虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第3章 火山地帯

第80話~第81話

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第80話 長の館

ロックス「長が館によそ者を呼ぶことが、今までなかったんだ」

9人は顔を見合わせました。

マリン「まぁいいわ。とにかく、呼んでるんだから、行くしかないわよね?」

ロックス「……ついてきな」

ロックスを先頭に歩いて小一時間すると、館につきました。
高い壁に囲まれ、その奥には高い塔が見えます。重い鉄の扉が、ガラガラと鎖と滑車の力で引き上げられています。

マリア「館というよりは、お城ね」

キャッツ「あの、ボルカノさん?っていう人がこの里で一番偉い人で、ここの主なのよね?」

ロックス「……あぁ」

ローズ「ねえ、ロックスさん、本当に大丈夫なの?顔色悪いよ?」

ロックス「……おい!今からでも遅くない!この里から出な!」

門番「もう遅いですよ、ロックスさん」

門番のドワーフが口を挟みました。

門番「ボルカノ様からの命令は、9人の少女を連れてくること。これはすでに里中に知れわたっています……もう、遅いんですよ」

ロックスはうつむいて、何も言いません。

フィスト「私たちのこと、守ろうとしてくれたの?」

ブラド「ええとこあるやん」

ロックス「正直、俺にもどうなるかわからん。ボルカノ様が外の者を館に入れるなんて聞いたことがない。もし、殺されるなんてことになりそうだったら……」

ジャンヌ「ありがとう。その時は、遠慮なく反撃しつつ退避させてもらうわ」

リーフ「すごい会話……」

9人は館の門をくぐり、ロックスの案内で館の中を進みました。
館はまさしく城でした。
ただ、宮殿のような豪華な城ではなく、どこか武骨で、要塞のようでした。

10分ほど歩くと、大きな門の前に来ました。
ロックスが門を叩くと、中から開けられました。

扉の向こうはとても大きな部屋です。
部屋の真ん中を長いカーペットが奥まで走り、その先の立派な椅子に、ボルカノが座っていました。

その両脇に、従者、衛兵が数人、立ち並んでいます。

10人でそこまで進むと、ロックスが一礼したので、9人もそれにならいました。

ボルカノ「ご足労すまない。本来ならよそ者にはできるだけ関わらず、用が済んで里から出ていくのを待つのだが、お嬢さん方には聞かなければならないことがあってね」

丁寧な言葉遣いで「お前たちと話したくて話しているわけではない」と伝えてくる里の長。
9人は、何も言いません。
ボルカノの話の続きを待っているのです。

ボルカノ「これは知ってるかね?」



**********
第81話
レッドオーブ

ボルカノ「これは知ってるかね?」

その言葉で、従者のひとりが前に出ました。
彼が両手で持っていたのは、赤い光をたたえた宝珠でした。

9人全員がひとつのものを思い浮かべました。
ジャンヌが言います。

ジャンヌ「オーブ、ですか?」

ボルカノ「やはり、知っていたか」

ジャンヌ「知っていたわけじゃありません。見るのも初めてです」

ボルカノ「ほう?」

ジャンヌは旅立ちの塔で聞かされたことを話しました。

争いの絶えない世の中をひとつにするため、虹を甦らせる使命を、9人が背負っていること。
そして虹の復活のためには、7色のオーブを集めなければならないこと。

ボルカノ「なるほどな……このレッドオーブがしばらく前から強く輝きはじめたから、何事かと思って調べていたが、お嬢さん方が近づいてきたことに反応してるんだな」

フィスト「調べていた?」

ボルカノ「あぁ、里の中と、周りを、衛兵がな」

ロックス「俺もそのひとりだ」

ブラド「へー!ほんなら私たちと会ったのって偶然じゃないんや?」

ロックス「当たり前だ。どんな確率だ」

ボルカノ「まぁその話はいい。とにかく、このレッドオーブの輝きとお嬢さん方との関係はよくわかった。里に危機が迫っているのかと思って心配していたんだ。代々この地に伝わるもので、粗末には扱えんからな」

サリー「あ、あの……それで」

マリア「私たち、オーブが必要なんです……協力してくださいますか??」

ボルカノ「お断りだ」

キャッツ「えー!?なんでよ!」

リーフ「キ、キャッツちゃん……」

ローズ「あの……そのオーブが里にとって、とても大切なものだということは、よくわかります。でも……」

ボルカノ「違うんだよ、お嬢さん」

里の長は9人の顔をしっかりと見据えて、言いました。

ボルカノ「世界をひとつになんか、してほしくないんだよ」

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