?あれはちょっと癖が強いから、調理法によってはちょっと苦手なんだ」
その言葉に思わず目を丸くしてしまう。
(ククリーナってキノコの事だったのか…)
いつだったか第一王子がエレンドスにククリーナのフリュスがとかなんとか言ってたような気がするんだけど、一つ謎が解けたような気がする。
ちなみに今日使ったキノコ類はシイタケとマイタケとシメジ(っぽいもの達)の三種類なので、どれがククリーナかは不明。
多分癖が強いって言ってたし、シイタケかな?
まあまたの機会にでも聞いてみよう。
「ちなみにフリュスって何?」
「え?ああ、フリュスって言うのは、ほらあれ、照れ照れ鶏のがあっただろ?あれみたいな奴」
照れ照れ鶏はチキンの照り焼きのことだから、きっと焼いたものってことだよな?
つまり焼きシイタケがエレンドスは嫌い…ってことかもしれない。
「なるほど…」
なんだか謎が解けてスッキリした気分でいっぱいだ。
そう思ってると、ラフィが不思議そうにどうしてそんなことを聞いたのかって言ってきたから、前に第一王子がエレンドスに言ってたんだとその時の話をしたんだけど、それを聞いたラフィはちょっとだけ不機嫌そうにエレンドスめと怒ってた。
「じゃあユウジ、この後は買い物に行こうか。服、買うだろ?」
お弁当箱を片付けたところでそう言って気を取り直したラフィに笑顔で言われた俺だけど、そう言えばと思い出す。
「ラ、ラフィ…。その、降りる時ってまたロープ…だよな?」
「…?そうだけど?」
その言葉に俺は恐る恐る下を見る。
下から見た時よりもずっと高く感じるのは気のせいだろうか?
多分高さ的にはマンションの5階くらいの高さだと思う。
これをロープで一気に降ろされるのは正直言って怖い。
そんな俺にラフィは察するものがあったのか、少し躊躇いがちに一緒に降りるかと訊いてくれた。
「ユウジ、もし怖いなら一緒に降りるか?しがみついてても構わないし、嫌じゃなければだけど…」
それはまさに渡りに船の提案だったから、俺は一も二もなくその申し出に飛びついた。
「ありがとう、ラフィ!本当に助かる!」
景色はいいし風が吹き抜けるのも気持ちいいから食事場所としては最高なんだけど、上り下りだけが難だ。
「ラフィ…これでいい?」
「………うん。もっとしっかりくっついても良いけど?」
「じゃあこんな感じで…」
「うん。落ちないようにちゃんと支えてるから、安心してくっついててくれ」
俺はラフィに腰をしっかり支えてもらいつつ背中に腕を回してギュッと抱き着いた。
ふわっと香るラフィの香りが心地いい。
そしてラフィがそのまま垂れ下がっていたロープを手に取ると、すぐにビュッと音が鳴って一瞬で下へとついたんだけど────。
「…………ユウジ。着いたけど…大丈夫か?」
腰は抜けてないかと気遣ってくれるラフィはすぐに離したりはせず、ちゃんと確認してからゆっくりと離れてくれた。
(優しい…)
こう言うところが王子だな~なんて思いつつ、嫌味なくできるところが凄いなってやっぱり思ってしまう。
自分も同じ男としてしっかり見習わなければ…!
「その…ありがとう」
「いや。役得だった」
ニコッと笑って言うラフィは絶対女ったらしだと思う。
いい男は何をしても似合うんだなと思いながら、俺は照れ隠しでそのまま歩き出し、ラフィを促しにかかる。
「ほら、ラフィ!早く行こう!」
「ああ。ユウジに似合う服を選ぼうな」
なんだかこれじゃあデートみたいだなと思いながら、俺は気恥ずかしい気持ちを振り払うようにしながらラフィと街歩きへと出掛けたのだった。
小さな小屋みたいなのがあちらこちら太い枝にしっかりと固定されていて、その中には小さいながらもテーブルと椅子がちゃんと備え付けられているらしい。
それだけその木は物凄く大きくて、俺はびっくりして目を丸くしてしまった。
(こんなの、見たことない…)
しかも何処にするって訊かれて適当にじゃああそこでって指定したら、ラフィは「そこから垂れ下がってるロープを掴んだら勝手に引き上げられる仕組みになってるから」と言って先に上に登ってしまう。
(ええっ?!)
正直物凄く怖いんだけど?!
そうやってちょっとビビっていると、上からラフィに早く来いよと呼ばれてしまった。
(ここは覚悟を決めて…っと)
そして意を決してロープをしっかりと握ると、すぐさま上へと引っ張り上げられる。
「うわっ!」
どうも魔法っぽいんだけど、初めての体験にドッキドキだ。
もしかして降りる時も似た感じなんだろうか?
ちょっと考えるだけで怖いんだけど…。
そんなこんなでご機嫌なラフィを前にお弁当を早速広げ、俺は自分を落ち着かせるようにそっと水を飲んだ。
「美味い!!」
ラフィは卵焼きを一口食べた瞬間、目を輝かせて嬉しそうにそう口走った。
「え?甘い?いや、ちょっとしょっぱい?不思議な味だけど凄く美味しい!」
「ああ、それ?ちょっと砂糖入ってるんだ。甘じょっぱい卵焼きが好きだからそっちにしたんだけど、ダシで味付けしただし巻きとかもお勧めだから、今度作ろうか?」
「え?!また作ってもらえるのか?」
「うん。ラフィさえよければだけど」
「食べる食べる!約束な!」
そしてラフィはウキウキしながら他のものも美味しいと言って本当に嬉しそうに次々口の中へと運んでいく。
その際、これはあの料理に似てるとか、この味付けは初めて食べたとか色々聞けたのでこっちの食事情も何となくだけど把握することができて俺的にも満足。
「はぁ~美味しかった…」
満足げに食べ終わったラフィに俺は思わずクスクス笑ってしまう。
こんなに清々しいほど綺麗に食べてもらえると作り手としては嬉しいものだ。
「口にあって良かった。そう言えばラフィは好き嫌いは?」
「俺?一応あるけど、ユウジが作ったやつだと全然大丈夫だった」
そう言って、ほらあれって言いながらホイル焼きが入ってたところを指さす。
「ククリーナが使われてただろ?あれはちょっと癖が強いから、調理法によってはちょっと苦手なんだ」
その言葉に思わず目を丸くしてしまう。
(ククリーナってキノコの事だったのか…)
いつだったか第一王子がエレンドスにククリーナのフリュスがとかなんとか言ってたような気がするんだけど、一つ謎が解けたような気がする。
ちなみに今日使ったキノコ類はシイタケとマイタケとシメジ(っぽいもの達)の三種類なので、どれがククリーナかは不明。
多分癖が強いって言ってたし、シイタケかな?
まあまたの機会にでも聞いてみよう。
「ちなみにフリュスって何?」
「え?ああ、フリュスって言うのは、ほらあれ、照れ照れ鶏のがあっただろ?あれみたいな奴」
照れ照れ鶏はチキンの照り焼きのことだから、きっと焼いたものってことだよな?
つまり焼きシイタケがエレンドスは嫌い…ってことかもしれない。
「なるほど…」
なんだか謎が解けてスッキリした気分でいっぱいだ。
そう思ってると、ラフィが不思議そうにどうしてそんなことを聞いたのかって言ってきたから、前に第一王子がエレンドスに言ってたんだとその時の話をしたんだけど、それを聞いたラフィはちょっとだけ不機嫌そうにエレンドスめと怒ってた。
「じゃあユウジ、この後は買い物に行こうか。服、買うだろ?」
お弁当箱を片付けたところでそう言って気を取り直したラフィに笑顔で言われた俺だけど、そう言えばと思い出す。
「ラ、ラフィ…。その、降りる時ってまたロープ…だよな?」
「…?そうだけど?」
その言葉に俺は恐る恐る下を見る。
下から見た時よりもずっと高く感じるのは気のせいだろうか?
多分高さ的にはマンションの5階くらいの高さだと思う。
これをロープで一気に降ろされるのは正直言って怖い。
そんな俺にラフィは察するものがあったのか、少し躊躇いがちに一緒に降りるかと訊いてくれた。
「ユウジ、もし怖いなら一緒に降りるか?しがみついてても構わないし、嫌じゃなければだけど…」
それはまさに渡りに船の提案だったから、俺は一も二もなくその申し出に飛びついた。
「ありがとう、ラフィ!本当に助かる!」
景色はいいし風が吹き抜けるのも気持ちいいから食事場所としては最高なんだけど、上り下りだけが難だ。
「ラフィ…これでいい?」
「………うん。もっとしっかりくっついても良いけど?」
「じゃあこんな感じで…」
「うん。落ちないようにちゃんと支えてるから、安心してくっついててくれ」
俺はラフィに腰をしっかり支えてもらいつつ背中に腕を回してギュッと抱き着いた。
ふわっと香るラフィの香りが心地いい。
そしてラフィがそのまま垂れ下がっていたロープを手に取ると、すぐにビュッと音が鳴って一瞬で下へとついたんだけど────。
「…………ユウジ。着いたけど…大丈夫か?」
腰は抜けてないかと気遣ってくれるラフィはすぐに離したりはせず、ちゃんと確認してからゆっくりと離れてくれた。
(優しい…)
こう言うところが王子だな~なんて思いつつ、嫌味なくできるところが凄いなってやっぱり思ってしまう。
自分も同じ男としてしっかり見習わなければ…!
「その…ありがとう」
「いや。役得だった」
ニコッと笑って言うラフィは絶対女ったらしだと思う。
いい男は何をしても似合うんだなと思いながら、俺は照れ隠しでそのまま歩き出し、ラフィを促しにかかる。
「ほら、ラフィ!早く行こう!」
「ああ。ユウジに似合う服を選ぼうな」
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