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呪怨劇
27、昔語り~4、そして彼は他人を嫌う~
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狼藉を働こうとしたクラスメイトたちが、逆に成敗された翌日。
その日の教室はなぜか静かだった。
いつもなら、仲のいい友達同士でおしゃべりしたり、遊んだりしているため、それなりに騒がしい。
だが、この日に限って、ひそひそ話をするばかりで騒ぐようなことはなかった。
――何かあったのか?まぁ、俺にはあんま関係ないだろうけど
護はそんなことは知ったことではないといった風に、いつも通り、自分の席に向かっていき、変ないたずらが仕掛けられていないか、チェックを始めた。
五分ほど掛けて念入りにチェックして、特に何もしかけられていないことがわかると、護はようやく椅子に座る。
ランドセルの中に入っている荷物をすべて机の中にしまい終えると、クラスメイトの一人が、恐る恐るといった様子で護に近づいてきた。
「な、なぁ、土御門……一つ、聞いていいか?」
「ん?」
「土御門の家の神社って、お化け屋敷、なのか?」
「……は?なんだそれ」
失礼極まりない質問に、思わず、怒りの声が出てしまった。
いや、無理もないといえば無理もない。誰であれ、自分が住んでいる家がお化け屋敷などと呼ばれれば、苛立ちもするだろう。
それも、由緒正しいことをわかっていればなおのこと。
だが、その子がそう問いかけたことにも、しっかりとした理由があった。
「え?だって、そう言ってたよ?」
「なるほど、納得した」
返ってきた答えに、護は呆れたようなため息をついて返す。
大方、噂の根源は昨日、粗相をして幻惑にとらわれたクラスメイトたちだろうことはすぐに予想がついた。
だが、護が呆れたのは、クラス中がその噂に翻弄されているからではない。
幻惑から助けた恩を忘れ、仇で返すようなことをしでかしているクラスメイトたちの態度に呆れているのだ。
同時に、なぜ恩を仇で返すようなことをしたのか。そうまでして、何がしたいのか。彼らの目的も、自分が置かれている状況から自ずと理解できた。
だからこそ。
――まったく……こんなことなら助けてやらなきゃよかった
呆れると同時に、助けたことを後悔した。
『恩義は恩義でもって返す。仇で返すようなことは以ての外である』
人間ならばそうすることが理想であり、良識というものだ。
十にも満たない子供にそれを理解しろ、ということが無理なことだが、護は学校以外の時間で自分の倍以上、年齢が離れている大人たちと過ごしている。
その影響を受けてか、その良識が常識となり、クラスメイトたちもそう思っていると勘違いしていた。
その勘違いが、護の今の状況を生み出し、事態は最悪の方向へと向かわせることとなる。
それからというもの、クラスを超えて学校中に土御門神社の怪談として悪さをしようとしたクラスメイトたちの体験が広まっていく。
怪談の舞台に住んでいる護は化け物という、根も葉もない誹謗中傷が広まったことで、護は本当に化け物として扱われるようになり、孤立した。
むろん、担任をはじめとした教師たちはこの状況を打開しようと、ひそかに動いてはいたのだが、その努力が実ることはなく。
結局、卒業までの間に、護に貼られたレッテルを引きはがすことはできなかった。
その状況は、中学に入っても変わることはなかった。
----------------------------
「それ以来、護は家族とわたし、それからわたしの家族……のような人たち以外を信頼することはなくなったし、助けるつもりもなくなっちゃったの」
「そんなことが……あれ?けど、わたしのことは助けてくれた、んだよね??」
月美の口から、護の過去の大まかなことを聞いた佳代は、護の自分に対しての行動と、護の状態に矛盾を感じ、首を傾げる。
その問いかけに、月美はあくまでも自分の推測であることを前置きして答えた。
「たぶん、吉田さんが妖になるのを止めたかったからじゃないかな?」
「え?け、けど、化け物になっちゃったほうが、土御門くんにとって都合がいいんじゃ」
たとえ、それが元々は人間、それも自分のクラスメイトであったとしても、妖であれば、護は気兼ねなく退治することができる。
それはつい数時間前に浴びせられた威圧感で、嫌というほど実感できた。
だが、月美はそれを否定する。
「確かに妖になってたら、護は何も気にしないで退治したかもしれない」
妖や化け物に敵対された場合、容赦なく退治することは、佳代も肌で感じることで理解した。
だが、月美もそれはわかっているのだが、月美の場合は護がただ妖を退治をするだけの術者ではないことも知っている。
「護は妖の命を奪うようなことはほとんどないよ。それにね、人間が嫌いになったっていっても、殺したいほど憎んでいるわけじゃないと思うの」
そう話す根拠はある。
出雲にいた頃、特に何もなければずっと一緒にいるはずだった親友が二人いた。
中学に上がってからの友人であったが、その頃、護はすでに人間が嫌いになってしまっていたため、護に話しかけたことはないし、紹介したこともない。
おそらくは知らないままだったかもしれないが、今年の春先に土御門家を頼らなければならない事件を予知し、護に声をかけ、出雲に来てもらった。
その際、護は二人と出会ったのだが、意外にも、護は二人がいることを許容してくれていた。
――麻衣と桃花がわたしの親友だったってことが大きいいのかもしれないけど、護があの二人に強い敵意を向けることはなかった
おまけに、彼女たちの悪乗りにも、ため息交じりではあったが付き合ってくれていた。
そのことから護は、人間が嫌いなだけで、まだ憎悪を抱いているわけではないのではないか。
月美はそう信じている。
その日の教室はなぜか静かだった。
いつもなら、仲のいい友達同士でおしゃべりしたり、遊んだりしているため、それなりに騒がしい。
だが、この日に限って、ひそひそ話をするばかりで騒ぐようなことはなかった。
――何かあったのか?まぁ、俺にはあんま関係ないだろうけど
護はそんなことは知ったことではないといった風に、いつも通り、自分の席に向かっていき、変ないたずらが仕掛けられていないか、チェックを始めた。
五分ほど掛けて念入りにチェックして、特に何もしかけられていないことがわかると、護はようやく椅子に座る。
ランドセルの中に入っている荷物をすべて机の中にしまい終えると、クラスメイトの一人が、恐る恐るといった様子で護に近づいてきた。
「な、なぁ、土御門……一つ、聞いていいか?」
「ん?」
「土御門の家の神社って、お化け屋敷、なのか?」
「……は?なんだそれ」
失礼極まりない質問に、思わず、怒りの声が出てしまった。
いや、無理もないといえば無理もない。誰であれ、自分が住んでいる家がお化け屋敷などと呼ばれれば、苛立ちもするだろう。
それも、由緒正しいことをわかっていればなおのこと。
だが、その子がそう問いかけたことにも、しっかりとした理由があった。
「え?だって、そう言ってたよ?」
「なるほど、納得した」
返ってきた答えに、護は呆れたようなため息をついて返す。
大方、噂の根源は昨日、粗相をして幻惑にとらわれたクラスメイトたちだろうことはすぐに予想がついた。
だが、護が呆れたのは、クラス中がその噂に翻弄されているからではない。
幻惑から助けた恩を忘れ、仇で返すようなことをしでかしているクラスメイトたちの態度に呆れているのだ。
同時に、なぜ恩を仇で返すようなことをしたのか。そうまでして、何がしたいのか。彼らの目的も、自分が置かれている状況から自ずと理解できた。
だからこそ。
――まったく……こんなことなら助けてやらなきゃよかった
呆れると同時に、助けたことを後悔した。
『恩義は恩義でもって返す。仇で返すようなことは以ての外である』
人間ならばそうすることが理想であり、良識というものだ。
十にも満たない子供にそれを理解しろ、ということが無理なことだが、護は学校以外の時間で自分の倍以上、年齢が離れている大人たちと過ごしている。
その影響を受けてか、その良識が常識となり、クラスメイトたちもそう思っていると勘違いしていた。
その勘違いが、護の今の状況を生み出し、事態は最悪の方向へと向かわせることとなる。
それからというもの、クラスを超えて学校中に土御門神社の怪談として悪さをしようとしたクラスメイトたちの体験が広まっていく。
怪談の舞台に住んでいる護は化け物という、根も葉もない誹謗中傷が広まったことで、護は本当に化け物として扱われるようになり、孤立した。
むろん、担任をはじめとした教師たちはこの状況を打開しようと、ひそかに動いてはいたのだが、その努力が実ることはなく。
結局、卒業までの間に、護に貼られたレッテルを引きはがすことはできなかった。
その状況は、中学に入っても変わることはなかった。
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「それ以来、護は家族とわたし、それからわたしの家族……のような人たち以外を信頼することはなくなったし、助けるつもりもなくなっちゃったの」
「そんなことが……あれ?けど、わたしのことは助けてくれた、んだよね??」
月美の口から、護の過去の大まかなことを聞いた佳代は、護の自分に対しての行動と、護の状態に矛盾を感じ、首を傾げる。
その問いかけに、月美はあくまでも自分の推測であることを前置きして答えた。
「たぶん、吉田さんが妖になるのを止めたかったからじゃないかな?」
「え?け、けど、化け物になっちゃったほうが、土御門くんにとって都合がいいんじゃ」
たとえ、それが元々は人間、それも自分のクラスメイトであったとしても、妖であれば、護は気兼ねなく退治することができる。
それはつい数時間前に浴びせられた威圧感で、嫌というほど実感できた。
だが、月美はそれを否定する。
「確かに妖になってたら、護は何も気にしないで退治したかもしれない」
妖や化け物に敵対された場合、容赦なく退治することは、佳代も肌で感じることで理解した。
だが、月美もそれはわかっているのだが、月美の場合は護がただ妖を退治をするだけの術者ではないことも知っている。
「護は妖の命を奪うようなことはほとんどないよ。それにね、人間が嫌いになったっていっても、殺したいほど憎んでいるわけじゃないと思うの」
そう話す根拠はある。
出雲にいた頃、特に何もなければずっと一緒にいるはずだった親友が二人いた。
中学に上がってからの友人であったが、その頃、護はすでに人間が嫌いになってしまっていたため、護に話しかけたことはないし、紹介したこともない。
おそらくは知らないままだったかもしれないが、今年の春先に土御門家を頼らなければならない事件を予知し、護に声をかけ、出雲に来てもらった。
その際、護は二人と出会ったのだが、意外にも、護は二人がいることを許容してくれていた。
――麻衣と桃花がわたしの親友だったってことが大きいいのかもしれないけど、護があの二人に強い敵意を向けることはなかった
おまけに、彼女たちの悪乗りにも、ため息交じりではあったが付き合ってくれていた。
そのことから護は、人間が嫌いなだけで、まだ憎悪を抱いているわけではないのではないか。
月美はそう信じている。
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