お酒嫌いの黒服さん

Tny

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挫折って"THE・折"ってか

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ここから本編です

____________________________


てなわけで来てみました、ホストクラブ。
ここはpetaleペトゥルってとこ。

実はね、よーたと話した後にホストクラブで働きたいなぁって家族だんらんの時言ったわけさ。
そしたら、にーちゃんとパパの顔が引きずってさ、ビックリドッキリだよ。
それで今しかできないんだぞっ!ってことめちゃくちゃアピールしたわけ、そしたらパパが、セイはうちで働くんじゃないの!?とか言われてさ、確かに職場体験とか何回も言ったけど、食堂のおばちゃんとめちゃくちゃ仲良くなったけど、働くとかいったっけ、とか思って言ったらパパが叔父さんに電話し始めて。
その間ににーちゃんから考え直したほうがいいって100回ぐらい言われて100回考え直してみたけど、ホストなるしかねぇっていう使命感増えて、いいホストないかなってネットで調べ始めたら、パパが「いいホストクラブあるからそこ行きなさい!」って焦る焦る。
なんで知ってるの、パパ。そんな趣味あったなんて今ママ旅行だから良かったね。俺口軽くないから大丈夫(嘘)だけど、なんか誤解生むくないそれ!?って言ったら「圭吾のオススメだ」とか言うから、若干呆れながら言うから、あれ叔父さんたしか独身、、、あ、ってなんか気まずくなるじゃん?
まぁ結局その教えてくれたホストクラブのpetaleってところは叔父さんの取り引き相手らしかったからよかった。

てな感じで、丸く収まったわけさ、でも家族会議で徹夜は無いと思うよ切実に。
流石にホストクラブ相手に徹夜したやついったらあかんやろ!って思ったから行くのはその家族会議の2日後になりました。2日間寝まくったおかげで肌の調子ばっちぐー。むくでなんかないよ、うん。




「とりあえず来てみたけど、あ、パパなんか言ってたな、」
「こんにちは~ご予約はされてますか?」
「ちょっとまってもらっていいですか?思い出したいことここまで来てるんで、」

案内役らしきボーイの言葉にちょうど眉あたりを刺しながら答える、あ、

「思い出しました、No.1出してください」
「_____は」

そういえば言われてたのだった、パパに「まずここについたら1番上の人に会って、そのあとセイの名前とパパの名前を言ってごらん」って。パパの言ってるのは店のトップ、つまり店長という意味なのだが、No.1と言ったために案内役もホストの話だと認識したようで、早速食い違い。もちろん本人は気づいていない。アホだし。

「えぇと、すみませんお客様。予約はされていますか?」
「予約がいるんですか?」
「予約なしでも受付はできますが、No.1となりますと、他のお客様の接客中なので少々お待ちいただくこととなりますが、よろしいでしょうか?」
「待ちます待ちます!」

少し困惑気味だったボーイも笑顔を取り戻して、でわ案内します、と進み始み、その後を興味深そうについていくセイ。
薄暗いが上品な内装と明かり、キラキラと輝くシャンデリアに甘い匂い、いい男たちをキョロキョロみながらのセイはどこか楽しげな笑みを浮かべて歩きながら

「なんか怪しげなパーティー来たみたいでドキドキする!」

「__アハッ、そんな事言われたのお客様が初めてですよ」

一瞬驚きつつ、吹き出したように笑いながら言った案内役にセイは首を傾げて、よくわからないような顔をしている。みんなこれみたらそう思う気がする、とか思ってるらしい。

「__お客様はホストクラブは初めてでしょうか」
「初めてです、あ、カード使えなかったりします?」
「カードご利用になれますよ。現金で払うには大きな額になりますからね、」

なんだかニヤッてる案内役さんに、イケメンだなって思いつつ、ごめんパパ、カードの履歴見てびっくりしないでね、と心の中で謝っておく。

「あ、ところで案内役のおにーさん名前は?」
「__私の、名前ですか?」
「イケメンなおにーさんの名前は聞かなきゃ損だっておじーちゃんが言ってました(嘘)」
「個性的なおじいさまですね、、、
ボーイですので、普段お客様からお名前を聞かれないのでびっくりしました。」
「えーもったいないですねそのお客様」
「ありがとうございます、私はカオルと言われています」

アホすぎるがかなり美形の部類に入るセイからの言葉に少々照れながらも案内を続け、カオル、と名乗る男は一席にセイを案内した。

「カオルさんありがとー、ほいでほいで、何歳?
おにーさんだったりするのかな」
「私は26歳ですね、この店の中では年上の方です」
「げ、にーちゃんより上じゃん、ごめんなさいカオルさん童顔だね」
「構いませんよ~良ければお客様のお名前教えていただけますか?」
「はいはい!俺、橋元誠22歳!ハシって呼んでね!」
「ハシ様、ですね。何か御飲み物は?メニューはこちらです」
「ワワワ、え、すごい!おいしそう!」

本人は美味しそうとか言ってるが、メニュー表には写真などなくずらっと名前が載ってるだけであって、なんかいい感じのカタカナが並んでたら美味しそうに見える種類の大変珍しい人種だったみたいだ。そんなセイの様子を微笑ましく見ながらも、大卒の若者がこの店に来れるほどお金に余裕があるのか疑問に思うカオル、本人は就職に来ているつもり、という混沌。誰か気付け。

「ねね、カオルさん、超アルコール濃度低いやつある?なんならノンアルレベルの」
「それならこちらはいかがですか?」
「じゃそれで!」

少々お待ち下さい、と奥に下がったカオルさんを見送りながら、あれ、就職しに来たのにお金使うのかな、あれれ、ホストって厳しい世界なのね~、なんで呑気にのほほんとしていると。

「あ、男の人だ!珍しい!」
「かかかっこいいいいい!!かわいいいいいい!」

隣にずっと座ってきたのは、顔が豆サイズのくっそキリッ顔な笑顔に母性くすぐられる系イケメン(セイ談)。人懐っこいタイプ、これはモテる。

「アハハ!ありがとおにーさん~って、おにーさんもイケメンじゃん!」
「いやいや、あなた殿と比べたら目くそであり鼻くそです。」
「面白いおにーさん!サイコウ!
僕ハルトっていうの!よろしくね~」
「よろしくハルトくん!橋元誠22歳!ハシって呼んでね~」
「ハシ、、おっけ!じゃあハシくんね!」
「あれ、ハルトくんはホストさんなの?」
「そだよ~僕お酒も飲める21歳!
一応ここのNo.3のホストやらせてもらってます!」
「うげ、すりー!すごいハルトくん!」

確かに納得できる、懐の深さと、このかわいさとかわいさとかわいさ。一家に一匹ハルトくんレベルのかわいさ(セイ談)。
セイはあまり分かってないだろうが、実はホストクラブ業界でもトップレベルのpetale。そのNo.3だから思っている500倍すごい。常連さん曰く、天性の人タラシ。街でおじーちゃんおばーちゃんが荷物持ってたら助けちゃうタイプで赤ちゃんが泣いてたらあやしちゃうタイプのとにかくいい奴。

「そーいえばハシくんどーしてここきたの?」
「あ!聞いてよハルトくん!俺最近大学卒業したんだけどさ、なんかホストならなきゃいけない使命感にかられてホストなろうと思ってパパとにーちゃんに相談したのよ、そしたらにーちゃん超反対するし!パパはパパで変な勘違いしててさ!そのあと徹夜で家族会議して、パパからここに行きなさいって、とりあえず店のトップの人に俺とパパの名前言ってって言われたん
「______ええええええ!!そっちだったのハシくん!ホスト志望!?なんで普通に客してるの!?」
「あれ、ホストクラブ業界はそんなもんだと思ってたけど違うの?」
「いや就活でお金かからないから普通!
え、なに、店のトップって店長さんじゃん!どうしてこっちきちゃったのハシくん!」
「カオルさんにNo.1出してくださいって言ったよ?」
「確かに、No.1だけど!なんか違うたぶんホストのNo.1来ちゃうよその言い方!」

天性の人タラシと天性のアホ。周りから見れば目の保養には変わりないが、いつもは惑わす側のホストが惑わされるという_____もう全部アホが悪い。

帰ってきたカオルさんも、いつも温厚でニコニコな超子犬系No.3ホストが焦ってる様子に焦焦焦。
とりあえず2人とも奥の客間に行ってもらった。周りのお客はセイの顔面偏差値からホスト同士の戯れだと思って微笑んでた、らしい。




ここからが本当の就活である。



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