蒼のタチカゼ

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第14章 ー深縁ー

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「クッ!!」シンラの背中が鮮血に染まる。


セツナとシンラはヒット&アウェイを繰り返す敵に翻弄されていた。

だが、シャオ・リーの方も歯がゆい思いをしていた。どの攻撃も肝心の芯まで届いていない。

ギリギリの所で致命傷を躱されている。


『あの翠の眼の小娘、厄介だねぇ・・・先に潰すか!』


シャオ・リーにとってこの森林地帯での戦いは、かなり有利に働いている。大木を足場に使って、立体的な動きからの攻撃が出来るからだ。しかし・・・


「左斜め上!!」セツナが叫ぶ。それに合わせ、その方向にシンラは大剣を振るう。次の瞬間ギィンンンと大剣同士がぶつかりあう音が聞こえ、シャオ・リーが姿を現す。すかさずセツナが拳銃を打つが、それは空しく誰もいない空間を突き抜けていった。


「クソ!捕えきれないか。でもだいぶ見えてきた!!」


セツナが眼と耳を研ぎ澄ませる。意識を集中させ熱探知の精度を上げる。近付いて来る足音、熱源。

20・・・10m・・・。


「来た!!目の前だ!!」


シンラの目の前にシャオ・リーが姿を現した。シンラの大剣が横薙ぎに振るわれる。だがすぐ様、シャオ・リーは地面を蹴りそのままシンラを飛び越えた。最初から狙いはセツナだったのだ。彼女の背中を鋭い一閃が切り裂いた。セツナはギリギリで体を捻り、なんとか致命傷を避けた。


「チッ!!浅かったか!?」そのまま空中で一回転して、地面に降りた。

「うう・・・」セツナは肩膝を付いて呻いた。

「・・・次は確実に仕留める!!」そう言って、シャオ・リーは音も無く消えた。

「立てるか?」シンラが尋ねる。「・・・ああ」セツナは力無く立ち上がった。

「ハァ・・・もっとスゲー強敵が出て来た時に使うつもりだったんだけどな・・・しゃーなしか」


セツナは独り言のように呟いた。


「?何を言っている?」「シンラ、悪いけど十秒だけ一人で頑張ってくんない?」


そう言って、セツナは拳銃をライフル銃に持ち替えた。


「ライフルなんて余計当たらんぞ!」「いいから!頼んだよ!!」


『モード切替、深縁モード!!』セツナがそう言うと、翠の眼が深い緑色に変わっていく。その眼はまるで深い深い深淵の底をのぞき込んでいるような深く暗い緑になった。


シンラも意識を集中させる。兵器と言えど元が人間である以上、気配があるはず・・・。

・・・捕えた!!その方向に大剣を振るう。が逆に肩口を切られてしまう。


「くっ!」シンラが顔を歪める。「アハハハハ!」シャオ・リーの笑い声が響いた。

「・・・ありがとう、もういいよ!」

シンラがセツナの方を振り向くと、彼女は深緑の眼から血の涙を流していた。


「な!?お前、その眼!!?」とシンラが言った瞬間、セツナは上空の一点に向けてライフル弾を3発発射した。その行動に一番驚いたのはシャオ・リーだった。そのライフル弾の方向は今まさに木を蹴って向かおうとしていた方向なのだ。もう止まる事は出来ない。


「キャアアアアアアアアア!!!」


甲高い絶叫とともに、シャオ・リーはハントされた鳥の如く真っ逆さまに地面に落ちた。


「フゥゥー!やれやれだわ」セツナは眼から流れる血を服の袖で拭きながら言った。

セツナとシンラが近付くと、3発の銃弾は見事シャオ・リーの右足を貫いていた。


「ク・・・一体何が!?」シャオ・リーは混乱していた。

「あたしの深縁モードは未来が見えるのだ!・・・なんてね。あんたの動きの癖を見切っただけだよ」

「く、癖!?」「そ!ニンゲンヘイキの中でもあんたらはより人間に近いタイプだからねぇ、どうしても癖ってのが出ちまうもんさ。あたしの深縁モードは空を漂うナノキューブと直結して、その演算機能を借りて10秒であんたの動きのパターンを割り出したって訳よ!これ脳にスゲー負担かかるからあんま使いたくないんだよ!・・・あー頭痛い。」セツナは頭を押さえた。


シンラがシャオ・リーの目の前に立った。

「そう言えば一つ思い出した事がある・・・俺を造った主が言っていた、『女性には誠意を持って優しくしろ』と。だから苦しまないよう一発で首を落としてやる」

「ハハ・・・それ優しさか?十分グロいっての・・・」


そう言うか言わないかのうちに、シンラの大剣がシャオ・リーの首を跳ね飛ばしていた。

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