お酒嫌いの黒服さん

Tny

文字の大きさ
上 下
3 / 4

お酒ってエタノールじゃん

しおりを挟む

「ハルトくん、すごいねここ」

客間に案内されたセイはじっとしていられない性格のせいか、掴んだハルトくんの手をブンブン振ってる。ハルトくん酔ってるかわいそう。それにしても通された部屋は、先程の店内の様子と違う明るく"和"を感じさせる内装である。

「ここ店長さんの部屋でね、店長さん和風好きらしくて結構手が込んでるらしいよ」
「和風好きなのか、俺のじーちゃんと一緒だ」
「あ、店長さんはまだ若いよ!30代!まだ!」
「なるほど、若いのにこんないい部屋あるなんてどこぞの凄いやつに違いないね、ハルトくん」
「そんな噂あったよーな、、、」

この2人テンションやら周波数やらが一緒らしくて気が合うらしい、西日本と西日本的な感じか。
セイは、店長さんこんな内装好きならたぶんクソ厳ついサングラスかけた熊みたいな人だろうとか、仰々しい花柄のシャツにアクセサリージャラジャラなちょっとヤクザ系の強面店長さんだろうとか、まだ見知らぬ店長さんの姿に想像を膨らませながら、ハルトくんとわちゃわちゃしていたところ、

「待たせたね、橋元くん」
「あ、てんちょ、、、

ドア開いて、強面の割になかなか優しい声だなぁとか思って振り返った、振り返ったんだが。
目の前に強面なんか存在せず、なんならスラっとしたインテリ眼鏡系イケメン、メガネはちゃんと鍵付きのウィンドウで販売されてる一番高いやつたぶん、だってなんか煌いてる。

「すみません店長さんが予想を外に超えて予想外すぎて瞳孔開いてましたこんにちは橋元誠です。パパ、、父は橋元港です」
「なんだか随分いい個性持ってるね、橋元くん。
店長の美澄です、今日はよろしくね」
「よろしくお願いしますミスミさん、
あ、これ面接になるんですかね、えと、履歴書です、よかったらどーぞもらってください!」

ありがとう、といって受け取る店長さんの手はう、、、美しい高いクリーム使ってるきめ細やかな指をしていて、その手の持ち主は目の前の男のものとは思えない超すーぱー履歴書を見て思わず二度見した。隣に座ってたハルトくんも店長さんの横からその履歴書をチラッと見て騒いでた。ハシくんがこんな人のわけない!!!って、失礼だなおい。

「一応、橋元社長の甥とは聞いていたけど、こんな学歴持ってるなんてね」
「あ、叔父さんからなんか聞いてました?」
「社長経由で君のお父さんから連絡あったんだよ、息子を引き取ってくれないかって」
「すみませんうちのパパ勝手で、」
「いや、橋元くんはうちにはもったいないくらいの学力もルックスもあるし大歓迎だよ」
「寛大!ありがたいです!
あ、でもひとつ、ちょっと問題がありまして、」
「どんな問題?」
「お酒飲まなくても大丈夫ですかね?」


何を隠そう、セイの弱点はお酒である。酔う酔わない以前にアルコールを受け付けないらしい。本人曰く、お酒のアルコールってエタノールじゃん。エタノール飲んでるんだよ!やばくない?無理!怖い!らしい。実は中学の実験の時にガスバーナー使った実験でエタノールが爆発して燃えかけた経験のせいでエタノールが怖くなり、それを体に入れるとか自殺行為!ということでお酒が無理だという。
ノンアルコールとか5%以下の鼻に抜ける感じがないお酒ならエタノール感がないから行けるけど、世にゆうテキーラ、ビール、ワイン等については事務所NG(勝手に言ってる)

「___んー、お酒が飲めないのは問題大アリだね」
「あれま」
「そーだね、ボーイから始めるってのは?」
「ボーイ?」
「ここでいうカオルみたいな、片付けだったり客引きが仕事になるね、黒服とも言うけど、黒の服の人いでしょ?」
「おお!カオルさん!黒服!」
「まぁホストと比べたら給料も下がるし、忙しい部分もあるけど、ホスト見習いの子もいるからどうかな?」
「いいですね!楽しそう!黒服さんなります!
よろしくお願いします店長!」

そんなこんなで明日から働くことになったセイはこの店に訪れた時から気になっていたことがある。
店名のpetaleペトゥルだ。
なんだかなぁ、、、うーん。

「ねぇ店長さん、気になってること聞いてもいい?」
「いいよ、なにかな?」
「なんでpetaleなの?花びらは散るものでしょ?」
「___ラテン語の教養があるのかい、驚いたな」

petaleの意味はラテン語で花びら。いつかは散ってしまうものなのに、そんな悲しげな名前をつけたことが不思議だった。

「___確かに散ってゆくのは寂しいこと、でも来年の開花を待つのは風情があってとても楽しみなことだ。花びらであるお客様を楽しみに待つ、素敵なことだと思った。僕は散り際が一番美しい、それは花も人も。だからpetaleにしたんだ」
「ほぇ、いろいろ意味があったんだ。なんかごめんなさい」
「こちらこそ、初めて聞かれたから真面目に答えちゃった。密かに思ってたことだからちょっと恥ずかしいけど
もし君ならどんな名前にする?」
「うーん、花なら
______apertio floris アペルティオーフローリスなんでどうですか?」
「開花、か。どうして?」
「お客様が太陽ソールでキャストがフロースって感じ?」
「なるほど、素敵だね」

若干ポエム気質な店長さんに合わせてレベルの低いポエムをポエムってみたけど、ちゃんと伝わったみたいだ。結局店長さんはお客様ファーストの素晴らしい思想の持ち主でした、見習ってポエム書こうかな(違う)
なんかハルトくんがなんかちんぷんかんぷんって感じで煩いけど、ほっとく。ぶすくれてるハルトくんもかわいいから、いいね、かわいい。



黒服にあうかなーあしたからがんばろーっと



_________________



ハシくん呼びみんなにさせたい(願望)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...