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【続編】
76:真の姿
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入浴を終え、用意されていたドレスに着替えた。
白い立襟長袖の白いドレスは、金糸で襟、袖、裾に繊細な刺繍が施されている。シルクで肌触りもよい。髪はお団子でまとめ、用意されていたパールのイヤリングだけつけ、すぐに寝室へと向かう。
「アズレーク」
ベッドのすぐそばに立つロレンソが人差し指を自身の唇に当てる。そのベッドにはアズレークが休んでいた。起こさないよう、音を立てず、静かにベッドに近づく。漆黒の闇を思わせる黒髪は少し乱れている。目はしっかり閉じられ、長い睫毛が呼吸にあわせ、少し揺れていた。唇も顔色も外で会った時より格段によくなっている。
しっかり掛布団がかけられているので、首から下は見えないが、治癒は終わっているようだ。今は魔力を回復するためにしっかり眠っている。そんな状態だと思った。
ロレンソが目配せをし、ソファに向かう。
そこでロレンソと向き合い腰を下ろす。
「ベッドの周囲に遮音と遮光の魔法をかけてあります。もう声を出していただいても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。ロレンソ先生。アズレークの容態は……?」
ロレンソは長い脚を組み、秀麗に微笑む。
「大丈夫ですよ。傷はすべて治癒できています。魔力は今、休息しながら回復しているところでしょう。……ブラックドラゴンは、魔力も強いが回復力も速いですから。大丈夫ですよ」
その言葉に心から安堵する。
「……本来、彼は魔力がここまで減るはずではなかった。でもわたしの治癒と回復のため、自身の魔力を使ったせいで……。ブラックドラゴンは好戦的。でもこんなに情が深いとは思っていなかったので、驚きましたよ」
「ロレンソ先生はアズレークについては話す時、ブラックドラゴン、ブラックドラゴンと言いますが、彼は人間ですよ。祖先にブラックドラゴンがいて、その血を受け継いでいるだけで」
すると。
ロレンソは驚いた顔で私を見ている。
その顔に私が驚いてしまう。
「パトリシア様は……まだ彼の真の姿を見ていないのですか?」
「え……」
何のことかと首を傾げると。
ロレンソはクスリと笑い、口を開く。
「彼はわたしと同じです。聖獣の血を色濃く受け継いでいます。何世代かに一度、とても稀な確率で顕現すると言われているのですが……。姿を変えられるのですよ」
「あ、それは知っています。アズレークはブラックドラゴンの魔力に由来する姿で、レオナルドは本来の人間の魔力に由来する姿です」
私が答えると、再びロレンソがキョトンとした顔になった。そして今度はクスッと笑う。
白い立襟長袖の白いドレスは、金糸で襟、袖、裾に繊細な刺繍が施されている。シルクで肌触りもよい。髪はお団子でまとめ、用意されていたパールのイヤリングだけつけ、すぐに寝室へと向かう。
「アズレーク」
ベッドのすぐそばに立つロレンソが人差し指を自身の唇に当てる。そのベッドにはアズレークが休んでいた。起こさないよう、音を立てず、静かにベッドに近づく。漆黒の闇を思わせる黒髪は少し乱れている。目はしっかり閉じられ、長い睫毛が呼吸にあわせ、少し揺れていた。唇も顔色も外で会った時より格段によくなっている。
しっかり掛布団がかけられているので、首から下は見えないが、治癒は終わっているようだ。今は魔力を回復するためにしっかり眠っている。そんな状態だと思った。
ロレンソが目配せをし、ソファに向かう。
そこでロレンソと向き合い腰を下ろす。
「ベッドの周囲に遮音と遮光の魔法をかけてあります。もう声を出していただいても大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。ロレンソ先生。アズレークの容態は……?」
ロレンソは長い脚を組み、秀麗に微笑む。
「大丈夫ですよ。傷はすべて治癒できています。魔力は今、休息しながら回復しているところでしょう。……ブラックドラゴンは、魔力も強いが回復力も速いですから。大丈夫ですよ」
その言葉に心から安堵する。
「……本来、彼は魔力がここまで減るはずではなかった。でもわたしの治癒と回復のため、自身の魔力を使ったせいで……。ブラックドラゴンは好戦的。でもこんなに情が深いとは思っていなかったので、驚きましたよ」
「ロレンソ先生はアズレークについては話す時、ブラックドラゴン、ブラックドラゴンと言いますが、彼は人間ですよ。祖先にブラックドラゴンがいて、その血を受け継いでいるだけで」
すると。
ロレンソは驚いた顔で私を見ている。
その顔に私が驚いてしまう。
「パトリシア様は……まだ彼の真の姿を見ていないのですか?」
「え……」
何のことかと首を傾げると。
ロレンソはクスリと笑い、口を開く。
「彼はわたしと同じです。聖獣の血を色濃く受け継いでいます。何世代かに一度、とても稀な確率で顕現すると言われているのですが……。姿を変えられるのですよ」
「あ、それは知っています。アズレークはブラックドラゴンの魔力に由来する姿で、レオナルドは本来の人間の魔力に由来する姿です」
私が答えると、再びロレンソがキョトンとした顔になった。そして今度はクスッと笑う。
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