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再思編
第27話 藤の香り
しおりを挟む迦ノ国との戦から約ふた月ほどが経つ。
暑い。
夏が近いせいか、少し日差しが暑く感じる。私は皇宮の自室から、眼下の城下を見下ろしていた。
この二ヶ月のうちに、皇都はとてつもない発展を遂げていた。
それを成し遂げたのが、ホルスの提唱した【万代都】計画であった。
町を区画化し、碁盤の目の様に道を敷いた。これは、大陸の宗帝国の条坊制に習っていて、皇宮のある皇城の正面から南の門に向けて、朱雀大路と呼ばれる大通りを敷く。
そこから坊と呼ばれる縦の道と、条と呼ばれる横の道を左右対象に碁盤の目状に組み合わせた造りになっている。
外周には堅固な城壁が築き、東西南北に一つずつ門を建て、皇城は大内裏とも呼ばれる皇宮を中心に城壁で囲み、門を均等に12個造った。
元々、防御に不安のある条坊制都市を、強固な城壁で囲い込むことで防御能力を強化した。これら全てが完成するまで、皇国の総力を上げても5年はかかる。
続いて、上下水路。
町を整備したことで、皇都のすぐそばを流れる清流から水を引き易くなり、水路と汲み上げ式の井戸を造ることができた。また、水路とは別に土器で作った筒を繋げて、地面に埋めることで簡易的な下水路を造り上げた。
これら全ては国家事業として行なったため、各地から仕事を求めて多くの人材が皇都へとやって来た。
皇都に人が集まれば、もともと商業や旅籠で栄えていた皇都は、大きな賑わいを見せる事になった。また、国が管理する仕組みをとった歓楽街を意図的に作り、富の循環を図った。
まだまだ、全てが動き出したばかりであるが、このふた月だけでも良い報告が上がっている。特に、歓楽街は毎日が盛況で、国家事業として支出する予算を大きく上回る収入が入っている。
「瑞穂、お茶を淹れてきたぞ」
「ありがとう」
そんな賑やかな城下を眺めていると、御剣がお茶を持ってきてくれた。私は御剣の持つ盆から湯呑みを手に取り、中に入れたお茶を啜った。
香りと味、両方を楽しむ。
「仕事も少しは落ち着いたみたいだな」
「まぁ、前に比べれば。それにしても、こうして自分たちの国が大きくなるのを見るのは、なかなか楽しいものね」
「そうだな」
そう呟いた御剣の顔は、とても優しい表情をしていた。そんな御剣を見て、私はふとある事を思いつく。
「御剣、ちょっと私に付き合いなさい」
「付き合うって、何に?」
「良いから来なさい」
私は御剣の手を引いて、城の外へと出る。皇としての正装から、目立たない装束に着替え、二人で城下へと繰り出した。
城下には多くの人がいるが、2人が皇とその従者であることに気付いているのは僅かだ。皇となってから民の前に姿をあまり見せていないのも理由の一つである。
たとえ気付いたとしても、私が私用の際は通り過ぎた後に軽く頭を下げるというのが、皇国民の暗黙の決まりとなっていた。
「全く、お前ってやつは…」
「皇の勅命よ、今日ぐらい付き合いなさい」
「はぁ、分かった。その代わり、帰ったらちゃんと仕事してもらうからな」
「わ、か、り、ま、し、た!」
「約束だぞ」
御剣はそれだけ言うと、それ以上は政務についての話はしてこなかった。
私たちは珠那さんの甘味屋で、甘味を堪能したあと、普段は足を運ばないお店や、屋台などを巡った。
こうして、二人で出掛けるのは、とても久しぶりな気がする。
しかし、こうした有意義な時間には必ず邪魔者が入る。
「聖上ではありませんか」
大路を歩く私たちを呼び止めたのは、検非違使の巡邏隊長である瑛春。恐らく、巡邏の途中だったのだろう、瑛春の背後には数名の検非違使たちが立っていた。
突然の出来事に野次馬たちも集まりだす。
「瑛春、任務ご苦労。出来れば、知らないふりをしてほしかったけど」
「これはこれは、失礼致しました。まさか、御多忙な聖上が城下に居られるとは思いませんでしたゆえ」
「ッ!?」
すると、突然瑛春は私の手を取り、手の甲に口付けしてきた。
私はその手を振り払う。
「下がりなさい」
私がそう言うと、御剣が私の前に立って庇ってくれた。御剣は刀の柄に手をかけ、瑛春を睨みつけた。
「瑛春、貴様どういうつもりだ」
「何って、緋ノ国ではこれが普通の礼儀だが?」
瑛春の態度は、詫びるどこか開き直っている様子だ。そんな瑛春に、御剣は詰め寄る。
「ここはもう緋ノ国ではない。文化やしきたりの違いが大きな誤解を生む事ぐらい、聡明なお前なら分かるはずだ」
「怖いなぁ。悪気はなかったんだ、許してくれ」
「許すのは俺ではない、皇だ」
瑛春は私を見ると、首を垂れる。
「聖上、無知による無礼をお許しください」
「………」
その言葉に謝罪の念は籠っているとは思わなかった。しかし、この程度のことで彼を処罰するわけにもいかない。
この程度のことなのかと言われれば、実際この程度のことなのだ。
「本来であれば相応の罰を与えるが、日頃の功績に免じて今回の事は不問とする。ただし、次はないわ」
「お心遣い、感謝いたします」
「分かったなら、自分の仕事に戻りなさい」
「それでは、自分はこれで失礼致します」
立ち去る時に少しだけ見えた釣り上がった細い目、瑛春の顔は笑っているようにも見えた。
瑛春が過ぎ去ったあと、集まった野次馬の目から離れるため、私は御剣を連れてある場所へと向かった。
「ありがと」
「えっ?」
「庇ってくれてありがと」
「あ、あぁ…」
私が礼を言うと、気のせいか御剣は少し照れている気がした。こんな表情の御剣を見るのは、初めてかもしれない。
「そういえば、俺たちはどこに向かっているんだ?」
「もう少ししたら分かるわ」
辿り着いたのは、小高い丘の見晴らしがいい場所。私が度々皇宮を抜け出して訪れていた、お気に入りの場所だった。
「良い眺めだな、ここは」
「とっておきの場所なの」
私は丘の斜面に寝転ぶ。こっそりと女中たちに手入れさせておいた芝生は、弾力がありふかふかして気持ちがよかった。
「やっぱり、気持ちいいわね。御剣も寝転んでみたら?」
「俺はいい…うぉっ!?」
私は御剣の手を引き、強引に寝転ばせようとした。
「んむっ!?」
しかし、突然手を引いてしまったため、姿勢の崩れた御剣は、私に覆いかぶさるように倒れた。
御剣の顔が私の胸に埋まる。慌てて引き離すと、顔を赤くした御剣と目があった。
「すまない瑞穂、決してわざとじゃ…」
「ぷっ、くふふ、あはは!」
必死に弁解する御剣を見て、私は笑いを堪えられなかった。私は御剣の両頬に手を添えて笑う。
「皇の胸に顔を埋めるなんて、本当なら打首獄門ね」
「か、からかうな」
「冗談冗談、特別に許してあげる。ほら、横になって」
「分かった分かった」
私の横に寝転んだ御剣を、身体を横にして見つめる。
「あのね、御剣」
「何だ?」
「もし、私が何かの弾みで死んだとしたら、どう思う?」
私の唐突すぎる質問に、御剣は少し黙り込んだ。
「恐らく、悲しくて泣くと思う」
何の躊躇いもなく、淡々とそう言う。
「ふぅん、嘘ね」
「嘘なわけあるか。俺だって、身近な人間が死ねば、涙くらい流すさ」
「本当に?」
「魂を賭けてやる」
「じゃあ、そんな御剣にひとつ言いたいことがあるの。聞いてくれる?」
私は空を見上げる。
「あなたと主従関係を結んだ時、私はこの戦乱の世界を変えるって言ったの覚えてる?」
「盟約だったからな。もちろん覚えている」
「世界を変えるため、私は本気でこの世界を一つの国に統一するつもりなの」
案の定、その話を聞いた御剣は驚いた顔をする。だが、私は本気だ。
「本気で言っているのか?」
「勿論」
「この世界には、迦ノ国の他に胡ノ国や宇都見国もあるし、なによりあの大和朝廷だってあるんだ。朝廷に逆らえば、俺たちは朝敵と見做されて他国に攻める大義名分を与えてしまうことになるんだぞ」
確かに御剣の言う通りだ。もしも、朝敵となれば、大和のみならず周辺各国が一斉に軍を立ち上げ、皇国に攻め込んでくるだろう。
「それでも、私はやり遂げてみせる。そして、人同士が殺し合うことのない、真に平和な国を創ってみせる」
「そうか…」
私の言葉に御剣はそれだけ言い、少しの間互いに沈黙が流れた。
「道は長く、そして険しいぞ。俺たちが思っている以上に、迦ノ国を始めとする他国の壁は大きい。乗り越えるためには犠牲も出る。その覚悟があるのか」
「あるわ」
その一言には、私の思いが全て詰まっていた。
世界の統一、達成すれば同じ旗のもとに争いはなくなる。失敗すれば、それは一国の皇が抱いた儚い戯言となる。
「泰縁と戦った時、俺は不思議な体験をした」
「不思議な体験?」
「油断して、奴に斬られそうになった時だった。瑞穂の声が聞こえたのと同時に、俺の意識は不思議な空間に放り出されたんだ」
御剣は、不思議な空間で私と瓜二つの人物に出会い、その人物に私を守れと言われたらしい。
続きが気になったが、御剣はその件についてそれ以上何も話してくれなかった。
「さてと、そろそろ戻らないと千代たちが心配するわ」
「政務の約束は守ってくれよ」
「はいはい、分かりました。あぁ、嫌だ嫌だ」
「文句は仕事が終わってからにしてくれ」
私は御剣に、問答無用で皇宮へと連れて帰られてしまった。でもそれが、何故かとても心地よかった。
◇
ふたつきほど前 大和朝廷 帝宮
迦ノ国の北に位置する覇権国家である大和。その統治機関である大和朝廷の中枢である帝宮では、時を同じくして迦ノ国と皇国の戦の報告がなされていた。
帝宮の議場では、七星将をはじめ、朝廷の有力者たちが集まっていた。
最初に口火を切ったのは、七星将、朝廷軍総司令、賢将と呼ばれるハクメイであった。
「草からの報告では、崇城平野での会戦は皇国の勝利に終わったとのこと。迦ノ国側は将軍泰縁、副長菖蒲が討死。両名が討ち取られたことから、ウルイ率いる迦軍本隊は撤退した模様です」
「あの泰縁が、か…、副長の菖蒲も相当な実力の持ち主であったはずだが」
ハクメイの報告に疑問を抱いたのは、七星将の最古参である、鎮守のムネモリ。老年でありながらも、その実力は帝さえ一目置く。
「皇国の皇は戦乱なき世を目指すため、諸国を統一すると言っているそうだ」
その言葉に人一倍反応し、殺気を漂わせるのは、七星将の中でも特に帝に絶対の忠義を誓っている、豪傑のゴウマ。
彼にとっては、自らが絶対的な忠誠を誓う帝こそが、世界の覇者たる存在であり、その他のものが覇者を名乗り出るのが気に食わなかった。
「気に食わんな。ならば、朝廷に仇なす者として、捻り潰せばよかろう」
「そう簡単にはいきませんわよ。なにせ、皇国の皇である瑞穂之命は、噂では大御神の血を受け継ぐ者と言われてますもの」
そんなゴウマと冷静に話をするのが、冷血のコチョウ。その瞳は氷の様に冷たく人を写し出している。
「たかが一国の皇が神の血を引くなどと、舐めた口を聞いているのか」
「何にせよ、皇国が迦ノ国との戦に勝利したことは事実です。我らは緋ノ国と長きに渡り対立し、国交を持っていませんでしたが、これを機に、皇国と関わりを持つべきかと。如何なさいましょう、聖上」
朝廷軍総司令ハクメイは、神妙な顔つきで帝に上申する。ムネモリ、コチョウ、ゴウマ以外の七星将たちは、上奏することなく事の運びを黙って見守っている。
「ハクメイよ」
「はっ」
「そちは、その皇国の長とやら、どの様な者か知っておるのか?」
「実際に会ったことはありませんが、齢20にして皇を自負する、その実力は兼ね備えているかと」
「名は何という?」
「瑞穂之命と名乗っております」
「瑞穂之命であるか。ふむ、その者と一度、ゆっくり話してみたいのぅ…」
◇
同じ頃 胡ノ国 王宮
胡ノ国。
大和朝廷、迦ノ国、斎国、宇都見国と国境を接し、かつ対立する大和朝廷と宇都見国の緩衝材の役割を担っている。
胡ノ国の王宮では、現政での国家元首である輝夜姫が、中庭に並べられた椅子に腰掛けて座っていた。
月を眺めるその姿は、まるで御伽噺に出てくる月の姫の様であった。
なによりも特徴的なのが、その深紅の眼だろう。そして艶のある黒い髪を腰まで伸ばし、幼い顔つきながらも妖艶な姿から、人々は輝夜のことを月姫と呼んでいる。
そんな輝夜に、妹であり侍女の日和が話しかける。
「お姉様、どうやら迦ノ国と皇国の戦の決着がついたそうです」
「あら、もう終わったのかしら。意外に早かったわね。戦況を詳しく教えてくれる?」
「崇城平野での会戦は、2日目に迦軍将軍である泰縁、そして副官の菖蒲が討ち取られたため、国境より撤退。迦ノ国は皇国に対し、国境地帯の譲渡を条件に同盟を持ちかけました」
「同盟を?」
「はい。これに対して皇国側は戦時費用の請求と、武皇ウルイの親類にあたる者を人質として要求し、迦ノ国はこれを受け入れました」
「休戦のための同盟の持ち出しは想定内だけど、少し意外ね。迦ノ国がその程度の国の要求を飲むなんて。ひょっとしたら、何か考えがあるかも知れないわね」
「どうします?」
「会いに行くわ。迦ノ国に勝利した皇国の皇に。どんな人物かをこの目で、ね」
◇
時を同じくして。
皇国と迦ノ国の戦が始まった直後の頃。国境付近の村から東へ避難する村人の集団が忽然と姿を消した。
山の多い皇国の地でそう言ったことが起こる理由の多くが、深い山に足を踏み入れ自らの居場所を見失うことと、野生の獣や蟲に狙われることだ。
そしてもう一つ。その山を隅々まで知り尽くし、根城にしている盗賊に狙われることだ。
「へ、へへへ」
「お願い、もう、やめて…」
「あぁ、こりゃ良いな」
山の奥深くでは、数人の盗賊たちが捕らえた女性たちを休む間もなく陵辱し続けていた。
治安維持に重点を置いている皇国であっても、盗賊のようなならず者は存在する。それは、中央から外へと広がるごとに顕著となっていた。
盗賊に捕らえられた村人は、男は殺され、女は慰み者とされる。抵抗する者は凄惨な暴行の末、四肢を切断され、野晒しにされてしまう。
捕らえられた女たちは、生きたまま蟲や獣に喰われる運命を選ぶことはなかった。
全ては、生き残るために。
「頭ぁ、次はどうします?」
「そこのガキだ」
盗賊頭は、母親に抱かれる娘を指差す。
「だめ!娘だけはっ!かはっ!」
「母様!」
恐怖の顔を浮かべる娘を守ろうとした母親の顔面を、大柄な盗賊が蹴り飛ばす。
悲鳴と鳴き声、そして卑猥な笑い声が響く中、見張りに立っていた盗賊の一人が異変を感じた。
それは、ほのかに甘い匂い。そして、少しずつ近づいてくる鈴の音だった。
「鈴の音?それに、なんだこの匂い」
「甘いが、何か喉がやけにひりひりするな。この匂い、一体どこから…ッ?」
盗賊の一人が、喉を押さえてその場に倒れる。近くにいた仲間が駆け寄り様子を見る。
「おいっ、おい、しっかりしろ!」
「どうした、何が、うっ、ゔぇっ」
最初に倒れた仲間に駆け寄った者たちが、次々とその場に倒れていく。盗賊頭がその異変に気づき、先ほどまで出し入れしていた自らの逸物を女性から抜き取る。
「あぁ?なんだてめぇ?」
「………」
そこには、黒の着物の上から白い外套を羽織り、黒い髪に藤の髪飾りを着け、刀を携えた女剣士が立っていた。
「てめ、聞いてんのかゴルァ!」
女剣士は盗賊頭の恫喝にも全く表情を変えず、薄らと笑みを浮かべていた。そして、盗賊頭の方に向けてゆっくりと歩き出した。
「たかが女が、てめぇら、その女をやっちまえ!」
「殺せ殺せ!」
盗賊たちが武器を手に、歩み寄ってくる女へと斬りかかる。
瞬間、斬り掛かった盗賊たちは、見張りと同じように喉を押さえて苦しみだす。女剣士は苦しむ盗賊を、携えていた刀で一瞬にして斬り伏せる。
「くそが!一体何がどうなって!」
「誰か奴を倒せないのか!?」
「こ、こっちに来るぞ!」
盗賊たちは、女のその表情を見て恐怖する。ある者は一目散にその場から逃げ、ある者は斬りかかるが、もがき苦しんだ末に倒れる。
「ひっ、ひぎゃっ!?」
「か、頭っ、助けて!」
「ぐ、るしぃ…」
遂には捕らえられた女たちと、その前に尻餅をつき女剣士から後退ろうとする盗賊頭しか残っていなかった。
「く、来るな!来るんじゃねぇ!消えろ!失せろ!」
「………」
「来るな!来るな!」
必死でその場から逃げようとする盗賊頭に、女剣士は無言で刀を突き立てる。刀を突き立てた場所は、先ほどまで捕らえた女性たちを犯していた逸物の部分であった。
「ぎゃああああ!」
その場にいた女性たちが目を背ける。男は必死で抵抗するが、刀を掴んだところでどうする事も出来ず、切れた手から血が溢れ出す。
「ぐぁあ!ひぐぁああ!」
女剣士は、突き刺した刀を引き抜き、何度も同じところへと突き刺す。
猛烈な痛みに盗賊頭は身体が痙攣し、絶望の表情を浮かべる。
「あ、が、が…」
それから何度も同じことを繰り返すうちに、盗賊頭の断末魔がぴたりと止む。想像を絶するほどの苦しみを味わいながら、息絶えていた。
女剣士は盗賊頭から刀を抜くと、引きちぎった死体の服で刀身に残った血を拭う。
「あ、あの…」
「………」
「私たちを助けてくれたのでしょうか…?」
「………」
「お礼を、させていただけませんか…?」
「………」
盗賊たちから解放された女性たちは、女剣士に対して礼を述べるが、女剣士はそれにすら反応を示さなかった。
どうしていいのか分からず動揺しはじめる。すると、先ほど盗賊頭に犯されそうになった若い娘が、女剣士へと抱きつく。
「ッ!?」
「ありがとう、お姉ちゃん、助けてくれて」
すると、女剣士は泣きながら抱きつく娘の頭を、微笑みながら優しく撫でた。そして、泣き止んだ娘を離すと、立ち尽くす女性たちに軽く頭を下げ、山の中へと消えていった。
この出来事は無事に村へと戻った女性たちによって広げられ、人々はその女剣士を『藤の女武人』と呼んだ。
その話が瑞穂の耳に入るのは、ある大物との会談の後となった。
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