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再臨譚
40、親子そろっての協力要請
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地震から避難するため、月華学園よりも近くにあった土御門神社に避難した護たちだったは、やはりと言うべきか、周囲から避難してきた人々に目を丸くしていた。
「近所中から人が集まってるのか……」
「すごい人数だね……初詣のときよりすごいかも」
「まぁ、帰省したり旅行に出たりしてる人もいるからな。というか、それはどうでもいいんだ」
月美の言葉に返しながら、護は自宅の方へと向かっていく。
その後ろに続き、清たちも敷地の中を移動を始める。
社務所の裏へと向かい、自宅の玄関を開けると。
「おかえりなさい、二人とも。無事で何よりだわ」
雪美が安どのため息を漏らしながら、護たちを出迎えてくれた。
無事であったことに護と月美は安堵する。
「ただいま戻りました。あの、こちらの被害は?」
「表に避難者が来てるけど、何か手伝うことは?」
「待って待って。そんなにいっぺんに答えられないわよ」
だが、すぐに被害状況の確認と避難所運営の手伝いを聞いてくる二人に、今度は苦笑を浮かべる。
ころころと忙しく表情を変える雪美だったが、すぐにその笑みは消え、真剣な表情で聞かれたことを答えた。
「蔵の方がどうなってるかわからないけど、そこ以外は問題ないわ。いま、父さんが蔵の状態を見に行ってる。避難所の方はこれ以上、余震がなければ大丈夫のはずよ」
「よかったぁ」
「わかった、父さんの様子を見てくる。それと、一緒にいたからクラスメイトも連れて来たんだけど」
護にそう言われて、雪美はようやく、奥の方にいた清たちの存在に気づき、目を丸くした。
なにせ自分の息子は中学生になってから一度たりとも、友人を招待したことはないのだ。
地震があったということもあるのだろうが、それでも頑なに友人を招こうとしてこなかった護があっさりとここまでクラスメイト達を案内したことが意外すぎたらしい。
「あら、珍しいこともあるわね?なら、ちょっと腕によりをかけかおうかしら?」
「やめてくれ……女子二人はともかく、こいつは調子に乗るから」
雪美の反応に、護はため息をつきながら頼んでいた。
護の言う通り、佳代と明美はともかく、清はかなり調子に乗りやすい傾向にある。
仮に雪美が腕によりをかけてもてなしをした場合、そのことに味を占めて、何度も訪問してくるだけでなく、訪問するたびに御馳走を頼んでくる可能性が高い。
「ひっでぇな、まるで俺が拙僧なしみたいじゃないか」
「実際、そうだろ?」
「何を言ってるのかな?」
「あたしらのなかであんたが一番、欲望に忠実でしょうが」
「ごめん、フォローできない」
「頼むから、こういうときくらいフォローしてくれよぉっ!!」
いつものやりとりとはいえ、いつにもまして辛辣な様子に、清はいつも以上のショックを受けていた。
だが、護と月美はまったく気にする様子はなく。
「知らん」
「いつものことだから、する必要ないでしょ?さ、みんな、上がって」
「って、なんで月美が案内するの?普通は土御門なんじゃ……?」
「だって、護。これから、蔵のほうに行くんでしょ?」
「あぁ。すまんな」
明美の言う通り、本来ならば土御門家の人間である護が客人を案内するべきだ。
だが、護はこれから蔵の方へ行き、翼と話をしなければならない。
そのため、一応、客人という身分ではあるがしかるべき時に嫁ぐことになっている。
何より、明美たちよりも土御門家の勝手を知っているのだから、案内を買って出ることにしたようだ。
「気にしないで。行ってらっしゃい」
「あぁ。行ってくる」
護の謝罪に月美はまるで気にする様子もなく返し、護に行くよう促す。
そのまま四人の脇を抜けて、護は玄関を出て蔵の方へと向かった。
その様子を見ていた明美たちが。
「なんというか」
「夫婦みたいなやり取りだねぇ~」
「てか、実質的に夫婦だろ」
「……はぅぅぅっ……」
「あらあら」
からかってきたために赤面し、その様子を見ていた雪美が愉快そうに笑っていたことは言うまでもない。
月美がそんな状態になってしまっていることは知らずに、護は蔵に到着し、中へ入っていく。
「父さん」
「おぉ、護か。無事だったようだな」
「あぁ、うん。それよりこっちの方は?」
「ひとまず、問題なさそうだ」
蔵の中には壊れてしまった場合、最悪、封印していた妖が解き放たれてしまうようなものも存在している。
そういった物品の村長がないかどうか、確認していたのだが、ひとまずの所、問題はないらしい。
その言葉を聞いた護は、早速、本題に入る。
「さっきの地震だけど」
「あぁ。揺れと同時に、霊力の波のようなものを感じたな」
「てことは、何かが召喚された、とか?けど、地震が起きるもんなのかな?」
「それはわからん。だが」
護の質問に返しながら、翼は一枚の紙を取り出した。
「先ほど、調査局の光さんから連絡がきた」
「例の件?」
「あぁ、おそらくな」
自分の予測を話ながら、翼は護に手にしていた紙を手渡す。
その紙を受け取り、書かれている文章に目を通した護は、眉をひそめる。
「緊急招集?たったこれだけ?」
「そうだ。まぁ、このタイミングでの呼び出しだ。おそらく、最悪の事態になった可能性が高い」
翼のその言葉に、護はさらに眉を顰めた。
「近所中から人が集まってるのか……」
「すごい人数だね……初詣のときよりすごいかも」
「まぁ、帰省したり旅行に出たりしてる人もいるからな。というか、それはどうでもいいんだ」
月美の言葉に返しながら、護は自宅の方へと向かっていく。
その後ろに続き、清たちも敷地の中を移動を始める。
社務所の裏へと向かい、自宅の玄関を開けると。
「おかえりなさい、二人とも。無事で何よりだわ」
雪美が安どのため息を漏らしながら、護たちを出迎えてくれた。
無事であったことに護と月美は安堵する。
「ただいま戻りました。あの、こちらの被害は?」
「表に避難者が来てるけど、何か手伝うことは?」
「待って待って。そんなにいっぺんに答えられないわよ」
だが、すぐに被害状況の確認と避難所運営の手伝いを聞いてくる二人に、今度は苦笑を浮かべる。
ころころと忙しく表情を変える雪美だったが、すぐにその笑みは消え、真剣な表情で聞かれたことを答えた。
「蔵の方がどうなってるかわからないけど、そこ以外は問題ないわ。いま、父さんが蔵の状態を見に行ってる。避難所の方はこれ以上、余震がなければ大丈夫のはずよ」
「よかったぁ」
「わかった、父さんの様子を見てくる。それと、一緒にいたからクラスメイトも連れて来たんだけど」
護にそう言われて、雪美はようやく、奥の方にいた清たちの存在に気づき、目を丸くした。
なにせ自分の息子は中学生になってから一度たりとも、友人を招待したことはないのだ。
地震があったということもあるのだろうが、それでも頑なに友人を招こうとしてこなかった護があっさりとここまでクラスメイト達を案内したことが意外すぎたらしい。
「あら、珍しいこともあるわね?なら、ちょっと腕によりをかけかおうかしら?」
「やめてくれ……女子二人はともかく、こいつは調子に乗るから」
雪美の反応に、護はため息をつきながら頼んでいた。
護の言う通り、佳代と明美はともかく、清はかなり調子に乗りやすい傾向にある。
仮に雪美が腕によりをかけてもてなしをした場合、そのことに味を占めて、何度も訪問してくるだけでなく、訪問するたびに御馳走を頼んでくる可能性が高い。
「ひっでぇな、まるで俺が拙僧なしみたいじゃないか」
「実際、そうだろ?」
「何を言ってるのかな?」
「あたしらのなかであんたが一番、欲望に忠実でしょうが」
「ごめん、フォローできない」
「頼むから、こういうときくらいフォローしてくれよぉっ!!」
いつものやりとりとはいえ、いつにもまして辛辣な様子に、清はいつも以上のショックを受けていた。
だが、護と月美はまったく気にする様子はなく。
「知らん」
「いつものことだから、する必要ないでしょ?さ、みんな、上がって」
「って、なんで月美が案内するの?普通は土御門なんじゃ……?」
「だって、護。これから、蔵のほうに行くんでしょ?」
「あぁ。すまんな」
明美の言う通り、本来ならば土御門家の人間である護が客人を案内するべきだ。
だが、護はこれから蔵の方へ行き、翼と話をしなければならない。
そのため、一応、客人という身分ではあるがしかるべき時に嫁ぐことになっている。
何より、明美たちよりも土御門家の勝手を知っているのだから、案内を買って出ることにしたようだ。
「気にしないで。行ってらっしゃい」
「あぁ。行ってくる」
護の謝罪に月美はまるで気にする様子もなく返し、護に行くよう促す。
そのまま四人の脇を抜けて、護は玄関を出て蔵の方へと向かった。
その様子を見ていた明美たちが。
「なんというか」
「夫婦みたいなやり取りだねぇ~」
「てか、実質的に夫婦だろ」
「……はぅぅぅっ……」
「あらあら」
からかってきたために赤面し、その様子を見ていた雪美が愉快そうに笑っていたことは言うまでもない。
月美がそんな状態になってしまっていることは知らずに、護は蔵に到着し、中へ入っていく。
「父さん」
「おぉ、護か。無事だったようだな」
「あぁ、うん。それよりこっちの方は?」
「ひとまず、問題なさそうだ」
蔵の中には壊れてしまった場合、最悪、封印していた妖が解き放たれてしまうようなものも存在している。
そういった物品の村長がないかどうか、確認していたのだが、ひとまずの所、問題はないらしい。
その言葉を聞いた護は、早速、本題に入る。
「さっきの地震だけど」
「あぁ。揺れと同時に、霊力の波のようなものを感じたな」
「てことは、何かが召喚された、とか?けど、地震が起きるもんなのかな?」
「それはわからん。だが」
護の質問に返しながら、翼は一枚の紙を取り出した。
「先ほど、調査局の光さんから連絡がきた」
「例の件?」
「あぁ、おそらくな」
自分の予測を話ながら、翼は護に手にしていた紙を手渡す。
その紙を受け取り、書かれている文章に目を通した護は、眉をひそめる。
「緊急招集?たったこれだけ?」
「そうだ。まぁ、このタイミングでの呼び出しだ。おそらく、最悪の事態になった可能性が高い」
翼のその言葉に、護はさらに眉を顰めた。
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