見習い陰陽師の高校生活

風間義介

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騒動劇

24、文化祭初日~気にしても仕方がないため、放っておくことにする~

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 思わぬタイミングで光と合流した護だったが、光は、探し物についての情報を渡すと、風のように立ち去ってしまった。
 もっとも、今度ばかりは深く関わるつもりがなかったため、護としては好都合だったのだが。

「……ねぇ、いまの賀茂さんだよね?何かあったの??」
「あぁ……あったというか、今まさに起きているというか……」

 そういえば、月美には説明していなかったな、と思い出し、どう説明したものか、と考えを巡らせていた。
 正直なところ、護としては月美に何も気にすることなく、文化祭を楽しんでほしいという気持ちが強い。
 だが、ここで事情を説明してしまえば、術者としての使命感が強い月美のことだ。人形とその人形を購入した家族の安否が気にかかって文化祭どころではなくなってしまうだろう。

「まぁ、けど、調査局が動いてるし、むしろ今回は俺がいると邪魔らしいから、動く必要はないらしい」
「……ほんとに?」
「あぁ。情報提供だけでいいってさ」

 月美は疑うような顔で問いかけてきたが、嘘は言っていない。
 何より、今回は政府の権力が必要となる場面に遭遇する可能性が高いため、一個人であり学生でしかない護では対応しきれなくなってしまう。
 そのため、今回は調査局にすべて任せることにしたのだから。

「ならいいけど……もしもの時は、行ってもいいんだよ?」
「あ~……まぁ、そうなっても、邪魔者だろうから、行かないと思う」

 これも別に嘘ではない。
 光からは無理に探す必要はないといわれている。
 仮に、光たちだけでは手に負えなくなった場合は、何かしらの連絡があるはずだ。
 連絡がないということは、今のところ、光たちだけで対処が可能であるということだ。
 むしろ、変に介入すれば、かえって光たちの邪魔になりかねない。
 ならば、無理に作戦に参加する必要はない。

「ま、そうならないことを祈るさ」
「ん~、まぁ、それでいいなら」

 どこか煮え切らない態度ではあるが、ひとまず、月美は護が打ち立てた方針に納得したようだ。
 そう感じた護は、心中で安どのため息をついた。

「んじゃ、いつまでもここにいるわけにはいかないから、次のところ、行こうぜ」
「それもそうだね」

 三十分も経過してないが、護が興味を引くものはなかったのか、このバザーで何かを買うつもりはないようだ。
 客でなければ、ただ邪魔なだけなのでさっさと立ち去った方がいいと判断したのだろう。
 もっとも、人が多く入ってきているため、不機嫌になってしまう前に教室から出ていきたいという思惑がないわけではないようだが。

「じゃあ、次はどこ行こう?」
「俺のわがままに付き合ってくれたんだから、今度は月美が行きたいところに行こう」
「え?いいの??」

 護の言葉に、月美は目を丸くして問いかけてきた。
 何も護の仕事がなくなったことを疑っているわけではない。
 だが、いつになく生き生きとした様子で準備をしていたように見えたため、もしかしたら楽しみにしているものがあるのではないか、と思っていたらしい。

「あぁ」
「楽しみにしてたのがあったとか、なかったの??」
「なんでそんなのがあると思ったんだよ?」
「ないよ。どっちかというと月美が楽しんでくれればそれでいいし」

 実際、現在の状況は護としてはあまり歓迎すべき状態とは言えない。
 文化祭や体育祭のような、不特定多数の人間が大勢入ってくるこの状況は、人間が好きではない護からすれば、頭痛の種でしかない。
 だが、月美に楽しんでもらいたいという気持ちの方が強いため、こうして表面上は何もないように装うことができている。

「護がそういうなら、それでいいけれど……わたしに楽しんでほしいからって、あんまり無理しないでね?」
「これくらい、無理でもなんでもない」

 強がっているわけでもなんでもなく、護はそう返していた。
 本当に無理をしていないのか、少しばかり心配そうな表情を浮かべてはいたものの、いつまでもここにいては迷惑がかかるということも確かなので、ひとまず、これ以上の口論はやめることにしたらしい。

 それからしばらくの間、二人は様々な教室の催し物を見て回っていた。
 護たちのような使用人喫茶ではなく、ただ単にコスプレをしているウェイターやウェイトレスが接客をしている喫茶店であったり、純粋なお化け屋敷であったり、文化祭に向けて作成した作品を展示したり販売している会場であったりと、様々な催しが行われていた。

 それら、校舎内の会場を見て回るうちに、時間は昼休みに入ろうとしていた。
 外ではすでにいくつかの部活動が実演を行い、部活紹介を行っているようで、校舎の中にいる来客は少なくなっていた。

「人が少なくなったな」
「そうだね……あ、失敗したかも」

 不意につぶやいた護の言葉に同意すると同時に、月美は困ったような表情を浮かべた。
 何が失敗したのか、首をかしげていると、月美は苦笑を浮かべながら、自分が犯した失態を明かしてきた。

「外の屋台にあるものでお昼にしようかなぁって思ってたんだけど、混んじゃってるよね」
「あぁ……なるほどな」

 屋内での催し物は、基本的に料理と言える料理を提供している場所が少ない。
 安全面から屋内は火気厳禁となっているため、料理を提供できないのだ。
 もっとも、抜け穴というものは、そこかしこにあるわけで。

「なら、クレープ屋があるみたいだから、そこにするか?」
「え……あぁ、おかずクレープ?」
「そゆこと」

 クレープを作るために必ずガスは必要というわけではない。電気プレートで事足りる。
 おまけに昨今のクレープはスイーツという枠を超えて軽食という域にまで手を伸ばしている。
 昼食としてもってこいだろう。
 そう考えてか、パンフレットを見ながら、そう提案してきた。

「なら、そこにしよう?もうそろそろ交代だし」
「なら、善は急げだな」

 護の提案に月美も賛同し、二人はそのままクレープ屋を催している教室へ向かっていくのだった。
 だが、無事に購入はできたものの、交代の時間まであまり間がないため、受け取ったクレープを手早く食べ、教室へと戻っていった。
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