虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第2章 旅立ちの塔

第53話~第55話

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第53話
特技・防衛


壁や床から湧き出た影は、人や獣の形をしていました。
黒い塊の目の部分だけが白くなっています。

狼の形の影がひとつ、9人に襲いかかりました。
ジャンヌが素早く振った剣が、影を両断すると、影は宙に消えました。

ジャンヌ「みんな!固まって!バラバラにならないで、ゆっくり、そっちの壁まで進むよ!」

ジャンヌの指示通り、全員で壁際まで進みます。
たどり着くと、ジャンヌが盾を構えて言いました。

ジャンヌ「壁を背にして!私とフィストで正面を守るわ!キャッツとマリンは左右をお願い!4人で半円になって、5人を守るわよ!リーフとブラドとサリーは弓矢と術でサポートして!マリアとローズは私たちが見落とした敵がいたら教えて!壁や床からも出てくるから、そっちも見ててね!」

フィスト「オッケー!任せて」

フィストに続いて、みんなが返事をしました。
フィストはレイピアを、キャッツはダガーを、マリンは小振りな剣と銃を抜きます。

ブラドが宙に指を走らせ、魔法陣を描きます。

ブラド「おいで……我がしもべたち……」

使い魔たち「はーい!姫様、なにか手伝える?」

ブラド「ジャンヌとフィスト、キャッツとマリンが危ない役をしてくれてるの。4人の前の敵の邪魔をしてきて。うざったく飛び回るだけでいいわ。あなたたちも危なくないようにね!」

使い魔たち「はーい!」ヒューン

サリーは杖を床に立て、目を閉じ、呪文を唱えました。

サリー「地の精霊よ……我らに寄り添い……固き衣で守りたまえ……」

サリーの声に応えるように、9人のからだが光に包まれました。

キャッツ「へー!マリンって銃なんか使うんだ?女海賊だね、かっこいー!」

マリン「敵船への警告にしか使ったことないわよ!ワケわかんない魔物に効くかもわかんないし!緊張してるんだから話しかけないで!」

ジャンヌ「マリン、大丈夫よ、みんながいるんだから。あなたひとりに戦わせるわけじゃないの。危なくなったら私の後ろに隠れて。私の無駄にでっかい盾と鎧はこういうときのためのものだからね!」

マリン「うん……ありがと!」

リーフ「マリンちゃん、私も、弓矢苦手だけど、頑張るから!」

リーフが弓に矢をつがえました。
塔の中。床から、壁から、影が次々に現れ、9人に襲いかかります。

20分後

ローズ「すごい、敵がこっちの陣形を、全然崩せないでいる……」

マリア「う、うん。ジャンヌちゃんの指揮が、完璧なんだね……」



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第54話
力の試練


塔の中。床から、壁から、影が次々に現れます。

人や鳥や獣の形をした影が、9人を襲います。
しかし、ジャンヌの組んだ陣形は影たちの猛攻を完璧に防いでいました。

『塔を守る者』の声が響きます。
『思索なき力は野盗と同じ……打開なき力は敗北に終わる……旅立つ資格があるか、試させてもらう』

ブラド「やばい……前衛の4人は確実に疲れてるよ……」

サリー「動きっぱなしの上に、神経もすり減らしてるもんね」

リーフ「ジャンヌちゃんたち!遠くの敵は任せて!目の前に敵がいないときは、息を整えてね!」

ブラド「ほらー!あんたたちもしっかり働きなさーい!怪我しても治してあげるから!」

使い魔たち「は、はーい!」

フィスト「フゥ……ありがと……みんな」

ブラド「マリア、気づいた?」

マリア「うん、影の動き方が、最初のころと変わってるね」

ブラド「そうよね。最初は単調に攻め続けてたけど」

マリア「今は、緩急をつけて、こっちが休もうとしたところを狙ってきてる……そのせいで、前を守ってくれてる4人がすごく疲れちゃってる」

ローズ「そうなの?」

リーフ「ふたりともすごい……良く見てるね」

ブラド「使い魔だの子どもだの、ウロチョロ動くものを同時に見るのに慣れてるからかもね……冗談は終わってからゆっくりしよっか」

マリア「うん」

ローズ「でも、なんでなの?」

マリア「?な、なんでって?」

ブラド「その方が、向こうは戦いやすいからでしょ?」

ローズ「うん、それはわかるんだけど、どうやってタイミング合わせてるんだろ、あの人たち……喋ったり、アイコンタクトとかしてるわけじゃないのに」

ブラド「た、たしかに、そうよね」

マリア「でも、なにかでタイミングは合わせてるはずよね」

ローズ「もしかしたら、私たちにジャンヌちゃんがいるように……」

ブラド「動きを指示してるやつがいる?」

ローズ「そんな気がするの……どんな方法かはわからないけど、その、指示役をなんとかすれば、もっと楽になるかも」



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第55話 力を合わせる


ブラド「動きを指示してるやつか……ちなみに、誰かわかる?ローズは」

ローズ「ううん、わかんない。見る限り、特別な見た目の影はなくて……」

ブラド「そうよね」

マリア「でも、早く見つけないと……守ってくれてる4人を、私たちが助けなきゃ!」

ブラド「サリー、気の流れとかで、わからない?」

サリー「……ううん、ずっと続いてる戦いのせいで、ここ、すごく気が乱れてて……ごめん」

マリア「謝ることないわ」

リーフ「あの……もしかしたら、あいつかも……」

ブラド「!?どれ!」

リーフ「え、えっと、ごめん、自信、あんまりないけど」

マリア「大丈夫、教えて」

リーフ「う、うん。あの、奥の」

ブラド「あれか……なぜ?」

リーフ「えっと、動物とかの群れがそうなんだけど、群れのリーダーって、群れ同士の争いのときも、あまり前に出ないし、いつも仲間に周りを守らせたりするの……あの奥の影だけ、さっきからずっと、前に進まないし、良く見たら、仲間の後ろに隠れてるように見える」

ブラド「……リーフ、やるじゃん。十分よ。ありがと。後は任せて。使い魔!奥のあいつに攻撃仕掛けてみて!」

使い魔「は、はーい!」ヒューン

ブラドの使い魔が奥の影を攻撃した瞬間、すべての影の動きが一瞬止まりました。

使い魔「こ、こわーい!これ以上は無理ですー!!」

ブラド「ありがとー!もういいわ!……これで決まりね。あとは、あいつを倒すだけ、だけど」

サリー「あんなに遠くにいたら……」

フィスト「私が行く」


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