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再思編
第32話 第6軍、北へ
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杭名 千羅城
一本の矢が弓から放たれる。
矢は放物線を描き、羽根が空気を切る音を立てる。やがて、城壁へと迫らんとする軍勢へと流れ、ひとりの兵士の喉元へと吸い込まれていく。
「ぐふぁっ!」
矢を受けた兵士がその場に倒れ込む。しかし、後から続く軍勢は足を止めなかった。
ここは、杭名の地。
元々は、緋ノ国の初代皇であるエチゴによって街道が敷かれ、北や東の国との交易の中継地点として栄えた。
しかし、ヤズラよって街道に関所が築き上げられ、隣国の斎国や宇都見国と敵対関係に陥ったため、交易はほぼ行われなくなり衰退した。
緋ノ国が倒れ、皇国として新たに建国された後は、千羅城という大規模な城塁があるものの、麓の町は出稼ぎ労働者と、それを相手に商売する店があるくらいとなった。
そんな杭名の地に突如として迫ったのは、宇都見国の軍勢。
杭名の地、そして絶対防衛線である千羅城を守るのは、第3軍を率いる皇国軍最古参、観音寺将軍であった。
観音寺はすぐさま防衛態勢を整え、川を挟んで東から攻めてくる宇軍を迎え討った。
「第二射用意!目標、敵最前列、放てェェ!!」
見上げるほどの高さがある城壁の上から、無数の矢が降り注ぐ。攻城兵器を移動させていた宇軍兵士を容赦なく貫き、骸の山を築く。
「各中隊長へ伝達、状況の変化を常に把握し、逐次報告せよ。敵に見慣れない兵器を発見した場合は、兵卒であっても報告を怠るな」
的確な指示が下されていく。
城壁の中心部、さらに高く積み上げられた櫓の中に、第3軍総大将である観音寺将軍の姿があった。戦場を一望できるその場所から、観音寺は腕を組み戦況を見下ろしていた。
「解せんな」
「はっ、全くでございます。この千羅城を攻めるにしては、いささか戦力不足かと」
隣に立つ副官の千鳥は、上官である観音寺の心の声を代弁する。10年以上付き従ってきた信頼関係があるからこそ、分かることであった。
「この千羅城は約半世紀の間、異国人の北からの侵入を防いできた。なのに、それを一番近くで肌身感じていたはず宇都見国が、この程度とは…些か癪に障る」
千羅城を攻めるは宇軍約8千の軍勢。観音寺が櫓からその軍勢を見下ろして、一番最初に感じたのは。
全く持って統率が取れていない事であった。
敵は戦術どころか、ただ数にものを言わせて突撃を繰り返すのみ。川、堀、そびえ立つ城壁。ただの突撃だけで、この三重の防塁は破られることはない。
「罠か、あるいは囮か。聖上への連絡は?」
「はっ、すでに聖上より出陣の報があり。聖上自ら率いられる第6軍が現在北上中、ここまであと2日で着くでしょう」
「そうか…」
「やはり、気になるでありますか?」
「あぁ、古賀の方が少しな。あそこは落水に守備を任せているが、向こうを攻めるのが本隊であれば、落水だけでは防ぎきれん。聖上がそれを察知し、援軍を古賀に向かわせていれば問題あるまい」
「聖上が第6軍を古賀へと動かしていなければ、我々は背後から猛攻を受けることになりますな」
「正面から落とせないのであれば、回り込んで背後を取ろうとするのは定石だ。聖上は若いが、戦をよく知っておられる」
城壁では梯子を使い接近を試みようとする宇軍兵士に対して、城壁を守護する皇国兵が弓矢や熱湯を浴びせ、狼牙拍といった防城兵器で返り討ちにしている。
それでもなお、宇軍は攻撃の手を緩めない。
「千鳥よ」
「あれを使いますか?」
「うむ、奴らの士気を挫いてやろう」
「承知しました!伝令っ!例の物を使えと各軍団長に伝えよ!」
伝令が城壁を駆け抜けてからしばらくして、何かを引きずる様な大きな音が聞こえてくる。
投石車、石などを投擲して敵を攻撃する兵器であり、西洋にいたローズが防御が弓のみであった千羅城の戦略を広げるため、配備を急がせた代物であった。
攻城戦において、攻城側が使用することの多い兵器であるが、防城側が使うことも間違いではなかった。
そして、何より投擲に使われる石は山間に築かれた千羅城において、無尽蔵に採取することができる。
単純な造りで作成及び修繕も容易である事から、城壁に備え付けられた弩砲と共に千羅城守備隊に重宝されていた。
城内の中庭に運び出されてきた投石車は全部で5台、前方の敵に向けて台形に並べられた。
「投射準備良しッ!」
「第一射…てぇえ!」
勢いよく投射された大岩が、放物線を描いて城壁を越える。そして、千羅城へと迫りつつあった敵兵の塊、その前に落ち2つが外れ、残りの3つが命中した。
「観測兵より伝達!左右そのまま、距離前方3台に合わせ!」
「第二射発車用意!てぇえ!」
再び射ち出された大岩が、今度は敵兵の塊に全て命中する。命中した大岩は直下の敵兵を押し潰し、周囲の兵士に恐怖を与えた。
大岩に下敷きになり、押し潰された味方を見て、敵兵たちは戦意を喪失、降り注ぐ矢や大岩から逃げようとする。しかし、皇国軍が戦場の隅から隅までを戦略の範囲に収めていたため、どこへ逃げても矢や大岩の餌食となった。
宇都見国の侵攻から2日が経過する。
◇
頭痛止めの薬を飲み込み、水で流し込む。
「ふぅ…」
皇都を出発した私たちは、周辺の町や村に駐屯していた第6軍の小隊や中隊と合流を重ね、北へと進路をとっていた。
総兵力は2万5千と大規模であるが、全員が同じ道を行くわけではない。2万人は各軍団長によって数千単位、あるいは数百単位で分けられ、別々の道を利用し北上していた。
これにはいくつかの理由がある。
万を超える途方もない人数を同じ経路で動かせば、補給、例えば兵糧の分配に時間がかかる。
また、前を歩く部隊が遅れた場合、その後ろに続く部隊全ての移動が遅れる。
今回は、一刻でも早く北の地へと到着することが目的である。確かに、部隊を分けることによって指揮系統の分割や奇襲への対応に悪影響が出るかもしれないが、致し方なかった。
私の部隊は本隊として約5千人、先頭を私が率いて当初予定していた経路を真っ直ぐ進んでいる。目的地まで街道が敷かれており、他の経路に比べて負担は少なかった。
編成は
第一隊 (御剣、千代、藤香)本隊約5千
第二隊 (リュウ)以下約3千
第三隊 (ローズ)以下約3千
第四隊 (ミィアン)以下約3千
第五隊 (龍奏)以下約3千人
第六隊 (宝華)以下約2千人
第七隊 (嶺)以下約1千人
補給隊 予備役約5千(各隊に分割随伴)
としている。
兵種はあえて分けずに混成にしていた。これは、例えば騎馬隊だけの編成した場合、騎馬隊だけでは対処できない状況が発生することを想定したからである。
盾、槍、剣、騎馬、弓、呪術、全てに得手不得手が存在するため、それぞれが互いの不得手を補うことが重要だった。
私は思わず、馬上でため息をついてしまう。出陣まで、仁と共に軍団の編成や作戦を練り続けていたため、ほとんど休むことができなかった。
「瑞穂、大丈夫か?」
「うん、まだ…」
「無理しなくていい。少ししたら部隊を停止させて休もう。もうすぐ日も暮れる」
視線を上げると、さっきまで気がつかなかったが日が落ち始めていた。夜は明かりがなく周囲が闇に包まれるため、過度の緊張から行軍すれば疲労が溜まる。そのため、夜間における行軍は相当な準備か理由がなければ避けなければならない。
「全軍停止、夜が明けるまでここで野営する」
篝火が焚かれ、即席の天幕が張られる。本来であれば付近の村や町に身を寄せ休む方が良いが、生憎この街道にはほとんど集落が存在しない。
もしあったとしても、この人数を賄うのは難しい。
「各兵長は部隊長に兵士の体調を把握させ、逐一私に報告するように。それと、別の道を進んでいる他部隊の様子は?」
「どの部隊も予定通り進んでいる。今のところ接敵もなしだ」
座卓の上に広げられた地図を見る。
すでに私たちは、合流を予定している船山の地に入りつつある。予定通りいけば、明日の昼までには船山で分かれていた他部隊と合流することになる。
「敵は千羅城を攻めている、これは確実だけど…」
「古賀か…」
御剣を含めたこの周辺の地理に詳しい者たちは、私と同じことを考えていた。
険しい山々という天然の防塁が途切れる場所が2つ。千羅城のある杭名の地と、古賀と呼ばれる地。
予想では、敵は同時にこの2つを攻め、皇国へと侵入してくるとみられる。仮にそうでなければ、このまま全軍を千羅城の支援に向かわせれば良いのだが、判断を間違えれば私たちは敵の侵入を許し、背後から攻撃を受けることになる。
「明日、合流次第目的地を変更とする。向かう先は古賀の地とする」
軍議を終えた私は、ある人物を天幕へと招いた。
「こうして話すのは久しぶりね、藤香」
「そうね。久しぶり」
藤香は天幕に置かれた椅子に腰を下ろし、私に優しい目を向けてきた。そんな藤香に、私は甘酒の入った湯呑みを手渡す。
相変わらず、自分からほとんど何も語らない。そういうところは、昔から変わっていなかった。
「さっそくだけど、周りくどいのは好きじゃないし、単刀直入に聞くわ。藤香、あなた今までどこにいたの?」
「諸国を行き来していたの」
「なぜ?」
「命ぜられたの。白雪七葉さんに」
「七葉さんに?」
疑問が浮かぶ。なぜ、藤香がほとんど接点のなかった七葉さんの命令で動いていたのか。
「理由は?」
「神滅刀と呼ばれる刀の場所と、あなたの母君、明日香さんの捜索」
「刀と、私のお母様?」
藤香が言うには、お母様は私たちの前から姿を消す際、明風神社に安置していた神滅刀を持ち出していたという。
なぜ、七葉さんが藤香にその任務を命じたのかは分からないが、少なくとも今回の神滅刀については、お母様が深く関係しているらしい。
私は気になる事を藤香に聞いた。
「お母様は、生きているの?」
「生死は分からない。けれど、神滅刀があの祠にあったのは偶然の事。色々な場所から移動されていて、偶然大きな呪力を感じたからあの祠に来た。呪力が移動していたということは、神滅刀を誰かが移動させていたということは」
「それで、あの祠に辿り着き、私たちと遭遇した」
「その通りよ」
「気になることが一つ、私たちの邪魔をしてまで、神滅刀を持ち出したのは何者?」
「分からない」
期待していた答えは返ってこなかった。あれほど強力な代物だ。必要のない者の手に渡ってしまえば、取り返しのつかないことになる。
「あの後から、何かの影響で神滅刀の呪力が感じられない。だから、完全に見失ってしまったの」
「なるほど、分かったわ。じゃあ、あなたが私たちの前から姿を消したのは、そういう理由があったって事にしておくわ」
「私からも、瑞穂にひとつ聞きたいことがある」
「言ってみて」
「何で私を近衛大将という役職なんかにしたの?」
それを疑問に思うのも不思議じゃなかった。私が藤香を左近衛大将にしたのは、紛れもなく信頼関係があったからだ。藤香にとって、今まで姿をくらましていた自分を、いきなり片腕に抜擢された意図が理解できないのだろう。
それでも問題ない。
要は、自分の身を守ってもらう人間は、自分のことを良く知っている人間であったほうがいいと言う、単に私個人の考えである。端から見れば、とても自分勝手な自己中心的な考え方だ。
「あなたを信じているから、という答えで良いかしら?」
それを聞くと、藤香の顔は更に困惑した表情になる。
「分からない」
「分からなくていいわ、今はまだ、ね。近衛大将は斎ノ巫女、宰相と並ぶ官職の最高位、右近衛大将である御剣と共に、左近衛大将であるあなたは私の両腕として動いてもらうわ」
甘酒を飲み干した時、宵の空に笛の音が吹き鳴らされる。
その笛は、美しい音色を奏でるものではない。
敵の襲撃を知らせる非常事態の音素であった。
◇
「ふぃ、夜もまだまだ暑いなぁ」
「汗かくから風呂に入りてぇな」
「馬鹿、汗かいたなら川で水浴びでもしてろ。皆んな我慢してるんだ」
「冗談だ。冗談」
野営地の周りを二人一組で巡回していた兵士は、巡回中にそんな他愛のない話をしていた。
「そう言えばよ、今回の敵、どんな奴らなんだ?」
「ああ、小隊長から聞いた話じゃあ、俺たちが戦うのは斎国兵で、あんまし強くないらしい」
「本当か。斎国って確か宇都見国の属国だったな。国力も皇国の半分以下って話じゃないか」
「だが、油断は禁物だぞ。斎国兵には呪術の使い手が多いらしいからな。あんなまじないを平気で使うなんて、信じられないな」
「そうだな。そろそろ引き返そうぜ、範囲はここまでだ」
「んっ?」
兵士のひとりが立ち止まり、草木の生い茂る場所に松明を向ける。
「どうした?」
「いや、何かが動いた気がした。気のせいか…」
「気のせいだろ。動物か何かがっ…」
「おい、どうした…っ!」
兵士は相棒の喉に矢が刺さっていることに気がつくが、同時に草むらから複数の黒い影が突然飛び出してきた。
「まずいっ、敵っ!?」
兵士にとって幸運だったのは、刺される直前に笛を吹けたことだろう。甲高い音が一瞬吹き鳴らされ、腹部を刺された兵士は、その場に倒れ込んだ。
攻撃はほぼ同時に行われた。持ち回りで野営地周辺を見回っていたある小隊は、二人一組の十五班に分かれていたが、その十五班全てが同時に襲撃を受けたのだ。
唯一、ある班が笛を吹けたおかげで、その音を聞きつけた者が上官に報告、野営地各所で敵の襲撃を知らせる笛の音が吹き鳴らされた。
「敵襲、敵襲!」
「部隊長は部隊を集結させ持ち場へと配置!逸れた奴は近くの部隊に編入しろ!」
皇国兵たちが慌ただしく準備を整える中、迎撃する部隊を軽くあしらい、悠々と本陣へと近く者がいた。
「くっ、来るぞっ!」
「歩兵構えよ!」
歩兵は横列をなし、敵を迎え撃つ。
その様子を、軽蔑の眼で見つめる者がいた。
「雑兵め、目障りだ」
顔の半分が火傷の痕に覆われた女。
その名は、湖琴。女でありながら斎国将軍のひとりにして、火傷女の異名を持つ強力な呪術を使う呪術師でもあった。
「妾の前から消え失せよ」
湖琴は、右腕に炎を纏わせる。
「火符、炎渦」
そう呟くと同時に、地面に右腕を叩きつける。すると、湖琴の右腕に纏われていた炎が増大し、地を燃やして歩兵たちを巻き込んだ。
炎の渦に巻き込まれた歩兵たちは、叫び声を上げる間もなく消し炭と化す。運良く炎から免れた兵士は、目の前で味方を消し去った状況を理解できず立ち竦んだ。
「あ、ああ…」
その身体は理不尽を目の前にして恐怖に震え、硬直する。
「塵が残っておったか、貴様も消してやろう」
湖琴が兵士に向けて二度目の攻撃を放つ。その瞬間、兵士に向けて放たれた炎を叩き切る者が現れた。
「大丈夫か!」
「み、御剣様っ!」
「他の部隊に合流し、本陣を守れ!ここは俺が食い止める!」
「しょ、承知しました!」
御剣は目の前の湖琴を見る。
その目は軽蔑の眼差しであった。
「塵が、妾の炎に気安く触れるでないわ!」
「くっ!」
両腕で打ち出され炎を飛び退いて避ける。高温であるため、直撃せずも顔が焼けるように熱い。
「焼いてやる。貴様を、塵ひとつたりとも残すことなく、焼いてやろうぞ!」
絶え間なく打ち出される炎に、御剣は避けることしかできず、間合いを詰める事ができなかった。
"このままでは…"
御剣の後ろには、防衛陣を整えつつある皇国兵たちがいる。彼らを無駄死にさせては、これからの戦いに大きな戦力の欠落を作ってしまうことになるのは、何としても避けなければならない。御剣はそう考えていた。
「毒符、藤棚」
空中から舞い降りた藤香の呪術により、湖琴の周りを藤の花が囲んで閉じ込めてしまう。
そして、藤の花に囲まれた湖琴は、軽く血を吐く。
「毒如きでこの妾を屠ろうなど、甘いわ」
しかし、藤の花の囲いは湖琴の炎によって焼け落ちてしまう。御剣の横に着地した藤香は、抜いていた刀を一度鞘に納める。
「炎、厄介ね…」
「どうだ、藤香。やれそうか?」
「ふたりなら何とか」
「充分だ。瑞穂は?」
「日々斗と千代がいる」
「なら、心配いらんな」
二人は互いに半身になり、湖琴を見据える。
「あれ、覚えてる?」
「当然だ。行くぞ」
そして、同時に剣先を湖琴に向ける。
「「二身一刀流、対」」
一本の矢が弓から放たれる。
矢は放物線を描き、羽根が空気を切る音を立てる。やがて、城壁へと迫らんとする軍勢へと流れ、ひとりの兵士の喉元へと吸い込まれていく。
「ぐふぁっ!」
矢を受けた兵士がその場に倒れ込む。しかし、後から続く軍勢は足を止めなかった。
ここは、杭名の地。
元々は、緋ノ国の初代皇であるエチゴによって街道が敷かれ、北や東の国との交易の中継地点として栄えた。
しかし、ヤズラよって街道に関所が築き上げられ、隣国の斎国や宇都見国と敵対関係に陥ったため、交易はほぼ行われなくなり衰退した。
緋ノ国が倒れ、皇国として新たに建国された後は、千羅城という大規模な城塁があるものの、麓の町は出稼ぎ労働者と、それを相手に商売する店があるくらいとなった。
そんな杭名の地に突如として迫ったのは、宇都見国の軍勢。
杭名の地、そして絶対防衛線である千羅城を守るのは、第3軍を率いる皇国軍最古参、観音寺将軍であった。
観音寺はすぐさま防衛態勢を整え、川を挟んで東から攻めてくる宇軍を迎え討った。
「第二射用意!目標、敵最前列、放てェェ!!」
見上げるほどの高さがある城壁の上から、無数の矢が降り注ぐ。攻城兵器を移動させていた宇軍兵士を容赦なく貫き、骸の山を築く。
「各中隊長へ伝達、状況の変化を常に把握し、逐次報告せよ。敵に見慣れない兵器を発見した場合は、兵卒であっても報告を怠るな」
的確な指示が下されていく。
城壁の中心部、さらに高く積み上げられた櫓の中に、第3軍総大将である観音寺将軍の姿があった。戦場を一望できるその場所から、観音寺は腕を組み戦況を見下ろしていた。
「解せんな」
「はっ、全くでございます。この千羅城を攻めるにしては、いささか戦力不足かと」
隣に立つ副官の千鳥は、上官である観音寺の心の声を代弁する。10年以上付き従ってきた信頼関係があるからこそ、分かることであった。
「この千羅城は約半世紀の間、異国人の北からの侵入を防いできた。なのに、それを一番近くで肌身感じていたはず宇都見国が、この程度とは…些か癪に障る」
千羅城を攻めるは宇軍約8千の軍勢。観音寺が櫓からその軍勢を見下ろして、一番最初に感じたのは。
全く持って統率が取れていない事であった。
敵は戦術どころか、ただ数にものを言わせて突撃を繰り返すのみ。川、堀、そびえ立つ城壁。ただの突撃だけで、この三重の防塁は破られることはない。
「罠か、あるいは囮か。聖上への連絡は?」
「はっ、すでに聖上より出陣の報があり。聖上自ら率いられる第6軍が現在北上中、ここまであと2日で着くでしょう」
「そうか…」
「やはり、気になるでありますか?」
「あぁ、古賀の方が少しな。あそこは落水に守備を任せているが、向こうを攻めるのが本隊であれば、落水だけでは防ぎきれん。聖上がそれを察知し、援軍を古賀に向かわせていれば問題あるまい」
「聖上が第6軍を古賀へと動かしていなければ、我々は背後から猛攻を受けることになりますな」
「正面から落とせないのであれば、回り込んで背後を取ろうとするのは定石だ。聖上は若いが、戦をよく知っておられる」
城壁では梯子を使い接近を試みようとする宇軍兵士に対して、城壁を守護する皇国兵が弓矢や熱湯を浴びせ、狼牙拍といった防城兵器で返り討ちにしている。
それでもなお、宇軍は攻撃の手を緩めない。
「千鳥よ」
「あれを使いますか?」
「うむ、奴らの士気を挫いてやろう」
「承知しました!伝令っ!例の物を使えと各軍団長に伝えよ!」
伝令が城壁を駆け抜けてからしばらくして、何かを引きずる様な大きな音が聞こえてくる。
投石車、石などを投擲して敵を攻撃する兵器であり、西洋にいたローズが防御が弓のみであった千羅城の戦略を広げるため、配備を急がせた代物であった。
攻城戦において、攻城側が使用することの多い兵器であるが、防城側が使うことも間違いではなかった。
そして、何より投擲に使われる石は山間に築かれた千羅城において、無尽蔵に採取することができる。
単純な造りで作成及び修繕も容易である事から、城壁に備え付けられた弩砲と共に千羅城守備隊に重宝されていた。
城内の中庭に運び出されてきた投石車は全部で5台、前方の敵に向けて台形に並べられた。
「投射準備良しッ!」
「第一射…てぇえ!」
勢いよく投射された大岩が、放物線を描いて城壁を越える。そして、千羅城へと迫りつつあった敵兵の塊、その前に落ち2つが外れ、残りの3つが命中した。
「観測兵より伝達!左右そのまま、距離前方3台に合わせ!」
「第二射発車用意!てぇえ!」
再び射ち出された大岩が、今度は敵兵の塊に全て命中する。命中した大岩は直下の敵兵を押し潰し、周囲の兵士に恐怖を与えた。
大岩に下敷きになり、押し潰された味方を見て、敵兵たちは戦意を喪失、降り注ぐ矢や大岩から逃げようとする。しかし、皇国軍が戦場の隅から隅までを戦略の範囲に収めていたため、どこへ逃げても矢や大岩の餌食となった。
宇都見国の侵攻から2日が経過する。
◇
頭痛止めの薬を飲み込み、水で流し込む。
「ふぅ…」
皇都を出発した私たちは、周辺の町や村に駐屯していた第6軍の小隊や中隊と合流を重ね、北へと進路をとっていた。
総兵力は2万5千と大規模であるが、全員が同じ道を行くわけではない。2万人は各軍団長によって数千単位、あるいは数百単位で分けられ、別々の道を利用し北上していた。
これにはいくつかの理由がある。
万を超える途方もない人数を同じ経路で動かせば、補給、例えば兵糧の分配に時間がかかる。
また、前を歩く部隊が遅れた場合、その後ろに続く部隊全ての移動が遅れる。
今回は、一刻でも早く北の地へと到着することが目的である。確かに、部隊を分けることによって指揮系統の分割や奇襲への対応に悪影響が出るかもしれないが、致し方なかった。
私の部隊は本隊として約5千人、先頭を私が率いて当初予定していた経路を真っ直ぐ進んでいる。目的地まで街道が敷かれており、他の経路に比べて負担は少なかった。
編成は
第一隊 (御剣、千代、藤香)本隊約5千
第二隊 (リュウ)以下約3千
第三隊 (ローズ)以下約3千
第四隊 (ミィアン)以下約3千
第五隊 (龍奏)以下約3千人
第六隊 (宝華)以下約2千人
第七隊 (嶺)以下約1千人
補給隊 予備役約5千(各隊に分割随伴)
としている。
兵種はあえて分けずに混成にしていた。これは、例えば騎馬隊だけの編成した場合、騎馬隊だけでは対処できない状況が発生することを想定したからである。
盾、槍、剣、騎馬、弓、呪術、全てに得手不得手が存在するため、それぞれが互いの不得手を補うことが重要だった。
私は思わず、馬上でため息をついてしまう。出陣まで、仁と共に軍団の編成や作戦を練り続けていたため、ほとんど休むことができなかった。
「瑞穂、大丈夫か?」
「うん、まだ…」
「無理しなくていい。少ししたら部隊を停止させて休もう。もうすぐ日も暮れる」
視線を上げると、さっきまで気がつかなかったが日が落ち始めていた。夜は明かりがなく周囲が闇に包まれるため、過度の緊張から行軍すれば疲労が溜まる。そのため、夜間における行軍は相当な準備か理由がなければ避けなければならない。
「全軍停止、夜が明けるまでここで野営する」
篝火が焚かれ、即席の天幕が張られる。本来であれば付近の村や町に身を寄せ休む方が良いが、生憎この街道にはほとんど集落が存在しない。
もしあったとしても、この人数を賄うのは難しい。
「各兵長は部隊長に兵士の体調を把握させ、逐一私に報告するように。それと、別の道を進んでいる他部隊の様子は?」
「どの部隊も予定通り進んでいる。今のところ接敵もなしだ」
座卓の上に広げられた地図を見る。
すでに私たちは、合流を予定している船山の地に入りつつある。予定通りいけば、明日の昼までには船山で分かれていた他部隊と合流することになる。
「敵は千羅城を攻めている、これは確実だけど…」
「古賀か…」
御剣を含めたこの周辺の地理に詳しい者たちは、私と同じことを考えていた。
険しい山々という天然の防塁が途切れる場所が2つ。千羅城のある杭名の地と、古賀と呼ばれる地。
予想では、敵は同時にこの2つを攻め、皇国へと侵入してくるとみられる。仮にそうでなければ、このまま全軍を千羅城の支援に向かわせれば良いのだが、判断を間違えれば私たちは敵の侵入を許し、背後から攻撃を受けることになる。
「明日、合流次第目的地を変更とする。向かう先は古賀の地とする」
軍議を終えた私は、ある人物を天幕へと招いた。
「こうして話すのは久しぶりね、藤香」
「そうね。久しぶり」
藤香は天幕に置かれた椅子に腰を下ろし、私に優しい目を向けてきた。そんな藤香に、私は甘酒の入った湯呑みを手渡す。
相変わらず、自分からほとんど何も語らない。そういうところは、昔から変わっていなかった。
「さっそくだけど、周りくどいのは好きじゃないし、単刀直入に聞くわ。藤香、あなた今までどこにいたの?」
「諸国を行き来していたの」
「なぜ?」
「命ぜられたの。白雪七葉さんに」
「七葉さんに?」
疑問が浮かぶ。なぜ、藤香がほとんど接点のなかった七葉さんの命令で動いていたのか。
「理由は?」
「神滅刀と呼ばれる刀の場所と、あなたの母君、明日香さんの捜索」
「刀と、私のお母様?」
藤香が言うには、お母様は私たちの前から姿を消す際、明風神社に安置していた神滅刀を持ち出していたという。
なぜ、七葉さんが藤香にその任務を命じたのかは分からないが、少なくとも今回の神滅刀については、お母様が深く関係しているらしい。
私は気になる事を藤香に聞いた。
「お母様は、生きているの?」
「生死は分からない。けれど、神滅刀があの祠にあったのは偶然の事。色々な場所から移動されていて、偶然大きな呪力を感じたからあの祠に来た。呪力が移動していたということは、神滅刀を誰かが移動させていたということは」
「それで、あの祠に辿り着き、私たちと遭遇した」
「その通りよ」
「気になることが一つ、私たちの邪魔をしてまで、神滅刀を持ち出したのは何者?」
「分からない」
期待していた答えは返ってこなかった。あれほど強力な代物だ。必要のない者の手に渡ってしまえば、取り返しのつかないことになる。
「あの後から、何かの影響で神滅刀の呪力が感じられない。だから、完全に見失ってしまったの」
「なるほど、分かったわ。じゃあ、あなたが私たちの前から姿を消したのは、そういう理由があったって事にしておくわ」
「私からも、瑞穂にひとつ聞きたいことがある」
「言ってみて」
「何で私を近衛大将という役職なんかにしたの?」
それを疑問に思うのも不思議じゃなかった。私が藤香を左近衛大将にしたのは、紛れもなく信頼関係があったからだ。藤香にとって、今まで姿をくらましていた自分を、いきなり片腕に抜擢された意図が理解できないのだろう。
それでも問題ない。
要は、自分の身を守ってもらう人間は、自分のことを良く知っている人間であったほうがいいと言う、単に私個人の考えである。端から見れば、とても自分勝手な自己中心的な考え方だ。
「あなたを信じているから、という答えで良いかしら?」
それを聞くと、藤香の顔は更に困惑した表情になる。
「分からない」
「分からなくていいわ、今はまだ、ね。近衛大将は斎ノ巫女、宰相と並ぶ官職の最高位、右近衛大将である御剣と共に、左近衛大将であるあなたは私の両腕として動いてもらうわ」
甘酒を飲み干した時、宵の空に笛の音が吹き鳴らされる。
その笛は、美しい音色を奏でるものではない。
敵の襲撃を知らせる非常事態の音素であった。
◇
「ふぃ、夜もまだまだ暑いなぁ」
「汗かくから風呂に入りてぇな」
「馬鹿、汗かいたなら川で水浴びでもしてろ。皆んな我慢してるんだ」
「冗談だ。冗談」
野営地の周りを二人一組で巡回していた兵士は、巡回中にそんな他愛のない話をしていた。
「そう言えばよ、今回の敵、どんな奴らなんだ?」
「ああ、小隊長から聞いた話じゃあ、俺たちが戦うのは斎国兵で、あんまし強くないらしい」
「本当か。斎国って確か宇都見国の属国だったな。国力も皇国の半分以下って話じゃないか」
「だが、油断は禁物だぞ。斎国兵には呪術の使い手が多いらしいからな。あんなまじないを平気で使うなんて、信じられないな」
「そうだな。そろそろ引き返そうぜ、範囲はここまでだ」
「んっ?」
兵士のひとりが立ち止まり、草木の生い茂る場所に松明を向ける。
「どうした?」
「いや、何かが動いた気がした。気のせいか…」
「気のせいだろ。動物か何かがっ…」
「おい、どうした…っ!」
兵士は相棒の喉に矢が刺さっていることに気がつくが、同時に草むらから複数の黒い影が突然飛び出してきた。
「まずいっ、敵っ!?」
兵士にとって幸運だったのは、刺される直前に笛を吹けたことだろう。甲高い音が一瞬吹き鳴らされ、腹部を刺された兵士は、その場に倒れ込んだ。
攻撃はほぼ同時に行われた。持ち回りで野営地周辺を見回っていたある小隊は、二人一組の十五班に分かれていたが、その十五班全てが同時に襲撃を受けたのだ。
唯一、ある班が笛を吹けたおかげで、その音を聞きつけた者が上官に報告、野営地各所で敵の襲撃を知らせる笛の音が吹き鳴らされた。
「敵襲、敵襲!」
「部隊長は部隊を集結させ持ち場へと配置!逸れた奴は近くの部隊に編入しろ!」
皇国兵たちが慌ただしく準備を整える中、迎撃する部隊を軽くあしらい、悠々と本陣へと近く者がいた。
「くっ、来るぞっ!」
「歩兵構えよ!」
歩兵は横列をなし、敵を迎え撃つ。
その様子を、軽蔑の眼で見つめる者がいた。
「雑兵め、目障りだ」
顔の半分が火傷の痕に覆われた女。
その名は、湖琴。女でありながら斎国将軍のひとりにして、火傷女の異名を持つ強力な呪術を使う呪術師でもあった。
「妾の前から消え失せよ」
湖琴は、右腕に炎を纏わせる。
「火符、炎渦」
そう呟くと同時に、地面に右腕を叩きつける。すると、湖琴の右腕に纏われていた炎が増大し、地を燃やして歩兵たちを巻き込んだ。
炎の渦に巻き込まれた歩兵たちは、叫び声を上げる間もなく消し炭と化す。運良く炎から免れた兵士は、目の前で味方を消し去った状況を理解できず立ち竦んだ。
「あ、ああ…」
その身体は理不尽を目の前にして恐怖に震え、硬直する。
「塵が残っておったか、貴様も消してやろう」
湖琴が兵士に向けて二度目の攻撃を放つ。その瞬間、兵士に向けて放たれた炎を叩き切る者が現れた。
「大丈夫か!」
「み、御剣様っ!」
「他の部隊に合流し、本陣を守れ!ここは俺が食い止める!」
「しょ、承知しました!」
御剣は目の前の湖琴を見る。
その目は軽蔑の眼差しであった。
「塵が、妾の炎に気安く触れるでないわ!」
「くっ!」
両腕で打ち出され炎を飛び退いて避ける。高温であるため、直撃せずも顔が焼けるように熱い。
「焼いてやる。貴様を、塵ひとつたりとも残すことなく、焼いてやろうぞ!」
絶え間なく打ち出される炎に、御剣は避けることしかできず、間合いを詰める事ができなかった。
"このままでは…"
御剣の後ろには、防衛陣を整えつつある皇国兵たちがいる。彼らを無駄死にさせては、これからの戦いに大きな戦力の欠落を作ってしまうことになるのは、何としても避けなければならない。御剣はそう考えていた。
「毒符、藤棚」
空中から舞い降りた藤香の呪術により、湖琴の周りを藤の花が囲んで閉じ込めてしまう。
そして、藤の花に囲まれた湖琴は、軽く血を吐く。
「毒如きでこの妾を屠ろうなど、甘いわ」
しかし、藤の花の囲いは湖琴の炎によって焼け落ちてしまう。御剣の横に着地した藤香は、抜いていた刀を一度鞘に納める。
「炎、厄介ね…」
「どうだ、藤香。やれそうか?」
「ふたりなら何とか」
「充分だ。瑞穂は?」
「日々斗と千代がいる」
「なら、心配いらんな」
二人は互いに半身になり、湖琴を見据える。
「あれ、覚えてる?」
「当然だ。行くぞ」
そして、同時に剣先を湖琴に向ける。
「「二身一刀流、対」」
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