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【ダレス視点】
2.火遊びの始まり
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「それで?具体的には何をするんだ?」
俺は提案してきたノルディックにそう尋ねてみる。
「そうですね…火遊びの恋人を作るにはまず親しくならないといけないので、取り敢えず練習として俺と気さくな口調で話すところからやってみますか?」
「なるほど」
「後は愛称とか、親しい呼び名で呼ぶとか…」
「一理あるな。じゃあ取り敢えず、ノルディって呼んでいいか?」
「ええ。じゃあ俺は…」
「ダレスでいいけど…そうだな、呼び捨てが難しいならダリィでどうだ?」
「ダリィ…」
「ああ」
「じゃあ俺も…ノルでいい」
「ノル?」
「ああ」
口調も砕けてなんだかこれだけで結構いい感じに距離が近づいた気がする。
「よし!じゃあ次はどうする?女性が喜びそうな場所でも探すか?」
シュミレーションと言うからにはやっぱりそう言う場所をチェックしておくべきだろうと思って、嬉々としてノルに話を振ってみたら、実に的確な答えが返ってきた。
「ああ、そうだな。確か今有名な歌劇団が王都の劇場に来てて、令嬢達に人気らしいんだ」
「へえ…どんな演目が人気なんだろう?」
「それが意外にも決闘シーンが見所の恋愛活劇らしい」
「決闘シーン?!」
それはちょっと観てみたい気がする。
「いいな!ちょっと見てみたい」
「それなら今日こっそり学園が終わってから二人で行ってみようか?」
「今日か…。うん!今日は帰ってからの剣術の稽古も入ってないし、勉強も自主学の日だから夜に回せる。大丈夫だ」
「そうか。じゃあまた後で」
「ああ。ありがとうな」
(凄い!俺に友達ができた!)
去っていくノルの背を見送りながら俺はウキウキした気持ちで初めての友人に歓喜した。
思えば当り障りなくチヤホヤしてくる相手は掃いて捨てるほどいたけど、こんな風に距離が近くて愛称で呼び合うような仲の良い友人なんて一人もいなかった。
皆俺が第一王子だから上辺だけで近づいて持ち上げてただけだ。
まあノルも将来の王と宰相候補としてとは言っていたけど、他の奴らとは距離感が全く違う。
これはもう友達と言っていいんじゃないだろうか?
だってそうでもなければ提案だけで話は終わって、放課後にわざわざ芝居を観に行こうなんてことにはならないはずだし。
「楽しみだな」
学生なんだし恋愛だけじゃなく友情だって育みたい。
「やった!」
そうして俺はすっかり気分も浮上し、機嫌よくその日を過ごして放課後に思いを馳せた。
***
ノルと二人で馬車に乗り劇場へと向かう。
制服で出掛けるなんて転生後初めての事でドキドキする。
王子として生きてきて、常に場に相応しい服装をと言われて育ったからかなんだか悪い事をしているような気になるな。
そんな事を考えながら劇場に到着し、ノルがチケットを買ってきてくれて、そのまま個室シートへと案内された。
第一王子と宰相の息子だし、まあ安全面とかも考えてそうしてくれたんだろう。
ちゃんと警備員までつけてくれているし、とても親切だ。
そうして落ち着いた席で俺達は劇を観始めたんだけど……。
「う……」
「ダリィ。そこまで泣くか?」
「だ、だって…。あの二人、滅茶苦茶可哀想で……」
「将来の王がそんなに感情的になるなんて…しょうがないな」
不覚にも感情移入しすぎて泣いてしまった。
両片思いが切なくて涙が止まらない俺をノルが呆れたように見ながらもそっと抱き寄せて落ち着かせてくれる。
「ほら」
「うぅ……。ノルの優しさが身にしみる」
「ダリィ…そんなに無防備でよくこれまで大丈夫だったな」
「え?」
「無防備すぎて心配になる」
「そうか?」
そんなに無防備なつもりはないんだけど。
ああでも確かにこんな俺を見れば王宮の古狸達に利用されたり付け込まれたりしないか不安になったとしてもおかしくはないな。
でも俺だってちゃんと教育は受けてるし、城にいる時がこんな風になったりしないぞ?
「う~ん…(友達の)ノルの前だからじゃないかな」
だからそう言ったのに「そう言うところが…」って言われて、何故か気づけば唇が重なっていた。
「ノ…ル?」
「ん…黙って」
ノルはそう言って、俺を見つめながら何度も唇を重ねてくる。
ゆったりと味わうように、何度も降りてきては重なる唇。
(あ…れ…?)
おかしいなとは思う。
でも慰めるようにゆったりと唇を重ねられると、何故かそういうものなのかとすんなり受け入れてしまっている自分が居て…。
「あ…ん…」
「ふ…可愛い。ダリィ。立派な火遊びになったな」
そんな言葉にハッと我に返った。
(そう言えばそうだった……)
婚約者にもヒロインにも相手にしてもらえなかったって話して、ノルが自分と火遊びシュミレーションでもしてみる?って言ってくれたんだった。
そもそも友達になろうって言われたわけじゃなかったと思い出し、一気に顔に熱がたまる。
(確かにこれは火遊びだ)
でも相手は可愛い女の子じゃなく、同性のノル。
普通なら嫌悪感を抱いてもおかしくはない。
なのに、何故か俺は自然にノルからのキスを受け入れてしまっていた。
何でだろう?
そう思いながらぼんやりしていたら、ノルに無防備過ぎって笑われて、また何度もキスされてしまった。
「ん…ぅ。ノル…」
気づけばどんどんキスは深くなっていて、俺はノルの背に腕を回していたし、ノルも俺の頭を掻き抱くように引き寄せ何度も角度を変えてキスをしていた。
俺は提案してきたノルディックにそう尋ねてみる。
「そうですね…火遊びの恋人を作るにはまず親しくならないといけないので、取り敢えず練習として俺と気さくな口調で話すところからやってみますか?」
「なるほど」
「後は愛称とか、親しい呼び名で呼ぶとか…」
「一理あるな。じゃあ取り敢えず、ノルディって呼んでいいか?」
「ええ。じゃあ俺は…」
「ダレスでいいけど…そうだな、呼び捨てが難しいならダリィでどうだ?」
「ダリィ…」
「ああ」
「じゃあ俺も…ノルでいい」
「ノル?」
「ああ」
口調も砕けてなんだかこれだけで結構いい感じに距離が近づいた気がする。
「よし!じゃあ次はどうする?女性が喜びそうな場所でも探すか?」
シュミレーションと言うからにはやっぱりそう言う場所をチェックしておくべきだろうと思って、嬉々としてノルに話を振ってみたら、実に的確な答えが返ってきた。
「ああ、そうだな。確か今有名な歌劇団が王都の劇場に来てて、令嬢達に人気らしいんだ」
「へえ…どんな演目が人気なんだろう?」
「それが意外にも決闘シーンが見所の恋愛活劇らしい」
「決闘シーン?!」
それはちょっと観てみたい気がする。
「いいな!ちょっと見てみたい」
「それなら今日こっそり学園が終わってから二人で行ってみようか?」
「今日か…。うん!今日は帰ってからの剣術の稽古も入ってないし、勉強も自主学の日だから夜に回せる。大丈夫だ」
「そうか。じゃあまた後で」
「ああ。ありがとうな」
(凄い!俺に友達ができた!)
去っていくノルの背を見送りながら俺はウキウキした気持ちで初めての友人に歓喜した。
思えば当り障りなくチヤホヤしてくる相手は掃いて捨てるほどいたけど、こんな風に距離が近くて愛称で呼び合うような仲の良い友人なんて一人もいなかった。
皆俺が第一王子だから上辺だけで近づいて持ち上げてただけだ。
まあノルも将来の王と宰相候補としてとは言っていたけど、他の奴らとは距離感が全く違う。
これはもう友達と言っていいんじゃないだろうか?
だってそうでもなければ提案だけで話は終わって、放課後にわざわざ芝居を観に行こうなんてことにはならないはずだし。
「楽しみだな」
学生なんだし恋愛だけじゃなく友情だって育みたい。
「やった!」
そうして俺はすっかり気分も浮上し、機嫌よくその日を過ごして放課後に思いを馳せた。
***
ノルと二人で馬車に乗り劇場へと向かう。
制服で出掛けるなんて転生後初めての事でドキドキする。
王子として生きてきて、常に場に相応しい服装をと言われて育ったからかなんだか悪い事をしているような気になるな。
そんな事を考えながら劇場に到着し、ノルがチケットを買ってきてくれて、そのまま個室シートへと案内された。
第一王子と宰相の息子だし、まあ安全面とかも考えてそうしてくれたんだろう。
ちゃんと警備員までつけてくれているし、とても親切だ。
そうして落ち着いた席で俺達は劇を観始めたんだけど……。
「う……」
「ダリィ。そこまで泣くか?」
「だ、だって…。あの二人、滅茶苦茶可哀想で……」
「将来の王がそんなに感情的になるなんて…しょうがないな」
不覚にも感情移入しすぎて泣いてしまった。
両片思いが切なくて涙が止まらない俺をノルが呆れたように見ながらもそっと抱き寄せて落ち着かせてくれる。
「ほら」
「うぅ……。ノルの優しさが身にしみる」
「ダリィ…そんなに無防備でよくこれまで大丈夫だったな」
「え?」
「無防備すぎて心配になる」
「そうか?」
そんなに無防備なつもりはないんだけど。
ああでも確かにこんな俺を見れば王宮の古狸達に利用されたり付け込まれたりしないか不安になったとしてもおかしくはないな。
でも俺だってちゃんと教育は受けてるし、城にいる時がこんな風になったりしないぞ?
「う~ん…(友達の)ノルの前だからじゃないかな」
だからそう言ったのに「そう言うところが…」って言われて、何故か気づけば唇が重なっていた。
「ノ…ル?」
「ん…黙って」
ノルはそう言って、俺を見つめながら何度も唇を重ねてくる。
ゆったりと味わうように、何度も降りてきては重なる唇。
(あ…れ…?)
おかしいなとは思う。
でも慰めるようにゆったりと唇を重ねられると、何故かそういうものなのかとすんなり受け入れてしまっている自分が居て…。
「あ…ん…」
「ふ…可愛い。ダリィ。立派な火遊びになったな」
そんな言葉にハッと我に返った。
(そう言えばそうだった……)
婚約者にもヒロインにも相手にしてもらえなかったって話して、ノルが自分と火遊びシュミレーションでもしてみる?って言ってくれたんだった。
そもそも友達になろうって言われたわけじゃなかったと思い出し、一気に顔に熱がたまる。
(確かにこれは火遊びだ)
でも相手は可愛い女の子じゃなく、同性のノル。
普通なら嫌悪感を抱いてもおかしくはない。
なのに、何故か俺は自然にノルからのキスを受け入れてしまっていた。
何でだろう?
そう思いながらぼんやりしていたら、ノルに無防備過ぎって笑われて、また何度もキスされてしまった。
「ん…ぅ。ノル…」
気づけばどんどんキスは深くなっていて、俺はノルの背に腕を回していたし、ノルも俺の頭を掻き抱くように引き寄せ何度も角度を変えてキスをしていた。
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