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魔王と勇者の最終決戦
魔王様の本業は?
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とある城下町のボロアパートの1室。表通りから一本外れた所にあり、孤児院や教会、冒険者ギルドとも隣接している為町の喧騒が聞こえる。
「魔王様、勇者御一行様が魔王城へと向かっております。」
安っぽく見える服を着て床をゴロゴロしていたら、 どこからとも無く現れた狭いアパートに不釣り合いな執事服の男が恭しく頭を下げた。
「あ、そう?歓迎の準備出来てる?あと、いつも言ってるけど普通に玄関から入ってこよう?」
「この身なりで表から入ると違和感通り越して貴族絡みの事件じゃないかと騒ぎになります。歓迎の準備は滞り無く。今回追加される分に関しましては資材の搬入と設置まで完了しておりますので、魔王城に到着次第仕上げをお願い致します。」
「お、間に合ったんだ。これ以上延期はしたくなかったからねぇ。んー……いつもより3時間早く出れば余裕かな?準備よろしく。」
「いや、3時間て。あんな鬼畜ねずみ捕りもどき、朝飯前な仕掛けじゃないでしょう。神でも殺す気ですか。」
「ま、そんなとこー。殺れるもんなら殺りたいけど、色々不味いから殺せないのがムカつくわー。」
「……外ではちゃんとしてくださいね。ホント、色々と台無しなんで。」
「ほーい。」
ヨッコイショ、と起き上がりキッチンに向かう。おやつ作りを開始したこの私こそがアパートの大家である。ついでに言うと魔王もしている。さらに言えば孤児院の経営者であり、時々ギルド職員や冒険者にもなる。教会にも多大な寄付をしている。他にも色々している。本業が魔王なのか怪しいと言ったら臣下は泣くかもしれない。
「あ、卵採ってきてくれた?」
生クリームを風魔法と氷魔法、水魔法を駆使して泡立てながら影を操って容器を振りバターを作りつつ粉をふるいにかけながら訊ねた。
「繁殖期で番のいないコカトリスがいましたので分けていただきました。フェニさんも是非持ってってくれと御自分の産んだ分をおしつ……わざわざ分けてくださいマシタ。」
「待って、ねぇ待って、確かに滋養のあるのが欲しいなとは言ったけど産みたてのを家畜から採ってくるよね普通。あと、不死鳥のはいいの?!ねぇ、それ食べてもいいやつなの?!」
「フェニさんの所の家畜ですよ。キメラのもありましたけど、あれは哺乳類も混ざっていて何の卵に分類されるのか分からなかったのでやめておきました。フェニさんは魔王様が結婚してくれるまで魔王様の家畜で良いそうです。結婚してください、あなたの為ならいくらでも産みます、と言伝が。」
「おかしいなぁ、不死鳥ってそんなしょっちゅう卵産まない筈なんだけどなぁ。繁殖期って何十年~何百年に1回じゃなかったっけ。なんでアレ年中発情してるのコワイ。」
幼児の頭ほどの大きさのコカトリスの卵を割りながら恐れおののく。15個ほど割ったところで鶉の卵より少し大きい卵を持ってふと疑問に思った。
「これってさ……鳥とはいえ人型になれる不死鳥の無精卵だよね。つまり女性の月のモノと意味合い的には同じわけで……持ってるだけでセクハラにならない?てか、産んでる時はもちろん鳥型だよね……?」
「……精神衛生上よろしくないので、深く、お考えにならない方が、よろしいかと。そんなことを言い出したら羽毛や毛糸等も他人の抜け毛集めてる変態という事になりますし、一部の方のせいで本当に好意で送ってくださってる方々が抜け毛送り付けてくる変態という事に……。献上品はありがたく物資として扱いましょう……。」
部下のいつもの5割増しで死んだ目を見て、察してしまった。深く考えない事がお互いの為だ。いつも防波堤になってくれてありがとう。
不死鳥の素材は神薬や秘薬と呼ばれるほぼ伝説に近い薬の素材になるほどの物で、単品でも部位欠損をじわじわと治すほどである。ただし、色々とめんどくさい素材で扱いを間違えると呪われる。不死鳥から無理矢理奪えば素材自体に手当り次第思いつく限りの呪いがかけられ、合意の上でも都合のいいようになるオマジナイが掛けられていることもある。よって、高度で複雑な解呪を施さなくてはならない場合が多い。ここを怠ると副作用で死んだ方がマシな酷い目に合う可能性が極めて高い。
魅力と洗脳を解呪しつつ、卵を1つ割り入れる。聖乳を浄化して大量に注ぐ。このくらいコカトリスの卵で希釈されれば瀕死の病人が体を起こせるようになるくらいで済むだろう……たぶん。砂糖とバニラエッセンスを混ぜて型に注ぎ表面の泡を取り除いて蒸す。魔法を極めたおかげで2500個ほどを10秒で注いで2分で蒸せる。瞬時に冷やして手のひらサイズのポーチに全て入れ、不死鳥プリン(重病患者用)とラベリングして部下に渡し、早口で指示を出す。
「こっちの不死鳥プリンはリストの人に配って残りは瀕死まで弱った人が出たら口に突っ込んでね。こっちのコカトリスプリン5000個は食べられないくらい弱ってる人に。レシピ覚えたよね?半分切ったら幹部総出で作って。不死鳥の方は一応浄化しといたから側近で手分けして作ってね。」
「えっ、その量を……?」
「大丈夫、私は魔法多重起動すれば5分で5000個は作れるから。訓練と余り物の平和利用だね!あと、おやつは作り置き沢山あるから時間になったら各地の孤児院とスラムで配ってね。みんなも食べてもいいよ。いつも通り食べる前に手洗いと浄化は徹底させるように。」
「いや、それできるのあなただけ……。」
「ん?返事は?」
「あ、ハイ……。」
「夕方の炊き出しと週一の食糧の配給はノーマルで普通な食材使ってね。一般的な滋養のある物は使ってもいいけどくれぐれも秘薬の素材なんか入れないように。食べ合わせ悪いと危ないから。」
「ココロエテオリマス……。」
こうして、部下達は料理スキルが上がり、ついでに魔法も上手くなっていったのであった。
「魔王様、勇者御一行様が魔王城へと向かっております。」
安っぽく見える服を着て床をゴロゴロしていたら、 どこからとも無く現れた狭いアパートに不釣り合いな執事服の男が恭しく頭を下げた。
「あ、そう?歓迎の準備出来てる?あと、いつも言ってるけど普通に玄関から入ってこよう?」
「この身なりで表から入ると違和感通り越して貴族絡みの事件じゃないかと騒ぎになります。歓迎の準備は滞り無く。今回追加される分に関しましては資材の搬入と設置まで完了しておりますので、魔王城に到着次第仕上げをお願い致します。」
「お、間に合ったんだ。これ以上延期はしたくなかったからねぇ。んー……いつもより3時間早く出れば余裕かな?準備よろしく。」
「いや、3時間て。あんな鬼畜ねずみ捕りもどき、朝飯前な仕掛けじゃないでしょう。神でも殺す気ですか。」
「ま、そんなとこー。殺れるもんなら殺りたいけど、色々不味いから殺せないのがムカつくわー。」
「……外ではちゃんとしてくださいね。ホント、色々と台無しなんで。」
「ほーい。」
ヨッコイショ、と起き上がりキッチンに向かう。おやつ作りを開始したこの私こそがアパートの大家である。ついでに言うと魔王もしている。さらに言えば孤児院の経営者であり、時々ギルド職員や冒険者にもなる。教会にも多大な寄付をしている。他にも色々している。本業が魔王なのか怪しいと言ったら臣下は泣くかもしれない。
「あ、卵採ってきてくれた?」
生クリームを風魔法と氷魔法、水魔法を駆使して泡立てながら影を操って容器を振りバターを作りつつ粉をふるいにかけながら訊ねた。
「繁殖期で番のいないコカトリスがいましたので分けていただきました。フェニさんも是非持ってってくれと御自分の産んだ分をおしつ……わざわざ分けてくださいマシタ。」
「待って、ねぇ待って、確かに滋養のあるのが欲しいなとは言ったけど産みたてのを家畜から採ってくるよね普通。あと、不死鳥のはいいの?!ねぇ、それ食べてもいいやつなの?!」
「フェニさんの所の家畜ですよ。キメラのもありましたけど、あれは哺乳類も混ざっていて何の卵に分類されるのか分からなかったのでやめておきました。フェニさんは魔王様が結婚してくれるまで魔王様の家畜で良いそうです。結婚してください、あなたの為ならいくらでも産みます、と言伝が。」
「おかしいなぁ、不死鳥ってそんなしょっちゅう卵産まない筈なんだけどなぁ。繁殖期って何十年~何百年に1回じゃなかったっけ。なんでアレ年中発情してるのコワイ。」
幼児の頭ほどの大きさのコカトリスの卵を割りながら恐れおののく。15個ほど割ったところで鶉の卵より少し大きい卵を持ってふと疑問に思った。
「これってさ……鳥とはいえ人型になれる不死鳥の無精卵だよね。つまり女性の月のモノと意味合い的には同じわけで……持ってるだけでセクハラにならない?てか、産んでる時はもちろん鳥型だよね……?」
「……精神衛生上よろしくないので、深く、お考えにならない方が、よろしいかと。そんなことを言い出したら羽毛や毛糸等も他人の抜け毛集めてる変態という事になりますし、一部の方のせいで本当に好意で送ってくださってる方々が抜け毛送り付けてくる変態という事に……。献上品はありがたく物資として扱いましょう……。」
部下のいつもの5割増しで死んだ目を見て、察してしまった。深く考えない事がお互いの為だ。いつも防波堤になってくれてありがとう。
不死鳥の素材は神薬や秘薬と呼ばれるほぼ伝説に近い薬の素材になるほどの物で、単品でも部位欠損をじわじわと治すほどである。ただし、色々とめんどくさい素材で扱いを間違えると呪われる。不死鳥から無理矢理奪えば素材自体に手当り次第思いつく限りの呪いがかけられ、合意の上でも都合のいいようになるオマジナイが掛けられていることもある。よって、高度で複雑な解呪を施さなくてはならない場合が多い。ここを怠ると副作用で死んだ方がマシな酷い目に合う可能性が極めて高い。
魅力と洗脳を解呪しつつ、卵を1つ割り入れる。聖乳を浄化して大量に注ぐ。このくらいコカトリスの卵で希釈されれば瀕死の病人が体を起こせるようになるくらいで済むだろう……たぶん。砂糖とバニラエッセンスを混ぜて型に注ぎ表面の泡を取り除いて蒸す。魔法を極めたおかげで2500個ほどを10秒で注いで2分で蒸せる。瞬時に冷やして手のひらサイズのポーチに全て入れ、不死鳥プリン(重病患者用)とラベリングして部下に渡し、早口で指示を出す。
「こっちの不死鳥プリンはリストの人に配って残りは瀕死まで弱った人が出たら口に突っ込んでね。こっちのコカトリスプリン5000個は食べられないくらい弱ってる人に。レシピ覚えたよね?半分切ったら幹部総出で作って。不死鳥の方は一応浄化しといたから側近で手分けして作ってね。」
「えっ、その量を……?」
「大丈夫、私は魔法多重起動すれば5分で5000個は作れるから。訓練と余り物の平和利用だね!あと、おやつは作り置き沢山あるから時間になったら各地の孤児院とスラムで配ってね。みんなも食べてもいいよ。いつも通り食べる前に手洗いと浄化は徹底させるように。」
「いや、それできるのあなただけ……。」
「ん?返事は?」
「あ、ハイ……。」
「夕方の炊き出しと週一の食糧の配給はノーマルで普通な食材使ってね。一般的な滋養のある物は使ってもいいけどくれぐれも秘薬の素材なんか入れないように。食べ合わせ悪いと危ないから。」
「ココロエテオリマス……。」
こうして、部下達は料理スキルが上がり、ついでに魔法も上手くなっていったのであった。
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