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奮闘記
22、気がかりなことは翌日にも……
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翌日。
明け方の日の光で目を覚ました護は、自分の右側を見ていた。
そこには、予想通り、昨夜と同じようにどこからか持ち出された衝立《ついたて》がある。
聞き耳を立てれば、その向こうからかわいらしい寝息が聞こえてきていることにも気づいた。
――結局、月美と一晩同じ部屋で過ごしたってことか……亜妃さんと友護さんに遊ばれることになるな、これは……
そもそも、昨晩中に目が覚めた時に、月美を起こして自分の部屋に帰らせるか、自分で運ぶかすればよかったのだが、気づいてもすでに遅い。
護は亜紀と友護の二人から弄ばれるという最悪の事態を想定してしまい、さわやかなはずの目覚めが、一気に憂鬱なものに変わってしまった。
だからといって、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。
――あんま、俺が起こすのはよくないかもしれないけど、白桜たちに任せたら、事あるごとに口にしてきそうだし……腹くくるしかないかぁ
使鬼たちにいじり倒されて苦い思いをしたくないため、護は覚悟を決めて、浴衣の乱れを直し、衝立の向こう側を覗き込んだ。
そこには、案の定、幸せそうな顔で月美が眠っている。
起こすのもかわいそうだとも思ってしまったが、心を鬼にして、そっと枕元に座り。
「月美?おーい、月美」
月美の名前を呼んだ。
しかし、月美が起きる気配はない。
「はぁ……予想はしてたけど、やっぱダメか」
護はそっとため息をつきうなだれた。
一度、眠りにつくとなかなか目を覚まさない。
それが月美の欠点だということは、十年以上の付き合いで嫌と言うほど思い知らされている。
――なんだかなぁ……こういうところはまったく変わってないんだよなぁ
心中でそうつぶやくが、十七歳にもなって、この寝起きの悪さはいかがなものかと思わないわけでもない。
護は初めて出会った時のことを思い出しながら、あの時と同じように心のうちで月美に謝り、幸せそうな月美の顔の前で、思いっきり手を叩いた。
「ふぁ……?」
ぱんっ、と鋭い音を立てたあと、月美は間の抜けた声を上げ、目を開き、上半身を起こした。
すると、月美は周囲をきょろきょろと見渡し、視界に護が入り込むと、ふわりと、やたらのんびりとした微笑みを浮かべ。
「あ~、護だ~」
そのまま護に抱きついてきた。
どうやら、まだ寝ぼけているらしい。
「なっ?!ちょ、待て、月美!!」
護はとっさに避けようとしたが、月美が抱きつく方が一瞬早く、見事に捕まり押し倒された。
押し倒された護は、懐かしいやら恥ずかしいやらで、複雑な顔になる。
一方の抱き着いてきた月美は、抱きついたまま再び眠りに落ちる。
――こいつ、十年前より目覚め悪くなってないか?
抱き着いてきた月美の重みと、その柔らかさを胸で感じつつ、護は嬉しいような呆れたような、複雑な顔をしていた。
そんな護をよそに、月美は幸せそうに微笑んでいる。
その顔を見てしまうと、このままでいることも悪くはない、と思えてしまうあたり、自分は彼女に甘いのだと、改めて自覚した。
――さて、本当にどうしたものかな
とはいえ、自分が何をしようとしてこんな状態になってしまったのか忘れているわけではない。
どのようにすれば確実に起こせるか、月美の頭を撫でながら、再び考えを巡らせる。
だが、護はこの時、こんな事態になって何もしないはずがない人物が二人、この階下にいるということをすっかり忘れていた。
そして、その二人がこうなることをむしろ期待しているということを。
----------------------------
結局、月美が完全に目を覚ましたのは、それから十分以上が経過してのこと。
目を覚ました後、月美は恥ずかしさと申し訳なさで顔を真っ赤にしながら、リビングに向かう。
その表情を見た亜妃と友護は、何があったのか大体のところを察したらしく。
「ふ~ん?朝からお盛んなことねぇ」
「月美も、なかなかどうして、積極的だねぇ」
友護と亜妃は、にやにやとした笑みを浮かべながら、目の前に座っている護と月美に聞こえるような声でそうつぶやいた。
当の本人たちは、その視線が痛いやら恥ずかしいやら。月美に至っては申し訳なさも加わって、顔を伏せてしまう。
さらに、友護はともかく、亜妃は月美に怒っていることが、言葉の端から伝わってくる。
「まったく、あんたって子はほんとに。何年経っても治らないわね、その癖は」
「うぅ……」
「そのせいで、起こしに来てくれた人に抱きついたって?護くんだったからよかったものを、ほかの男の子だったら、今頃襲われてるわよ?」
「面目次第もございません……」
「……まぁ、間違いがなかったようでよかったけど」
すっかりしおれた様子の月美に、亜妃はそっとため息をついてそうつぶやく。
その様子を見ると、月美は少しだけほっとした顔になり、箸を手に取った。
一方、護は箸を持ってはいるものの、あまり食が進んでいない。
いや、食が進んでないどころか、何か考え事をしているらしく、先ほどからまったく料理に手を付けていないようだ。
「……護?」
「あら?具合でも悪いの?」
護の様子に気づいた月美と亜妃は心配そうな声色で問いかけてくる。
それに気づいた護は、静かに笑みを浮かべた。
「いえ、そういうわけでは。ただ、少し気になることがあったので」
月美と亜妃の心配そうな声に答え、護は朝食を食べ始める。
気丈に振る舞ってこそいるが、護の様子がいつもと異なるということは、この場にいる全員が気づいた。
そして、それは月美に余計な心配をかけさせまいとしているためにしていることだとも。
それを理解した亜妃は、護が抱えている気になることについて追及することはなく、黙って食事を続けることにした。
明け方の日の光で目を覚ました護は、自分の右側を見ていた。
そこには、予想通り、昨夜と同じようにどこからか持ち出された衝立《ついたて》がある。
聞き耳を立てれば、その向こうからかわいらしい寝息が聞こえてきていることにも気づいた。
――結局、月美と一晩同じ部屋で過ごしたってことか……亜妃さんと友護さんに遊ばれることになるな、これは……
そもそも、昨晩中に目が覚めた時に、月美を起こして自分の部屋に帰らせるか、自分で運ぶかすればよかったのだが、気づいてもすでに遅い。
護は亜紀と友護の二人から弄ばれるという最悪の事態を想定してしまい、さわやかなはずの目覚めが、一気に憂鬱なものに変わってしまった。
だからといって、いつまでもここでじっとしているわけにはいかない。
――あんま、俺が起こすのはよくないかもしれないけど、白桜たちに任せたら、事あるごとに口にしてきそうだし……腹くくるしかないかぁ
使鬼たちにいじり倒されて苦い思いをしたくないため、護は覚悟を決めて、浴衣の乱れを直し、衝立の向こう側を覗き込んだ。
そこには、案の定、幸せそうな顔で月美が眠っている。
起こすのもかわいそうだとも思ってしまったが、心を鬼にして、そっと枕元に座り。
「月美?おーい、月美」
月美の名前を呼んだ。
しかし、月美が起きる気配はない。
「はぁ……予想はしてたけど、やっぱダメか」
護はそっとため息をつきうなだれた。
一度、眠りにつくとなかなか目を覚まさない。
それが月美の欠点だということは、十年以上の付き合いで嫌と言うほど思い知らされている。
――なんだかなぁ……こういうところはまったく変わってないんだよなぁ
心中でそうつぶやくが、十七歳にもなって、この寝起きの悪さはいかがなものかと思わないわけでもない。
護は初めて出会った時のことを思い出しながら、あの時と同じように心のうちで月美に謝り、幸せそうな月美の顔の前で、思いっきり手を叩いた。
「ふぁ……?」
ぱんっ、と鋭い音を立てたあと、月美は間の抜けた声を上げ、目を開き、上半身を起こした。
すると、月美は周囲をきょろきょろと見渡し、視界に護が入り込むと、ふわりと、やたらのんびりとした微笑みを浮かべ。
「あ~、護だ~」
そのまま護に抱きついてきた。
どうやら、まだ寝ぼけているらしい。
「なっ?!ちょ、待て、月美!!」
護はとっさに避けようとしたが、月美が抱きつく方が一瞬早く、見事に捕まり押し倒された。
押し倒された護は、懐かしいやら恥ずかしいやらで、複雑な顔になる。
一方の抱き着いてきた月美は、抱きついたまま再び眠りに落ちる。
――こいつ、十年前より目覚め悪くなってないか?
抱き着いてきた月美の重みと、その柔らかさを胸で感じつつ、護は嬉しいような呆れたような、複雑な顔をしていた。
そんな護をよそに、月美は幸せそうに微笑んでいる。
その顔を見てしまうと、このままでいることも悪くはない、と思えてしまうあたり、自分は彼女に甘いのだと、改めて自覚した。
――さて、本当にどうしたものかな
とはいえ、自分が何をしようとしてこんな状態になってしまったのか忘れているわけではない。
どのようにすれば確実に起こせるか、月美の頭を撫でながら、再び考えを巡らせる。
だが、護はこの時、こんな事態になって何もしないはずがない人物が二人、この階下にいるということをすっかり忘れていた。
そして、その二人がこうなることをむしろ期待しているということを。
----------------------------
結局、月美が完全に目を覚ましたのは、それから十分以上が経過してのこと。
目を覚ました後、月美は恥ずかしさと申し訳なさで顔を真っ赤にしながら、リビングに向かう。
その表情を見た亜妃と友護は、何があったのか大体のところを察したらしく。
「ふ~ん?朝からお盛んなことねぇ」
「月美も、なかなかどうして、積極的だねぇ」
友護と亜妃は、にやにやとした笑みを浮かべながら、目の前に座っている護と月美に聞こえるような声でそうつぶやいた。
当の本人たちは、その視線が痛いやら恥ずかしいやら。月美に至っては申し訳なさも加わって、顔を伏せてしまう。
さらに、友護はともかく、亜妃は月美に怒っていることが、言葉の端から伝わってくる。
「まったく、あんたって子はほんとに。何年経っても治らないわね、その癖は」
「うぅ……」
「そのせいで、起こしに来てくれた人に抱きついたって?護くんだったからよかったものを、ほかの男の子だったら、今頃襲われてるわよ?」
「面目次第もございません……」
「……まぁ、間違いがなかったようでよかったけど」
すっかりしおれた様子の月美に、亜妃はそっとため息をついてそうつぶやく。
その様子を見ると、月美は少しだけほっとした顔になり、箸を手に取った。
一方、護は箸を持ってはいるものの、あまり食が進んでいない。
いや、食が進んでないどころか、何か考え事をしているらしく、先ほどからまったく料理に手を付けていないようだ。
「……護?」
「あら?具合でも悪いの?」
護の様子に気づいた月美と亜妃は心配そうな声色で問いかけてくる。
それに気づいた護は、静かに笑みを浮かべた。
「いえ、そういうわけでは。ただ、少し気になることがあったので」
月美と亜妃の心配そうな声に答え、護は朝食を食べ始める。
気丈に振る舞ってこそいるが、護の様子がいつもと異なるということは、この場にいる全員が気づいた。
そして、それは月美に余計な心配をかけさせまいとしているためにしていることだとも。
それを理解した亜妃は、護が抱えている気になることについて追及することはなく、黙って食事を続けることにした。
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