【完結】攻略対象×攻略対象はありですか?

オレンジペコ

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【ダレス視点】

4.火遊びの終わりを嘆く

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「身体怠い…」

今日も学園に行かないといけないのに、俺はノルに抱かれ過ぎて全く動けなかった。
声も喘ぎ過ぎて掠れてるし、本当に辛い。

「ダリィ。ほら、口開けて?」

ノルが嬉しそうに俺の口へと朝食を運んでくる。
寝起きに水って言ったら口移しで飲まされたし、なんだか如何にも後朝きぬぎぬって感じで甘々な空気が気恥ずかしい。

因みに今日は流石に悪いと思ったのかノルも俺に付き合って学園を休み、こうして俺の面倒を見てくれている。
甲斐甲斐しく世話をしてくれるのはありがたいけど、これって火遊びって言うんだろうか?
なんかこれじゃあ火遊びじゃなくただの恋人同士のような気が…。
ノルの家の人は誰も何も言わないんだろうか?
けれど結局何も言われることなく休ませてもらい、夕刻城に帰ってからも特に誰からも何も言われなかった。
変なの。




それから俺達の仲はどんどん深まって、卒業が近づく頃にはすっかりいつも一緒に居るのが当たり前になっていて、人に囲まれる時も常に一緒だった。
王子と宰相の息子だから別に一緒でも全くおかしくはないし、今のうちにコネを作りたい相手は嬉々として向こうからやってくる為、二人でイチャイチャしたくなったら皆の目を逃れ、人けのない場所へと避難し火遊びに精を出す。
恋人同士のようでちょっと違う、そんな二人のスリリングな関係はずっと円満に続いていた。

でもそれももうすぐおしまいだ。
そもそも『火遊び』という話から始まった関係だから。
学園を卒業して将来の王と将来の宰相として正しい関係を築き直さないといけない。
それなのに……。

「どうしてこんなに辛いかな…」

ノルとの関係が終わってしまうのだと考えるだけで胸が張り裂けそうなほど辛くなった。

(言っても仕方のないことなのに…)

辛くて辛くて自室で机に突っ伏していたら、いきなり弟がやってきて何をしてるんだと聞いてきた。

「兄上。体調でも悪いんですか?」
「いや…恋の終わりが見えて胸が痛いだけ…」
「は?」
「はぁ……俺、暫く旅にでも出ようかな?」
「…………ちなみにお一人で?」
「そりゃそうだろ」
「……最初に行く場所はもう決めてます?」
「そうだな…ポップタウンあたりかな。楽しい街だって聞いたことがあるし、気分転換にはいいかもな」
「ポップタウンですか。一人旅には確かにいいかもしれませんね」
「ああ。わかったら出て行ってくれ」
「わかりました。ああ兄上。卒業してすぐ飛び出さないでくださいよ?旅の資金は俺が用意しておくので、必ず受け取りに来てください」
「資金を?」
「ええ」
「わかった」

そう言って俺は弟を見送ったのだった。


***


「卒業おめでとうございます!」

すぐ下の下級生達に見送られ、俺達は今日この学園を去る。
最後にノルとちゃんと話すべきかとその姿を探すけど、誰かに呼び出されでもしたのか、見える範囲にはどこにも見当たらなかった。

(でもきっと…これで良かったのかも)

多分面と向かって別れ話をしたら泣いてしまうと思うから。俺が。

「色々あったもんな…」

この一年半の間、観劇に行ったのなんて最早数え切れないほどだし、街デートも山程やった。
休みには遠駆けにも行って帰りはノルの部屋でお泊り。
場所を問わず沢山ノルとは抱き合ったし、愛されてるんじゃないかと錯覚するほど情熱的に求めてもらった。
経験だってかなり色々積んだと思う。
でも、それもこれも全部学生の時にだけ許された火遊びだったのだ。
もう二度と…ノルに抱かれることもない。

(ああ…俺、火遊びなんかじゃなく本気になってたんだな…)

そんな感傷に浸っているところへ、自分の方へと近づいてくる誰かの足音に気づきゆっくりと顔を上げる。
そこに立っていたのは自分の婚約者であるカトリーヌだった。
逃げられ続けていたせいで長らく顔を合わせていなかったが、どうかしたんだろうか?
そう首を傾げていると、彼女は俺をキッと見つめ、突如ビシッとこちらを指差し言い放ってきた。

「ダレス殿下!貴方との婚約を今この場にて破棄させていただきますわ!」

悪役令嬢からの逆婚約破棄。
多分普通なら凄くショックだっただろうし、ノルと火遊びをしていなかったら愕然とその場に立ち尽くしてしまったと思う。
でも今の俺の心は全くの別件でいっぱいだったから、ただ一言『そうか』とだけ口にした。

「……?」

俺がそれしか反応を示さなかったからか、彼女は訝しげな顔でこちらを見てきたけど、俺は正直どうでも良かったから薄く笑って言葉を足した。

「話はそれだけか?」
「え?あ、ふ、不貞を働いたのは貴方ですから、家を潰したり悪質なことはなさらないでくださいませ!」
「そんな事はしないよ。カトリーヌ、幸せになってくれ」

『それじゃあ』と言って俺はそのままその場から立ち去っていく。
婚約者から婚約破棄を突きつけられるより、ノルとの別れの方が辛いってかなりの重症だと思う。
泣きたい。
もう早いこと旅に出てしまいたいし、さっさと旅の資金を受け取りに弟のところへ行こう。
そう思いながら帰りの馬車へと乗り込んだ。
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