悠太と仁と、夏の空

もちもち

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第6章 仁のこと

仁のこと

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ガラガラガラ・・・

「ただいま~」




ダダダダダダダダダダ!!
ドダダダダダダダダダ!!


「いよーう!!悠太!寂しかっただろ~?」
「ダロ~?」


悠太が玄関を開けるなり、走ってきたのは、従兄弟の和也と華だった。





「なんだよ和也。帰ってくるの遅すぎ。」
「仕方ないだろ~。僕にだって付き合いってもんがあるんだからさ~。」


「しっかし、みんなに聞いたぞ~」
「なにを?」
「悠太、ずっとひとりぼっちで遊んでたんだろ?」


「はあ?んな訳ねーだろ。仁とずっと一緒だったし。」
「・・・仁?誰?」


「え?山田仁。近所のヤツだろ?オレのこと知ってたし。結構良いヤツだったから、一緒に遊んでたんだよ。」




「それはねーって。」
「なんでだよ?」

「だって、この辺の子供、全員キャンプ行ったし。お前だって知ってんだろ?子供少ないって。名前知らないヤツなんかいねーよ。」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「悠太、化かされたんじゃねーの?」
「ひゃーーーー!ばーちゃん!!悠太がオバケ見たって!」






華が大きな声で、おばあちゃんを呼んだ。



「オバケじゃねー!待て!華!」
「おっばっけ!おっばっけーーーー!きゃはははははは!」


ドタドタドタ!
ダダダダダダダダダダ!





「こりゃあ!!!なに騒いどるかあ!!!!」

おばあちゃんの怒り声に、悠太と和也と華が、仲良くビックリした。






「ばあちゃん聞いてよ~。華が仁のこと、オバケとか言うんだ。ちょっと叱ってやって!」


「・・・・・・ん?・・・仁?」

おばあちゃんが、キョトンとして聞いてきた。






「なんか悠太ってば、この2日、『山田仁』ってヤツと遊んでたって言い張るんだ」

誰よりも早く、和也が答えた。


「だってホントだし。」








「・・・山田?・・・仁?」
「?・・・そう、山田仁。」







「・・・・・・・・・そうかぁ、・・・・・・仁に会ったんかぁ。」

おばあちゃんが、ひとりでぶつぶつと、つぶやいている。
悠太と和也と華が、顔を見合わせた。




そして、おばあちゃんが


「悠太ぁ、ちょっとおいでぇ。」


と、悠太を連れて、部屋に行った。
おばあちゃんが古いタンスをゴソゴソして、1枚の写真を取り出して、悠太に見せてくれた。






「悠太が遊んだのは、この子かい?」
「あ!そうそう仁だよコレ!」





「・・・・そうか、そうかぁ」



おばあちゃんは、顔をクシャッとさせて。


笑ってるような・・・
泣いてるような・・・


不思議な表情をした。









「ばあちゃんは、仁のこと知ってんの?和也は知らないって言うんだぜ」




「う~ん、そうだねぇ。和也は知らないかもねぇ。」
「?」



「この子は、・・・・・・仁は、ばあちゃんの弟だから」

「・・・・・・・・・へ?」








「仁はなぁ、11才で亡くなったんだ。病気でねぇ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」










「悠太、仁はどんなだったかい?」


「え?・・・・・・っと、普通に元気な感じ・・・」

「そうかぁ、元気だったか。今は元気なんだねぇ。そうかぁそうかぁ・・・」







おばあちゃんは、微笑みながら、ちょっとだけ涙ぐんでるように見えた。







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


しばらく、ふたりとも無言・・・だった。







「悠太ぁ、明日はみんなでお墓参りに行くだろう?」

「・・・うん」
「同じ寺に、仁のお墓もあるから、参ってやってもらえんかな?」




「・・・・・・・・・・・・う・・・ん」


悠太は、思うように言葉が出なかった。

おばあちゃんの部屋から出ると、和也と華が待っていて、色々聞かれたけど、何も答える気にならなかった。
そして、悠太は、自分の布団がしかれた部屋に戻ると、ボフン!と布団に倒れ込んだ。


散々、遊んで、疲れているはずなのに、ちっとも眠気はこない。



「仁・・・・・・・・・・」

ぼんやり呼んでみても、それに応えるものもなかった。
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