虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第9章 魔界

第220話 ムラサキハッカ

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第220話 ムラサキハッカ
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


ジャンヌ「そうかもね……ま、何にしてもよかったわ。目が覚めて」

キャッツ「そんじゃ、ブラドの様子みながら、ゆっくり進もうか」

マリア「そうね。ブラド、しんどくなったらすぐ言ってね」

ブラド「う、うん。でもなんで苦しくなっちゃったんだろう。それまではすごく調子よかったのに」

サリー「多分、本当に、魔界みたいな場所が近いんだと思う……吸血鬼のブラドには、すごくいい気が満ちてると思うんだけど、それが急に濃くなり過ぎたんじゃないかな……それで、体がビックリした、みたいな」

マリン「なるほど……筋は通ってるわね。でもそうすると、ほんとに魔界に足を踏み入れる覚悟しとかないとね」

リーフ「え……どうしよう……ちょっと怖い……」

フィスト「夢の国との落差ありすぎでしょ」

ジャンヌ「念のため、もっかい見てみるね」

ジャンヌはそう言うと、キューブから魔法の地図を取り出し、それにキューブをかざしました。
キューブは先ほどと同じように、1本道のさらに奥へ一筋の光を放っています。

ジャンヌ「……変わらず、ね」

マリン「ま、そんなことだろうと思ってたわ」

ローズ「そうだよ。それに、この9人ならどこでも大丈夫じゃない?」

フィスト「お、いいこと言うじゃん、たまには」

ローズ「たまには(笑)」

マリア「でもほんと、フィストの言う通りよ」

ブラド「『たまには』?」

マリア「そこじゃないわよ!どこだって、なんとかなるわ。なんとかしてきたでしょ?」

キャッツ「うん!そうだよ」

ジャンヌ「そうね。行きましょう」

9人は再び歩きはじめました。

ブラド「んー、それにしても、この歯……気になる……」

リーフ「すごいよね。ほんとに吸血鬼の血が目覚めたのかな」

ブラド「血だか何だかわからないけど、さっきまでみたいに、妙に力がうずうずする感じはないわね」

ジャンヌ「ムラサキハッカのおかげだね」

マリン「そのムラサキハッカって、何なの?」

サリー「えっと、私も自生してるのは見たことないんだけど……花も葉も紫色をしていて、それが悪魔とかアンデッドとかを穏やかにさせるらしいの」

ジャンヌ「へぇ、サリーも見たことないんだね」

ブラド「花も葉も紫色なんて、不思議だね」

リーフ「あんな色?」

サリー「うん、そうだよ」

フィスト「生えてるじゃん」

サリー「うそ!?」

9人はリーフが指していた道の端に生えている植物に近づきました。
それは花も葉も紫色をした、背の低い植物でした。

ブラド「ふーん、これがムラサキハッカなんだ……」

サリー「す、すごい……自生してるところなんか、初めて見た……」

キャッツ「貴重品なの?」

サリー「多分……だって、ムラサキハッカが育つことができる場所なんて、ほとんどわかってないらしいから」

マリン「そりゃすごいわね。じゃあ、記念に持って行く?」

サリー「え!?そんなことしちゃ……」

マリン「してもどうってことないんじゃない?ほら」

マリンは通路の先を示しました。
暗くて8人には見えなかったのですが、通路の両脇に、点々と、しかし無数に、ムラサキハッカが生えていました。

フィスト「すごい!めっちゃ生えてる!」

マリア「これだけあるなら、確かに1株くらい持って行っても良さそうね」

サリー「うん……でも……」

ブラド「要らないんじゃない?だって、香油にして何かに染み込ませるくらいしか、使い方ないんでしょ?生のを引っこ抜いても、使い道がなきゃ可哀相なだけよ」

サリー「う、うん!そうだよね」

マリン「ま、要らないんじゃそれでいっか」

マリア「とってもキレイだからさ、歩きながら楽しみましょう」

キャッツ「そうだね」

9人は洞窟の奥へと進んでいきます。
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