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第2章 旅立ちの塔
第64話~第69話
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**********
第64話 知の試練 突破
ローズ「……正解?」
キャッツ「そうよ!やるじゃん!もっと喜べ!」
マリン「ローズがいないと進めなかったね」
リーフ「ほんとに……すごいんだね、知識って」
ジャンヌ「……そうか、さっき声が言ってたのって、こういうことか」
フィスト「ん?なに?」
ジャンヌ「ほら、マリンが『私たちの気持ちがひとつになってないんだから、試練を後にしろ』ってブチギレてたら、声が『後にする権利も、必要もない』って言ったじゃん」
マリア「うん、言ってたね」
マリン「言ってた?」
ブラド「マリンが一番キレてたやん」
ジャンヌ「試練を受ければ私たちの気持ちがひとつになる、つまり、ローズがいなきゃ進めないってことがわかるから、後回しにする必要なんかないって、言ってたんだよ、声は」
マリン「え、めっちゃ良い奴じゃん」
『……次が最後の試練だ』
キャッツ「ありがとね、いいとこあんじゃん」
『……最後の試練が始まるまで、再び塔をのぼってもらう。始まるまで』
ブラド「優しいおっちゃんやん」
『最後の試練が始まるまで待っていろ』
最後は少し早口でまくしたてました。
再び、床が音を立てて、上に動きだしました。
サリー「すごいね、ローズちゃん」
ローズ「いや、でも、リーフとブラドが教えてくれなかったら、駒の向きまではわかんなかったよ」
ブラド「じゃあやっぱりみんな要るってことやん」
ローズ「う、うん……そ、そうだね!」
リーフ「ねぇ、ジャンヌちゃん、次が最後の試練って言ってたよね?」
ジャンヌ「ん?うん、そうだね」
リーフ「どんな試練なんだろ……」
ジャンヌ「どうだろ……でも、どんな試練でも大丈夫だと思うよ」
リーフ「う、うん!そうだね!」
マリア「それにしても、この塔、あとどれくらいのぼるのかなぁ?」
マリン「!?ちょっと!あれ」
みんながマリンの方を見ます。
マリンは、上の方を見ていました。
**********
第65話 最後の試練の前に
マリン「!?ちょっと!あれ」
みんながマリンを見たとき、マリンは上の方を見ていました。
8人がマリンの視線を追うように、上を見ました。
いつの間にか塔の天井が見えるところまで近づいていました。
そして今、その天井が、真っぷたつに割れて、わかれていきました。
ジャンヌ「天井が……開いてるの?……」
キャッツ「雲よりも高い塔の、てっぺんまで来ちゃったってことね」
マリア「外に出るってことよね」
リーフ「どんな試練なんだろう……」
ローズ「誰が一番早く降りられるか、とかかなぁ?(笑)」
フィスト「あたしらで競ってどうすんのよ」
サリー「今までよりも、もっと厳しい試練なんだよね……」
ブラド「そうとも限らへんよ、なんとかなるって!知らんけど(笑)」
最初は小さくしか見えていなかった空が、だんだん近づき、大きく見えてきました。
そして9人が乗っていた床は最後までのぼりきり、塔の天井になったのです。
塔の頂上では、周りに何もなく、風が吹いています。
ジャンヌ「みんな、気を付けてね!風けっこう強いよ」
リーフ「高いとこ、こわい……」
キャッツ「リーフは森育ちだもんねー」
マリア「みんなで手をつないで、固まりましょう」
フィスト「それがよさそうね」
9人は天井の中央に集まり、円形に手を繋ぎました。
すると、声が響きます。
『最後の試練を始める前に、お前たちの旅について教えよう』
9人の周りに突然、7つの台座が、フッと現れました。
サリー「……旅について?」
『お前たちは、ふたたび世界の空に虹を架けるために、この塔から旅立つ……虹をよみがえらせるためには、世界に散らばる7つのオーブを、今周りに現れた台座に置かなければならない』
声にこたえるように、7つの台座が、ぼんやりと光りはじめました。
7つの台座、それぞれ違った色の光を放っています。
赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫
マリン「きれい……不思議な色……」
ジャンヌ「この、キューブの色だよね」
**********
第66話 9人の使命
ジャンヌ「この、キューブの色だよね」
ジャンヌの声に、8人は自分の首から下げられたキューブを見ました。
フィスト「うん、ほんとだね」
サリー「虹の色だよね……お師匠様が言ってた」
マリン「ってことはさ、今から世界中を旅して、7つのオーブを集めて、もう1回ここに戻ってこなきゃいけないってことだよね?」
マリア「長い旅になりそうねぇ」
リーフ「ねえ、ローズちゃん、オーブって、なに?私、森育ちで……」
ローズ「え?う、うーん、なんて言えばいいのかな?」
ジャンヌ「森育ちじゃなくても説明難しいよねー」
サリー「なんていうのかな?宝珠?ふしぎな力を持った玉みたいなので」
リーフ「ふーん……ありがと。それを7つ集めるのね」
キャッツ「ドラゴンボールみたい(笑)」
フィスト「やめて(笑)」
『……魔法使いの少女よ』
サリー「!は、はい!」
マリア「そんな緊張しなくていいの」
ブラド「実は優しいおじさんやで」
『……魔法が使えるのはお前だな。お前にひとつ魔法を授ける。この場所への帰還魔法だ』
空に、ぼんやりとした白い光の玉が出てきました。
光の玉はゆっくりと降りてきて、サリーの目の前で、フワフワと浮かんでいます。
ローズ「これが、魔法?」
サリー「……帰還魔法って……空間を飛び越えるんですか?みんなを連れて?……そんなの、使ったことないです」
『そう気負うな……7つのオーブがそろったら、魔法は勝手に発動する。そのときにこの場所を強く思い浮かべなさい。この場所と魔力を結び付けるのがお前の仕事だ……』
リーフ「確かに……サリーちゃんにしかできないね」
サリー「わ、わかりました」
宙に浮かんでいた光は、サリーの声に満足したかのように、サリーのキューブの中に、ヒュンッと入っていきました。
ジャンヌ「なんにしてもさ、ここまで戻る手間が省けるのは助かるね」
『……この9人を率いているのはお前か』
ジャンヌ「率いてない率いてない」
ローズ「えー!率いてるよー!」
フィスト「うん、率いてるね」
ジャンヌ「率いてないってば!」
キャッツ「率いてよぉ~!(笑)」
**********
第67話 旅立ちの終わり
ジャンヌ「あのさ、率いてるかどうかは置いといて、私に何の用なの?」
『お前が魔法の地図を持っているな?』
ジャンヌはそう言われて、懐から地図を取り出しました。
国王から託された、不思議な、魔法の地図です。
ジャンヌ「これね?キューブをかざすと、次の目的地がわかるっていう、魔法の地図でしょ?」
『そうだ。その地図も、キューブの中に収めることができる』
声が言い終わると同時に、ジャンヌが手に持っていた地図が、ヒュンッとジャンヌのキューブの中に入ってしまいました。
ジャンヌ「え!?これ、取り出せるの?」
『もちろんだ。取り出したいと願えば、それで出てくる』
ジャンヌ「ほんと?ん~……あ、ほんとだ、出てきた」
ローズ「じゃあ、あとの7人のキューブに、オーブをひとつずつ入れられるってこと?」
フィスト「あー!ほんとだ!数合うわ」
『それでは最後の試練を始める……魔法の地図にキューブをかざせ』
ジャンヌが地図にキューブをかざすと、不思議な色の光が、地図の一点を指しました。
旅立ちの塔から、海を越えた先の陸地の一点です。
そこには、山が描かれています。
緑豊かな山ではありません。
山頂からふもとにかけて、赤い筋が描かれています。
ブラド「これって……」
マリン「……火山よね」
キャッツ「えー!暑いのー!?」
マリア「熱いのよ」
『旅立ちの塔、最後の試練は、そこに行くことだ』
リーフ「え?それだけ?」
ローズ「意外と簡単?(笑)」
フィスト「バカ言わないの。この塔のてっぺんからどうやって行くのよ」
サリー「確かに……塔を降りるのはいいとしても、海も越えるんだよね」
ジャンヌ「マリン、この塔から海を渡るのって、どんなもん?」
マリン「この海はそこまで広くないけど、かなり激しく荒れる海域だから、船で渡るなら遠回りしなくちゃいけないよ」
『力の試練、知の試練を乗り越えたお前たちが挑む最後の試練は、勇気の試練』
サリー「……勇気」
ブラド「うそでしょ?」
**********
第68話 勇気の試練
サリー「……勇気」
ブラド「うそでしょ?」
9人が塔の外周に近づきます。
眼下に雲が見えますが。
マリア「飛び降りろってこと?」
フィスト「いや、飛び降りろというか、飛んで海を渡れってことじゃないの?」
リーフ「そうだよね、試練は、『次の目的地に着くこと』って言ってたし」
キャッツ「ていうかこれどんだけ高いのよ」
マリン「雲なんて上から見ることがほとんどないからさ、雲よりもどのくらい上にいるのかもわかんないよね」
サリー「えっと、浮遊石の結晶を使ったら、ゆっくり降りれるから、ケガはしないと思うけど……」
ブラド「おー!そうやん!」
ジャンヌ「たしかそれって、術者と離れたら効果が弱くなるのよね?じゃあ、サリーとくっついてればいいわけ?」
サリー「うん……直接でも間接でもいいから、9人がそれぞれ手をつないでいれば、みんなで浮けるよ」
ローズ「すごい!楽しそう(笑)」
リーフ「9人で手をつないで空飛ぶんだね♪」
サリー「あ、でも……9人だとやっぱり、飛ぶというより、ゆっくり落ちることになると思う」
フィスト「ってことは、飛距離を伸ばさないといけないってことね」
マリア「あ、テント、使う?」
ジャンヌ「なにそれ?」
マリア「私が城下町で買ったの。テントは骨組みと布だから、組み合わせれば……」
キャッツ「あー!ハングライダーみたいになるね!」
マリン「それならかなりの距離を進めそうだね。あとは風をどうとらえるか、だけね」
ブラド「マリンよろしく」
ローズ「そっかぁ、船乗りだから」
マリン「いや、まあわかってたけどさ」
ジャンヌ「じゃ、さっそくやっちゃおうか。テントを分解してハングライダーを作ろう」
リーフ「む、むずかしそう……」
フィスト「ローズ、作り方本で読んで覚えてるでしょ?」
ローズ「えっと、うん……じゃあまず」
フィスト「ほんとに覚えてるんだ……」
サリー「あ、あの……ちょっといい?」
みんながサリーに注目します。
**********
第69話 今日はここまで
ハングライダーを作ることになった9人ですが、サリーが声を上げました。
サリー「あ、あの……ちょっといい?」
みんながサリーに注目します。
フィスト「?どうしたの?」
サリー「えっと、今日はもう、これくらいにしない?」
全員が目を見合わせます。
ジャンヌが懐から時計を出して見ました。
ジャンヌ「午後4時か、たしかに、1日動きっぱなしだったしね」
キャッツ「サリーはたくさん術を使ったから、疲れてるよね?」
リーフ「そっか……力の試練では防御力アップの術と、フィストちゃんに浮遊術かけてたし、その後はフィストちゃんとジャンヌちゃんに回復の術も使ってた……」
マリア「実は塔までの道でも、サリーはブラドのために、日射し避けの術も使ってたもんね?」
ブラド「そうなん?!」
サリー「う、うん」
ローズ「すごい……そんなに頑張ってたんだ……」
ジャンヌ「そうだね、休もう。サリー、話してくれてありがとう」
キャッツ「気づかなくてごめんね」
サリー「ううん!ありがとう……」
ジャンヌ「マリン、ここから次の目的地の火山まで、空を飛んでいったとしたら、どれくらい?」
マリン「……4時間はかかると思うよ」
フィスト「サリーは今度は4時間も術をかけっぱなしになるのか……」
サリー「大丈夫だよ。1日ぐっすり寝て休めば、大丈夫!」
マリア「じゃあ今日のところはテントをハングライダーに改造するのはやめて、テントとして使おっか」
リーフ「でも、風が強くて……怖い」
ジャンヌ「そうねー、テントごと飛ばされちゃおしまいよね」
キャッツ「ねー!なんか小屋的なの出してよー!」
キャッツが虚空に向かって声を上げると、9人のそばの床の一部がゴゴゴゴと音を立ててせり上がり、小屋の形になりました。
ブラド「え、めっちゃええ人やん」
ローズ「すごーい、ちゃんとドアもある!」
ガチャ
マリン「ほんとだ!えー、やだー、中はあんまり可愛くなーい」
マリア「そういうセンスはない人なのねー」
サリー「んー、でも変に張り切っていろいろ付けても、それがダサかったら……」
『……………………』
9人はその日は塔の頂上で一夜を明かしました。
第64話 知の試練 突破
ローズ「……正解?」
キャッツ「そうよ!やるじゃん!もっと喜べ!」
マリン「ローズがいないと進めなかったね」
リーフ「ほんとに……すごいんだね、知識って」
ジャンヌ「……そうか、さっき声が言ってたのって、こういうことか」
フィスト「ん?なに?」
ジャンヌ「ほら、マリンが『私たちの気持ちがひとつになってないんだから、試練を後にしろ』ってブチギレてたら、声が『後にする権利も、必要もない』って言ったじゃん」
マリア「うん、言ってたね」
マリン「言ってた?」
ブラド「マリンが一番キレてたやん」
ジャンヌ「試練を受ければ私たちの気持ちがひとつになる、つまり、ローズがいなきゃ進めないってことがわかるから、後回しにする必要なんかないって、言ってたんだよ、声は」
マリン「え、めっちゃ良い奴じゃん」
『……次が最後の試練だ』
キャッツ「ありがとね、いいとこあんじゃん」
『……最後の試練が始まるまで、再び塔をのぼってもらう。始まるまで』
ブラド「優しいおっちゃんやん」
『最後の試練が始まるまで待っていろ』
最後は少し早口でまくしたてました。
再び、床が音を立てて、上に動きだしました。
サリー「すごいね、ローズちゃん」
ローズ「いや、でも、リーフとブラドが教えてくれなかったら、駒の向きまではわかんなかったよ」
ブラド「じゃあやっぱりみんな要るってことやん」
ローズ「う、うん……そ、そうだね!」
リーフ「ねぇ、ジャンヌちゃん、次が最後の試練って言ってたよね?」
ジャンヌ「ん?うん、そうだね」
リーフ「どんな試練なんだろ……」
ジャンヌ「どうだろ……でも、どんな試練でも大丈夫だと思うよ」
リーフ「う、うん!そうだね!」
マリア「それにしても、この塔、あとどれくらいのぼるのかなぁ?」
マリン「!?ちょっと!あれ」
みんながマリンの方を見ます。
マリンは、上の方を見ていました。
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第65話 最後の試練の前に
マリン「!?ちょっと!あれ」
みんながマリンを見たとき、マリンは上の方を見ていました。
8人がマリンの視線を追うように、上を見ました。
いつの間にか塔の天井が見えるところまで近づいていました。
そして今、その天井が、真っぷたつに割れて、わかれていきました。
ジャンヌ「天井が……開いてるの?……」
キャッツ「雲よりも高い塔の、てっぺんまで来ちゃったってことね」
マリア「外に出るってことよね」
リーフ「どんな試練なんだろう……」
ローズ「誰が一番早く降りられるか、とかかなぁ?(笑)」
フィスト「あたしらで競ってどうすんのよ」
サリー「今までよりも、もっと厳しい試練なんだよね……」
ブラド「そうとも限らへんよ、なんとかなるって!知らんけど(笑)」
最初は小さくしか見えていなかった空が、だんだん近づき、大きく見えてきました。
そして9人が乗っていた床は最後までのぼりきり、塔の天井になったのです。
塔の頂上では、周りに何もなく、風が吹いています。
ジャンヌ「みんな、気を付けてね!風けっこう強いよ」
リーフ「高いとこ、こわい……」
キャッツ「リーフは森育ちだもんねー」
マリア「みんなで手をつないで、固まりましょう」
フィスト「それがよさそうね」
9人は天井の中央に集まり、円形に手を繋ぎました。
すると、声が響きます。
『最後の試練を始める前に、お前たちの旅について教えよう』
9人の周りに突然、7つの台座が、フッと現れました。
サリー「……旅について?」
『お前たちは、ふたたび世界の空に虹を架けるために、この塔から旅立つ……虹をよみがえらせるためには、世界に散らばる7つのオーブを、今周りに現れた台座に置かなければならない』
声にこたえるように、7つの台座が、ぼんやりと光りはじめました。
7つの台座、それぞれ違った色の光を放っています。
赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫
マリン「きれい……不思議な色……」
ジャンヌ「この、キューブの色だよね」
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第66話 9人の使命
ジャンヌ「この、キューブの色だよね」
ジャンヌの声に、8人は自分の首から下げられたキューブを見ました。
フィスト「うん、ほんとだね」
サリー「虹の色だよね……お師匠様が言ってた」
マリン「ってことはさ、今から世界中を旅して、7つのオーブを集めて、もう1回ここに戻ってこなきゃいけないってことだよね?」
マリア「長い旅になりそうねぇ」
リーフ「ねえ、ローズちゃん、オーブって、なに?私、森育ちで……」
ローズ「え?う、うーん、なんて言えばいいのかな?」
ジャンヌ「森育ちじゃなくても説明難しいよねー」
サリー「なんていうのかな?宝珠?ふしぎな力を持った玉みたいなので」
リーフ「ふーん……ありがと。それを7つ集めるのね」
キャッツ「ドラゴンボールみたい(笑)」
フィスト「やめて(笑)」
『……魔法使いの少女よ』
サリー「!は、はい!」
マリア「そんな緊張しなくていいの」
ブラド「実は優しいおじさんやで」
『……魔法が使えるのはお前だな。お前にひとつ魔法を授ける。この場所への帰還魔法だ』
空に、ぼんやりとした白い光の玉が出てきました。
光の玉はゆっくりと降りてきて、サリーの目の前で、フワフワと浮かんでいます。
ローズ「これが、魔法?」
サリー「……帰還魔法って……空間を飛び越えるんですか?みんなを連れて?……そんなの、使ったことないです」
『そう気負うな……7つのオーブがそろったら、魔法は勝手に発動する。そのときにこの場所を強く思い浮かべなさい。この場所と魔力を結び付けるのがお前の仕事だ……』
リーフ「確かに……サリーちゃんにしかできないね」
サリー「わ、わかりました」
宙に浮かんでいた光は、サリーの声に満足したかのように、サリーのキューブの中に、ヒュンッと入っていきました。
ジャンヌ「なんにしてもさ、ここまで戻る手間が省けるのは助かるね」
『……この9人を率いているのはお前か』
ジャンヌ「率いてない率いてない」
ローズ「えー!率いてるよー!」
フィスト「うん、率いてるね」
ジャンヌ「率いてないってば!」
キャッツ「率いてよぉ~!(笑)」
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第67話 旅立ちの終わり
ジャンヌ「あのさ、率いてるかどうかは置いといて、私に何の用なの?」
『お前が魔法の地図を持っているな?』
ジャンヌはそう言われて、懐から地図を取り出しました。
国王から託された、不思議な、魔法の地図です。
ジャンヌ「これね?キューブをかざすと、次の目的地がわかるっていう、魔法の地図でしょ?」
『そうだ。その地図も、キューブの中に収めることができる』
声が言い終わると同時に、ジャンヌが手に持っていた地図が、ヒュンッとジャンヌのキューブの中に入ってしまいました。
ジャンヌ「え!?これ、取り出せるの?」
『もちろんだ。取り出したいと願えば、それで出てくる』
ジャンヌ「ほんと?ん~……あ、ほんとだ、出てきた」
ローズ「じゃあ、あとの7人のキューブに、オーブをひとつずつ入れられるってこと?」
フィスト「あー!ほんとだ!数合うわ」
『それでは最後の試練を始める……魔法の地図にキューブをかざせ』
ジャンヌが地図にキューブをかざすと、不思議な色の光が、地図の一点を指しました。
旅立ちの塔から、海を越えた先の陸地の一点です。
そこには、山が描かれています。
緑豊かな山ではありません。
山頂からふもとにかけて、赤い筋が描かれています。
ブラド「これって……」
マリン「……火山よね」
キャッツ「えー!暑いのー!?」
マリア「熱いのよ」
『旅立ちの塔、最後の試練は、そこに行くことだ』
リーフ「え?それだけ?」
ローズ「意外と簡単?(笑)」
フィスト「バカ言わないの。この塔のてっぺんからどうやって行くのよ」
サリー「確かに……塔を降りるのはいいとしても、海も越えるんだよね」
ジャンヌ「マリン、この塔から海を渡るのって、どんなもん?」
マリン「この海はそこまで広くないけど、かなり激しく荒れる海域だから、船で渡るなら遠回りしなくちゃいけないよ」
『力の試練、知の試練を乗り越えたお前たちが挑む最後の試練は、勇気の試練』
サリー「……勇気」
ブラド「うそでしょ?」
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第68話 勇気の試練
サリー「……勇気」
ブラド「うそでしょ?」
9人が塔の外周に近づきます。
眼下に雲が見えますが。
マリア「飛び降りろってこと?」
フィスト「いや、飛び降りろというか、飛んで海を渡れってことじゃないの?」
リーフ「そうだよね、試練は、『次の目的地に着くこと』って言ってたし」
キャッツ「ていうかこれどんだけ高いのよ」
マリン「雲なんて上から見ることがほとんどないからさ、雲よりもどのくらい上にいるのかもわかんないよね」
サリー「えっと、浮遊石の結晶を使ったら、ゆっくり降りれるから、ケガはしないと思うけど……」
ブラド「おー!そうやん!」
ジャンヌ「たしかそれって、術者と離れたら効果が弱くなるのよね?じゃあ、サリーとくっついてればいいわけ?」
サリー「うん……直接でも間接でもいいから、9人がそれぞれ手をつないでいれば、みんなで浮けるよ」
ローズ「すごい!楽しそう(笑)」
リーフ「9人で手をつないで空飛ぶんだね♪」
サリー「あ、でも……9人だとやっぱり、飛ぶというより、ゆっくり落ちることになると思う」
フィスト「ってことは、飛距離を伸ばさないといけないってことね」
マリア「あ、テント、使う?」
ジャンヌ「なにそれ?」
マリア「私が城下町で買ったの。テントは骨組みと布だから、組み合わせれば……」
キャッツ「あー!ハングライダーみたいになるね!」
マリン「それならかなりの距離を進めそうだね。あとは風をどうとらえるか、だけね」
ブラド「マリンよろしく」
ローズ「そっかぁ、船乗りだから」
マリン「いや、まあわかってたけどさ」
ジャンヌ「じゃ、さっそくやっちゃおうか。テントを分解してハングライダーを作ろう」
リーフ「む、むずかしそう……」
フィスト「ローズ、作り方本で読んで覚えてるでしょ?」
ローズ「えっと、うん……じゃあまず」
フィスト「ほんとに覚えてるんだ……」
サリー「あ、あの……ちょっといい?」
みんながサリーに注目します。
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第69話 今日はここまで
ハングライダーを作ることになった9人ですが、サリーが声を上げました。
サリー「あ、あの……ちょっといい?」
みんながサリーに注目します。
フィスト「?どうしたの?」
サリー「えっと、今日はもう、これくらいにしない?」
全員が目を見合わせます。
ジャンヌが懐から時計を出して見ました。
ジャンヌ「午後4時か、たしかに、1日動きっぱなしだったしね」
キャッツ「サリーはたくさん術を使ったから、疲れてるよね?」
リーフ「そっか……力の試練では防御力アップの術と、フィストちゃんに浮遊術かけてたし、その後はフィストちゃんとジャンヌちゃんに回復の術も使ってた……」
マリア「実は塔までの道でも、サリーはブラドのために、日射し避けの術も使ってたもんね?」
ブラド「そうなん?!」
サリー「う、うん」
ローズ「すごい……そんなに頑張ってたんだ……」
ジャンヌ「そうだね、休もう。サリー、話してくれてありがとう」
キャッツ「気づかなくてごめんね」
サリー「ううん!ありがとう……」
ジャンヌ「マリン、ここから次の目的地の火山まで、空を飛んでいったとしたら、どれくらい?」
マリン「……4時間はかかると思うよ」
フィスト「サリーは今度は4時間も術をかけっぱなしになるのか……」
サリー「大丈夫だよ。1日ぐっすり寝て休めば、大丈夫!」
マリア「じゃあ今日のところはテントをハングライダーに改造するのはやめて、テントとして使おっか」
リーフ「でも、風が強くて……怖い」
ジャンヌ「そうねー、テントごと飛ばされちゃおしまいよね」
キャッツ「ねー!なんか小屋的なの出してよー!」
キャッツが虚空に向かって声を上げると、9人のそばの床の一部がゴゴゴゴと音を立ててせり上がり、小屋の形になりました。
ブラド「え、めっちゃええ人やん」
ローズ「すごーい、ちゃんとドアもある!」
ガチャ
マリン「ほんとだ!えー、やだー、中はあんまり可愛くなーい」
マリア「そういうセンスはない人なのねー」
サリー「んー、でも変に張り切っていろいろ付けても、それがダサかったら……」
『……………………』
9人はその日は塔の頂上で一夜を明かしました。
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