【完結】攻略対象×攻略対象はありですか?

オレンジペコ

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【ダレス視点】

1.Wで避けられる

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俺はここラクサノーラ国の第一王子 ダレス。
実は転生者で、ここは姉がゲームしていた『青春トキメキbox』とか言うよくわからないタイトルの乙女ゲームに酷似した世界だった。
何故俺が詳しいかと言うと、姉が選択肢に迷ったら逐一俺に聞いてきていたから。
全クリしたいけど前にどの選択肢にしたか覚えてないのよと言って、横で見て俺に覚えておいてほしいなんてお願いしてきた。
お礼に俺が欲しがってたバトル系のゲームを買ってあげるからと言われたので割と本気で手伝った覚えがある。
だから選択肢はほぼ覚えているし、各キャラについても詳しかった。
そんな俺が覚えている攻略キャラは五人。
俺が転生したこの第一王子ダレスがメインの攻略キャラで、後はよくある宰相の息子、騎士団長の息子、魔法騎士団長の息子、俺の従弟でもある公爵家の嫡男と言った感じ。
因みにダレスは偉そうな俺様キャラだったと思う。
と言っても俺はそう言う性格じゃないから、この時点でゲームとは違ってるんだけど。
平均的に何でもこなすオールラウンダーといった感じの所はゲームと同じなんだけど、性格は俺様ではない。
何だろう?品行方正な生徒会長みたいな感じ?
前世の記憶が戻ったのも幼少期だし、特に取ってつけたような感じでもなく、全部まとめて俺は俺って感じ。

一応後輩受けもいいし、人気はあると思う。
王子なだけあって如何にも主役と言ったところか。
だから俺は自分が幸せになると信じて疑わなかった。

ここが青春トキメキbox(通称:トキボ)の世界だと思い至ってから、ヒロインに会える日を今か今かと楽しみにしてたんだ。
ヒロインがこの学園に来るのは二年になったあたり。
身分は伯爵の庶子で、金の髪に金の混じった緑の瞳を持つ清楚系の可愛らしい女の子。
性格も明るくてモロ俺好み。
なんでも頑張って器用にこなす系の子だから会ったらすぐに好感が持てるはず。
そう思っていたのに────。

「どうしてそんなに避けられてるんだろう?」

そう。学校で彼女と顔を合わせて以来、猛烈に避けられている。
そりゃもうあからさまに。
ちょっと遠目に俺の姿が視界に入るだけで逃げるって、なんでだ?!
別に俺は何もしてないのに、なんだかとっても理不尽なものを感じてしまう。
もしかして彼女も転生者なのかもしれないけど、それならそれで話してみたいのにそれさえままならない。
けれど俺はここでハッと気が付いた。

(もしかして悪役令嬢が主役なパターンか?!)

ネット小説でよくあるそちらの可能性もなくはない。
もしそちらの方だとすると、ヒロインである彼女は断罪される側なので、俺から逃げるというのは非常に合理的だ。
そもそも関わり合いにならなければ身の安全は保障されるのだから。

「むぅ。仕方がない」

こうなったら悪役令嬢であろう自身の婚約者に突撃してみようか。
一応これまでそれなりに交流はしてきたし、誕生日などにはちゃんと贈り物だってしてきた。
だから普通に会うのは会えるはず。
そう思って先触れを出したものの、返ってきたのは面会不可との返事。
なんでもここ暫く急に体調を崩しがちになってしまったらしい。
お見舞いを申し入れてもご遠慮くださいとのこと。
その後何度か会おうとしたけど、結局理由をつけては断られ続けた。

(え────?)

これってもしかして、悪役令嬢も転生者パターンなのか?
断罪されたくないなら会わなきゃいいじゃない…って?
俺はそう考えて思わず遠い目になってしまった。
この分だと婚約が解消されるのも時間の問題ではないだろうか?

正直言ってこのパターンは全く考えてもいなかった。

(まさかヒロインにも悪役令嬢にも構ってもらえないなんて…)

ガクッと崩れ落ちた俺は悪くないと思う。
別に婚約解消になると言うなら他の令嬢でもいいんだけど、いいんだけどさ?
なんだろう?この遣る瀬無い気分。

「折角王子に生まれ変わったのに…」

あまりにも悲しすぎる。
そう思って打ちひしがれてベンチで撃沈していたら、何故かこれまであまり接点がなかった宰相の息子であるノルディックが話しかけてきた。

「ダレス王子」
「……ノルディックか」
「どうかされましたか?酷く打ちひしがれているような…」
「俺は今、人生の岐路に立っているんだ。放っておいてくれ」
「人生の岐路?」
「ああ」

いいから行けと言って追い払おうとしたら、ノルディックはそう言わずに話してみてはと言ってきた。

「将来の王と宰相候補なんですから気軽に話してみてください。いい機会ですし、場合によっては力になりますよ?」

そうやって笑顔で促されて、なんだかその優しさが胸に沁みた。

「そうか」

ならここだけの話でと、掻い摘んで事の次第を話してみる。
もちろん転生云々なんて言わない。
普通に婚約者と好みの娘の両方に避けられたという話だ。

「つまり、学生のうちに火遊びをしようとして失敗して、それなら婚約者を大事にしようと心を入れ替えたけど、そっちも失敗して落ち込んでいたと…?」
「そうだ」

こうして簡潔にまとめられると物凄くダメな奴だな俺は。
けれどノルディックはそんな俺を笑わなかった。

「なるほど。わかりました」

そして何故か笑顔でこう言い放ったのだ。

「それなら俺と一緒に火遊びシュミレーションでもしてみませんか?」

この時の俺は多分ちょっと凹みすぎておかしかったんだと思う。
だって……その提案を何故か物凄く『これだ!』と思ってしまい、一も二もなく飛びついてしまったのだから。
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