虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第10章 旅立ちの塔

第237話 サリーの不安

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第237話 サリーの不安 
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


『では次は』

キャッツ「私ねー」

このとき、サリーが微かな異変を感じました。
しかしそれは、違和感と呼ぶことさえためらわれるほどの、本当に微かなものでした。
それをサリーは、自分でも無意識のうちに、気のせいにしたのです。
気のせいにしたことにさえ、気づくことができませんでした。
それくらい微かなものだったのです。
長かった旅が終わろうとする今だから感じる、胸の高鳴り、達成感、寂寥感、そういうもののひとつだと、サリーは思い込んでしまいました。

キャッツ「私はね、すごくいい体験をさせてもらったわ」

キャッツが、先ほどマリンがしたのと同じように、一歩進み出て、虚空に向かって語りかけます。

キャッツ「空を飛んだのよ。ま、厳密には飛ばせてもらった、だけどね。場所は空中都市。鳥人たちが住む国よ。えっと、そこで私たちが必要だと思った心は……なんだっけ?」

マリア「『他者を敬う心』よ」

キャッツ「そう!それ!最初はいけ好かないと思ってた鳥人族も、実はいろんな気持ちを抱えてるってわかって、なんだか反省しっちゃった」

キャッツがそう言うと、2本目の虹が架かりました。
塔から伸びた虹ははるか遠くの空とつながっています。

『かの地、空中都市とこの塔がつながった』

キャッツ「じゃ、次はマリアね。よろしく」

マリア「ええ。私たちは空中都市を飛び降りて、大森林に着いたわ。そこの世界樹で、森のヌシと、その子ども、ミイと出会ったの」

サリー「懐かしいね」

ジャンヌ「ほんと、1カ月も森にいたせいかな。そんなに昔のことじゃないのに、懐かしいわ」

マリア「森の木々が病気に冒されていて、それをなんとかするためにヌシを説得したわ。そのときに触れた心は『過去にすがらない心』」

3本目の虹が架かりました。

ローズ「すごい……この虹が、あの森とつながってるんだね」

~~~~~~~~~

サリー「……」

ジャンヌ「?どうかした?サリー?」

サリー「えっ?何が?」

ジャンヌ「い、いや、なんか、考えこんでるみたいに見えたんだけど」

サリー「え?そう?」

ジャンヌ「……気のせいならいいんだけどね」

マリン「サリーもオーブ欲しかったんだよね」

サリー「えぇ!?ち、違うよ!そんなことないよ!」

~~~~~~~~~

フィスト「そんじゃ、次はリーフねー」

リーフ「う、うん!えっと、私は、じゃない、私たちは、森の、世界樹の幹を通って、海に行きました!」

ブラド「そんな緊張せんで大丈夫よ」

リーフ「そ、そうよね。スー……ハー……えっと、海底にある神殿で、海神様と、人魚のアナスタシアに出会いました。彼女は未来を見ることができたんです。人間が海を汚す未来を見たので、世界がひとつになるとそれが加速すると思い、オーブを渡すことを拒みました」

マリン「まぁ、ほんと、痛いほど気持ちはわかるけどね」

リーフ「でも、私のおじいちゃんが頑張った、エルフ族と人間との関わり方を話したら、わかってくれました。『関りを絶とうとしない心』が必要だったんです」

リーフが言い終えると、4本目の虹が架かりました。

キャッツ「あの虹が、海底の神殿とつながってるのかしらね」

『その通りだ。7つのオーブ、7つの心がつながり、それぞれの地とこの塔がつながることで、世界はひとつになる』

ローズ「また全部の国、行きたいね」

フィスト「そうだけど、次あんたでしょ」

ローズ「あ、はい!すいません(笑)」

~~~~~~~~~

サリー(……あれ?)

ローズが一歩前に進み出たとき、サリーは気づきました。

サリー(……なんだろう……さっきまでと、違う……?)

サリーは違和感の正体が何なのか、まだわかっていません。
しかし、言いようのない不安に襲われていました。

サリー(……なに?これ……この場所……何かおかしい……)

サリーは空に架かる虹を見つめます。
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