見習い陰陽師の高校生活

風間義介

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奮闘記

13、二人で出かけよう

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 ある程度、雑誌やら新聞やらを整頓し、所定の場所に戻すと、二人は身支度を整えるため、部屋へ戻った。
 身支度といっても、護はあまり時間がかからなず、十分と経たないうちに風森家の玄関に出て、月美を待っていた。
 普段から持ち歩いている文庫本を読みながら時間をつぶしていたが、月美はなかなか現れない。

「……遅いな」
「……だな」

 あまりに時間がかかっていると感じたのか、肩に乗っている使鬼の呟く言葉に、声を出して答えてしまった。
 普段ならそんなことはしないのだが、道路までそこそこ距離があるし、口元は文庫本の影に隠れている。
 仮に見られてとしても、独り言を呟いているようには見えないはず。
 そのため、こうして声を出して言葉を交わすことになんの躊躇もないらしい。

「ま、女子だからな。色々と支度があるんだろうよ」
「正直、女子とどこかに出かけるなんてことないから、よくわからんが」

 女性の身支度は男性のそれよりも長いということは、護でも知っている。
 だが、実際にはどれくらいかかるのか、実体験をしたことがないため、なんとも言えない。
 いや、人付き合いそのものを避けてきたために、同性であってもどれくらいの時間がかかるのかわからない。
 そのため、未経験を通りこして無知と言ってもいいくらいで、どうこう言うつもりはないという以前に、どうこう言うことすらできないというのが正直なところだ。

「けど、いくらなんでもそろそろ声かけた方が」

 いいだろうか、と言いかけたその時。

「ごめんね、待った?」

 扉の向こうから、月美が歩み寄って声をかけてきた。
 振り返ると、そこには桃色のワンピースを着て、その下にクリーム色のストッキングをはいている月美が視界に飛び込んでくる。

「え……」
「ほぉ、こりゃまた」

 自分が知っている範囲に限定しての話だが、月美はあまり目立ちたがらない性格で、かわいらしい色やデザインの服はあまり着ない。
 だが目の前にいる彼女のスタイルは、それなりに似合っているし、同年代と比較すれば大人しいのだろうが、十分かわいい。

「……ど、どう?似合う、かな?」

 護にまじまじと見つめられているからなのか、恥じらうように頬を赤く染めながら問いかける月美に、護はこくこくとうなずいて答えた。
 無言ではあったものの、肯定してくれたことが嬉しかったのか、月美は顔をもっと紅くして、うつむいてしまう。

 互いに何もできず、言葉も交わすことができなかったが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
 何より、こんな現場を亜妃に見つかりでもしたら、どうなるかわからない。
 そこまで考えた護は、自分の方から月美の手を取り。

「い、行こうか」

 と、出発を促した。

「う、うん。えっと、こっちだよ」

 手を握られたことに驚いてしまい、月美は息を呑んだ。
 しかし、嫌悪感は抱いていないらしく、手を握り返し、うなずいてショッピングモールまでの道順を案内し始めた。
 ちなみに、到着するまでずっとその手を離さなかったことはいうまでもない。
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