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騒動劇
17、文化祭初日~開催宣言前でも準備は必要~
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文化祭当日となり、護たちは朝から最終準備に動き回っていた。
「おい、そっちの壁、はがれかけてるぞ!」
「テーブルの数、これでよかったよね?」
「看板の設置終わったぞ!」
「ならこっち手伝ってくれ!!」
開催日当日、ということもあって、いつになく慌ただしい怒号が飛び交っているのだが、動いている生徒の数は比較的少ないように感じられた。
それもそのはず。部活動や委員会活動の方へ向かったクラスメイトが多数いるため、当日はいつもよりも少ない人数で準備しなければならなくなっていたのだ。
だが、少人数でも今のところまったく問題なく準備が進んでいるように見えるのは、事前の準備はほぼすべて整っていたこともあってのことだろう。
結局、慌ただしく動いてはいたものの、開催宣言の十分前に全員、すべての準備を終わらせ、あとは開店を待つばかり、という状態になっていた。
むろん、その中には、執事服を着た護と、女給姿になった月美の姿もあった。
「いよいよか……」
「そうだね……護、大丈夫?」
「何が?」
「これからいろんな人が来ることが」
護が心なしか険しい顔つきになっていることに気づいたのか、月美はそう問いかけていた。
これから不特定多数の人間が来ることに、人間嫌いの護の精神が平静を保てるかどうかを心配しているようだ。
もっとも、護もその心配を見越していたのか、委員長をはじめクラスメイトたちには事前に、裏方中心にしてほしいということを伝えていた。
「……だから裏方中心にしてもらったんだよ」
「執事服は着てるけどね」
「……製作班の熱意に負けた」
月美のその一言に、護は遠い目をしながらそう返していた。
実際、護の求めもあってか、それともクラスメイトたちが護が接客には向いていないことを理解していたためか、護が裏方にまわることは決まっていたのだ。
だが、性格はともかく顔つきは整っているのだから執事服を着ないのはもったいない、という製作班一同の意見により、半ば無理矢理に執事服を着せられることとなってしまったのだ。
もっとも、人手が足りなくなった時には接客もしなければならない、という意見が出ていなかったわけではない。
人が足りなくなれば、必然的に護も表に出ざるを得なくなる。
むろん、護はそれを承知していた。
承知し、納得しているからこそ、こうして執事服を身に纏っているのだ。
もっとも、クラスの出し物に参加できる生徒は全員、コスチュームを着用することが義務となっていたので、どのみち、執事服を着ることに変わりはなかったのだが。
「まぁ、仕事である以上、できる限り耐えるさ」
「無理はしないでね?」
「月美もな」
ぶっきらぼうな言い方ではあったが、その言葉に含まれた温かな想いを感じ取った月美は微笑みを浮かべてうなずいていた。
そうこうしているうちに、準備はすべて終わり、朝礼の時間となった。
担任の月御門が教室に入ると、委員長が号令をかけた。
「気を付け!礼っ!」
『おはようございます!』
「おはよう、着席する必要はないから、そのままの姿勢で聞いてくれ」
そう言って、月御門は文化祭に関する注意事項を説明し始めた。
注意事項、と言っても、金券の管理や飲食物の取り扱いについて、万が一、不審者が現れた場合の対処の仕方など、口頭で説明を始めた。
数分とせずに、それらすべての説明を終えると、月御門は最後に一言だけ伝えた。
「まぁ、いろいろあれこれ言ったが、文化祭を安全に楽しむためには必要なことだからな。頭の隅っこに置いておいてくれ。でもって、羽目を外さない程度に楽しんでくれ!以上だ!!委員長、号令を頼む」
月御門からそう言われ、委員長が号令をかけると、月御門はすぐに職員室へと戻っていった。
するとすぐにクラスメイトたちは準備作業を再開した。
だが、作業を再開してから十分も経たずに、校内放送が始まった。
『連絡します。全校生徒に連絡します。間もなく、開催時刻です。準備が終わっている団体は最終チェックを忘れずにお願いします。終わっていない団体は、一度手を止め、開催時刻まで待機をお願い致します。繰り返し、全校生徒に連絡します』
どうやら、開催時刻がもう間近に迫っているため、そのアナウンスを行っているようだ。
その放送から五分ほどして、再び校内放送が流れ始めた。
『連絡します。間もなく、文化祭開催時刻となります。生徒たちは一度、作業の手を止めてください。先生方は所定の位置に集まってください。繰り返し、全校生徒ならびに先生方に連絡します』
その放送から数秒後、吹奏楽部によるファンファーレが鳴り響いた。
ファンファーレが鳴り終わると、生徒会の役員が開会式の開催を告げ、校長の挨拶が始まった。
五分とすることなく、その挨拶が終わると、マイクは役員へと返された。
マイクを返された役員は校長にお礼を言うと、開会宣言を生徒会長に依頼し、生徒会長にマイクを渡した。
『それでは、皆さん、準備は万端でしょうか?万端でなくても、無慈悲に宣言させていただきます。これより、月華学園の文化祭の開催を宣言いたします!どうか、生徒の皆さん、先生方、そして来校くださったお客様方も、楽しんでください!!』
マイクを渡された生徒会長は、開会を宣言した。
「おい、そっちの壁、はがれかけてるぞ!」
「テーブルの数、これでよかったよね?」
「看板の設置終わったぞ!」
「ならこっち手伝ってくれ!!」
開催日当日、ということもあって、いつになく慌ただしい怒号が飛び交っているのだが、動いている生徒の数は比較的少ないように感じられた。
それもそのはず。部活動や委員会活動の方へ向かったクラスメイトが多数いるため、当日はいつもよりも少ない人数で準備しなければならなくなっていたのだ。
だが、少人数でも今のところまったく問題なく準備が進んでいるように見えるのは、事前の準備はほぼすべて整っていたこともあってのことだろう。
結局、慌ただしく動いてはいたものの、開催宣言の十分前に全員、すべての準備を終わらせ、あとは開店を待つばかり、という状態になっていた。
むろん、その中には、執事服を着た護と、女給姿になった月美の姿もあった。
「いよいよか……」
「そうだね……護、大丈夫?」
「何が?」
「これからいろんな人が来ることが」
護が心なしか険しい顔つきになっていることに気づいたのか、月美はそう問いかけていた。
これから不特定多数の人間が来ることに、人間嫌いの護の精神が平静を保てるかどうかを心配しているようだ。
もっとも、護もその心配を見越していたのか、委員長をはじめクラスメイトたちには事前に、裏方中心にしてほしいということを伝えていた。
「……だから裏方中心にしてもらったんだよ」
「執事服は着てるけどね」
「……製作班の熱意に負けた」
月美のその一言に、護は遠い目をしながらそう返していた。
実際、護の求めもあってか、それともクラスメイトたちが護が接客には向いていないことを理解していたためか、護が裏方にまわることは決まっていたのだ。
だが、性格はともかく顔つきは整っているのだから執事服を着ないのはもったいない、という製作班一同の意見により、半ば無理矢理に執事服を着せられることとなってしまったのだ。
もっとも、人手が足りなくなった時には接客もしなければならない、という意見が出ていなかったわけではない。
人が足りなくなれば、必然的に護も表に出ざるを得なくなる。
むろん、護はそれを承知していた。
承知し、納得しているからこそ、こうして執事服を身に纏っているのだ。
もっとも、クラスの出し物に参加できる生徒は全員、コスチュームを着用することが義務となっていたので、どのみち、執事服を着ることに変わりはなかったのだが。
「まぁ、仕事である以上、できる限り耐えるさ」
「無理はしないでね?」
「月美もな」
ぶっきらぼうな言い方ではあったが、その言葉に含まれた温かな想いを感じ取った月美は微笑みを浮かべてうなずいていた。
そうこうしているうちに、準備はすべて終わり、朝礼の時間となった。
担任の月御門が教室に入ると、委員長が号令をかけた。
「気を付け!礼っ!」
『おはようございます!』
「おはよう、着席する必要はないから、そのままの姿勢で聞いてくれ」
そう言って、月御門は文化祭に関する注意事項を説明し始めた。
注意事項、と言っても、金券の管理や飲食物の取り扱いについて、万が一、不審者が現れた場合の対処の仕方など、口頭で説明を始めた。
数分とせずに、それらすべての説明を終えると、月御門は最後に一言だけ伝えた。
「まぁ、いろいろあれこれ言ったが、文化祭を安全に楽しむためには必要なことだからな。頭の隅っこに置いておいてくれ。でもって、羽目を外さない程度に楽しんでくれ!以上だ!!委員長、号令を頼む」
月御門からそう言われ、委員長が号令をかけると、月御門はすぐに職員室へと戻っていった。
するとすぐにクラスメイトたちは準備作業を再開した。
だが、作業を再開してから十分も経たずに、校内放送が始まった。
『連絡します。全校生徒に連絡します。間もなく、開催時刻です。準備が終わっている団体は最終チェックを忘れずにお願いします。終わっていない団体は、一度手を止め、開催時刻まで待機をお願い致します。繰り返し、全校生徒に連絡します』
どうやら、開催時刻がもう間近に迫っているため、そのアナウンスを行っているようだ。
その放送から五分ほどして、再び校内放送が流れ始めた。
『連絡します。間もなく、文化祭開催時刻となります。生徒たちは一度、作業の手を止めてください。先生方は所定の位置に集まってください。繰り返し、全校生徒ならびに先生方に連絡します』
その放送から数秒後、吹奏楽部によるファンファーレが鳴り響いた。
ファンファーレが鳴り終わると、生徒会の役員が開会式の開催を告げ、校長の挨拶が始まった。
五分とすることなく、その挨拶が終わると、マイクは役員へと返された。
マイクを返された役員は校長にお礼を言うと、開会宣言を生徒会長に依頼し、生徒会長にマイクを渡した。
『それでは、皆さん、準備は万端でしょうか?万端でなくても、無慈悲に宣言させていただきます。これより、月華学園の文化祭の開催を宣言いたします!どうか、生徒の皆さん、先生方、そして来校くださったお客様方も、楽しんでください!!』
マイクを渡された生徒会長は、開会を宣言した。
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