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旅行記
9、出発当日に遅刻してくるものは必ずいる
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出発時当日の早朝。護と月美は最寄り駅にいた。
「少し、早かったかな?」
「今日の午後にはついてたいって言ってたから、これくらいがちょうどいい時間じゃないか?」
東京から京都までは新幹線で二時間ほど。
だが、新幹線が発着するほどの大きな駅に行くまで一時間近く必要となるし、一番早い新幹線の時間に合わせるとなると、それなりに早く出なければならない。
ホステルのチェックインの時間も考えると、今の時間くらいがちょうどいいのだ。
「やっぱ少し早かったか?」
「かもしれない?」
現在時刻は朝の六時四十分。
朝練でもない限り、ほとんどの学生は寝ているであろう時間だ。
早朝に水垢離をすることが習慣になっている二人は、とっくに目を覚ましている時間だが、一般的な高校生である待ち人三人にとっては、早すぎる時間だ。
その辺りの感覚が、どうやら二人ともずれているらしい。
「てか、今何時だっけ?」
「えっと……六時四十分ちょっとすぎ」
「集合時間って、七時だったか?」
「……だね」
自分たちの行動が少しばかり早かったことに気付いた護は、遠い目をしながらそうつぶやいた。
「これだったらもうちょっと修行に充てられたか」
「だねぇ……けどいいんじゃない?遅れるよりは」
「まぁ、そらな」
そっとため息をつきながら返してくる護の姿に、月美はくすくすと微笑みを浮かべていた。
なんだかんだ言って、実のところ、護も楽しみにしていたのだ。
だが、小学生時代の経験と、清に対するひねくれから、素直になれていない部分のほうが強いらしい。
そんな一面が可愛らしく感じたらしい。
もっとも、そのことを口に出すことはないが。
「って、もういるし!!」
「早いね、二人とも」
そうこうしているうちに、明美と佳代の二人がスーツケースを引っ張りながら声をかけてきた。
その声に気付いた月美はスーツケースを護に任せて、二人のほうへと駆けて行った。
その背中を見送りながら、護は携帯電話の画面で時計を確認した。
現在時刻、六時五十分。
画面にはそう表記されていた。
――あと五分で来なかったら、あいつは置いていくか
あいつ、とは言わずもがな、今この場に来ていない、旅行発案者の清のことだ。
本来なら、一番最初に来ていなければいけないはずの人間がこの場にいない。
まだ集合時間にはなっていないので遅刻とは言えないが、それでもやはり一番最初に集合場所にいてしかるべきではないだろうか。
そんなことを考えていると、月美が明美と佳代を引き連れてやってきた。
「おはよう、土御門」
「おはよ、土御門くん」
「おはようさん」
二人のあいさつに、護はいつものようにぶっきらぼうに返した。
だが、その態度はいつものことなので、二人は特に何も思うことはなかった。
「で、あのバカはまだ来てないの?」
「あぁ、まだ来てない」
「……言いだしっぺなのに?」
「言いだしっぺなのに」
「……時間になったら、置いてこうか?」
明美の質問に、護が呆れた様子で答えると、同じことを考えていたのか、悪気もなくそんなことを口にした。
どうやら、明美も護と同じように、言いだしっぺなのにこの場に清がいないことに苛立ちを覚えていたようだ。
「なんかもう、あと何分であいつが来るか掛けが成立しそうな気がしてきた」
「なら賭ける?」
「いや、俺の予想が正しければ、もうそろそろ……」
突然の明美の提案に、護は携帯の画面を見た。
現在時刻、六時五十三分。
もう間もなく、出発予定時刻五分前まで迫ってきていたが、こういうギリギリの時間になると決まって。
「悪い!遅くなった!!」
「遅い。もっと早く来い馬鹿」
「おはよう、寝坊助」
待ち人はやってくる、というのが相場だ。
今回の場合は噂をすれば影、ということもあるのだろうが。
それはひとまず、置いておく。
ようやくやってきた清に、護は呆れと侮蔑を込めた瞳を向け、明美は軽蔑するかのような視線を向けていた。
自業自得とはいえ、二人のその攻撃に、少なからず、ショックを受けているようでうなだれてしまった。
そんな様子を見かねた月美と佳代は、苦笑を浮かべながら、普通に挨拶をしていた。
「おはよう、勘解由小路くん」
「お、おはよう」
「うぅ……二人の優しさが身にしみるぜ……このままもう少し俺のこと慰めて……」
「え?そうなったのは自業自得でしょ?」
「このまま慰めてもらおうなんて、ちょっと虫が良すぎるんじゃないかな?」
「はい、おっしゃる通りです……」
だが、あくまでこれ以上責めてもかわいそうだから、という仏心からだったらしく、一番最後に来たことを怒っていないわけではなかったようだ。
月美からの冷ややかな視線と、佳代からの辛辣な言葉に、清はこれ以上調子に乗るのは危険と判断し、ひとまず身を引くことにした。
「……それはそうと時間はいいの?」
「「「「……あ」」」」
「……はぁ……」
そんなにぎやかな中で唯一、輪の中から外れてしまっていた佳代が時間のことを口に出すと、全員が全員、すっかり忘れていた、という表情を浮かべた。
ちなみに時刻は六時五十七分。
そろそろ駅に入っていないと重い荷物を抱えて走る羽目になる。
一行は急ぎ、駅のホームへと向かっていった。
「少し、早かったかな?」
「今日の午後にはついてたいって言ってたから、これくらいがちょうどいい時間じゃないか?」
東京から京都までは新幹線で二時間ほど。
だが、新幹線が発着するほどの大きな駅に行くまで一時間近く必要となるし、一番早い新幹線の時間に合わせるとなると、それなりに早く出なければならない。
ホステルのチェックインの時間も考えると、今の時間くらいがちょうどいいのだ。
「やっぱ少し早かったか?」
「かもしれない?」
現在時刻は朝の六時四十分。
朝練でもない限り、ほとんどの学生は寝ているであろう時間だ。
早朝に水垢離をすることが習慣になっている二人は、とっくに目を覚ましている時間だが、一般的な高校生である待ち人三人にとっては、早すぎる時間だ。
その辺りの感覚が、どうやら二人ともずれているらしい。
「てか、今何時だっけ?」
「えっと……六時四十分ちょっとすぎ」
「集合時間って、七時だったか?」
「……だね」
自分たちの行動が少しばかり早かったことに気付いた護は、遠い目をしながらそうつぶやいた。
「これだったらもうちょっと修行に充てられたか」
「だねぇ……けどいいんじゃない?遅れるよりは」
「まぁ、そらな」
そっとため息をつきながら返してくる護の姿に、月美はくすくすと微笑みを浮かべていた。
なんだかんだ言って、実のところ、護も楽しみにしていたのだ。
だが、小学生時代の経験と、清に対するひねくれから、素直になれていない部分のほうが強いらしい。
そんな一面が可愛らしく感じたらしい。
もっとも、そのことを口に出すことはないが。
「って、もういるし!!」
「早いね、二人とも」
そうこうしているうちに、明美と佳代の二人がスーツケースを引っ張りながら声をかけてきた。
その声に気付いた月美はスーツケースを護に任せて、二人のほうへと駆けて行った。
その背中を見送りながら、護は携帯電話の画面で時計を確認した。
現在時刻、六時五十分。
画面にはそう表記されていた。
――あと五分で来なかったら、あいつは置いていくか
あいつ、とは言わずもがな、今この場に来ていない、旅行発案者の清のことだ。
本来なら、一番最初に来ていなければいけないはずの人間がこの場にいない。
まだ集合時間にはなっていないので遅刻とは言えないが、それでもやはり一番最初に集合場所にいてしかるべきではないだろうか。
そんなことを考えていると、月美が明美と佳代を引き連れてやってきた。
「おはよう、土御門」
「おはよ、土御門くん」
「おはようさん」
二人のあいさつに、護はいつものようにぶっきらぼうに返した。
だが、その態度はいつものことなので、二人は特に何も思うことはなかった。
「で、あのバカはまだ来てないの?」
「あぁ、まだ来てない」
「……言いだしっぺなのに?」
「言いだしっぺなのに」
「……時間になったら、置いてこうか?」
明美の質問に、護が呆れた様子で答えると、同じことを考えていたのか、悪気もなくそんなことを口にした。
どうやら、明美も護と同じように、言いだしっぺなのにこの場に清がいないことに苛立ちを覚えていたようだ。
「なんかもう、あと何分であいつが来るか掛けが成立しそうな気がしてきた」
「なら賭ける?」
「いや、俺の予想が正しければ、もうそろそろ……」
突然の明美の提案に、護は携帯の画面を見た。
現在時刻、六時五十三分。
もう間もなく、出発予定時刻五分前まで迫ってきていたが、こういうギリギリの時間になると決まって。
「悪い!遅くなった!!」
「遅い。もっと早く来い馬鹿」
「おはよう、寝坊助」
待ち人はやってくる、というのが相場だ。
今回の場合は噂をすれば影、ということもあるのだろうが。
それはひとまず、置いておく。
ようやくやってきた清に、護は呆れと侮蔑を込めた瞳を向け、明美は軽蔑するかのような視線を向けていた。
自業自得とはいえ、二人のその攻撃に、少なからず、ショックを受けているようでうなだれてしまった。
そんな様子を見かねた月美と佳代は、苦笑を浮かべながら、普通に挨拶をしていた。
「おはよう、勘解由小路くん」
「お、おはよう」
「うぅ……二人の優しさが身にしみるぜ……このままもう少し俺のこと慰めて……」
「え?そうなったのは自業自得でしょ?」
「このまま慰めてもらおうなんて、ちょっと虫が良すぎるんじゃないかな?」
「はい、おっしゃる通りです……」
だが、あくまでこれ以上責めてもかわいそうだから、という仏心からだったらしく、一番最後に来たことを怒っていないわけではなかったようだ。
月美からの冷ややかな視線と、佳代からの辛辣な言葉に、清はこれ以上調子に乗るのは危険と判断し、ひとまず身を引くことにした。
「……それはそうと時間はいいの?」
「「「「……あ」」」」
「……はぁ……」
そんなにぎやかな中で唯一、輪の中から外れてしまっていた佳代が時間のことを口に出すと、全員が全員、すっかり忘れていた、という表情を浮かべた。
ちなみに時刻は六時五十七分。
そろそろ駅に入っていないと重い荷物を抱えて走る羽目になる。
一行は急ぎ、駅のホームへと向かっていった。
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