BL世界に迷い込んだ人、死を賭し風紀を取り締まる(旧:オリジナルBLでよくある設定の世界に迷い込んだ人の話)

とりのようこ

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第39話:路①

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「待て」

 言いつつ足元のロッカーキーを投げつける。
 もう俺の呼びかけに生徒会長が足を止めることは無かったが、手に真鍮のキーホルダーが命中したらしくすばやく手を引くのが見えた。
 床に金属音が響く。

「ってぇ!!
 おい!いい加減に…」

「勝手なことばかり言いやがって、
  いい加減にしろ!
 
  どいつもこいつも……、

  帰りたくないだの
  逃げろだの!」

「は!?」

 生徒会長が歩を止めた。
 面食らった表情でこちらを見返している。

「お前、一体なに言い出……」

 
 
「知るか!」


 ――――――なにもかも、知ったことか。


「人を勝手にこんなとこに連れて来ておいて、取り締まりだの脱出だのピアノだの幽霊だの、
 もう勝手にしろ!
 
 お前らが何を企んでようが俺の知ったことか!
  
 世界が壊れるのか
 消えるのか、
 お前達の正体が何で、
 一体俺の何を試したいのか
 何もかも分からんが―――――」
 

 何一つ検討もつかない事も、己の行方が恐ろしいのにもまるで変わりは無いが


「俺も勝手にやる、
 それだけだ!」



 そうだ、
 どこにいようが何が起きようが、天がどれほど勝手だろうが、
 おれはいつも通りやる。
 これまでの人生と同じように。
 俺の人生を作り上げた「いつも通り」を。

 それ以上のことは何でも勝手に起これ!
 こっちの知ったことじゃない。

 
 『現実』でだって、世界はいつも勝手に吹き荒れていた。

 大事な人は突如死に、彼女は突然心変わりをする。
 決まりかかった就職先が倒産した日も、大事な仕事を最後の詰めで逃した日も、どんな時でも日々は続く。

 天がどれほど吹き荒れようが、俺は地上を歩き、決めたことを出来る限りで毎日やるだけだ。

 世界がたがえど、それは同じこと。


「おまえ…………」

 会長は差し出した足をそのままに、心底驚いた表情でこちらを見ている。
 俺は瓦礫に近づき手を伸ばした。

「いいか、そのシーツと消火器を渡せ、俺が行く。
  お前はドアを開けるな!」
 
 生徒会長は広げた俺の手のひらに目線を落とし、ハッとしたように顔を上げる。

「馬鹿か!どう考えてもお前錯乱してるだろ!やらせるわけ……」 

「いいや、俺がやったほうがいい。
 火元に突っ込むよりは外から回るほうが助けられる公算がまだ高い。
 生徒の所に辿りついたら必ず連絡する。2分経っても連絡が無かったら好きにしろ!」

 躊躇する表情を見せた生徒会長を畳み込むように告げる。
 一瞬、にらみ合うも、生徒会長は「ち」と口を動かしてさっと瓦礫の壁に近づいてきた。
 
「どうみてもどうかしてんのに、なんで最後のセリフだけマトモなんだよ……!」

 目を、覗き込むように強くにらみつけてくる。

「けど……ハラすわった目だな。わかった、やれよ」

 いいおいて、シーツと消火器を瓦礫の隙間に通してこちらによこした。

「とちんなよ」
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