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奮闘記
17、少女もまた想いを自覚し
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護と月美が足早に風森邸に戻ると何かが、お皿のようなものが盛大に破壊される音が聞こえてくる。
それも一枚や二枚という数ではない、いっぺんに数十枚といった規模のものを割ったときのものだ。
その音に、護はなぜか心当たりがあり、まさか、とつぶやいた。
「えっと、めんどうなことってまさか……」
「……母様、はりきってなければいいんだけど……」
護は先ほどの音と喫茶店で聞いた「めんどうなこと」を関連付けて、何が面倒なのかを察することはできた。
月美もまた、苦笑を浮かべながら、そんなことを呟く。
家に上がり、まっすぐに台所へ向かうと、案の定、盛大に破壊された皿を、人形のような何かがせっせと片づけている光景が飛びこんできた。
「あぁ、こうなったか」
「あぁ、やっぱり」
二人の視線の先には、何人分作っているのだろうか、唐揚げやら刺身やら握り鮨やらを乗せた皿がふよふよと浮かんでいる。
何もないはずなのに皿が浮かんでいるという異様な光景は、普通の人間が見れば撮影かなにかかと疑うのであろう。
だが、二人はこの光景を幾度となく見てきているため、別に不思議に思うことはなかった。
むしろ、そんなことよりも。
「母様、やっぱりはりきってた……」
「人が来るってなると亜妃さん、いつもこうだよな……」
「だからって、いったい何人分作ってるのよ……」
どうやら、久方ぶりの客人で昨夜は特にもてなしもできなかったため、今日こそは、と気合をいれて、大量の料理を作っているようだ。
ほぼ毎年恒例とはいえ、護はこの光景にはいつも驚かされていた。
「いつも思うけど、ほんとすごいな」
「うん。なんか、護が土御門家の人と一緒に来ると、いっつもこうなのよ……」
どうしてこうも頑張るのやら、と月美は呆れたようなため息をつく。
すると、それに合いの手を入れるように、後ろから声が聞こえてきた。
「そりゃ、未来の婿さん候補が来てるからなぁ」
「あ、友護さん。お久しぶりです」
後ろを振り向くと、そこには浅葱色の袴をはいた青年、友護がいた。
護が挨拶すると、友護はそれに微笑みで返し、月美の方を見る。
「何も母さんの婿さん候補じゃないってのに、よくもまぁ、ここまで気合い入れるよな?」
「そうよね……って、兄様?!」
月美は顔を真っ赤にして兄に反論したが、友護はその様子をにやにやと笑いながら眺めている。
その光景を微笑ましく眺めていた護だったが、友護の口から出てきた言葉がひっかかりを覚え、問いかけた。
「ちょっと待った友護さん。今、なんて……?」
「ん?よくもまぁ、ここまで気合い入れるよな」
「いや、その前です」
お約束といえばお約束で返してきた友護に、護はうなだれながら返す。
友護は、待っていましたとでも言いたげに、愉快そうに微笑みを浮かべ。
「婿さん候補、ってところか?」
「はい……で、誰の?」
「月美のだ、当然だろ?俺にそっちの気はないんだから」
「……えっと、つかぬことをうかがいますが、それは誰のことで?」
ほほに汗を伝わせながら、わかりきったことを問いかけてきた護に対し、友護はなおも愉快そうな笑みを浮かべ。
「お前のことだ、土御門護くん」
と言ってのけた。
その言葉に、護の顔は一気に耳まで紅くなり、思考回路がショートしてしまい。
「む……む、こ……」
「あ……あぁのぅ……はうぅぅぅぅぅ……」
護は月美を横目で見ると、顔を真っ赤にしてしまった。
同じように、月美も隠していたことをまだ知られたくなかった人に知られてしまったことで、恥ずかしいやら困ったやらで顔を真っ赤にする。
土御門家とは長く親しい関係が続いているうえに、護はその宗家に属するものであり、月美とは幼馴染。
葛葉姫命から、土御門家の人間を婿に据えるよう、お告げがあったのことで婿候補から一段も二段も飛んで、許嫁として扱うことにしたらしい、と友護が説明する。
「もっとも、俺が勝手に言ってるだけで、本当に婿候補かどうかはわからないけど」
と、いたずら小僧のように笑いながら付け足す。
要するに友護の冗談だったのだが、顔面が茹でダコになっている二人の耳には届いていなかった。
------------
友護から奇妙な方法でからかわれて数分後、ようやく正気を取り戻した護と月美はそれぞれの部屋にあがり、荷物を整理しようとしていた。
だが、月美は荷物の整理をしておらず、姿見の前に立ち、今日買った服を再び試着している。
――護、この服を着たときに可愛いって言おうとしてくれてたよね
実際に口に出して言ってはいないが、顔を見て何となくそう感じた。
自分自身、この服を気にいっているので似合っているかどうかが少し不安だった。
そのため、護が自分の姿に放心している顔を見て、少しホッとしていたのだ。
――麻衣と桃花にお礼を言わないとかな
麻衣がコーディネイトしているあいだ、桃花が護の足止めと誘導をしてくれたおかげで、護にあの顔をさせることができたのだから、お礼を言うのが筋というもの。
明日以降、護と出かけることがわかったら、何かしらからかうための準備をしていそうな気がしてならないが。
――けどまぁ、そんなことはいつものことだもんね
そんなことは日常茶飯事であるため、月美はあまり気にしている様子はなかった。
むしろ、そんな日常のことより。
――結局、今日も言えなかったな
月美の脳裏にはすでに麻衣と桃花の顔ではなく、護が微笑んだ顔が浮かんでいる。
一番会いたいと、ずっとそばにいてほしいと願っている人の笑顔だ。
――本当はどこかレストランで夕食を摂ってから帰るつもりだったんだけどなぁ……
そしてそのまま、どこかのタイミングで、この胸に秘めている想いを告げるつもりだった。
しかし、その計画は亜妃が張り切ってしまったために失敗に終わった。
むろん、その予定を亜妃に話さなかった月美の落ち度でもある。
だが、そんな失敗はまったく気にしていないようだ。
「明日こそ……護に好きだって、言えるといいな……」
まるで祈るかのように、胸の前で左手で右手を包み、そっとつぶやくその姿が、何よりの証拠だろう。
心なしかその頬は紅く染まっているが、その顔は恥じらいに染まってはいない。
むしろ、強く凛とした決意に満ちた顔をしていた。
それも一枚や二枚という数ではない、いっぺんに数十枚といった規模のものを割ったときのものだ。
その音に、護はなぜか心当たりがあり、まさか、とつぶやいた。
「えっと、めんどうなことってまさか……」
「……母様、はりきってなければいいんだけど……」
護は先ほどの音と喫茶店で聞いた「めんどうなこと」を関連付けて、何が面倒なのかを察することはできた。
月美もまた、苦笑を浮かべながら、そんなことを呟く。
家に上がり、まっすぐに台所へ向かうと、案の定、盛大に破壊された皿を、人形のような何かがせっせと片づけている光景が飛びこんできた。
「あぁ、こうなったか」
「あぁ、やっぱり」
二人の視線の先には、何人分作っているのだろうか、唐揚げやら刺身やら握り鮨やらを乗せた皿がふよふよと浮かんでいる。
何もないはずなのに皿が浮かんでいるという異様な光景は、普通の人間が見れば撮影かなにかかと疑うのであろう。
だが、二人はこの光景を幾度となく見てきているため、別に不思議に思うことはなかった。
むしろ、そんなことよりも。
「母様、やっぱりはりきってた……」
「人が来るってなると亜妃さん、いつもこうだよな……」
「だからって、いったい何人分作ってるのよ……」
どうやら、久方ぶりの客人で昨夜は特にもてなしもできなかったため、今日こそは、と気合をいれて、大量の料理を作っているようだ。
ほぼ毎年恒例とはいえ、護はこの光景にはいつも驚かされていた。
「いつも思うけど、ほんとすごいな」
「うん。なんか、護が土御門家の人と一緒に来ると、いっつもこうなのよ……」
どうしてこうも頑張るのやら、と月美は呆れたようなため息をつく。
すると、それに合いの手を入れるように、後ろから声が聞こえてきた。
「そりゃ、未来の婿さん候補が来てるからなぁ」
「あ、友護さん。お久しぶりです」
後ろを振り向くと、そこには浅葱色の袴をはいた青年、友護がいた。
護が挨拶すると、友護はそれに微笑みで返し、月美の方を見る。
「何も母さんの婿さん候補じゃないってのに、よくもまぁ、ここまで気合い入れるよな?」
「そうよね……って、兄様?!」
月美は顔を真っ赤にして兄に反論したが、友護はその様子をにやにやと笑いながら眺めている。
その光景を微笑ましく眺めていた護だったが、友護の口から出てきた言葉がひっかかりを覚え、問いかけた。
「ちょっと待った友護さん。今、なんて……?」
「ん?よくもまぁ、ここまで気合い入れるよな」
「いや、その前です」
お約束といえばお約束で返してきた友護に、護はうなだれながら返す。
友護は、待っていましたとでも言いたげに、愉快そうに微笑みを浮かべ。
「婿さん候補、ってところか?」
「はい……で、誰の?」
「月美のだ、当然だろ?俺にそっちの気はないんだから」
「……えっと、つかぬことをうかがいますが、それは誰のことで?」
ほほに汗を伝わせながら、わかりきったことを問いかけてきた護に対し、友護はなおも愉快そうな笑みを浮かべ。
「お前のことだ、土御門護くん」
と言ってのけた。
その言葉に、護の顔は一気に耳まで紅くなり、思考回路がショートしてしまい。
「む……む、こ……」
「あ……あぁのぅ……はうぅぅぅぅぅ……」
護は月美を横目で見ると、顔を真っ赤にしてしまった。
同じように、月美も隠していたことをまだ知られたくなかった人に知られてしまったことで、恥ずかしいやら困ったやらで顔を真っ赤にする。
土御門家とは長く親しい関係が続いているうえに、護はその宗家に属するものであり、月美とは幼馴染。
葛葉姫命から、土御門家の人間を婿に据えるよう、お告げがあったのことで婿候補から一段も二段も飛んで、許嫁として扱うことにしたらしい、と友護が説明する。
「もっとも、俺が勝手に言ってるだけで、本当に婿候補かどうかはわからないけど」
と、いたずら小僧のように笑いながら付け足す。
要するに友護の冗談だったのだが、顔面が茹でダコになっている二人の耳には届いていなかった。
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友護から奇妙な方法でからかわれて数分後、ようやく正気を取り戻した護と月美はそれぞれの部屋にあがり、荷物を整理しようとしていた。
だが、月美は荷物の整理をしておらず、姿見の前に立ち、今日買った服を再び試着している。
――護、この服を着たときに可愛いって言おうとしてくれてたよね
実際に口に出して言ってはいないが、顔を見て何となくそう感じた。
自分自身、この服を気にいっているので似合っているかどうかが少し不安だった。
そのため、護が自分の姿に放心している顔を見て、少しホッとしていたのだ。
――麻衣と桃花にお礼を言わないとかな
麻衣がコーディネイトしているあいだ、桃花が護の足止めと誘導をしてくれたおかげで、護にあの顔をさせることができたのだから、お礼を言うのが筋というもの。
明日以降、護と出かけることがわかったら、何かしらからかうための準備をしていそうな気がしてならないが。
――けどまぁ、そんなことはいつものことだもんね
そんなことは日常茶飯事であるため、月美はあまり気にしている様子はなかった。
むしろ、そんな日常のことより。
――結局、今日も言えなかったな
月美の脳裏にはすでに麻衣と桃花の顔ではなく、護が微笑んだ顔が浮かんでいる。
一番会いたいと、ずっとそばにいてほしいと願っている人の笑顔だ。
――本当はどこかレストランで夕食を摂ってから帰るつもりだったんだけどなぁ……
そしてそのまま、どこかのタイミングで、この胸に秘めている想いを告げるつもりだった。
しかし、その計画は亜妃が張り切ってしまったために失敗に終わった。
むろん、その予定を亜妃に話さなかった月美の落ち度でもある。
だが、そんな失敗はまったく気にしていないようだ。
「明日こそ……護に好きだって、言えるといいな……」
まるで祈るかのように、胸の前で左手で右手を包み、そっとつぶやくその姿が、何よりの証拠だろう。
心なしかその頬は紅く染まっているが、その顔は恥じらいに染まってはいない。
むしろ、強く凛とした決意に満ちた顔をしていた。
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