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【続編】
135:とんでもない衝動
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レオナルド達が調べた結果は、私とロレンソの調査結果と変わらないものだった。数回の服用では問題ない。だがその効果に頼り、頻繁に使用した結果……。宰相のような腰痛(神経痛)、肝臓の機能の低下、睡眠不足、脱毛などの症状が出て困ったことになる。
「『魔法の薬』を売っているのは誰なのか。その『魔法の薬』の成分はどうなっているのか。それらを調べることになった。幸いなことに宰相がね、未開封の『魔法の薬』を持っていた。補佐官であるセシリオに宰相の屋敷まで取りに行かせ、それを分析することにした」
レオナルドは話しながら、愛おしそうに私の頭や頬に触れている。
「パトリシアが風の魔法の練習をしている時にチラッと見た粉。あれがその『魔法の薬』だった。瓶から半分だけ出したもので、そこから検出できたのはハーブだ。でも灰のようなものも含まれていた。そしてそこに魔力を感知した。だがそこで作業を中断したら……。その灰からは魔力が消えてしまっていた」
それはまさにロレンソが言っていたことと同じだ。時間が経つと灰の魔力……魔法が消えてしまうというのは。
「残りの半分で灰に含まれる魔力がどんなものであるか。掴む必要があった。それは集中して作業したいと思ったから、王宮の執務室にこもり、行うことにした。でもまさか……。驚いたよ。僕自身がその『魔法の薬』の作用を受けてしまうなんて」
まさかレオナルドまで、薬の影響を受けていたの!?
これには……驚きだった。でもそれだけ、その『魔法の薬』を作り出した相手の魔法が強力だったということだ。
「僕は各種魔法への対策を講じているから、そう簡単に自分自身に魔法がかかることはない。でもそれがかえって、とんでもない結果になってしまった」
優雅にため息をついたレオナルドは。
私の手をとり、口づけをする。
「灰に含まれている魔力を感知し、それが何であるかもう答えが出かかっているのに。うまく導き出せない。これだと思い出そうとするのに、うまく思い出すことができない。……疲れているのだろう、ちゃんと体を休めたら、すぐに思い出す。そう思い、屋敷に戻ることにした。そして……パトリシア、君の元へ向かった」
レオナルドが私の手をぎゅっと握りしめる。
「ベッドで眠る君の姿を認識した瞬間。とんでもない衝動に駆りたてられて……。君を求める本能が止まらなくなっていた。勿論これは遅れて作用した『魔法の薬』の反応だった。加えて逆鱗には……ロレンソの魔法が掛けられていた。それに対しても『いつの間に?』と嫉妬を覚えた」
「レオナルド……ごめんなさい。それは私がロレンソに頼んでかけてもらっていたの。逆鱗の反応が……」
レオナルドが私の頭を優しく撫でる。
「聞いたよ。……発情期の反動による衝動行動の件だね。すまなかった。女性の番(つがい)特有の反応だ。パトリシアは番(つがい)について詳しいわけではないのだから、僕がちゃんとケアしてあげればよかったのに。すまなかったね」
「いえ、そんな……」
思わず赤くなると、レオナルドが「大丈夫。生理現象なのだから、恥ずかしがらなくても」と優美な仕草で額へキスをする。もう、心臓が一気に飛び跳ねてしまう。
「……ともかくあの時は『魔法の薬』も作用し、嫉妬による衝動もあり……。本当にすまなかったね。きっと朝起きた時、驚いただろう。こんな場所に、口づけの名残りがあったり、服も……乱れていたと思う。本当はちゃんと対処したかったのだけど、パトリシアのそばにいると、もう暴走してしまいそうだったから。慌てて王宮の執務室に戻ることになった」
申し訳なさそうにするレオナルドの指が、一瞬触れた胸元を自分でも見て「あっ」と声が漏れる。
赤い痣を胸元に見つけた時。確かにネグリジェが脱げそうになっていて……。
え、もしかしてあれはキスマークだったの?
ネグリジェのリボンを解いたのは……。
信じられない程、ドキドキし、レオナルドを見上げると。
その優雅さで知られるレオナルドの目元が、ほんのり薔薇色に染まり、紺碧の瞳が潤んでいる。
そうか、そうなのか。そうだったのね……。
驚き、でも……嬉しいと思ってしまうのは、はしたないことなのかしら。
「それからは……『魔法の薬』の案件が片付くまで、極力パトリシアに近づくのを控えようと自分自身に誓うことになった。あの薬の反応は私に遅れて出るから、気付かないうちに薬の魔法の影響を受けている可能性も考えたからだ。それにあの『魔法の薬』に含まれていた灰の成分。結局、それが何であるか分からないまま、その作用だけを僕が受け、灰の魔力は消えてしまった。そしてもう手元に『魔法の薬』はない。『魔法の薬』を手に入れる必要があった」
ここまで聞けば私も理解する。
グロリアとアズレーク……レオナルドがホテルから出てきて、腕を組んでいた理由を。
『魔法の薬』を流通させている人間は、明らかに強い魔力を持ち、各種の魔法を使える。過剰の使用で体へ悪影響が出るものだが、闇雲に売りつけようとしているわけではない。転売を目的としたり、遊び半分の人間に売るつもりはない。つまりはちゃんとした恋人同士や夫婦に対してのみ、『魔法の薬』を売りつける。
だから……。
「『魔法の薬』を売っているのは誰なのか。その『魔法の薬』の成分はどうなっているのか。それらを調べることになった。幸いなことに宰相がね、未開封の『魔法の薬』を持っていた。補佐官であるセシリオに宰相の屋敷まで取りに行かせ、それを分析することにした」
レオナルドは話しながら、愛おしそうに私の頭や頬に触れている。
「パトリシアが風の魔法の練習をしている時にチラッと見た粉。あれがその『魔法の薬』だった。瓶から半分だけ出したもので、そこから検出できたのはハーブだ。でも灰のようなものも含まれていた。そしてそこに魔力を感知した。だがそこで作業を中断したら……。その灰からは魔力が消えてしまっていた」
それはまさにロレンソが言っていたことと同じだ。時間が経つと灰の魔力……魔法が消えてしまうというのは。
「残りの半分で灰に含まれる魔力がどんなものであるか。掴む必要があった。それは集中して作業したいと思ったから、王宮の執務室にこもり、行うことにした。でもまさか……。驚いたよ。僕自身がその『魔法の薬』の作用を受けてしまうなんて」
まさかレオナルドまで、薬の影響を受けていたの!?
これには……驚きだった。でもそれだけ、その『魔法の薬』を作り出した相手の魔法が強力だったということだ。
「僕は各種魔法への対策を講じているから、そう簡単に自分自身に魔法がかかることはない。でもそれがかえって、とんでもない結果になってしまった」
優雅にため息をついたレオナルドは。
私の手をとり、口づけをする。
「灰に含まれている魔力を感知し、それが何であるかもう答えが出かかっているのに。うまく導き出せない。これだと思い出そうとするのに、うまく思い出すことができない。……疲れているのだろう、ちゃんと体を休めたら、すぐに思い出す。そう思い、屋敷に戻ることにした。そして……パトリシア、君の元へ向かった」
レオナルドが私の手をぎゅっと握りしめる。
「ベッドで眠る君の姿を認識した瞬間。とんでもない衝動に駆りたてられて……。君を求める本能が止まらなくなっていた。勿論これは遅れて作用した『魔法の薬』の反応だった。加えて逆鱗には……ロレンソの魔法が掛けられていた。それに対しても『いつの間に?』と嫉妬を覚えた」
「レオナルド……ごめんなさい。それは私がロレンソに頼んでかけてもらっていたの。逆鱗の反応が……」
レオナルドが私の頭を優しく撫でる。
「聞いたよ。……発情期の反動による衝動行動の件だね。すまなかった。女性の番(つがい)特有の反応だ。パトリシアは番(つがい)について詳しいわけではないのだから、僕がちゃんとケアしてあげればよかったのに。すまなかったね」
「いえ、そんな……」
思わず赤くなると、レオナルドが「大丈夫。生理現象なのだから、恥ずかしがらなくても」と優美な仕草で額へキスをする。もう、心臓が一気に飛び跳ねてしまう。
「……ともかくあの時は『魔法の薬』も作用し、嫉妬による衝動もあり……。本当にすまなかったね。きっと朝起きた時、驚いただろう。こんな場所に、口づけの名残りがあったり、服も……乱れていたと思う。本当はちゃんと対処したかったのだけど、パトリシアのそばにいると、もう暴走してしまいそうだったから。慌てて王宮の執務室に戻ることになった」
申し訳なさそうにするレオナルドの指が、一瞬触れた胸元を自分でも見て「あっ」と声が漏れる。
赤い痣を胸元に見つけた時。確かにネグリジェが脱げそうになっていて……。
え、もしかしてあれはキスマークだったの?
ネグリジェのリボンを解いたのは……。
信じられない程、ドキドキし、レオナルドを見上げると。
その優雅さで知られるレオナルドの目元が、ほんのり薔薇色に染まり、紺碧の瞳が潤んでいる。
そうか、そうなのか。そうだったのね……。
驚き、でも……嬉しいと思ってしまうのは、はしたないことなのかしら。
「それからは……『魔法の薬』の案件が片付くまで、極力パトリシアに近づくのを控えようと自分自身に誓うことになった。あの薬の反応は私に遅れて出るから、気付かないうちに薬の魔法の影響を受けている可能性も考えたからだ。それにあの『魔法の薬』に含まれていた灰の成分。結局、それが何であるか分からないまま、その作用だけを僕が受け、灰の魔力は消えてしまった。そしてもう手元に『魔法の薬』はない。『魔法の薬』を手に入れる必要があった」
ここまで聞けば私も理解する。
グロリアとアズレーク……レオナルドがホテルから出てきて、腕を組んでいた理由を。
『魔法の薬』を流通させている人間は、明らかに強い魔力を持ち、各種の魔法を使える。過剰の使用で体へ悪影響が出るものだが、闇雲に売りつけようとしているわけではない。転売を目的としたり、遊び半分の人間に売るつもりはない。つまりはちゃんとした恋人同士や夫婦に対してのみ、『魔法の薬』を売りつける。
だから……。
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