虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第9章 魔界

第219話 魔除け

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第219話 魔除け
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


サリー「ど、どうしよう!どうしたらいい?」

マリン「そ、そんなこと言われても……」

マリア「吸血鬼の体調変化なんて、どうしたらいいか……」

ローズ「サリー!何か、こう、気を遮断する方法とか、ない?」

ジャンヌ「そっか……ここの気が影響してるなら、それを一時的に……」

サリー「ま、待って……えっと……気を、遮断……」

サリーは苦しむブラドを前にして、冷静に考えることができずにいました。

マリア「魔除け的なことでもいいのかしら」

キャッツ「!?魔除け!サリー!城下町で買ったムラサキハッカの香油!あれ確か魔除けでしょ!」

サリー「そ、そっか!」

サリーは鞄の中に手を入れ、すぐに出しました。
手の中には小瓶と短い木の枝が握られています。

サリーは必死に慌てないように、小瓶のふたを開けました。
木の枝を小瓶の中に入れ、取り出します。

リーフ「ムラサキハッカって、なに?」

キャッツ「私も詳しくは知らないけど、魔除けによく使われえるものらしいわ」

短い木の枝には、小瓶の中の液体がたっぷりとついています。
サリーはその木の枝をハンカチの上に乗せ、倒れて苦しむブラドの胸元にハンカチごと置きました。

ブラドの苦悶の表情が、徐々にやわらいでいきます。

フィスト「す、すごい……効いてるっぽいね」

ローズ「キャッツ、知ってたの?」

キャッツ「ムラサキハッカが魔除けに使われるのは、まぁ遺跡がある奥地なんかだと、よく聞く話よ。私も話でしか聞いたことないけどね。旅立ちの日の前、3人組で買い物に行ったでしょ?そのとき、サリーがムラサキハッカの香油を買ってたのよ」

マリア「へえ、よく覚えてたわね」

キャッツ「めったに見るものじゃないからね。私も魔法の道具に詳しいわけじゃないから、見聞きしたことあるものだったから覚えてたのかも」

体を横にしたブラドの表情から、苦悶の色はなくなっていました。
穏やかな表情で目をつむり、息をしています。

サリー「よかった……何とかなったみたい……ありがと、みんな」

マリン「でもすごいんだね、ムラサキハッカって」

サリー「うん、でも本当は魔除けじゃなくて、悪魔とかを穏やかにさせるものらしいの」

フィスト「なんでもいいよー、ブラドが苦しいのが取れるなら」

マリア「ちょっと休憩にしない?ブラドを今無理に起こしたくないし」

ジャンヌ「そうだね。そうしよう」

20分ほどすると、ブラドが目を覚ましました。

ブラド「!?」

ブラドは跳ね上がるように上体を起こしました。

キャッツ「あ、起きた」

リーフ「大丈夫?しんどくない?」

ブラド「わ、わたし……えっと……寝てた?」

マリン「そうよー。大変だったんだから。急に苦しみだしてさ」

サリー「あ、そのムラサキハッカのオイルを染み込ませた枝、持っといて」

ブラド「あ、ごめん!これ?持っといたらいいの?」

マリア「はい、できたわよ。枝を入れられるようになってるネックレス。てきとうな紐で結っただけだけど、勘弁してね」

フィスト「いやめっちゃすごいじゃん」

ブラド「あ……ありがとう……」

ブラドは礼を言うと、マリアから受け取った首飾りを首にかけました。
中央の蓑のような部分に木の枝を差し込みました。

ブラド「こ、こう?」

サリー「うん、そうしとくといいと思うよ」

ジャンヌ「でも焦ったねー。いきなり歯が伸びるんだもん」

ブラド「え?わたし!?うそ!なにこれ!?」

ローズ「かわいいよー」

フィスト「いやそれでは済まんでしょうが」

マリア「吸血鬼の血が目覚めた、って感じなのかな?」

ブラド「そう……なのかな……?」

リーフ「いいじゃん!とにかく無事だったんだから!」

キャッツ「でもやっぱり、ブラドの変化を見ると、魔界みたいな場所が近いのよね?」

ジャンヌ「そうかもね……ま、何にしてもよかったわ。目が覚めて」
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