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Ⅰ.ファースト・コンタクト
8.初乗馬!
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翌朝、俺は朝食後ラフィの執務室へと案内されて、ラフィの仕事ぶりをまじまじと観察していた。
(うん。すごい)
俺とそう年が変わらないはずなのにサクサクと仕事をこなす姿は本当に凄いの一言だ。
仕事が溜まっているというその言葉の通り、最初は書類が山積みになっていたのに、あっという間に三分の一が消えた。
ちゃんと目を通して仕分けがされているので、俺はそれをちょいちょい執務机の上から別机に用意されている箱に移していくだけの簡単なお仕事に取組み中。
どうやら決済済み書類は関連部署ごとに分けられているようだ。
これなら最後に各所に持っていきやすいだろう。
いや。それとも関連部署の方が取りに来るのかもしれない。
側近が旅に出ているなら間にいる人がいないわけだし、王子が運ぶと言うのもおかしな話だからきっとそうなのだろうと思う。
ちなみに手伝うにあたって機密事項はないのかと一応気にはなったから聞いてみたけど、ここにそういったものは一切ないとのことだった。
そういう重要案件は普通に王にいくのだと言われて妙に納得。
考えてみればそりゃそうだ。
それなら気楽に手伝うよということで俺も動いたりお茶を入れたりしてたんだけど、ラフィの仕事ぶりが優秀だったお陰で昼にはすべて片付いたので拍手したい気持ちになった。
本当にラフィはできる男だ。
「さ、じゃあランチに行こうか」
満面の笑みで俺を見てラフィが清々しく手を差し伸べてくる。
その姿はまさにザ・王子!
でもこれはどうしたらいいんだろう?
握手ならまだしも、まるで女性をエスコートするようにナチュラルに手を差し伸べてくるのはどうかと思う。
「お疲れ。でも俺、女じゃないから…その、そう言うことされても反応に困るんだけど?」
困った顔でそう返すとラフィは目を真ん丸くして不思議そうな顔になった。
「え?でも、場所がわからないだろう?案内するなら別におかしなことじゃないと思うけど?」
それから他国の来賓にも普通にすることだとか言われて目から鱗状態になった。
どうやらこれはこの国では一般的なエスコートの一環だったらしい。
これが庶民と王族の違いか~なんて思いながら俺はそういうことならとラフィの手を取る。
「じゃあ今日はお言葉に甘えて…」
するとラフィがどこか満足そうに笑ってさっさと行こうとばかりに勢いよく手を引き今にも駆け出しそうになった。
どうやら余程仕事から解放されたかったらしく、手を差し伸べたのはそっちの理由の方が大きかったんじゃないかと思わず笑いたくなる。
ラフィらしいと言えばラフィらしい。
それならここは気にするだけ無駄だ。
ラフィが手を差し出して来たら素直に手を取ろうかなと自然に思えた。
厨房で受け取ったランチボックスを手に二人で広い庭へと向かう。
今日は天気も良くて実に気持ちのいい風が吹き抜けていてまさにピクニック日和だ。
それから仲良く一緒に食事をして、いよいよ馬に乗ることになった。
初めて間近で見る馬は思ったよりも大きくて、俺はどうしていいのかわからぬままちょっと離れた位置で様子を見る。
そんな俺にラフィはクスリと笑って怖がらなくてもいいと教えてくれた。
ランチ中にも少し教えてもらったけど、今日乗る馬はラフィの馬で、気性は特に荒いわけでもなく賢い馬なのだとか。
見るからにがっしりとした安定感のある背中で、初心者の俺でも乗りやすそうではあった。
ちなみに名前はロッキーだ。
「ロッキー。今日はよろしく」
俺が思い切ってそう挨拶するとロッキーは優しいつぶらな目でこちらを見て、小さく嘶きを上げた。
なんだか可愛い…。
それから俺はラフィに教えてもらいながらロッキーにまたがり、その横にラフィが歩く形でゆっくりと歩を進め始めた。
馬上は少し高くて最初は怖かったけど慣れたらそうでもなくて、吹き抜ける風を感じながらロッキーの温もりを感じる余裕も出てきた。
鞍や鐙がない分バランスを崩さないよう気をつけないといけないけど、ロッキーは安定感が抜群で、ラフィと話しながら一緒に庭を回っても全く問題はなかった。
乗馬なんてこれまで興味もなかったし知らなかったけど、これはこれで凄く楽しい。
ラフィは慣れたら一緒に馬で出掛けようと言ってくれたけど、これってどれくらい練習したら自分一人で乗れるようになるんだろう?
どう考えても一日では無理だろうな。
でも乗れるようになりたいな~とはちょっと思った。
ラフィと一緒に馬で出掛けたら絶対楽しそうだし。
「そうだな」
もう会えないとは思うけど、また…もしも会えたらその時は一緒に出掛けたい。
そうやって少し物思いに耽っていると、そこに来てほしくない人物がやってくるのが見えた。
「ラフィ!ユウジ!」
笑顔でこちらへとやってきたのは第一王子だ。
そう言えば第一王子の名前はなんて言うんだろう?
前に会った時に聞いていなかった気がする。
そんなことを考えているとラフィが短く舌打ちしたのが聞こえた。
チッて…王子が使ったらアウトなんじゃなかろうか?
まあラフィらしいから良いとは思うけど…。
それよりこの二人、実はすごく仲が悪いのかな?
第一王子の方は物凄くフレンドリーな笑顔を浮かべてるんだけど…そこらへんは俺には読めない。
でもラフィは第一王子が側に来たらちゃんと表情を改めて満面の笑みを浮かべているのだから凄いと思う。
背後に女性の猫かぶりより大きい猫が見える気がするのは気のせいだろうか?
「兄上。どうかなさいましたか?」
にこやかに口火を切り笑む姿はどこからどう見ても完璧無害な王子様。
「いや。昨日ユウジにも言ったんだが、あまりに好みだから夜伽に呼びたいと思ってな。いいだろ?」
なにその軽くもストレートなお誘い!
こんな真昼間から恥ずかしげもなく外で口にしちゃっても大丈夫なものなんだろうか?
世間話?世間話なの?!
俺は戸惑いながらラフィへと視線を向けたけど、ラフィは一切表情を崩してはいない。
これって…どう捉えたらいいんだろう?
昨日守るとは言ってくれていたけど、こんな風に正面からサラッと言われても断れるもんなんだろうか?
「兄上?今すぐ急所を蹴り潰されるのと、マリーナ、コニーとの閨ならどちらがお好みです?」
その言葉に第一王子の笑みが固まった。
一体どうしたんだろう?
ラフィの武闘派発言にびっくりしたのかな?
「そう言えば…ミュンスター侯爵令嬢からお取次ぎも頼まれてましたね。如何です?お会いになりませんか?」
更にそれを聞いた第一王子の顔が一気に青褪め、ふるふると震え始める。
最初の女性達とその侯爵令嬢は何か問題がある人達なんだろうか?
「……きょ、今日は体調が優れないようだから部屋に戻るよ」
「そうですか。お大事にしてくださいと言いたいところですが、俺のところに兄上の書類が紛れ込んでたんですよ。差し戻すのでできればそちらを片付けてからお休みくださいね?」
寒っ!寒いよ!
ラフィの後ろに極寒の嵐が吹き荒れてるのを感じる!
仕事嫌いのラフィに勝手に仕事押し付けちゃまずいだろう?!
確かにラフィは文句なしに優秀だけどさ?可哀想じゃないか!
「以前も言いましたが、以後お気を付けください。俺がついでで終わらせることも多いですが、最近は量も多くて負担なので」
その言葉に第一王子はすんなり頷くかと思いきや、こちらに関しては笑みを浮かべただけでスルーした。
意外と面の皮が厚いぞ、この王子?!
「まあ諸々悪気はないんだ。じゃあ二人とも、邪魔者はこのへんで退散するよ」
また会おうと言いながら手を振り速やかに去っていったけど、もう二度と来ないで欲しい。
追い払ってくれたラフィには感謝の気持ちでいっぱいだ。
(でも…あの人が呼び出してくれなかったら俺、ラフィにも会えなかったんだよな…)
そう考えるとちょっとだけ感謝の気持ちもあったりなかったり。
俺は取り敢えずラフィに笑顔を向けて、お礼を言うとまた楽しい乗馬タイムへと戻った。
折角の貴重な残り時間だ。
ラフィとの友情を温めようと思いながらカポカポと馬の背で揺られていた。
(うん。すごい)
俺とそう年が変わらないはずなのにサクサクと仕事をこなす姿は本当に凄いの一言だ。
仕事が溜まっているというその言葉の通り、最初は書類が山積みになっていたのに、あっという間に三分の一が消えた。
ちゃんと目を通して仕分けがされているので、俺はそれをちょいちょい執務机の上から別机に用意されている箱に移していくだけの簡単なお仕事に取組み中。
どうやら決済済み書類は関連部署ごとに分けられているようだ。
これなら最後に各所に持っていきやすいだろう。
いや。それとも関連部署の方が取りに来るのかもしれない。
側近が旅に出ているなら間にいる人がいないわけだし、王子が運ぶと言うのもおかしな話だからきっとそうなのだろうと思う。
ちなみに手伝うにあたって機密事項はないのかと一応気にはなったから聞いてみたけど、ここにそういったものは一切ないとのことだった。
そういう重要案件は普通に王にいくのだと言われて妙に納得。
考えてみればそりゃそうだ。
それなら気楽に手伝うよということで俺も動いたりお茶を入れたりしてたんだけど、ラフィの仕事ぶりが優秀だったお陰で昼にはすべて片付いたので拍手したい気持ちになった。
本当にラフィはできる男だ。
「さ、じゃあランチに行こうか」
満面の笑みで俺を見てラフィが清々しく手を差し伸べてくる。
その姿はまさにザ・王子!
でもこれはどうしたらいいんだろう?
握手ならまだしも、まるで女性をエスコートするようにナチュラルに手を差し伸べてくるのはどうかと思う。
「お疲れ。でも俺、女じゃないから…その、そう言うことされても反応に困るんだけど?」
困った顔でそう返すとラフィは目を真ん丸くして不思議そうな顔になった。
「え?でも、場所がわからないだろう?案内するなら別におかしなことじゃないと思うけど?」
それから他国の来賓にも普通にすることだとか言われて目から鱗状態になった。
どうやらこれはこの国では一般的なエスコートの一環だったらしい。
これが庶民と王族の違いか~なんて思いながら俺はそういうことならとラフィの手を取る。
「じゃあ今日はお言葉に甘えて…」
するとラフィがどこか満足そうに笑ってさっさと行こうとばかりに勢いよく手を引き今にも駆け出しそうになった。
どうやら余程仕事から解放されたかったらしく、手を差し伸べたのはそっちの理由の方が大きかったんじゃないかと思わず笑いたくなる。
ラフィらしいと言えばラフィらしい。
それならここは気にするだけ無駄だ。
ラフィが手を差し出して来たら素直に手を取ろうかなと自然に思えた。
厨房で受け取ったランチボックスを手に二人で広い庭へと向かう。
今日は天気も良くて実に気持ちのいい風が吹き抜けていてまさにピクニック日和だ。
それから仲良く一緒に食事をして、いよいよ馬に乗ることになった。
初めて間近で見る馬は思ったよりも大きくて、俺はどうしていいのかわからぬままちょっと離れた位置で様子を見る。
そんな俺にラフィはクスリと笑って怖がらなくてもいいと教えてくれた。
ランチ中にも少し教えてもらったけど、今日乗る馬はラフィの馬で、気性は特に荒いわけでもなく賢い馬なのだとか。
見るからにがっしりとした安定感のある背中で、初心者の俺でも乗りやすそうではあった。
ちなみに名前はロッキーだ。
「ロッキー。今日はよろしく」
俺が思い切ってそう挨拶するとロッキーは優しいつぶらな目でこちらを見て、小さく嘶きを上げた。
なんだか可愛い…。
それから俺はラフィに教えてもらいながらロッキーにまたがり、その横にラフィが歩く形でゆっくりと歩を進め始めた。
馬上は少し高くて最初は怖かったけど慣れたらそうでもなくて、吹き抜ける風を感じながらロッキーの温もりを感じる余裕も出てきた。
鞍や鐙がない分バランスを崩さないよう気をつけないといけないけど、ロッキーは安定感が抜群で、ラフィと話しながら一緒に庭を回っても全く問題はなかった。
乗馬なんてこれまで興味もなかったし知らなかったけど、これはこれで凄く楽しい。
ラフィは慣れたら一緒に馬で出掛けようと言ってくれたけど、これってどれくらい練習したら自分一人で乗れるようになるんだろう?
どう考えても一日では無理だろうな。
でも乗れるようになりたいな~とはちょっと思った。
ラフィと一緒に馬で出掛けたら絶対楽しそうだし。
「そうだな」
もう会えないとは思うけど、また…もしも会えたらその時は一緒に出掛けたい。
そうやって少し物思いに耽っていると、そこに来てほしくない人物がやってくるのが見えた。
「ラフィ!ユウジ!」
笑顔でこちらへとやってきたのは第一王子だ。
そう言えば第一王子の名前はなんて言うんだろう?
前に会った時に聞いていなかった気がする。
そんなことを考えているとラフィが短く舌打ちしたのが聞こえた。
チッて…王子が使ったらアウトなんじゃなかろうか?
まあラフィらしいから良いとは思うけど…。
それよりこの二人、実はすごく仲が悪いのかな?
第一王子の方は物凄くフレンドリーな笑顔を浮かべてるんだけど…そこらへんは俺には読めない。
でもラフィは第一王子が側に来たらちゃんと表情を改めて満面の笑みを浮かべているのだから凄いと思う。
背後に女性の猫かぶりより大きい猫が見える気がするのは気のせいだろうか?
「兄上。どうかなさいましたか?」
にこやかに口火を切り笑む姿はどこからどう見ても完璧無害な王子様。
「いや。昨日ユウジにも言ったんだが、あまりに好みだから夜伽に呼びたいと思ってな。いいだろ?」
なにその軽くもストレートなお誘い!
こんな真昼間から恥ずかしげもなく外で口にしちゃっても大丈夫なものなんだろうか?
世間話?世間話なの?!
俺は戸惑いながらラフィへと視線を向けたけど、ラフィは一切表情を崩してはいない。
これって…どう捉えたらいいんだろう?
昨日守るとは言ってくれていたけど、こんな風に正面からサラッと言われても断れるもんなんだろうか?
「兄上?今すぐ急所を蹴り潰されるのと、マリーナ、コニーとの閨ならどちらがお好みです?」
その言葉に第一王子の笑みが固まった。
一体どうしたんだろう?
ラフィの武闘派発言にびっくりしたのかな?
「そう言えば…ミュンスター侯爵令嬢からお取次ぎも頼まれてましたね。如何です?お会いになりませんか?」
更にそれを聞いた第一王子の顔が一気に青褪め、ふるふると震え始める。
最初の女性達とその侯爵令嬢は何か問題がある人達なんだろうか?
「……きょ、今日は体調が優れないようだから部屋に戻るよ」
「そうですか。お大事にしてくださいと言いたいところですが、俺のところに兄上の書類が紛れ込んでたんですよ。差し戻すのでできればそちらを片付けてからお休みくださいね?」
寒っ!寒いよ!
ラフィの後ろに極寒の嵐が吹き荒れてるのを感じる!
仕事嫌いのラフィに勝手に仕事押し付けちゃまずいだろう?!
確かにラフィは文句なしに優秀だけどさ?可哀想じゃないか!
「以前も言いましたが、以後お気を付けください。俺がついでで終わらせることも多いですが、最近は量も多くて負担なので」
その言葉に第一王子はすんなり頷くかと思いきや、こちらに関しては笑みを浮かべただけでスルーした。
意外と面の皮が厚いぞ、この王子?!
「まあ諸々悪気はないんだ。じゃあ二人とも、邪魔者はこのへんで退散するよ」
また会おうと言いながら手を振り速やかに去っていったけど、もう二度と来ないで欲しい。
追い払ってくれたラフィには感謝の気持ちでいっぱいだ。
(でも…あの人が呼び出してくれなかったら俺、ラフィにも会えなかったんだよな…)
そう考えるとちょっとだけ感謝の気持ちもあったりなかったり。
俺は取り敢えずラフィに笑顔を向けて、お礼を言うとまた楽しい乗馬タイムへと戻った。
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