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第一章 王弟コーディ
顔
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箒乗れる? ついてきてよ、教室まで連れてってあげる、と言われ、地面を蹴って飛び上がる。ちなみに横座りである。危ないことには危ないのだが、制服はスカートであるためこれしか出来ない。
関係ないが、私は前世で培ったマナーとともに、子爵家で叩き込まれたマナーもまた習得している。まあ本物の貴族令嬢に比べれば劣るが、ギリギリお目汚しはしない程度に収まっているのではないか、と自惚れたい。
飛びながらふと考える。そういえば先ほどから気になっていたが、コーディは私の美貌を見ても全く態度を変えた様子がない。分厚い瓶底眼鏡のせいじゃないか? 今すぐ取れその眼鏡。そして目に焼き付けろ。千年に一度の美少女だぞ。
「なに? この眼鏡が気になってるの?」
私が眼鏡をじっと見ていると、コーディが問うた。私が頷けば、コーディは勿体ぶったように仕方ないな、と言いながら髪を掻き上げ、眼鏡を外した。
「ほら、見ていいよ」
わ、ワーオ……!!!!
私はカッと目を見開いた。とんでもない美形がそこにいた。
切れ長の目は悪戯っぽい光を帯びて弓なりに笑んでいる。瞳は際の部分がうっすらとオリーブ掛かり、中心部の艶やかな栗色と見事な調和をなしていた。目の上、眉毛一つとっても麗しい。約束された高い鼻梁はやはりきめ細やかな白。唇は薄く、淡く色付いている。
「どう?」
コーディの問いに、私は叫んだ。
「美しい! 美しいですコーディ先生! この世の至上の職人たちが何人集まっても、この美しさを前にしては魅入られ、憑りつかれたようにその生涯全て先生のご尊顔を描写するためだけに費やしてしまうことでしょう……!!」
「よく言われる」
「そうでしょうとも!」
私は力強く肯定した。いやあいいもの見たなあ。
「ありがと♡ ……あ、でも、君も可愛いって意味なら世界一だと思うよ。俺はそっちには明るくないけど、俺と同じくらいの顔だし」
「私もそう思います」
私は深々と頷いた。リズ、いやメアリか? の顔は世界一可愛いからね。老若男女メアリに惚れろ。
「あとは、まあ。……いやこれは……うーん、まあいいか。言っちゃお。メアリ、君さあ、五色の証を持つ者って知ってる?」
知ってるも何も私はその人たちを攻略するためにここにいるが。
「はい、世界を左右する力を持つ五人ですよね。具体的に誰なのかは、私はまだ知らないのですが……」
昨日学園長にせっかく渡された冊子だったが、私は昨日リズとかなりのゴタゴタがあったため、実はまだ読んでいないのだ。今日帰ったら読もう、と思って、そのまま寮に置いてきてしまった。
私の言葉に、コーディはニンマリと微笑んだ。嫌な予感がする。私は身構えた。いや、まさか、まさかとは思うが……
「じゃあ教えてあげるね! なんと俺は……その一員なんだよ! 凄いでしょう」
嫌な予感が的中した。つまり私はこの人を惚れさせなきゃいけないのか? 本当に? 泣きそう。
私は深いため息をついた。
関係ないが、私は前世で培ったマナーとともに、子爵家で叩き込まれたマナーもまた習得している。まあ本物の貴族令嬢に比べれば劣るが、ギリギリお目汚しはしない程度に収まっているのではないか、と自惚れたい。
飛びながらふと考える。そういえば先ほどから気になっていたが、コーディは私の美貌を見ても全く態度を変えた様子がない。分厚い瓶底眼鏡のせいじゃないか? 今すぐ取れその眼鏡。そして目に焼き付けろ。千年に一度の美少女だぞ。
「なに? この眼鏡が気になってるの?」
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「ほら、見ていいよ」
わ、ワーオ……!!!!
私はカッと目を見開いた。とんでもない美形がそこにいた。
切れ長の目は悪戯っぽい光を帯びて弓なりに笑んでいる。瞳は際の部分がうっすらとオリーブ掛かり、中心部の艶やかな栗色と見事な調和をなしていた。目の上、眉毛一つとっても麗しい。約束された高い鼻梁はやはりきめ細やかな白。唇は薄く、淡く色付いている。
「どう?」
コーディの問いに、私は叫んだ。
「美しい! 美しいですコーディ先生! この世の至上の職人たちが何人集まっても、この美しさを前にしては魅入られ、憑りつかれたようにその生涯全て先生のご尊顔を描写するためだけに費やしてしまうことでしょう……!!」
「よく言われる」
「そうでしょうとも!」
私は力強く肯定した。いやあいいもの見たなあ。
「ありがと♡ ……あ、でも、君も可愛いって意味なら世界一だと思うよ。俺はそっちには明るくないけど、俺と同じくらいの顔だし」
「私もそう思います」
私は深々と頷いた。リズ、いやメアリか? の顔は世界一可愛いからね。老若男女メアリに惚れろ。
「あとは、まあ。……いやこれは……うーん、まあいいか。言っちゃお。メアリ、君さあ、五色の証を持つ者って知ってる?」
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「はい、世界を左右する力を持つ五人ですよね。具体的に誰なのかは、私はまだ知らないのですが……」
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「じゃあ教えてあげるね! なんと俺は……その一員なんだよ! 凄いでしょう」
嫌な予感が的中した。つまり私はこの人を惚れさせなきゃいけないのか? 本当に? 泣きそう。
私は深いため息をついた。
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