虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第8章 地の果て

第208話 ジャックと豆の木

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第208話 ジャックと豆の木
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


ジャック「ない!ない!ない!」

サリー「?……ねぇ、なにを探してるの?」

ジャック「……魔法の、豆」

マリン「ちょっと……もしかしてそれって、植えたら天まで伸びていく木になるっていう……」

ジャック「!?知ってるの?」

妖精が口を挟みます。

モモ「この子達、外から来たから、夢の国の住人のことは知ってたりするみたいよ。それにしても、あんた……懲りないわねー。こないだ天空の巨人に食べられかけたんでしょ?」

ジャック「う、うるさいな!今はそれどころじゃないんだよ!」

少年は話ながらポケットを上から叩きながら、辺りの地面を見渡します。

リーフ「ねぇ、もしかして、これ?」

リーフの言葉に8人と妖精と少年が目を向けました。
リーフは足元の地面を指差しています。

地面には一粒の豆が落ちていました。
しかしその豆はすでに地面に根差し、発芽までしていたのです。

ジャック「あぁっ!!」

少年は慌ててリーフの足元に駆け寄り、かがみこみましたが、豆に手を触れることもしません。

ジャック「お、遅かった……」

キャッツ「?どういうこと?」

モモ「この魔法の豆は、地面に触れるとすぐに根を張って、一晩でおっきな木になるんだけどね、一度張った根を抜くと、その豆は二度と成長しないのよ。つまり、明日ここでおっきくなっちゃうわけ」

マリア「こんな、大通りのど真ん中で?」

モモ「大通りのど真ん中どころか、この国のど真ん中ね、こりゃ」

ジャック「そ、そんなぁ……こんなとこで成長したって……天空の巨人の館にたどり着けないよ……」

モモ「ご愁傷さま☆ま、いい機会だから、もう館に忍び込んでお宝盗み出すなんて真似はやめるのね」

ブラド「そんなことしてたん?んで、こないだその巨人に食べられかけたん?」

ジャンヌ「そんなのもうやめな。危ないし、盗みだって良くないよ」

ジャック「うるさい!あの巨人は僕のお父さんを食べたんだ!そのせいで家は貧乏で……母さんは病気で……薬も買えず……」

ジャンヌ「ご、ごめん、そうだったのね……」

ジャック「だから僕は!あの巨人が人々から奪った宝を取り戻してるんだ!父さんを食べられた僕が、あいつの宝を盗んで使って、何が悪いんだよ!」

ジャックは早口にまくし立てると、泣きながら9人の前から走り去ってしまいました。

ローズ「大変なんだね、あの子も……つらかっただろうね」

モモ「あー、あいつは大丈夫よ。どうせ最後には館から金の卵を産むニワトリを盗み出すことに成功するの。ハッピーエンドよ」

フィスト「あ!そうか、そう言えばそんなお話だったね!」

サリー「そうなんだ?」

モモ「そ。だからあいつはほっときゃいいの」

マリア「ね、ねぇ、それはいいとして、これ、どうするの?」

マリアが指した地面に落ちた豆は、見てわかるほどに、先ほどよりも成長していました。
根はより広く太くなっていて、茎は添え木もないのにすでに10センチほどになっています。

リーフ「ここ、町のど真ん中なんだよね?このままにしておいたら、邪魔だよね?」

モモ「あー、それもほっとくしかないわね、もう」

ジャンヌ「え?だ、大丈夫?なんですか?」

モモ「ここまで根付いちゃったら途中で抜くのは無理よ。それに夢の国の人たちは、まぁそれぞれノンビリしてるから、邪魔ってほど邪魔になんないわ。切るのはいつでもできるしね」

ローズ「へぇー」

フィスト「ね!じゃあ、このままにしとこうよ!どうせなら天まで届く豆の木とか見たいじゃん!」

キャッツ「ま、まぁ、どうせなら、ねぇ」

マリン「いいじゃん!私も見たいし」

モモ「そんじゃ決まりね。明日の朝にはめっちゃ成長してるから、また見に来ましょ。じゃ、出発しましょうか」

ローズ「そっか!宿屋だ」

30分後、9人は予想外の見た目の宿屋に歓声を上げました。

マリン「すごーい!!キノコ!でっかいキノコがおうちになってるー!」

ブラド「めっちゃかわいいね!」
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