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第12話:サバイバルブック①
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「いいかい、『BL王道学園物語』の概略を説明するよ。詳細なあらすじと登場人物の説明は更にその後にするからね。
概略はこうだ。
舞台は昨日説明した特徴を持つ山上の全寮制男子校。
そこにある日転校生がやってくる。物語の主人公は彼だ。
学生生活の中で彼を巡って美しい男達の恋の鞘当てが繰り返され、最終的に主人公は誰か一人とカップルになりハッピーエンドを迎える…」
ホワイトボードに最初からかいてあった概要を教鞭で指しながら昴はすらすら説明する。
「そこまでのラブストーリー、というわけだな」
「そう、骨子自体はとても単純だ」
昴は教鞭の先を手の平で受けて長さを調節しながらうなづく。
「特筆すべきは、主だった発生イベントと詳細なあらすじががほぼ全て決まっていること。
それから『王道』と『非王道』という二種類の代表的なストーリーパターンが存在することだ」
「昨日出た用語だな?」
「そう、『王道学園物』と一まとめに呼ばれているものにはそれそのものである『王道学園物語』とそれに対するアンチである『非・王道学園物語』の両方が含まれているんだ。
なぜこういう事になっているのかというと、最初に『王道学園物語』と呼ばれる物語が発生し、そこから派生パターンである『非・王道学園物語』が発生したためだ。
紛らわしいから区別をつけるために『王道学園物語』を『真・王道学園物語』と呼ぶ事にする。
まずは基本の型である『真・王道学園物語』のあらすじから説明するね」
ぺペンといい音をたてて板書の『王道学園物語』という字句を叩く昴。
「あらすじといっしょに登場するキャラクターの紹介と、話にからんで発生するキャラクター毎の特有のイベントを一緒に紹介するよ。キャラクター紹介とあらすじを分けてしまうと興味の無い君は覚えられないと思うから全部一緒に説明するからね」
相変わらず丁寧な講義だ。
「新緑の季節に転校生がやってくる。物語は必ずそこから始まる。彼は五月にやってきた季節外れの転校生だ。
転校理由は家庭の事情か何か。理事長である叔父を頼んだ両親によって山の上の全寮制男子校にこのたび編入することになった。
彼の美しすぎる容姿が全寮制男子校で同性問題を引き起こすのを心配した周囲からの勧めによって、平凡な男子生徒に見えるよう変装をして、学園の門を叩く。
変装後の彼の外見はちびで、もっさりしたボサボサの髪、ビン底眼鏡、そんな冴えないオタク風の風貌だ。
さて校門前に立った彼の元には学校案内をするため生徒副会長がやってくる。
生徒副会長は氷のような冷たい態度と貴公子のような美貌を持つ冷静な少年だ。
彼はいつも本音を隠し、優等生を演じて作り笑いをしている。
転校生はその笑顔の不自然を指摘する、自然に笑えばもっと美しいと。
誰にもそんな事を言われたことの無い彼は、自分の本音を見抜き『作り笑い』の不自然さを初めて指摘した少年のことを好きになる」
「ほう」
「それから寮に案内される。
転校生の同室は一匹狼の不良生徒か、爽やかなスポーツマンであることが多い。この二人はクラスメイトでもある。
この二人もまた美形で主人公に惚れる」
「なんか、副会長の時と比べて説明が明らかに雑なんだが…」
説明の気が明らかに抜けている。
「へへ、実はこの辺あまり興味が無くてさ…。
あとこの二人はそんなに重要人物でもないからね」
「そんなものか」
「ん、大事なのは生徒会と親衛隊だね。話をメインでまわすのはこの辺りだから」
「となると、風紀も別に重要じゃないんだな」
「んん~、風紀委員会自体は超重要なんだけど、風紀委員長のキャラはあまり重要じゃないかな。この辺複雑だし、君の役割に関わるからあとでまた別に詳細に説明するね」
「わかった、ではあらすじの説明を進めてくれ」
「そうだね、ええっと、転校生は仲良くなった不良とスポーツマン、それからクラスメイトの平凡と一緒に食堂に行くんだ。これは一般的に『食堂イベント』と呼ばれているものだ」
「まて、平凡ってなんだ。説明も無しにさらっと新キャラクターを出すな」
「あ、ごめん。キャラ特性だよ。美形だらけの学校だから『平凡』であることが個性になりうるんだ。
ごく普通の容姿、ごく普通の家柄、ごく普通の成績と才能を持った高校生男子だ。
主人公のクラスメイトであり、同室である事もある」
「そういうことか、重要キャラクターではないんだな?」
「『王道学園物語』においては、まあただの脇役だね、視点人物になったりもする程度の存在だよ」
昴はそういいながらホワイトボードの空いた箇所にへのへのもへじを書く。
…そういう存在と言うことだろうな。
「食堂イベントに話を戻そう。
食堂の中、美形だらけのクラスメイトを伴っていることで目立っている転校生。
ざわめくその中で転校生はオムライスを頼む」
「ああ……」
なんかそういえば昨日の夜ココアを飲んだときオムライスがどうとか言ってたな。
関係しているのだろうか。
「頼むメニューまで決まっているのか」
「あやふやな部分…それぞれの作者の裁量に任せられている部分も一杯あるけど、ここだけははっきり決まってるんだよ。
刺し身盛り合わせ定食や、モツ煮込み定食とかは転校生は食べない。可愛らしいオムライス、それが彼の主食なんだ」
「あんな甘ったるいものが主食なのか…」
うんざりする食生活だと思い、ついコメントしてしまった。
「ヒュウ、いいね。君の好みは『風紀委員長』らしい、今のセリフは及第点だ。
まあ転校生は甘い物好きが多いからね。
さて、続きを話そう。
転校生は天真爛漫な様子で美味しそうに目の前に給仕されたオムライスにかぶりつく。格式ばったエリートだらけの学園内では目にかかることがあまり無い素直かつ伸びやかなそのふるまいに不良とスポーツマンは更に主人公に惹かれていく」
「『平凡』は?」
「彼は友人さ。
で、そこにやってくるのが生徒会ご一同様だ。普段は食堂を利用しないが生徒会の仕事の都合かその日は珍しく食堂に現れる。色めき立つ食堂内。彼らは抱きたい抱かれたいランキング上位の学園の人気者。
黄色い声を浴びながら生徒会特別席へ向かう」
「特別席?」
男に黄色い声が出せるのか?という疑問は横におく。
「食堂には大抵生徒会と風紀委員用の特別席が有る。一般生徒用の食堂を見下ろす形で二階に特別席が設えてあるんだ」
「俺も利用できるのか」
「もちろん」
覚えておこう。特別メニューとかあるかもしれない。ヨモツヘグイついでに色々頼んでみるか。
「で、副会長は転校生に気がついて、真っ直ぐ転校生の元へと向かう。
氷面の副会長が進路を変えて向かうその先に生徒会の他の面々も興味を示しついてくる。
ざわめく食堂内。副会長は転校生に声を掛ける。
すでに転校生に惚れている副会長、やさしい『本当の笑顔』を向けて話しかける。
それをみて他の生徒会メンバーも転校生に興味を持ち、話しかける。
次に話しかけるのはたいてい双子の庶務だ。
彼らはいたずらっぽい笑みとからかうような態度が特徴の小悪魔系美少年達だ。
二人は転校生に話しかける。
『副会長が興味を示していたのは君か、ところで僕らが見分けられる?』
そう、彼らはお互いにそっくりで、それを誇りに思い、わざわざ服装も行動も同じにしているに関わらず、本音では自分達を見抜けない周囲をよく思っていなかった。
好きだ好きだと言い募りながら自分達を見分けることも出来ない周りの人間を小馬鹿にしていたのさ。
だから周囲を試すようにいつもその問いかけをするんだ。
主人公は彼ら二人をすぐ見分ける。
どうして、僕ら親も見分けられないのに、と驚く双子。
二人の特徴を説明し、簡単に見分けが付くことを説明する転校生。
それを聞いて双子は転校生の事を好きになる」
「特徴の説明までは出来なくても、当てずっぽうでも1/2の確立で当たるはず、これまで当てた人間が居ないのはおかしくないか?」
「ま…確かにそうだね。ま、いーの、いーの、その辺細かいことはさ」
どーでも、と言いながら、昴はひらひらと手を振る。
「で、ここで登場するのが生徒会長さ!転校生以外の人物では最重要といっていいから特徴はよく覚えてね」
「ああ…あれね」
「生徒会長はね、不遜傲岸俺様天上天下唯我独尊の人なんだ。
自己中心的で尊大な態度ながら、カリスマ性があり人目を引かずにいられない。
家柄、容姿、成績、運動神経、全てにおいて他者を圧倒し全校生徒の上に君臨する存在だ。
勿論全校生徒の憧れの的だ。
抱かれたいランキングは常に一位、自分の親衛隊の相手をとっかえひっかえ夜のお相手にする百戦錬磨のつわものでもある……」
「ほえ」
「どんな返事だ、ふざけてんの君」
「あれがねえ。雨の中で人の靴下を濡れさせながらひたすら文句つけてきたぞ。小姑に見えた」
「何で君演技でもなんでもなくすでにそんなに仲が悪いの?
本当に不思議なんだけど…。生徒会長と風紀委員長は仲が悪いとは決まってるけど、説明も無しにその状態になってるのは何でだろうね……」
「あっちが喧嘩を売ってくるせいだと思うがな」
「や、それにしても嫌いっぷりが激しいよね?
ま、いいや、その辺は後にしてとりあえず説明に戻ろうか。
彼は君がどう思おうと作中の最重要人物なんだ。
何故なら殆どの場合転校生と最終的にカップルになるのは彼だからね」
「ふうん」
「返事が薄いなあ」
「勝手に幕間でいちゃついて欲しい」
「もったいない。一番おいしいところなんだ。僕はもう一番良い席で見に行くからね」
「さて、と、話を戻すよ。生徒会長は副会長と双子を落とした風采の上がらない主人公を面白がる。
単に好奇心から転校生の顔を上げさせ、強引にキスをする」
「ふうん」
「腹を立てた転校生に全力でぶん殴られて伸びる生徒会長」
「ふふっ」
「いま、ざまみろ的な事思ったでしょ?」
「ふふ、その場面は絶対見たいな」
伸びてるあの糞生意気な高校生。見ものだな。
「悪そうな笑いだなあ…いいねえ。風紀委員長のそれっぽくて」
「ここに来るまでもすでにやりあってきてるからな。
本当に虫が合わないんだ多分。
へえ、そうか食堂でなあ。めでたいな。
そのイベントが発生して会長が殴られて伸びたら、その場でジャンプして空中でピースサインを決めたいくらいだ」
「ぜ・っ・たい・に・や・め・て」
教鞭を力任せにホワイトボードに押し付けながら昴が言う。
教鞭はしなりきってメキメキ音を立てている。
「この話をそんな崩壊物語にしたら僕は君をどうするかわからないからね……」
怒っているようなので言葉は閉じたが、そこまで出来なくても伸びた生徒会長に是非嫌がらせを言いに行こう。決めたぞ。
「君さ……、絶対何か企んでるよね?やめてよね、本当に」
「分かった分かった。で、その後はどうなるんだ?」
真意を適当に誤魔化し続きを促す。
「んんっ、と、食堂イベントはこんな所だね。
この後はいろんな学校イベントが登場する。その中で主人公と他のキャラクターは親睦を深め合う。
ここで転校生のハーレム要員である生徒会の残りメンバーも紹介しよう」
あ、ハーレムって言ってもいいんだな。
生徒会長以外の他のキャラクターは転校生のハーレムのメンバーみたいなもんだな、とは思っていたが、そういう要約をするとその世界が好きな昴がへそを曲げる可能性があると思い黙っていたのだが、自分で言い出した。
概略はこうだ。
舞台は昨日説明した特徴を持つ山上の全寮制男子校。
そこにある日転校生がやってくる。物語の主人公は彼だ。
学生生活の中で彼を巡って美しい男達の恋の鞘当てが繰り返され、最終的に主人公は誰か一人とカップルになりハッピーエンドを迎える…」
ホワイトボードに最初からかいてあった概要を教鞭で指しながら昴はすらすら説明する。
「そこまでのラブストーリー、というわけだな」
「そう、骨子自体はとても単純だ」
昴は教鞭の先を手の平で受けて長さを調節しながらうなづく。
「特筆すべきは、主だった発生イベントと詳細なあらすじががほぼ全て決まっていること。
それから『王道』と『非王道』という二種類の代表的なストーリーパターンが存在することだ」
「昨日出た用語だな?」
「そう、『王道学園物』と一まとめに呼ばれているものにはそれそのものである『王道学園物語』とそれに対するアンチである『非・王道学園物語』の両方が含まれているんだ。
なぜこういう事になっているのかというと、最初に『王道学園物語』と呼ばれる物語が発生し、そこから派生パターンである『非・王道学園物語』が発生したためだ。
紛らわしいから区別をつけるために『王道学園物語』を『真・王道学園物語』と呼ぶ事にする。
まずは基本の型である『真・王道学園物語』のあらすじから説明するね」
ぺペンといい音をたてて板書の『王道学園物語』という字句を叩く昴。
「あらすじといっしょに登場するキャラクターの紹介と、話にからんで発生するキャラクター毎の特有のイベントを一緒に紹介するよ。キャラクター紹介とあらすじを分けてしまうと興味の無い君は覚えられないと思うから全部一緒に説明するからね」
相変わらず丁寧な講義だ。
「新緑の季節に転校生がやってくる。物語は必ずそこから始まる。彼は五月にやってきた季節外れの転校生だ。
転校理由は家庭の事情か何か。理事長である叔父を頼んだ両親によって山の上の全寮制男子校にこのたび編入することになった。
彼の美しすぎる容姿が全寮制男子校で同性問題を引き起こすのを心配した周囲からの勧めによって、平凡な男子生徒に見えるよう変装をして、学園の門を叩く。
変装後の彼の外見はちびで、もっさりしたボサボサの髪、ビン底眼鏡、そんな冴えないオタク風の風貌だ。
さて校門前に立った彼の元には学校案内をするため生徒副会長がやってくる。
生徒副会長は氷のような冷たい態度と貴公子のような美貌を持つ冷静な少年だ。
彼はいつも本音を隠し、優等生を演じて作り笑いをしている。
転校生はその笑顔の不自然を指摘する、自然に笑えばもっと美しいと。
誰にもそんな事を言われたことの無い彼は、自分の本音を見抜き『作り笑い』の不自然さを初めて指摘した少年のことを好きになる」
「ほう」
「それから寮に案内される。
転校生の同室は一匹狼の不良生徒か、爽やかなスポーツマンであることが多い。この二人はクラスメイトでもある。
この二人もまた美形で主人公に惚れる」
「なんか、副会長の時と比べて説明が明らかに雑なんだが…」
説明の気が明らかに抜けている。
「へへ、実はこの辺あまり興味が無くてさ…。
あとこの二人はそんなに重要人物でもないからね」
「そんなものか」
「ん、大事なのは生徒会と親衛隊だね。話をメインでまわすのはこの辺りだから」
「となると、風紀も別に重要じゃないんだな」
「んん~、風紀委員会自体は超重要なんだけど、風紀委員長のキャラはあまり重要じゃないかな。この辺複雑だし、君の役割に関わるからあとでまた別に詳細に説明するね」
「わかった、ではあらすじの説明を進めてくれ」
「そうだね、ええっと、転校生は仲良くなった不良とスポーツマン、それからクラスメイトの平凡と一緒に食堂に行くんだ。これは一般的に『食堂イベント』と呼ばれているものだ」
「まて、平凡ってなんだ。説明も無しにさらっと新キャラクターを出すな」
「あ、ごめん。キャラ特性だよ。美形だらけの学校だから『平凡』であることが個性になりうるんだ。
ごく普通の容姿、ごく普通の家柄、ごく普通の成績と才能を持った高校生男子だ。
主人公のクラスメイトであり、同室である事もある」
「そういうことか、重要キャラクターではないんだな?」
「『王道学園物語』においては、まあただの脇役だね、視点人物になったりもする程度の存在だよ」
昴はそういいながらホワイトボードの空いた箇所にへのへのもへじを書く。
…そういう存在と言うことだろうな。
「食堂イベントに話を戻そう。
食堂の中、美形だらけのクラスメイトを伴っていることで目立っている転校生。
ざわめくその中で転校生はオムライスを頼む」
「ああ……」
なんかそういえば昨日の夜ココアを飲んだときオムライスがどうとか言ってたな。
関係しているのだろうか。
「頼むメニューまで決まっているのか」
「あやふやな部分…それぞれの作者の裁量に任せられている部分も一杯あるけど、ここだけははっきり決まってるんだよ。
刺し身盛り合わせ定食や、モツ煮込み定食とかは転校生は食べない。可愛らしいオムライス、それが彼の主食なんだ」
「あんな甘ったるいものが主食なのか…」
うんざりする食生活だと思い、ついコメントしてしまった。
「ヒュウ、いいね。君の好みは『風紀委員長』らしい、今のセリフは及第点だ。
まあ転校生は甘い物好きが多いからね。
さて、続きを話そう。
転校生は天真爛漫な様子で美味しそうに目の前に給仕されたオムライスにかぶりつく。格式ばったエリートだらけの学園内では目にかかることがあまり無い素直かつ伸びやかなそのふるまいに不良とスポーツマンは更に主人公に惹かれていく」
「『平凡』は?」
「彼は友人さ。
で、そこにやってくるのが生徒会ご一同様だ。普段は食堂を利用しないが生徒会の仕事の都合かその日は珍しく食堂に現れる。色めき立つ食堂内。彼らは抱きたい抱かれたいランキング上位の学園の人気者。
黄色い声を浴びながら生徒会特別席へ向かう」
「特別席?」
男に黄色い声が出せるのか?という疑問は横におく。
「食堂には大抵生徒会と風紀委員用の特別席が有る。一般生徒用の食堂を見下ろす形で二階に特別席が設えてあるんだ」
「俺も利用できるのか」
「もちろん」
覚えておこう。特別メニューとかあるかもしれない。ヨモツヘグイついでに色々頼んでみるか。
「で、副会長は転校生に気がついて、真っ直ぐ転校生の元へと向かう。
氷面の副会長が進路を変えて向かうその先に生徒会の他の面々も興味を示しついてくる。
ざわめく食堂内。副会長は転校生に声を掛ける。
すでに転校生に惚れている副会長、やさしい『本当の笑顔』を向けて話しかける。
それをみて他の生徒会メンバーも転校生に興味を持ち、話しかける。
次に話しかけるのはたいてい双子の庶務だ。
彼らはいたずらっぽい笑みとからかうような態度が特徴の小悪魔系美少年達だ。
二人は転校生に話しかける。
『副会長が興味を示していたのは君か、ところで僕らが見分けられる?』
そう、彼らはお互いにそっくりで、それを誇りに思い、わざわざ服装も行動も同じにしているに関わらず、本音では自分達を見抜けない周囲をよく思っていなかった。
好きだ好きだと言い募りながら自分達を見分けることも出来ない周りの人間を小馬鹿にしていたのさ。
だから周囲を試すようにいつもその問いかけをするんだ。
主人公は彼ら二人をすぐ見分ける。
どうして、僕ら親も見分けられないのに、と驚く双子。
二人の特徴を説明し、簡単に見分けが付くことを説明する転校生。
それを聞いて双子は転校生の事を好きになる」
「特徴の説明までは出来なくても、当てずっぽうでも1/2の確立で当たるはず、これまで当てた人間が居ないのはおかしくないか?」
「ま…確かにそうだね。ま、いーの、いーの、その辺細かいことはさ」
どーでも、と言いながら、昴はひらひらと手を振る。
「で、ここで登場するのが生徒会長さ!転校生以外の人物では最重要といっていいから特徴はよく覚えてね」
「ああ…あれね」
「生徒会長はね、不遜傲岸俺様天上天下唯我独尊の人なんだ。
自己中心的で尊大な態度ながら、カリスマ性があり人目を引かずにいられない。
家柄、容姿、成績、運動神経、全てにおいて他者を圧倒し全校生徒の上に君臨する存在だ。
勿論全校生徒の憧れの的だ。
抱かれたいランキングは常に一位、自分の親衛隊の相手をとっかえひっかえ夜のお相手にする百戦錬磨のつわものでもある……」
「ほえ」
「どんな返事だ、ふざけてんの君」
「あれがねえ。雨の中で人の靴下を濡れさせながらひたすら文句つけてきたぞ。小姑に見えた」
「何で君演技でもなんでもなくすでにそんなに仲が悪いの?
本当に不思議なんだけど…。生徒会長と風紀委員長は仲が悪いとは決まってるけど、説明も無しにその状態になってるのは何でだろうね……」
「あっちが喧嘩を売ってくるせいだと思うがな」
「や、それにしても嫌いっぷりが激しいよね?
ま、いいや、その辺は後にしてとりあえず説明に戻ろうか。
彼は君がどう思おうと作中の最重要人物なんだ。
何故なら殆どの場合転校生と最終的にカップルになるのは彼だからね」
「ふうん」
「返事が薄いなあ」
「勝手に幕間でいちゃついて欲しい」
「もったいない。一番おいしいところなんだ。僕はもう一番良い席で見に行くからね」
「さて、と、話を戻すよ。生徒会長は副会長と双子を落とした風采の上がらない主人公を面白がる。
単に好奇心から転校生の顔を上げさせ、強引にキスをする」
「ふうん」
「腹を立てた転校生に全力でぶん殴られて伸びる生徒会長」
「ふふっ」
「いま、ざまみろ的な事思ったでしょ?」
「ふふ、その場面は絶対見たいな」
伸びてるあの糞生意気な高校生。見ものだな。
「悪そうな笑いだなあ…いいねえ。風紀委員長のそれっぽくて」
「ここに来るまでもすでにやりあってきてるからな。
本当に虫が合わないんだ多分。
へえ、そうか食堂でなあ。めでたいな。
そのイベントが発生して会長が殴られて伸びたら、その場でジャンプして空中でピースサインを決めたいくらいだ」
「ぜ・っ・たい・に・や・め・て」
教鞭を力任せにホワイトボードに押し付けながら昴が言う。
教鞭はしなりきってメキメキ音を立てている。
「この話をそんな崩壊物語にしたら僕は君をどうするかわからないからね……」
怒っているようなので言葉は閉じたが、そこまで出来なくても伸びた生徒会長に是非嫌がらせを言いに行こう。決めたぞ。
「君さ……、絶対何か企んでるよね?やめてよね、本当に」
「分かった分かった。で、その後はどうなるんだ?」
真意を適当に誤魔化し続きを促す。
「んんっ、と、食堂イベントはこんな所だね。
この後はいろんな学校イベントが登場する。その中で主人公と他のキャラクターは親睦を深め合う。
ここで転校生のハーレム要員である生徒会の残りメンバーも紹介しよう」
あ、ハーレムって言ってもいいんだな。
生徒会長以外の他のキャラクターは転校生のハーレムのメンバーみたいなもんだな、とは思っていたが、そういう要約をするとその世界が好きな昴がへそを曲げる可能性があると思い黙っていたのだが、自分で言い出した。
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