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奮闘記
16、風森家からの緊急呼び出し……?
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話しても減るものではないので、問題は無いのだろうとは思う。
だが、ファッションコーナーでのやりとりから察するに、月美をからかって遊ぶにはどうすればいいか、ある程度熟知しているようだ。
――余計なことを言ったら、月美をおもちゃにするのは目に見えてるしな
それはさすがに心苦しいし、彼女たちと遭遇するたび、自分が被害を被ることもほぼ確実。
その手の類でからかわれることは、気恥ずかしいということもあり、なるべくならば避けたい事態ではあるのだが。
――だからって黙秘権を行使しても、話を聞くまで帰してくれそうにはないし。それどころか、あれやこれや尋問されそうだし……
どうしたものか、と思案に暮れていると、月美の持っている携帯から着信を知らせる音が鳴った。
「あ、ごめん……はい。あ、母様……え、すぐにですか?……わかりました」
電話を切ると、月美は護の方に向き直った。
その様子がただ事ではないことを察した麻衣は、月美の荷物を手渡す。
護も立ち上がろうとしたが、桃花が護の腕をつかみ、抑え込もうとしてくるが。
――そう何度も、同じことをやられてたまるかよ!
護は、つかまれた腕を少し動かし、桃花のかけてきた技にかけられている力の方向をずらした。
人間は関節をおさえられたり、ある一点を抑えられたりするだけで、簡単に動きを封じられてしまう。
さらに、重心さえ把握しておけば、たとえ体格差があったとしてもそれなりに力があれば、簡単に投げ飛ばすことも可能だ。
合気道などの柔術から派生する武道全般は、そういった人間の体の原理をおさえた技が主で、原理さえ知っていれば簡単に抜け出すこともできる。
月美と合流する前、桃花は護が立ちあがるために使う筋肉にかけられた力に、余計な力を加えることでその方向をずらし、立ちあがることを難しくさせていた。
――だったら、かけられている力を別の方向へ逃がせばいいだけの話だ!
だから、護は自分の腕にかけていた力を立ちあがる力と正反対の方向から、全く別の方向へと逃がした。
すると桃花は体勢を崩してしまい、床へ転げそうになる。
だが、護によって素早く支えられたため、床に激突することはなかった。
「あ、あり、がとう」
あまりの早業に、桃花は少しだけ顔を赤くして礼を言ったが、礼を言われた本人は無言で桃花から手を離した。
手を離された桃花の顔は心なしか、まだ呆けている。
そんな桃花を放っておいて、護は月美が亜妃から電話越しで何を聞いたのか、問いかけた。
「うん。少しめんどうなことになったから、早めに帰ってきてって」
めんどうなことという言葉に、自分の荷物と月美の荷物を持って、さっさと喫茶店を出ようとした。
月美はそのあとに続き、店を出ようとするが、会計を忘れていたことを思い出し、テジで支払いを済ませ、あわただしく護について行く。
あとに残されたのは、あっけにとられている麻衣と初めて覚える感覚に戸惑っている桃花だけであった。
だが、ファッションコーナーでのやりとりから察するに、月美をからかって遊ぶにはどうすればいいか、ある程度熟知しているようだ。
――余計なことを言ったら、月美をおもちゃにするのは目に見えてるしな
それはさすがに心苦しいし、彼女たちと遭遇するたび、自分が被害を被ることもほぼ確実。
その手の類でからかわれることは、気恥ずかしいということもあり、なるべくならば避けたい事態ではあるのだが。
――だからって黙秘権を行使しても、話を聞くまで帰してくれそうにはないし。それどころか、あれやこれや尋問されそうだし……
どうしたものか、と思案に暮れていると、月美の持っている携帯から着信を知らせる音が鳴った。
「あ、ごめん……はい。あ、母様……え、すぐにですか?……わかりました」
電話を切ると、月美は護の方に向き直った。
その様子がただ事ではないことを察した麻衣は、月美の荷物を手渡す。
護も立ち上がろうとしたが、桃花が護の腕をつかみ、抑え込もうとしてくるが。
――そう何度も、同じことをやられてたまるかよ!
護は、つかまれた腕を少し動かし、桃花のかけてきた技にかけられている力の方向をずらした。
人間は関節をおさえられたり、ある一点を抑えられたりするだけで、簡単に動きを封じられてしまう。
さらに、重心さえ把握しておけば、たとえ体格差があったとしてもそれなりに力があれば、簡単に投げ飛ばすことも可能だ。
合気道などの柔術から派生する武道全般は、そういった人間の体の原理をおさえた技が主で、原理さえ知っていれば簡単に抜け出すこともできる。
月美と合流する前、桃花は護が立ちあがるために使う筋肉にかけられた力に、余計な力を加えることでその方向をずらし、立ちあがることを難しくさせていた。
――だったら、かけられている力を別の方向へ逃がせばいいだけの話だ!
だから、護は自分の腕にかけていた力を立ちあがる力と正反対の方向から、全く別の方向へと逃がした。
すると桃花は体勢を崩してしまい、床へ転げそうになる。
だが、護によって素早く支えられたため、床に激突することはなかった。
「あ、あり、がとう」
あまりの早業に、桃花は少しだけ顔を赤くして礼を言ったが、礼を言われた本人は無言で桃花から手を離した。
手を離された桃花の顔は心なしか、まだ呆けている。
そんな桃花を放っておいて、護は月美が亜妃から電話越しで何を聞いたのか、問いかけた。
「うん。少しめんどうなことになったから、早めに帰ってきてって」
めんどうなことという言葉に、自分の荷物と月美の荷物を持って、さっさと喫茶店を出ようとした。
月美はそのあとに続き、店を出ようとするが、会計を忘れていたことを思い出し、テジで支払いを済ませ、あわただしく護について行く。
あとに残されたのは、あっけにとられている麻衣と初めて覚える感覚に戸惑っている桃花だけであった。
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