12 / 43
Ⅱ.セカンド・コンタクト
11.街だ~!
しおりを挟む
俺はラフィに連れられて取り敢えず以前と同じ部屋に案内され、そこで予め用意されていたこっちでの庶民の服に着替えた。
薄緑の爽やかな色合いのシャツにゆったりとした動きやすいベージュのパンツで、特にコスプレ感はない。
足元は茶色のショートブーツだけど、柔らかい革素材で履き心地も抜群だった。
最後に渡されたバンダナを首に巻けば完成だ。
これは日焼け防止にもなるし、暑い時は頭に巻いてもいいから便利なんだって。
ちなみにラフィは水色のシャツに細身の濃いブルーのパンツですっきり着こなしている。
足元は黒の編み上げブーツでカッコよくきめていて、バンダナもお洒落に首元に巻かれていることから随分慣れている印象を受けた。
これは絶対何度も外に出掛けているに違いない。
でもそのおかげでこうして街に連れて行ってもらえるのだから、俺には否やはなかった。
「じゃ、行くか」
ラフィはそう言うと俺の手を引き窓際まで連れてくると、こっちこっちと言ってスルスルと窓から脱出していく。
え~…俺に出来るかな?
そうは思いながらもこんな機会滅多にないからわくわくして仕方がない。
俺はラフィの降り方をじっくり観察して足場を確認し、落ちたら受け止めるからと言ってくれるラフィの言葉に頷いてから同じように脱出にかかった。
下から小声で「そっちに足かけて!」なんて言われながら頑張ってなんとか降りきるとラフィが満面の笑みでハイタッチをしてくれる。
それを受けてじわじわと達成感が湧き上がり思わず顔が綻んでしまったほどだ。
後は庭を駆け抜け使用人の出入りする通用門から抜け出すだけ────。
「よし。じゃあユウジにもお金渡しておくから、もし迷子になったらこの通用門前で集合な」
それと共に通貨を渡され、大体の説明を受ける。
四角い銀色の小さなものが1アレ。
同じくらい小さい丸い銀色のものが10アレ。
それより一回り大きい銀色の丸いものが100アレ。
このあたりは一円、十円、百円と一緒のようだ。
それから1アレと同じく四角いけど青銅みたいな色合いのものが500アレ。
10アレの青銅バージョンが1000アレ。
100アレの青銅バージョンが5000アレ。
まあそのまんま五百円、千円、五千円と考えるとわかりやすい。
どうやら紙幣って言うのはないらしく、そのまま10,000アレ以降も全部貨幣のようだった。
今回の街歩きでは上にあげたような貨幣で30,000アレ分持たされた。
貰い過ぎじゃないかなと思ったんだけど、どうせ五日いるんだから気にせず使ってほしいって言われた。
しかも足りない分はまた随時渡すからなんて言われて、やっぱり王子だななんて思ってしまった。
太っ腹だ。
でもラフィにそれを言ったら、自分はそれだけ毎日のように仕事をこなしてるんだから当然の対価として受け取っている。それを友人に使って何が悪い、という感じなのだそうだ。
どうやら仕事疲れと共に相当鬱屈が溜まっているらしいので、この辺は触れない方がいいだろう。
とは言え貰いっぱなしは悪いから、今度何かで返せたらなと思ったのだが────。
「あ、そうそう。忘れないうちにコレ」
そう言ってラフィが渡してくれたのは前回俺が給仕として働いた対価だった。
まさか貰えるとは思ってもみなかったので、驚いて固まってしまう。
しかも「全部で三日分。36,000アレあるから」なんてサラッと言われて、それなら最初に受け取った分はいらないって言ったんだけど、いいからいいからと流された。
ラフィは意外と頑固だ。
仕方がないからこれで何かラフィに買ってやろうと思い懐に仕舞った。
え?仕舞えるのかって?
そう!仕舞えるんですよ!
こっちの服はシャツの前合わせが二重になってて、そこを開くと一風変わったポケットになってるんだ。
スリ防止仕様になってる上に結構物も入るから、ここに物を入れて手ぶらで歩いている人も多いらしい。
パンツの方のポケットにもジッパーみたいなのがついてるからそっちに仕舞ってもいいし、本当に便利に作られた服だと思う。
まあ何はともあれ、俺は受け取ったお金を大事にしまってラフィと一緒に城の外へと飛び出した。
さわさわと風に揺れる葉擦れの音を聞きながら街道を歩き街に出る。
そこに広がっていたのは白い壁と鮮やかなブルーの屋根、屋根、屋根!
俺の勝手なイメージで言うと地中海風って感じ?屋根はオレンジじゃないけどね。
どこを見遣っても爽やかな街並みが続いているのは見ていて清々しい。
ちなみに足元も綺麗に敷き詰められた石畳で非常に歩きやすかったりする。
そんな気持ちのいい街並みに人々が行き交い、店には色とりどりの物が売られていて活気があるのがまた楽しい。
店先にあるものは見たことのないものばっかりで、ついつい興味を惹かれてキョロキョロしてしまう。
ラフィはそんな俺を優しく見守りながら、フラフラしてたら危ないからと手を繋いできた。
流石に俺はそこまで子供じゃないと言い返したものの、何度か人にぶつかりそうになったのでラフィからは大笑いされて、結局渋々手を繋ぐ羽目になってしまった。
情けない。
そんな中、俺は一つの店に目が留まった。
所謂雑貨屋だったんだけど、そこに書かれた言葉が気になったんだ。
こっちの言葉は一応俺にも読めるみたいなんだけど、そこには『お好みの魔法付与、致します』と書かれてて、『魔法?!』って思わず食いついてしまった次第だ。
だって魔法って思いっきりファンタジーじゃないか!
この間のポーションもだったけど、異世界って感じがしてすっごく興味が湧いて仕方がない。
だから気づけばラフィに「あの店を見たい!」って言ってたんだ。
そんな俺にラフィは不思議そうにしながらも了承の返事をしてくれて、俺は喜び勇んでその店へと入った。
薄緑の爽やかな色合いのシャツにゆったりとした動きやすいベージュのパンツで、特にコスプレ感はない。
足元は茶色のショートブーツだけど、柔らかい革素材で履き心地も抜群だった。
最後に渡されたバンダナを首に巻けば完成だ。
これは日焼け防止にもなるし、暑い時は頭に巻いてもいいから便利なんだって。
ちなみにラフィは水色のシャツに細身の濃いブルーのパンツですっきり着こなしている。
足元は黒の編み上げブーツでカッコよくきめていて、バンダナもお洒落に首元に巻かれていることから随分慣れている印象を受けた。
これは絶対何度も外に出掛けているに違いない。
でもそのおかげでこうして街に連れて行ってもらえるのだから、俺には否やはなかった。
「じゃ、行くか」
ラフィはそう言うと俺の手を引き窓際まで連れてくると、こっちこっちと言ってスルスルと窓から脱出していく。
え~…俺に出来るかな?
そうは思いながらもこんな機会滅多にないからわくわくして仕方がない。
俺はラフィの降り方をじっくり観察して足場を確認し、落ちたら受け止めるからと言ってくれるラフィの言葉に頷いてから同じように脱出にかかった。
下から小声で「そっちに足かけて!」なんて言われながら頑張ってなんとか降りきるとラフィが満面の笑みでハイタッチをしてくれる。
それを受けてじわじわと達成感が湧き上がり思わず顔が綻んでしまったほどだ。
後は庭を駆け抜け使用人の出入りする通用門から抜け出すだけ────。
「よし。じゃあユウジにもお金渡しておくから、もし迷子になったらこの通用門前で集合な」
それと共に通貨を渡され、大体の説明を受ける。
四角い銀色の小さなものが1アレ。
同じくらい小さい丸い銀色のものが10アレ。
それより一回り大きい銀色の丸いものが100アレ。
このあたりは一円、十円、百円と一緒のようだ。
それから1アレと同じく四角いけど青銅みたいな色合いのものが500アレ。
10アレの青銅バージョンが1000アレ。
100アレの青銅バージョンが5000アレ。
まあそのまんま五百円、千円、五千円と考えるとわかりやすい。
どうやら紙幣って言うのはないらしく、そのまま10,000アレ以降も全部貨幣のようだった。
今回の街歩きでは上にあげたような貨幣で30,000アレ分持たされた。
貰い過ぎじゃないかなと思ったんだけど、どうせ五日いるんだから気にせず使ってほしいって言われた。
しかも足りない分はまた随時渡すからなんて言われて、やっぱり王子だななんて思ってしまった。
太っ腹だ。
でもラフィにそれを言ったら、自分はそれだけ毎日のように仕事をこなしてるんだから当然の対価として受け取っている。それを友人に使って何が悪い、という感じなのだそうだ。
どうやら仕事疲れと共に相当鬱屈が溜まっているらしいので、この辺は触れない方がいいだろう。
とは言え貰いっぱなしは悪いから、今度何かで返せたらなと思ったのだが────。
「あ、そうそう。忘れないうちにコレ」
そう言ってラフィが渡してくれたのは前回俺が給仕として働いた対価だった。
まさか貰えるとは思ってもみなかったので、驚いて固まってしまう。
しかも「全部で三日分。36,000アレあるから」なんてサラッと言われて、それなら最初に受け取った分はいらないって言ったんだけど、いいからいいからと流された。
ラフィは意外と頑固だ。
仕方がないからこれで何かラフィに買ってやろうと思い懐に仕舞った。
え?仕舞えるのかって?
そう!仕舞えるんですよ!
こっちの服はシャツの前合わせが二重になってて、そこを開くと一風変わったポケットになってるんだ。
スリ防止仕様になってる上に結構物も入るから、ここに物を入れて手ぶらで歩いている人も多いらしい。
パンツの方のポケットにもジッパーみたいなのがついてるからそっちに仕舞ってもいいし、本当に便利に作られた服だと思う。
まあ何はともあれ、俺は受け取ったお金を大事にしまってラフィと一緒に城の外へと飛び出した。
さわさわと風に揺れる葉擦れの音を聞きながら街道を歩き街に出る。
そこに広がっていたのは白い壁と鮮やかなブルーの屋根、屋根、屋根!
俺の勝手なイメージで言うと地中海風って感じ?屋根はオレンジじゃないけどね。
どこを見遣っても爽やかな街並みが続いているのは見ていて清々しい。
ちなみに足元も綺麗に敷き詰められた石畳で非常に歩きやすかったりする。
そんな気持ちのいい街並みに人々が行き交い、店には色とりどりの物が売られていて活気があるのがまた楽しい。
店先にあるものは見たことのないものばっかりで、ついつい興味を惹かれてキョロキョロしてしまう。
ラフィはそんな俺を優しく見守りながら、フラフラしてたら危ないからと手を繋いできた。
流石に俺はそこまで子供じゃないと言い返したものの、何度か人にぶつかりそうになったのでラフィからは大笑いされて、結局渋々手を繋ぐ羽目になってしまった。
情けない。
そんな中、俺は一つの店に目が留まった。
所謂雑貨屋だったんだけど、そこに書かれた言葉が気になったんだ。
こっちの言葉は一応俺にも読めるみたいなんだけど、そこには『お好みの魔法付与、致します』と書かれてて、『魔法?!』って思わず食いついてしまった次第だ。
だって魔法って思いっきりファンタジーじゃないか!
この間のポーションもだったけど、異世界って感じがしてすっごく興味が湧いて仕方がない。
だから気づけばラフィに「あの店を見たい!」って言ってたんだ。
そんな俺にラフィは不思議そうにしながらも了承の返事をしてくれて、俺は喜び勇んでその店へと入った。
39
お気に入りに追加
665
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる