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瞳
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ガラッ
「失礼します!」
「はい、どうぞ~」
「先生!湊人が熱いお茶を顔にかけられたんです!」
「お茶を⁉︎ここに座って!」
「はい、タオル外してー。あら、噂の藤崎くんじゃない。」
「お願いします、佐々木先生。」
佐々木先生は保健医だ。儚げな美人であるがれっきとした男性である。口調が女性的なのでどことなく倒錯的な人物だ。風紀の仕事中に負傷者を連れてくることも多いので佐々木先生とはよく話す。
「ちょっと見せてね~。まあ!あなた、綺麗な目をしてるわね。アース・アイって言うんでしょ。そういうの。うーん、火傷とかは大丈夫そうね。まあでも念のため少し冷やしておきましょうか。目にはお茶入ったの?」
「はい、少し入りました。」
「見え方とかには支障ないかしら。」
「はい。目に入ったといってもほとんど熱くありませんでしたから。」
「じゃあ大丈夫かしらねぇ。目は洗っていきましょう。もし異変があったら病院行くのよ。でもコンタクトはやめておきましょうね。」
そんなぁ、と響也が後ろでつぶやいている。
「分かりました。」
*********
生徒会室に行くとあいつらがいるかもしれないということで風紀室にやってきた。昼は見回りの時間なので皆出払っている。
「はぁ、見られたよね、湊人の瞳。」
「見られただろうな。」
俺の瞳は少し特徴的な色合いをしている。虹彩は基本的に真っ青なのだが、瞳孔の周りだけ黄色やオレンジが混ざった色になっている。それが海と陸を表しているようなのでアース・アイと呼ばれているのだ。母方の祖母がイギリス出身で碧眼なのが関係しているのだと思う。
「僕だけの地球なのに……。」
「恥ずかしい言い方するなよ。」
響也は俺の瞳が特にお気に入りらしい。学園に入学するときには黒のカラコンを使って隠すように言われたくらいだ。
「誰にも知られたくなかった。僕だけが知っていればよかったんだ。ここのとこうまくいかないことだらけだ。」
むぅ、とむくれている。生徒たちの前では真面目で完璧な生徒会長だが、俺の前では子供っぽい表情も見せてくれる。気を許してくれているようでそれが本当に嬉しい。本人には言わないけれど。
「生徒会はぐちゃぐちゃになっちゃうし、湊人は人前に出ちゃうし。僕は湊人が過ごしやすい学園を作りたいのに。」
「響也はいい会長だよ。響也が会長になってから制裁の数が激減したんだ。」
「それは湊人が風紀委員長だからでしょ。」
「そうかなぁ。風紀は問題が起きたときに対処することしかできないから。あと各委員会の委員長が仕事しやすくなったってさ。」
「ふふ、ありがとね。」
「響也はあいつらのことどうするつもりなんだ?」
「結局謝りに来なかったからね。生徒会からは外すつもりだよ。みんな能力は高いから惜しいけど。さすがに制裁を指示するような人たちを生徒会にはしておけないよ。」
「だよな。」
「風紀に迷惑かけちゃうかもだけど、ごめんね。もっといい学園にするから。」
まっすぐ顔を見据えられた。響也はいつも真剣だ。学園をよくしようとしている。それが俺のため、なんて言ってしまうのは自惚れかもだけど、俺のことも大切にしてくれている。
「湊人の瞳、吸い込まれそう。すごく好きだ…。」
「響也…。」
どちらからともなく顔が近づいていく。
ガチャ
「藤崎!いるか?」
「委員長!大丈夫ですか?」
空気が固まった。
「おっと、邪魔したな。すまない」
「あの…、ごめんなさい。」
ここで入ってくるなよ。響也、舌打ちするな。
「失礼します!」
「はい、どうぞ~」
「先生!湊人が熱いお茶を顔にかけられたんです!」
「お茶を⁉︎ここに座って!」
「はい、タオル外してー。あら、噂の藤崎くんじゃない。」
「お願いします、佐々木先生。」
佐々木先生は保健医だ。儚げな美人であるがれっきとした男性である。口調が女性的なのでどことなく倒錯的な人物だ。風紀の仕事中に負傷者を連れてくることも多いので佐々木先生とはよく話す。
「ちょっと見せてね~。まあ!あなた、綺麗な目をしてるわね。アース・アイって言うんでしょ。そういうの。うーん、火傷とかは大丈夫そうね。まあでも念のため少し冷やしておきましょうか。目にはお茶入ったの?」
「はい、少し入りました。」
「見え方とかには支障ないかしら。」
「はい。目に入ったといってもほとんど熱くありませんでしたから。」
「じゃあ大丈夫かしらねぇ。目は洗っていきましょう。もし異変があったら病院行くのよ。でもコンタクトはやめておきましょうね。」
そんなぁ、と響也が後ろでつぶやいている。
「分かりました。」
*********
生徒会室に行くとあいつらがいるかもしれないということで風紀室にやってきた。昼は見回りの時間なので皆出払っている。
「はぁ、見られたよね、湊人の瞳。」
「見られただろうな。」
俺の瞳は少し特徴的な色合いをしている。虹彩は基本的に真っ青なのだが、瞳孔の周りだけ黄色やオレンジが混ざった色になっている。それが海と陸を表しているようなのでアース・アイと呼ばれているのだ。母方の祖母がイギリス出身で碧眼なのが関係しているのだと思う。
「僕だけの地球なのに……。」
「恥ずかしい言い方するなよ。」
響也は俺の瞳が特にお気に入りらしい。学園に入学するときには黒のカラコンを使って隠すように言われたくらいだ。
「誰にも知られたくなかった。僕だけが知っていればよかったんだ。ここのとこうまくいかないことだらけだ。」
むぅ、とむくれている。生徒たちの前では真面目で完璧な生徒会長だが、俺の前では子供っぽい表情も見せてくれる。気を許してくれているようでそれが本当に嬉しい。本人には言わないけれど。
「生徒会はぐちゃぐちゃになっちゃうし、湊人は人前に出ちゃうし。僕は湊人が過ごしやすい学園を作りたいのに。」
「響也はいい会長だよ。響也が会長になってから制裁の数が激減したんだ。」
「それは湊人が風紀委員長だからでしょ。」
「そうかなぁ。風紀は問題が起きたときに対処することしかできないから。あと各委員会の委員長が仕事しやすくなったってさ。」
「ふふ、ありがとね。」
「響也はあいつらのことどうするつもりなんだ?」
「結局謝りに来なかったからね。生徒会からは外すつもりだよ。みんな能力は高いから惜しいけど。さすがに制裁を指示するような人たちを生徒会にはしておけないよ。」
「だよな。」
「風紀に迷惑かけちゃうかもだけど、ごめんね。もっといい学園にするから。」
まっすぐ顔を見据えられた。響也はいつも真剣だ。学園をよくしようとしている。それが俺のため、なんて言ってしまうのは自惚れかもだけど、俺のことも大切にしてくれている。
「湊人の瞳、吸い込まれそう。すごく好きだ…。」
「響也…。」
どちらからともなく顔が近づいていく。
ガチャ
「藤崎!いるか?」
「委員長!大丈夫ですか?」
空気が固まった。
「おっと、邪魔したな。すまない」
「あの…、ごめんなさい。」
ここで入ってくるなよ。響也、舌打ちするな。
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