183 / 276
騒動劇
15、準備は大忙し~いよいよ大詰め~
しおりを挟む
すべての事務的な打ち合わせが終わり、いよいよ本格的な準備が始まった。
とはいえ、テーブルクロスや看板、メニューなどの小物はすでに完成が見えている状態であり、残るはコスチュームの作成のみという状態だ。
手伝った方が早く準備が終わるのだろうが、コスチューム作成は服を作ることと同じであり、作成にかかっているコスプレ趣味のクラスメイト以外、その知識も経験もない。
そのため、作成係を引き受けたクラスメイトからは手伝い不要の通達が出されていた。
もっとも、女子の制服に関しては浴衣とエプロン、カチューシャの三つが必要となるため、カチューシャとエプロンについては、ある程度、裁縫ができるクラスメイトの手も借りることになった。
だが、それ以外にもやることは多くある。
テーブルの配置や予備のテーブルクロスの作成、さらに教室の壁を保護するための段ボールの調達やその段ボールに装飾を施す作業も残っている。
特に急務になっていることは段ボールに関連したものであり、大多数のクラスメイトがその作業に追われていた。
「追加の段ボール、もらってきた!」
「そこ置いといてくれ!!」
「おーい、追加の絵具、取ってくれ!!」
「あっ?!自分で取れ!!」
必要となるであろう数を予測して用意していたが、予想が甘かった、というよりも思っていた以上に段ボールの面積が小さかったため、大量に段ボールが必要となってしまい、数をそろえるためにクラスメイトたちは奔走していた。
だが、段ボール収集と同時進行で段ボールの装飾の作業も行われており、作業場所となっている教室はてんやわんやの大騒ぎになっていた。
その騒ぎの中で、護と清は黙々と作業を進めていた。
「……やかましいな……」
「はははは……まぁ、しゃあないんじゃないか?」
「口じゃなくて手を動かせっての」
「言ってやるなよ……てか、風森もだけど、お前もよく集中力もつよな」
騒がしい、と文句を言いながらも黙々と装飾の作業を続けている護に感心してか、清はそんなことを口に出していた。
周囲を見れば、ほかにも同じ作業をしているクラスメイトは多くいるのだが、進捗は護の半分にも満たないといったところだ。
それもそのはず。
黙々と作業している護に対し、クラスメイトたちは談笑しながら作業しているのだ。
当然、集中力は半減するし、進むものもすすまなくなってしまう。
さらには、互いにふざけ合って作業そのものを忘れてしまうものも出てくる始末だ。
とはいえ、それはごく一般の家庭で育った高校生であれば通常のことだ。
むしろ、長年、滝行をしたり暗室でろうそくが燃え尽きるまで般若心経を暗唱したりするようなことを続けてきた護の方が異常なのだ。
「というか、お前の集中力の方が普通じゃないと思うんだがな」
「……知らん。お前も手を動かせ」
集中力が切れたのか、清も作業をする手を止めて、周囲を見回しながらそんなことを口にしていた。
が、もともと喋ることが好きではない護が清を相手をすることはなく、ただただ与えられた仕事を黙々とこなしているだけだった。
そのおかげか、護に振り分けられた仕事は八割がたが終了しており、周囲からは尊敬のまなざしが向けられていた。
その中には、仕事を押し付けてもいいのではないか、という気配が込められているものもあった。
そんな視線を向けてきているクラスメイトが誰なのかはわからなかったが、護は視線を向けてきているクラスメイトたちにむけて、半眼になりながら口を開いた。
「言っておくが、俺は自分の仕事もろくにしないような連中を手伝うつもりはないからな?」
その一言に、教室中が気まずい空気になった。
たしかに、一部のクラスメイトを除いて、割り当てられた箇所の半分も終わっていないものがほとんどだった。
終わっているのならば手伝ってほしい、という感情が湧き出てくることは無理もないことなのだが、やることをやらずに、終わらないから手伝ってほしい、と頼まれることは理不尽であると感じていることようだ。
その感情を理解できないほど、クラスメイトたちは理不尽ではなかった。
「だ、だよな……」
「さ、俺たちもやろうぜ」
「下校時刻までもうちょいだしな」
「せめてそれまでは集中しよう」
護の一言が堪えたのか、クラスメイトたちは口々にそんなことを言いながら作業を再開した。
もっとも、ここで文句を言ってこようものなら、護の堪忍袋の緒が切れて何をしでかすかわからない、という危機感を持っていたこともあったのだが。
「……ったく、最初からそうしてりゃいいのによ」
「いや、お前の集中力が化け物なだけだから」
「そうか?」
清の言葉に、護は首を傾げた。
通常、人間の集中力の持続時間は、個人差こそあるものの平均的には十五分から三十分程度と言われている。
その倍以上の時間、集中することができた護は、確かに常識外れという言葉が当てはまるだろう。
だが、そんなことを気にする様子はなく、護たちは最終下校時刻まで、作業を続けていくのだった。
とはいえ、テーブルクロスや看板、メニューなどの小物はすでに完成が見えている状態であり、残るはコスチュームの作成のみという状態だ。
手伝った方が早く準備が終わるのだろうが、コスチューム作成は服を作ることと同じであり、作成にかかっているコスプレ趣味のクラスメイト以外、その知識も経験もない。
そのため、作成係を引き受けたクラスメイトからは手伝い不要の通達が出されていた。
もっとも、女子の制服に関しては浴衣とエプロン、カチューシャの三つが必要となるため、カチューシャとエプロンについては、ある程度、裁縫ができるクラスメイトの手も借りることになった。
だが、それ以外にもやることは多くある。
テーブルの配置や予備のテーブルクロスの作成、さらに教室の壁を保護するための段ボールの調達やその段ボールに装飾を施す作業も残っている。
特に急務になっていることは段ボールに関連したものであり、大多数のクラスメイトがその作業に追われていた。
「追加の段ボール、もらってきた!」
「そこ置いといてくれ!!」
「おーい、追加の絵具、取ってくれ!!」
「あっ?!自分で取れ!!」
必要となるであろう数を予測して用意していたが、予想が甘かった、というよりも思っていた以上に段ボールの面積が小さかったため、大量に段ボールが必要となってしまい、数をそろえるためにクラスメイトたちは奔走していた。
だが、段ボール収集と同時進行で段ボールの装飾の作業も行われており、作業場所となっている教室はてんやわんやの大騒ぎになっていた。
その騒ぎの中で、護と清は黙々と作業を進めていた。
「……やかましいな……」
「はははは……まぁ、しゃあないんじゃないか?」
「口じゃなくて手を動かせっての」
「言ってやるなよ……てか、風森もだけど、お前もよく集中力もつよな」
騒がしい、と文句を言いながらも黙々と装飾の作業を続けている護に感心してか、清はそんなことを口に出していた。
周囲を見れば、ほかにも同じ作業をしているクラスメイトは多くいるのだが、進捗は護の半分にも満たないといったところだ。
それもそのはず。
黙々と作業している護に対し、クラスメイトたちは談笑しながら作業しているのだ。
当然、集中力は半減するし、進むものもすすまなくなってしまう。
さらには、互いにふざけ合って作業そのものを忘れてしまうものも出てくる始末だ。
とはいえ、それはごく一般の家庭で育った高校生であれば通常のことだ。
むしろ、長年、滝行をしたり暗室でろうそくが燃え尽きるまで般若心経を暗唱したりするようなことを続けてきた護の方が異常なのだ。
「というか、お前の集中力の方が普通じゃないと思うんだがな」
「……知らん。お前も手を動かせ」
集中力が切れたのか、清も作業をする手を止めて、周囲を見回しながらそんなことを口にしていた。
が、もともと喋ることが好きではない護が清を相手をすることはなく、ただただ与えられた仕事を黙々とこなしているだけだった。
そのおかげか、護に振り分けられた仕事は八割がたが終了しており、周囲からは尊敬のまなざしが向けられていた。
その中には、仕事を押し付けてもいいのではないか、という気配が込められているものもあった。
そんな視線を向けてきているクラスメイトが誰なのかはわからなかったが、護は視線を向けてきているクラスメイトたちにむけて、半眼になりながら口を開いた。
「言っておくが、俺は自分の仕事もろくにしないような連中を手伝うつもりはないからな?」
その一言に、教室中が気まずい空気になった。
たしかに、一部のクラスメイトを除いて、割り当てられた箇所の半分も終わっていないものがほとんどだった。
終わっているのならば手伝ってほしい、という感情が湧き出てくることは無理もないことなのだが、やることをやらずに、終わらないから手伝ってほしい、と頼まれることは理不尽であると感じていることようだ。
その感情を理解できないほど、クラスメイトたちは理不尽ではなかった。
「だ、だよな……」
「さ、俺たちもやろうぜ」
「下校時刻までもうちょいだしな」
「せめてそれまでは集中しよう」
護の一言が堪えたのか、クラスメイトたちは口々にそんなことを言いながら作業を再開した。
もっとも、ここで文句を言ってこようものなら、護の堪忍袋の緒が切れて何をしでかすかわからない、という危機感を持っていたこともあったのだが。
「……ったく、最初からそうしてりゃいいのによ」
「いや、お前の集中力が化け物なだけだから」
「そうか?」
清の言葉に、護は首を傾げた。
通常、人間の集中力の持続時間は、個人差こそあるものの平均的には十五分から三十分程度と言われている。
その倍以上の時間、集中することができた護は、確かに常識外れという言葉が当てはまるだろう。
だが、そんなことを気にする様子はなく、護たちは最終下校時刻まで、作業を続けていくのだった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
四季の姫巫女
襟川竜
ファンタジー
いすゞの里に住む女中の冬は、どこにでもいる平凡な14歳の少女。
ある日、ひょんな事から姫巫女見習いを選ぶ儀式に強制参加させられてしまい、封印されていた初代姫巫女の式神を目覚めさせた事で姫巫女になる資格を得る。
元女中である冬を、当然ながら姫巫女達は疎んじたが、数か月も経たぬうちに里全体を襲う蛇神との戦いに身をさらす事になってしまう。
※小説家になろう、で公開したものに、若干の加筆・修正を加えています。
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
〈銀龍の愛し子〉は盲目王子を王座へ導く
山河 枝
キャラ文芸
【簡単あらすじ】周りから忌み嫌われる下女が、不遇な王子に力を与え、彼を王にする。
★シリアス8:コミカル2
【詳細あらすじ】
50人もの侍女をクビにしてきた第三王子、雪晴。
次の侍女に任じられたのは、異能を隠して王城で働く洗濯女、水奈だった。
鱗があるために疎まれている水奈だが、盲目の雪晴のそばでは安心して過ごせるように。
みじめな生活を送る雪晴も、献身的な水奈に好意を抱く。
惹かれ合う日々の中、実は〈銀龍の愛し子〉である水奈が、雪晴の力を覚醒させていく。「王家の恥」と見下される雪晴を、王座へと導いていく。
超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~
有楽 森
ファンタジー
人生最良の日になるはずだった俺は、運命の無慈悲な采配により異世界へと落ちてしまった。
地球に戻りたいのに戻れない。狼モドキな人間と地球人が助けてくれたけど勇者なんて呼ばれて……てか他にも勇者候補がいるなら俺いらないじゃん。
やっとデートまでこぎつけたのに、三年間の努力が水の泡。それにこんな化け物が出てくるとか聞いてないし。
あれ?でも……俺、ここを知ってる?え?へ?どうして俺の記憶通りになったんだ?未来予知?まさかそんなはずはない。でもじゃあ何で俺はこれから起きる事を知ってるんだ?
努力の優等生である中学3年の主人公が何故か異世界に行ってしまい、何故か勇者と呼ばれてしまう。何故か言葉を理解できるし、何故かこれから良くないことが起こるって知っている。
事件に巻き込まれながらも地球に返る為、異世界でできた友人たちの為に、頑張って怪物に立ち向かう。これは中学男子学生が愛のために頑張る恋愛冒険ファンタジーです。
第一章【冬に咲く花】は完結してます。
他のサイトに掲載しているのを、少し書き直して転載してます。若干GL・BL要素がありますが、GL・BLではありません。前半は恋愛色薄めで、ヒロインがヒロインらしくなるのは後半からです。主人公の覚醒?はゆっくり目で、徐々にといった具合です。
*印の箇所は、やや表現がきわどくなっています。ご注意ください。
不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。
ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。
不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。
しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。
「はぁ⋯⋯ん?」
溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。
「どういう事なんだ?」
すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。
「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」
'え?神様?マジで?'
「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」
⋯⋯え?
つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか?
「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」
⋯⋯まじかよ。
これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。
語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
記憶喪失だったが、元奴隷獣人少女とイチャイチャしながらも大鎌担いで神を殺す旅に出ました!
梅酒 凪都
ファンタジー
目が覚めると主人公――カズナリは記憶を失っていた。そんなとき、生贄として祀られる運命だった獣人奴隷少女のアオイに出会う。だが、アオイの前に天使が舞い降りる。天使からアオイを救うべくその場にあった大鎌を手にし、人では殺すことのできないはずの天使を殺すことに成功する。
そして、神を殺す手助けをしてほしいというアオイの頼みを聞き入れ旅をすることになるのだった。カズナリは身も心も主人公一筋になってしまったアオイとイチャイチャしながらも神を殺すための旅に出るのだった。
※00:00時更新予定
※一章の幕間からイチャイチャし始めるので気になる方はそちらをご覧ください。
森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
事故で死んで異世界に転生した。
十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。
三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。
強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。
そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。
色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう!
「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」
運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚!
◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位
◇9/26 ファンタジー4位
◇月間ファンタジー30位
カ・ル・マ! ~天王寺の変~
后 陸
ファンタジー
新たに見つかった電波帯を使い、これまで不確かな存在だった霊体を視覚化しコンタクトに成功。
この電波帯をEG帯と呼び、霊体を自在に操る者たちをEG使いと呼んだ。
四ヵ月前に大阪で起こった巨大結界事件後、環境が激変した結界内で争うEG使いたち。
その争いに巻き込まれる主人公、安倍まゆらの話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる