虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第8章 地の果て

第206話 夢の価値は

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第206話 夢の価値は
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********



???「あら、あんたたち、見ない顔ね」

初めて聞く声に9人ははしゃぐのをやめ、あたりを見渡しました。

声の主は見当たりません。

サリー「え!?だ、誰……どこにいるの?」

???「ここよ、ここ!ったく、注意力散漫なんだから、最近の子は……私は妖精のモモよ。ほら、あんたたちも名乗んなさい」

ジャンヌ「よ、妖精!……初めて見た」

モモ「あったりまえでしょ、夢の世界の住人なんだから。でも空想くらいはしたことあるでしょ?」

ジャンヌ「う、うん!した!」

キャッツ「わ、私も!」

ローズ「私もした!」

9人は珍しそうに、まじまじと妖精を見つめます。
妖精はコップほどの身長で、緑色の葉を編んだような服を着ていました。
小さな羽を動かし、宙に浮いています。

モモ「あんたたちね……わたしわたしじゃ誰だかわかんないのよ……さっさと名前教えなさいよね!困ってそうだからお姉さんが助けてあげるわよ!こう見えてもあんたたちよりは年上なんだからね!」

ジャンヌ「あ!ご、ごめんなさい!」

9人は妖精モモに気圧されながら、ひとりずつ名と出自、ここに来た経緯を告げました。

モモ「ふーん、なるほどねー。この国に迷い込んじゃったのは、そのキューブとやらの力かもしれないわねー。ま、テキトウだけど」

マリア「あの、こういうことって、よくあるんですか?」

モモ「ん?外の住人が迷い込んだりすること?……んー、どうなんだろね、わかんない」

マリア「そ、そうですか……」

フィスト「あのー、じゃあ、オーブとか、心当たりありませんか?」

モモ「色つきの玉だっけ?さぁねー、聞いたことないわね。あんたたちの話で初めて聞いたわ」

ブラド「えっと、じゃあ、この夢の国に詳しい人とかは、いませんか?」

モモ「なによそれ。私じゃ頼りないっての?」

ブラド「い、いや!そうじゃないです!」

モモ「……まぁいいわ。でも、この国に詳しい人なんて、いるのかしらね。みんな好きに楽しく過ごしてるだけだから」

キャッツ「あ、あの、助けてくれるんですよね?」

モモ「もちろんよ!そういう気持ちよ!気持ち!でも力になれるかどうかは別でしょ!?あんたたちが、なんていうか、こう、目立ってたから声かけたのよ!」

リーフ「(ヒソヒソ)そういえば、本で読んだことある……妖精って、すごく好奇心旺盛なんだって……」

マリン「(ヒソヒソ)あれは好奇心旺盛って言うより、野次馬根性で面白がって首突っ込んだだけなんじゃないの?」

モモ「……ま、実際力になれるかどうかわかんないんだから、何でも聞きなさい!わかんないこと以外は答えるわよ!」

フィスト「あ、あの、じゃあ……この夢の国で一番偉い人って、いますか?」

モモ「は?偉い人?」

フィスト「そうです!王様とか、そういう人」

サリー「そっか、私たちずっと、その国の偉い人からオーブを託されてきたんだもんね」

ジャンヌ「確かに、『この国に詳しい人』は知らなくても、『この国の偉い人』ならモモさんも知ってるかもね」

ブラド「ど、どうですか?知ってます?偉い人」

9人の目の前で、小さな妖精は大きなため息をつきました。

モモ「はぁぁ~」

フィスト「な、なんですか!?」

モモ「あんたたちみたいな女の子も夢を忘れちゃったのね……そりゃ世界中に夢の居場所もなくなるわ……」

リーフ「え!?なんでですか!?忘れてませんよ!」

モモ「いいのいいの。責めてるわけじゃないから……いろいろ苦労したんでしょ?オーブ集めで……1年も経ってないでしょうに、こんなにスれちゃって……」

マリン「スれてないですよ!なんなんですか一体!?」

モモ「なに、と言われてもね……そりゃこっちのセリフよ……なによ、偉い人って」

マリア「……もしかして、そんなの、いない、とか?」

モモ「そうよー!いるわけないでしょ?この国にいるのはみーんな、誰かが空想する夢なのよ……囚われの姫を助け出す白馬の王子様。森の小人にお菓子の家。おもちゃの兵隊。子どもたちにおもちゃを配るサンタクロース。みんなに元気をあげるアイドル……みーんな、誰かの夢なのよ!」

キャッツ「な、なるほど……」

モモ「その夢に、偉いとか偉くないとか、そんなのあるわけないでしょうが?……ある?ないでしょ?この夢は偉いけどあの夢は偉くない、とか」

フィスト「うっ……はい……ないです……」

モモ「わかりゃいいのよ。ま、こうやってすぐわかるとこ見ると、まだ完全にはスれてなさそうね」

9人は「こんなにスれた妖精も誰かの夢なのかな?」という疑問を、言葉にできずにいました。

モモ「とりあえず、あんたたち、宿でも取る?森で倒れてたって言ってたからだと思うけど、結構汚れてるわよ」
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