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第一章
第5話 凛花、初任務?
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カリンが凛花として交流会の場でアイドルとしての初仕事を成功させた日の翌日、凛花はカリンが自分になりきって学校に行っている間、銀髪のウィッグを身につけて外を出歩いていた。
普段は、少し外に出れば自分のことを知っている人たちに囲まれ、プライベートを楽しむことができない彼女だったが、カリンになりきっていれば誰も気づかない。
ちなみに、今日が補習だとはカリンに伝えていない。
「ふっふーん!ここのパフェ、一度食べてみたかったのよねぇ!」
向かった先は有名なスイーツショップ、頼んだのはふんだんに苺を使った『苺ムースパフェ苺まみれ、苺ソースかけ』。その名の通り、パフェの器から溢れんばかりの苺が盛り付けられ、苺付きの凛花には堪らない一品であった。
盛り上がるテンションを深呼吸で整え、銀色スプーンで苺を掬う。苺に纏う苺味のゼリーが、口の中で苺の酸味を中和して甘さを広げる。
「ふぅー!うんまぁあい!滑らかな口溶けにほのかな酸味、まさに苺のバーゲンセール!」
思わず声を上げてしまうほど、パフェは絶品。そんな凛花を遠目から見守る、筋骨隆々な男が一人。
CODEのエージェントであるGJであった。
「ゼロも人使いが荒いよ。俺は逃亡と調達専門なんだぞ。監視と護衛なんて専門外…」
「ねぇ、マッチョなお兄さん。もしかしてカリンのお友達?」
「ぬわぁっ⁉︎」
いつの間に対面の席に座っていた凛花に、GJは思わず驚いて仰け反ってしまう。
「いっ、いっ、いつの間に?」
「えっ、気づかなかったの?」
"この俺が、気づかなかっただと…何者だ、この子は…"
「俺になんの用だ?」
「さっきから私のことずっと見てたから。それに、こんな所にマッチョな人が一人で来るのも、違和感しかないし」
凛花の言うとおり、偏見であるがJKたちに人気のスイーツショップにマッチョな男が一人。明らかにその場の雰囲気から浮いている。
「よ、余計なお世話だ…」
ジトー…
「うっ…」
「ねぇ、カリンのことについて教えてよ」
「知らん、誰のことだ。第一、俺はお前のことなんて知らないぞ?」
あくまで知らぬ存ぜぬを貫くGJを見て、凛花は不敵な笑みを浮かべる。
「あーそうですか。そうやって、しらを切るつもりですかぁ。ふっふっふ、せっかくカリンの着替え、それもスク水バージョンの写真をあげようと思ったんですけど、もういいや、消しちゃおー」
「な、何ィ⁉︎」
その時、GJの脳に衝撃が走る。
「そう言えば、恥じらうカリンの赤面シーンとか、他にもおすすめのメイドコスプレもあるんだけどなぁ。また撮れるし、全部消しちゃおっか!」
「待て待て待てぇぇえ!よし、よぉし、分かった。分かったから落ち着いてくれ、なっ、どうどう」
「店員さーん、苺ムースパフェ苺まみれと苺タルト、苺ジュース追加してくださーい。あっ、お会計はこのマッチョさんにツケててくださーい」
「抜け目ないなおい…負けだ。俺の負けだよ」
凛花はガッツポーズをする。凛花は追加で注文した苺パフェを口にしながら、GJからカリンのことについて話を聞く。
「マッチョさん、もしかしてカリンの言ってたGJさんですか?」
「俺を知っているのか?」
「昨日教えてもらいました。困ったことがあったら、GJってマッチョに頼めば、大体のことは何とかしてくれるって」
「おいぃ、あいつも無茶言うぜ…(それにしても、まさかカリンも日本に来て、自分と瓜二つの人間に会うとは思ってなかっただろうなぁ…)今の君も、まるで本物のゼロを見ている気分だよ…」
「本当ですか?超嬉しいんですけど!」
「口調は似てないがな…それはそうと、今日は奢るが、彼女については何も話せない」
「えー、何でですか」
「仕事の内容が内容だからな」
すると、GJのスマホにある人物から依頼のメッセージが入る。
「あと5分で食べられそうか?」
「えっ、いけますけど。どうしてですか?」
「俺たちの仕事がどんなものなのか、特別に見せてやるよ」
◇
「追え!奴を逃すな!」
高速道路でチェイスが繰り広げられている。複数のセダンが追うのは、一台のバイク。
バイクを運転するのは、ボディスーツ姿にフルフェイス姿。まるで某アニメの女スパイを彷彿とさせる姿。
彼女の名はレベッカ、組織でのコードネームは【スリー】、ゼロと同じナンバーズの一人であった。
「しつこいわね」
ミラーで後方を確認するスリー。彼女は○○○な組織に潜入し、組長からある物を盗み出した後、部下たちに追われていた。
「撃て!撃っちまえ!」
「良いんですか若頭⁉︎」
「構うもんか!あれを奪われたままじゃ、俺たちの命もねぇぞ!」
子分たちは、セダンの窓を開放し、サブマシンガンをスリーに撃ち込む。しかし、スリーはその銃弾を華麗な運転で避ける。
「はぁ⁉︎どこ狙ってんだ!」
「あいつマジで人間なんですか⁉︎銃弾避けてますよ!」
「お前がしっかり狙えポンコツがぁ!」
スリーはバイクのサイドに取り付けていた鞄の中から、ワイヤーガンを取り出す。ミラーだけで狙いを定めると、先頭を走るセダンのボンネットにワイヤーガンを発射する。
ドシンという音とともに、ワイヤーの先端についたフックがボンネットに命中する。スリーは発射したワイヤーガンを、隣を走る車両のタイヤへと巻き込ませる。
「う、うわぁ⁉︎」
ワイヤーが絡まったセダン同士が、引き寄せられるように衝突する。
「せ、先頭がやられました!」
「くそが!だが、お前の命運もここまでだぞ」
スリーの前方は、トレーラーとキャリアカーによって車線を防がれる。スリーはその隙間を通り抜けようとするが、バイクの進路を細かく塞がれるせいで、通り抜けることが出来なかった。
「よし!追い詰めたぞ!」
トレーラーのコンテナの扉が開き、中から銃を撃つ。スリーはその攻撃を避けると、バイクのアクセルをフル回転させる。
「あ、あいつ、何をする気だ?」
スリーはスピードを上げると、キャリアカーの後方へと付く。そして、キャリアカーの台座を利用して、封鎖の前方へとバイクごと飛んだ。
「な、なにぃ⁉︎」
「しつこい男は嫌われるわよ?」
取り出した手榴弾を後方へと投げる。手榴弾は後方を走るキャリアカーの前で爆発し、セダンを巻き込みながら大事故を起こす。
「逃すかゴルァ!」
大事故を免れた若頭のセダンが、封鎖を飛び越えたスリーのバイクを追う。その時、轟音と共に高速の上空をヘリコプターが姿を現した。
「うわっ、すっごい爆発!」
「凛花ちゃん、そこの梯子を下ろすんだ!」
凛花はGJの操縦するヘリから、縄梯子を投げ下ろす。縄梯子でスリーを救出する計画だったが、地上のセダンからヘリに向けて銃弾が放たれる。
「きゃっ!」
「大丈夫か⁉︎」
「う、うん!」
「くそ!こうも狙われちゃあ機体が安定しない!近づこうにも撃たれるし、どうすれば!」
「私がキャッチする!」
「キャッチって、何をするつもりだ⁉︎」
「こうするのマッチョさん!」
なんと、凛花は自ら縄梯子を降り、縄に足を引っ掛けてサーカスのように逆さまになる。
「マジかよ嬢ちゃん!頼むから落ちるなよ!」
「⁉︎」
「こっちに飛んで!」
バイクを飛び降りたスリーは、縄梯子に逆さまになる凛花へと飛びつく。凛花は飛びついてきたスリーを全力で抱き寄せる。
「ゼロ、あんたサーカスにでも転職したらどうかしら?」
「うへへ、凄いでしょ?」
「逃すかぁぁ!」
それでも敵は諦めずに銃を乱射する。しかし、スリーの顔は余裕だった。運転手を失ったバイクは徐々にバランスを崩し、最後には転倒する。
スリーは手にしていた装置のスイッチを押す。すると、転倒したバイクが爆発し、後方にいたセダンを巻き込み大爆発を起こす。
「すごっ、映画みたい!」
「助かったよ…ゼロ?」
スリーに抱き抱えられながら、凛花はヘリの中へと戻る。
「全く、無茶しやがって!ヒヤヒヤしたぞ!」
「でも、すごく楽しかった!」
高速から離れていくヘリの中で、スリーは凛花の顔をじっと観察する。
「GJ、この子は誰なの?」
「あ、えっと、その子はな…」
「ゼロじゃないでしょ」
"ドキッ⁉︎"
「実は、その子は前にゼロと瓜二つって言ってた…」
「まさか、この子が噂の凛花って子?」
「えっ、バレた⁉︎」
「バレバレよ。私とゼロが何年仕事を共にしてきたと思ってるの。でもまぁ、大した子ね。肝っ玉だけは座ってるわ」
スリーはヘリのキャビンに腰を下ろすと、フルフェイスのヘルメットを取る。
ウェーブのかかった茶髪に、大人びた顔。ハリウッド女優としても通用するくらいの美貌の持ち主こそ、スリーの素顔であった。
「私はスリー、皆はそう呼んでいるわ」
「めちゃくちゃ美人さん⁉︎というか、峰〇〇子みたい⁉︎」
ボディースーツで強調されるグラマラスなボディも相まって、凛花が見惚れてしまう程だった。
凛花も銀髪のウィッグを外し、凛花としての素顔を露わにする。
「あなた、もしかしてジャパニーズアイドルのリンカ⁉︎」
「う、うん。そうだけど」
「実は、私あなたのファンなのよ!握手して!いや、抱かせて!」
「ふぇっ!ちょ、ちょっと待ってくださいスリーさーん!うわっぷ⁉︎」
スリーに抱き寄せられた凛花は、その豊満な胸に顔を埋められる。
「ぐ、ぐるじぃ!ぐるじぃでず!」
「あ、ごめんなさい」
危うく胸の谷間で呼吸困難になりかけた凛花であった。
「そういえば、スリー。お前は今回何を盗んできたんだ?奴らがあれだけ血眼になって追ってくるぐらいだから、相当やばい代物だろ?」
GJにそう言われたスリーは、胸の谷間から一つのUSBを取り出す。
「私の潜入していた組織のボスが持っていた、隠し口座や財界の人間を脅す情報がびっしり入ったデータよ」
「おうおう、そりゃ殺す気で取り返しにくる訳だぜ」
「ほぇ、なんか凄いデータなんですね」
裏世界を知らない凛花にとって、このデータの価値は分からない。ぽわんとしている凛花を横目に、スリーはGJを見て不適な笑みを浮かべる。
「それにしても、GJ。あんたこの子になんて無茶させるのよ」
「お、俺のせいじゃないんだが…」
「ゼロに責任擦り付けるつもり?あんなサーカスみたいな真似させて。帰ったらお仕置きしてあげるから覚悟しなさい」
「あ、はい………」
凛花は表情は見えないが、GJの体がブルっと震えたように思えた。
「あっ、そうだ凛花ちゃん」
スリーはどこから取り出したのか、マジックペンと色紙を凛花に差し出す。
「さ、サインもらえないかしら?ソフィアさんへって」
◇
夕方、凛花として1日の学校生活を終えたカリンが凛花の家へ帰宅すると、いつもと違う人間の気配を感じ取った。
「はーい、ゼロ。ハイスクールガールの生活はどう?」
「すっ、スリー⁉︎」
凛花の家には、任務を終えたソフィアとGJがいた。その後、カリンは家主である凛花から初任務の話を延々と聞かされる羽目になった。
「おーい、許してくれー」
バニー姿で写真を撮られるGJの救いを求める声は、カリンにスルーされた。
普段は、少し外に出れば自分のことを知っている人たちに囲まれ、プライベートを楽しむことができない彼女だったが、カリンになりきっていれば誰も気づかない。
ちなみに、今日が補習だとはカリンに伝えていない。
「ふっふーん!ここのパフェ、一度食べてみたかったのよねぇ!」
向かった先は有名なスイーツショップ、頼んだのはふんだんに苺を使った『苺ムースパフェ苺まみれ、苺ソースかけ』。その名の通り、パフェの器から溢れんばかりの苺が盛り付けられ、苺付きの凛花には堪らない一品であった。
盛り上がるテンションを深呼吸で整え、銀色スプーンで苺を掬う。苺に纏う苺味のゼリーが、口の中で苺の酸味を中和して甘さを広げる。
「ふぅー!うんまぁあい!滑らかな口溶けにほのかな酸味、まさに苺のバーゲンセール!」
思わず声を上げてしまうほど、パフェは絶品。そんな凛花を遠目から見守る、筋骨隆々な男が一人。
CODEのエージェントであるGJであった。
「ゼロも人使いが荒いよ。俺は逃亡と調達専門なんだぞ。監視と護衛なんて専門外…」
「ねぇ、マッチョなお兄さん。もしかしてカリンのお友達?」
「ぬわぁっ⁉︎」
いつの間に対面の席に座っていた凛花に、GJは思わず驚いて仰け反ってしまう。
「いっ、いっ、いつの間に?」
「えっ、気づかなかったの?」
"この俺が、気づかなかっただと…何者だ、この子は…"
「俺になんの用だ?」
「さっきから私のことずっと見てたから。それに、こんな所にマッチョな人が一人で来るのも、違和感しかないし」
凛花の言うとおり、偏見であるがJKたちに人気のスイーツショップにマッチョな男が一人。明らかにその場の雰囲気から浮いている。
「よ、余計なお世話だ…」
ジトー…
「うっ…」
「ねぇ、カリンのことについて教えてよ」
「知らん、誰のことだ。第一、俺はお前のことなんて知らないぞ?」
あくまで知らぬ存ぜぬを貫くGJを見て、凛花は不敵な笑みを浮かべる。
「あーそうですか。そうやって、しらを切るつもりですかぁ。ふっふっふ、せっかくカリンの着替え、それもスク水バージョンの写真をあげようと思ったんですけど、もういいや、消しちゃおー」
「な、何ィ⁉︎」
その時、GJの脳に衝撃が走る。
「そう言えば、恥じらうカリンの赤面シーンとか、他にもおすすめのメイドコスプレもあるんだけどなぁ。また撮れるし、全部消しちゃおっか!」
「待て待て待てぇぇえ!よし、よぉし、分かった。分かったから落ち着いてくれ、なっ、どうどう」
「店員さーん、苺ムースパフェ苺まみれと苺タルト、苺ジュース追加してくださーい。あっ、お会計はこのマッチョさんにツケててくださーい」
「抜け目ないなおい…負けだ。俺の負けだよ」
凛花はガッツポーズをする。凛花は追加で注文した苺パフェを口にしながら、GJからカリンのことについて話を聞く。
「マッチョさん、もしかしてカリンの言ってたGJさんですか?」
「俺を知っているのか?」
「昨日教えてもらいました。困ったことがあったら、GJってマッチョに頼めば、大体のことは何とかしてくれるって」
「おいぃ、あいつも無茶言うぜ…(それにしても、まさかカリンも日本に来て、自分と瓜二つの人間に会うとは思ってなかっただろうなぁ…)今の君も、まるで本物のゼロを見ている気分だよ…」
「本当ですか?超嬉しいんですけど!」
「口調は似てないがな…それはそうと、今日は奢るが、彼女については何も話せない」
「えー、何でですか」
「仕事の内容が内容だからな」
すると、GJのスマホにある人物から依頼のメッセージが入る。
「あと5分で食べられそうか?」
「えっ、いけますけど。どうしてですか?」
「俺たちの仕事がどんなものなのか、特別に見せてやるよ」
◇
「追え!奴を逃すな!」
高速道路でチェイスが繰り広げられている。複数のセダンが追うのは、一台のバイク。
バイクを運転するのは、ボディスーツ姿にフルフェイス姿。まるで某アニメの女スパイを彷彿とさせる姿。
彼女の名はレベッカ、組織でのコードネームは【スリー】、ゼロと同じナンバーズの一人であった。
「しつこいわね」
ミラーで後方を確認するスリー。彼女は○○○な組織に潜入し、組長からある物を盗み出した後、部下たちに追われていた。
「撃て!撃っちまえ!」
「良いんですか若頭⁉︎」
「構うもんか!あれを奪われたままじゃ、俺たちの命もねぇぞ!」
子分たちは、セダンの窓を開放し、サブマシンガンをスリーに撃ち込む。しかし、スリーはその銃弾を華麗な運転で避ける。
「はぁ⁉︎どこ狙ってんだ!」
「あいつマジで人間なんですか⁉︎銃弾避けてますよ!」
「お前がしっかり狙えポンコツがぁ!」
スリーはバイクのサイドに取り付けていた鞄の中から、ワイヤーガンを取り出す。ミラーだけで狙いを定めると、先頭を走るセダンのボンネットにワイヤーガンを発射する。
ドシンという音とともに、ワイヤーの先端についたフックがボンネットに命中する。スリーは発射したワイヤーガンを、隣を走る車両のタイヤへと巻き込ませる。
「う、うわぁ⁉︎」
ワイヤーが絡まったセダン同士が、引き寄せられるように衝突する。
「せ、先頭がやられました!」
「くそが!だが、お前の命運もここまでだぞ」
スリーの前方は、トレーラーとキャリアカーによって車線を防がれる。スリーはその隙間を通り抜けようとするが、バイクの進路を細かく塞がれるせいで、通り抜けることが出来なかった。
「よし!追い詰めたぞ!」
トレーラーのコンテナの扉が開き、中から銃を撃つ。スリーはその攻撃を避けると、バイクのアクセルをフル回転させる。
「あ、あいつ、何をする気だ?」
スリーはスピードを上げると、キャリアカーの後方へと付く。そして、キャリアカーの台座を利用して、封鎖の前方へとバイクごと飛んだ。
「な、なにぃ⁉︎」
「しつこい男は嫌われるわよ?」
取り出した手榴弾を後方へと投げる。手榴弾は後方を走るキャリアカーの前で爆発し、セダンを巻き込みながら大事故を起こす。
「逃すかゴルァ!」
大事故を免れた若頭のセダンが、封鎖を飛び越えたスリーのバイクを追う。その時、轟音と共に高速の上空をヘリコプターが姿を現した。
「うわっ、すっごい爆発!」
「凛花ちゃん、そこの梯子を下ろすんだ!」
凛花はGJの操縦するヘリから、縄梯子を投げ下ろす。縄梯子でスリーを救出する計画だったが、地上のセダンからヘリに向けて銃弾が放たれる。
「きゃっ!」
「大丈夫か⁉︎」
「う、うん!」
「くそ!こうも狙われちゃあ機体が安定しない!近づこうにも撃たれるし、どうすれば!」
「私がキャッチする!」
「キャッチって、何をするつもりだ⁉︎」
「こうするのマッチョさん!」
なんと、凛花は自ら縄梯子を降り、縄に足を引っ掛けてサーカスのように逆さまになる。
「マジかよ嬢ちゃん!頼むから落ちるなよ!」
「⁉︎」
「こっちに飛んで!」
バイクを飛び降りたスリーは、縄梯子に逆さまになる凛花へと飛びつく。凛花は飛びついてきたスリーを全力で抱き寄せる。
「ゼロ、あんたサーカスにでも転職したらどうかしら?」
「うへへ、凄いでしょ?」
「逃すかぁぁ!」
それでも敵は諦めずに銃を乱射する。しかし、スリーの顔は余裕だった。運転手を失ったバイクは徐々にバランスを崩し、最後には転倒する。
スリーは手にしていた装置のスイッチを押す。すると、転倒したバイクが爆発し、後方にいたセダンを巻き込み大爆発を起こす。
「すごっ、映画みたい!」
「助かったよ…ゼロ?」
スリーに抱き抱えられながら、凛花はヘリの中へと戻る。
「全く、無茶しやがって!ヒヤヒヤしたぞ!」
「でも、すごく楽しかった!」
高速から離れていくヘリの中で、スリーは凛花の顔をじっと観察する。
「GJ、この子は誰なの?」
「あ、えっと、その子はな…」
「ゼロじゃないでしょ」
"ドキッ⁉︎"
「実は、その子は前にゼロと瓜二つって言ってた…」
「まさか、この子が噂の凛花って子?」
「えっ、バレた⁉︎」
「バレバレよ。私とゼロが何年仕事を共にしてきたと思ってるの。でもまぁ、大した子ね。肝っ玉だけは座ってるわ」
スリーはヘリのキャビンに腰を下ろすと、フルフェイスのヘルメットを取る。
ウェーブのかかった茶髪に、大人びた顔。ハリウッド女優としても通用するくらいの美貌の持ち主こそ、スリーの素顔であった。
「私はスリー、皆はそう呼んでいるわ」
「めちゃくちゃ美人さん⁉︎というか、峰〇〇子みたい⁉︎」
ボディースーツで強調されるグラマラスなボディも相まって、凛花が見惚れてしまう程だった。
凛花も銀髪のウィッグを外し、凛花としての素顔を露わにする。
「あなた、もしかしてジャパニーズアイドルのリンカ⁉︎」
「う、うん。そうだけど」
「実は、私あなたのファンなのよ!握手して!いや、抱かせて!」
「ふぇっ!ちょ、ちょっと待ってくださいスリーさーん!うわっぷ⁉︎」
スリーに抱き寄せられた凛花は、その豊満な胸に顔を埋められる。
「ぐ、ぐるじぃ!ぐるじぃでず!」
「あ、ごめんなさい」
危うく胸の谷間で呼吸困難になりかけた凛花であった。
「そういえば、スリー。お前は今回何を盗んできたんだ?奴らがあれだけ血眼になって追ってくるぐらいだから、相当やばい代物だろ?」
GJにそう言われたスリーは、胸の谷間から一つのUSBを取り出す。
「私の潜入していた組織のボスが持っていた、隠し口座や財界の人間を脅す情報がびっしり入ったデータよ」
「おうおう、そりゃ殺す気で取り返しにくる訳だぜ」
「ほぇ、なんか凄いデータなんですね」
裏世界を知らない凛花にとって、このデータの価値は分からない。ぽわんとしている凛花を横目に、スリーはGJを見て不適な笑みを浮かべる。
「それにしても、GJ。あんたこの子になんて無茶させるのよ」
「お、俺のせいじゃないんだが…」
「ゼロに責任擦り付けるつもり?あんなサーカスみたいな真似させて。帰ったらお仕置きしてあげるから覚悟しなさい」
「あ、はい………」
凛花は表情は見えないが、GJの体がブルっと震えたように思えた。
「あっ、そうだ凛花ちゃん」
スリーはどこから取り出したのか、マジックペンと色紙を凛花に差し出す。
「さ、サインもらえないかしら?ソフィアさんへって」
◇
夕方、凛花として1日の学校生活を終えたカリンが凛花の家へ帰宅すると、いつもと違う人間の気配を感じ取った。
「はーい、ゼロ。ハイスクールガールの生活はどう?」
「すっ、スリー⁉︎」
凛花の家には、任務を終えたソフィアとGJがいた。その後、カリンは家主である凛花から初任務の話を延々と聞かされる羽目になった。
「おーい、許してくれー」
バニー姿で写真を撮られるGJの救いを求める声は、カリンにスルーされた。
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