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第7章 砂漠の国
第190話 マリーゴールド
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第190話 マリーゴールド
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
ローズは女王に向けていた顔を、謁見の間の隅の方に移します。
そこには、オレンジ色の花があふれんばかりに手向けられている祭壇がありました。
ローズ「死者を丁重に見送るためのお花、マリーゴールドですね」
女王「その通りじゃ」
マリン「なに?それ」
ローズ「亡くなった人やご先祖様が、現世と死者の国を迷わずに行き来するために、祭壇にかざるんだってさ」
リーフ「へー!」
女王「博識じゃのぅ」
ジャンヌ「死者の弔いは、国によっていろいろあるね」
ローズ「あの祭壇のお花は真新しいものと、少しだけ古いものがありました。古いものは取り除いて、新しいものを足すっていう、定期的にお手入れしている証拠です」
フィスト「女王様、ご先祖様のこと大事にしてたんだね」
マリア「ご先祖様への過剰な悪口も、ご先祖様の存在を軽く見てないことの裏返しってわけね」
シイー「そうよ!母様はご先祖様のことは誰よりも大切に思っていたわ!」
アラー「祭壇のお手入れも家来にやらせたりしなかったもんね。全部自分でやってたんだよ」
ハカー「うん……僕も見てた……」
ローズ「女王様とご先祖様が絶対に手放さなかったもの、歴代受け継いできた宝が、この国を救うんです」
女王「そうか……」
女王はそう言うと、玉座から立ち上がり、ゆっくりと祭壇の方へと歩きだしました。
祭壇の前に立ち、ひざまずき、両の手のひらを胸の前で組みます。
うやうやしく、歴史を重んじるような所作に、全員が目を奪われていました。
女王は数秒間、そのままの姿勢で動かずにいました。
そして、そっと目を閉じました。
そのとき、地に置かれていた、無色透明の宝珠に、
マリーゴールドの花の色が映りました。
そして映された色が、そのまま宝珠の色となり、輝きを放ちました。
キャッツ「こ、これ……オーブになったの?オレンジ色の光が、宿ったわよ」
ブラド「きれい……マリーゴールドの色やね」
マリア「女王様の『先人を尊ぶ心』が込められたってことね」
サリー「先人を尊ぶ心……それがこの地の心なのね」
祭壇の前で動かなかった女王が、ゆっくりと目を開き、立ち上がり、9人の方を向きました。
女王「?おや、宝珠の色が変わったのう」
ローズ「女王様が心を込めて祈りを捧げてくださったおかげです」
女王の子、3人が母親の元に駆けていきました。
シイー「母様、どんな願い事をしたの?」
女王は9人に話す堅苦しい口調とはうってかわって、慈愛に満ちた言い方で答えました。
女王「フフフッ……お祈りと願い事は違いますよ。何かが叶うように願うんじゃなくて、ご先祖様にご挨拶して『頑張るので見守っていてくださいね』って、お伝えするんですよ」
ハカー「ふーん」
アラー「僕もする!」
女王は我が子を微笑みながら抱き、耳元で「ほら、母はもう少しお仕事があるので、外で遊んでらっしゃい」と言いました。
3人の子どもは談笑しながら出ていきます。
それを見送った女王は、9人に向き直りました。
女王「礼を言う。そなたらと、マリーゴールドの花を絶やさずに植え続けてくれた、この国の民に、な」
マリン「そっか、そうだよね。常にこれだけの量を用意するなんて、王宮だけじゃ無理か」
ローズ「国民も、この国の王家が好きだったんですね。だからあなたも、国民を守るための兵士の装備はきちんとしたものを使わせた……安価なものに変えることなく」
女王は口の端を吊り上げ、笑いました。
女王「目ざといおなごじゃのぅ……お主らならやり遂げてくれそうじゃな。オーブ、持っていくか?」
キャッツ「あ!そうね!そうさせてもらいましょ!」
フィスト「それじゃあローズ!やるのよ!」
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
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ローズは女王に向けていた顔を、謁見の間の隅の方に移します。
そこには、オレンジ色の花があふれんばかりに手向けられている祭壇がありました。
ローズ「死者を丁重に見送るためのお花、マリーゴールドですね」
女王「その通りじゃ」
マリン「なに?それ」
ローズ「亡くなった人やご先祖様が、現世と死者の国を迷わずに行き来するために、祭壇にかざるんだってさ」
リーフ「へー!」
女王「博識じゃのぅ」
ジャンヌ「死者の弔いは、国によっていろいろあるね」
ローズ「あの祭壇のお花は真新しいものと、少しだけ古いものがありました。古いものは取り除いて、新しいものを足すっていう、定期的にお手入れしている証拠です」
フィスト「女王様、ご先祖様のこと大事にしてたんだね」
マリア「ご先祖様への過剰な悪口も、ご先祖様の存在を軽く見てないことの裏返しってわけね」
シイー「そうよ!母様はご先祖様のことは誰よりも大切に思っていたわ!」
アラー「祭壇のお手入れも家来にやらせたりしなかったもんね。全部自分でやってたんだよ」
ハカー「うん……僕も見てた……」
ローズ「女王様とご先祖様が絶対に手放さなかったもの、歴代受け継いできた宝が、この国を救うんです」
女王「そうか……」
女王はそう言うと、玉座から立ち上がり、ゆっくりと祭壇の方へと歩きだしました。
祭壇の前に立ち、ひざまずき、両の手のひらを胸の前で組みます。
うやうやしく、歴史を重んじるような所作に、全員が目を奪われていました。
女王は数秒間、そのままの姿勢で動かずにいました。
そして、そっと目を閉じました。
そのとき、地に置かれていた、無色透明の宝珠に、
マリーゴールドの花の色が映りました。
そして映された色が、そのまま宝珠の色となり、輝きを放ちました。
キャッツ「こ、これ……オーブになったの?オレンジ色の光が、宿ったわよ」
ブラド「きれい……マリーゴールドの色やね」
マリア「女王様の『先人を尊ぶ心』が込められたってことね」
サリー「先人を尊ぶ心……それがこの地の心なのね」
祭壇の前で動かなかった女王が、ゆっくりと目を開き、立ち上がり、9人の方を向きました。
女王「?おや、宝珠の色が変わったのう」
ローズ「女王様が心を込めて祈りを捧げてくださったおかげです」
女王の子、3人が母親の元に駆けていきました。
シイー「母様、どんな願い事をしたの?」
女王は9人に話す堅苦しい口調とはうってかわって、慈愛に満ちた言い方で答えました。
女王「フフフッ……お祈りと願い事は違いますよ。何かが叶うように願うんじゃなくて、ご先祖様にご挨拶して『頑張るので見守っていてくださいね』って、お伝えするんですよ」
ハカー「ふーん」
アラー「僕もする!」
女王は我が子を微笑みながら抱き、耳元で「ほら、母はもう少しお仕事があるので、外で遊んでらっしゃい」と言いました。
3人の子どもは談笑しながら出ていきます。
それを見送った女王は、9人に向き直りました。
女王「礼を言う。そなたらと、マリーゴールドの花を絶やさずに植え続けてくれた、この国の民に、な」
マリン「そっか、そうだよね。常にこれだけの量を用意するなんて、王宮だけじゃ無理か」
ローズ「国民も、この国の王家が好きだったんですね。だからあなたも、国民を守るための兵士の装備はきちんとしたものを使わせた……安価なものに変えることなく」
女王は口の端を吊り上げ、笑いました。
女王「目ざといおなごじゃのぅ……お主らならやり遂げてくれそうじゃな。オーブ、持っていくか?」
キャッツ「あ!そうね!そうさせてもらいましょ!」
フィスト「それじゃあローズ!やるのよ!」
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