おもらしの想い出

吉野のりこ

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小森響希のおもらし 彼氏に抱かれていて 高校2年生のとき

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 ほたるは生徒指導室で教師たちから怒鳴りつけられるうちに怖くて、おもらししていた。
「…ひぅぅ…」
 パイプ椅子に座ったまま、おしっこを漏らしたのでお尻全面が濡れている。ピチャピチャと椅子の座面からは床へおしっこが垂れていて、ほたるの桜色だった靴下を濡らして変色させているし、スカートは小麦色なので茶色になってしまい、とても不格好だった。それなのに、教師たちは叱り続けてくる。
「塚本の気持ちを考えたことがあるのか?!」
「あんな謝罪をさせられて安田だったら耐えられるのかっ?!」
「お前は人殺しに協力したんだ!!」
「……ひぅ……ひぅぅ…」
 ほたるは泣くことしかできない。物心ついてから先生に怒られるようなことはしたことがない。気弱で目立たない性格なうえに、勉強はできたので先生からは褒められることはあっても叱られることはなかった。なのに、今、教師たちは葉紀子をイジメての自殺生徒発生という大不祥事を避けたいので脅せるだけ、ほたるを脅してくる。退学もチラつかせてくるし、警察沙汰にするとも言ってくる。ほたるは怖くて、怖くて、おもらししたまま着替えもさせてもらえず、ただただ泣いて謝っていた。
「……ひぅぅ……ごめんなさぁぁぁいい……うわあーん……ごめんなさっぁぁい…」
「泣けばいいと思うな!!」
「ひぅいぃひい…」
「塚本を何回、泣かせた?!」
「トイレに行かせない意地悪をして楽しいか?!」
「お前は人間のクズだ!!」
「どうだ、お前も漏らした感想は?!」
「明日、学園全体で反省会を開くぞ!」
「お前も塚本みたいに謝罪しろ!!」
「ひひぃい…」
 ほたるは恐怖して、その場に土下座した。パイプ椅子から崩れ落ち、教師たちに頭をさげる。おかげで髪や手がおしっこで濡れてしまった。
「ごめんいひにぃはああいい……もうごうびあいい…」
 何を言っているかわからないけれど、頭をさげているので教師たちは迷う。さすがに生徒に土下座させるのはまずい。けれど、問題の根幹である葉紀子は親に心配をかけないために表沙汰にしない方向なので、このまますべては学園内で処理していきたい。
「ごめなはいあいあ…ひぅぅぅ…ひぅぅぅ…」
「「「………」」」
 ここまで脅せばいいかな、と教師たちは顔を見合わせる。木村が退学は避けられるはずと期待して悲観せず、内部生ゆえに学園教師からの指導にも慣れてしまっていて反省が軽かったのに比べ、ほたるは心底大泣きしていて、もう十分という気もする。
「よし、帰っていい」
「はいぃいひぃ…」
 ほたるはようやく生徒指導室から解放され、パワハラを受けた新入女子社員のようなフラフラとした足取りで廊下を歩く。おもらしで濡れた制服のまま、泣きべそで教室に戻った。
「ひっく……ひっく……ぐすっ……」
 ほたるは帰宅する前に保健センターで着替えさせてもらえないかと考えたけれど、養護の先生も葉紀子のことを知っているなら、ほたるを叱ってくるかもしれない。それが怖くて、ちょうど今日は体育があったので自前のハーフパンツもあり、それを持って女子更衣室に向かった。
「……ひっく……ぐすっ…」
「「………」」
「ぐすっ……」
 ほたるが泣きべそで歩く姿を放課後になっても残っていた生徒たちに見られている。おもらしで濡れたお尻を見られるのも悲しかった。ほたるは泣きながら女子更衣室に入ると、なるべく奥に行く。出入口は廊下とカーテンで仕切られるだけなので、下着まで脱ぐことを考えると、一番奥まで入った。
「…ぐすっ……ぐすっ…」
 スカートを脱ぎ、ショーツも脱ぐ。濡れたタオルでもあれば下半身を拭けたのに、保健センターではないので何もない。そこへ部活が終わった三井が競泳水着姿で水泳部の女子たちと入ってきた。
「あ、安田さん。生徒指導もう終わった? ごめんね、巻き込んで」
「…ひっく……」
 ほたるは葉紀子イジメの主要メンバーと会話するのは避けたかったけれど、無視するのも怖いので頷いておいた。三井は競泳水着を脱いで全裸になりつつ、ほたるがおもらしをしたのに匂いで気づいた。
「おしっこ漏らしたの? なんで?」
「…ひっく……先生が……怖くて……すごく怖くて…」
「あー、そっか。可哀想に。ごめんね、あいつら怒鳴るだけで、軽いよ。結局、一発も殴られなかったし」
 三井が卒業した公立中学では生徒がかなり悪いことをすると、かなり殴られたので私立学園の指導は甘く感じていた。それでも、ほたるのような性格だと先生に怒られる経験自体が無いので、こたえたのだと理解しバスタオルを貸してやる。
「ほら、これ使って」
「……ぐすっ……でも、……私、……おしっこで……汚いから…」
「いいよ、いいよ。気にしないで、私は乾くまで待つから」
 そう言った三井は脚を開いて立ち、頭髪の水分を両手で払い飛ばした。水泳部らしく腋毛は完璧に除去しているし、陰毛もついでに剃ってしまうので肌の水気は立っているうちに乾くはずだった。ほたるは貸してもらったバスタオルで陰部を拭く。おしっこをちゃんとタオルで拭き取れるのはありがたかった。
「…ぐすっ…」
 できるだけ匂いが残らないように、ほたるが入念に下半身を拭いていると水泳部以外の部活も終わったようで陸上部の奈々たちも女子更衣室に入ってくる。汗をかいてもプールで流れる三井たちと違い、奈々たちは九月の炎天下で走った後なので新鮮な汗の匂いがした。そしてやっぱり、ほたるが帰宅部なのに着替えていて、しかも下半身だけ裸なので問うてくる。
「どうしたの? 安田さん?」
「…うん……ちょっと……」
 おもらししました、とは答えたくない。泣き止んで気持ちが落ち着いてくると、高校生にもなっておしっこを漏らした事実を多くの人に知られるのは、とても恥ずかしかった。なのに三井が教えてしまう。
「生徒指導でビビって漏らしたらしいよ」
「あ~……退学とか脅してきたもんね。木村さんがやり過ぎるから。私たちのせいで、ごめんね」
「……ぐすっ……」
 ほたるは曖昧な会釈をしておく。奈々や三井たちを無視するのも怖いけれど、関わり合いにもなりたくない、先生たちから友人関係だと思われるのも避けたいという気持ちは伝わり、奈々たちはそっとしておくことにした。ほたるは恥ずかしくて嫌だったけれど、ショーツはおしっこで濡れているので、ノーパンのままハーフパンツを穿き、素足で上靴を履いて女子更衣室を出る。おもらしで濡らしたスカートと下着、靴下は三井にもらったビニール袋に入れた。それを持って教室まで戻ると、また道中で他の生徒たちに見られて、とても恥ずかしくなる。帰宅部なのに下半身だけハーフパンツで上は制服、手には濡れた衣類を入れたビニール袋、一目でおもらしした子だとわかってしまう気がする。しかも、よりによってサッカー部も終わったようで正平に出会ってしまった。
「っ………」
 ほたるは恥ずかしくて顔を伏せ、正平も目は合ったものの、何も言わず通り過ぎる。ほたるは自分の身体からおしっこの匂いがしていないか、とても不安で泣きそうだった。手に持っているビニール袋も恥ずかしすぎて悲しい。
「…ぐすっ……」
 ほたるは2組の教室に戻ると、カバンを手にしてスクールバスには乗らず駅まで歩くことにした。街を歩いていると、公立小学校の子供たちが遊んでいる。自転車で通り過ぎた男子小学生たちが、ほたるの下半身ハーフパンツ姿を見て高校生にもなっておもらしした人だと気づかれたのではないかと不安になる。街を歩く選択をしたことを後悔する部分もあるけれど、スクールバスに乗るのは、もっと不安が大きい。正平と同じ便になるかもしれないし、葉紀子の始業式でのおもらしを見た学園の小学生たちも利用する。まだ、公立小学校の子供たちに気づかれる方が後難が無さそうだった。
「……ぐすっ…」
 ほたるは前から歩いてきた夏原志澄実(なつはらしすみ)と擦れ違う。志澄実は母親に頼まれて、食べられそうな野草を摘んでいるところだったので、ビニール袋を持っていて、そこには野草が入っている。
「………」
「………」
 お互いの持つビニール袋に目がいき、ほたるはおもらしに気づかれたと感じて恥ずかしくなったし、志澄実は貧しくて家計を助けるのと新鮮な野菜を摂るために草を摘んでいるのが恥ずかしくて二人とも赤面した。ほたるは駅でも恥ずかしい想いをしながら、なんとか帰宅した。
 
 
 
 翌日、ほたるは複雑な気持ちだったけれど、早めに登校すると2組にある私物を片付けていた。木村たちも同じ用事で来ている。葉紀子の遺書にあった十五人のうち七人が2組の女子だったので、その七人は3組へ編入され、3組の女子で成績上位な上に葉紀子へのイジメに加わっていなかった者が2組へ入れ替えされる。木村が私物をカバンに入れながら、ほたるに軽く謝ってくれる。
「安田さーん、巻き込んじゃって、マジごめんね。あんた無関係なのにさ」
「……いえ…」
「まあでも、安田さんがラブレター送った木島も3組だから逆にラッキーかな?」
「………」
 そこは、ほたるも複雑な気持ちがある。あまり組の順位にこだわっているつもりはないし、こだわっている生徒の方が少数派だった。もう2組にいたいとも思わない。むしろ正平がいる3組になるならラッキーということは昨夜自分でも感じた。不幸中の幸い、怪我の功名、そう自分を慰めている。木村は撤収を終えてつぶやく。
「なんか退職するサラリーマンというか、転勤というか、リストラというか、微妙な感じだね」
「………」
 ほたるは答えず、木村の友人の内部生たちが言う。
「島流しだね」
「左遷かな」
「塚本の変か、葉紀子の乱?」
「きゃははは、それいい!」
 イジメた自覚があるメンバーたちが反省している風が無いのは、ほたるにとって不満だった。その不満を飲み込み、ほたるたちは3組に移動する。そろそろ登校時間になり3組に正平も入ってきた。
「……」
「……」
 ほたると目が合ったけれど、正平は黙って目をそらした。まだラブレターの返事はもらっていない。渡した翌日に加藤の自殺騒ぎで高校全体が騒がしくなったし、葉紀子のこともあって二週間が過ぎてしまった。教室に3組のクラス担任が入ってくる。男性教師で2組の担任より気さくな人だった。
「よーし、今日は転校生を紹介するぞ。って違うか。不名誉な転校生ってとこかな」
 暗めの雰囲気だった教室が少し明るくなりクスクスと笑い声が起きる。
「じゃあ、首謀者の木村、とりあえずの自己紹介しろ」
「はいはい。どーも、この度、島流しに遭いました木村真衣(まい)です。まあ、半分は知ってる顔ぶれだね。あ、木島、あんたさ、安田さんからもらったラブレターの返事、どうすんの?」
「「っ…」」
 ほたると正平は不意打ちされて何も言えない。そんな様子をクラスメートたちに笑われてしまった。短い自己紹介が続き、ほたるの番になる。
「や……安田ほたるです。……よろしくお願いします。…………以上です」
 言えることはなく、ほたるは指定された席に座る。朝のホームルームが終わると、層川が教室に入ってきた。
「おい、木村!」
 明らかに文句を言いに来た雰囲気で木村に迫っている。
「おはよう♪ 層川くん…」
 木村は笑顔で挨拶したけれど、層川はボディーブローを放つ。
「ぅっ………」
 木村は本気で殴られるかと思って身を固くしたけれど、さすがに女子の腹部を殴打することはなく層川は寸止めしてくれた。緊張した木村がタメ息を吐く。
「っ、はぁぁ……」
「てめぇ、オレに後始末を押しつけやがって!」
 殴らなかったけれど、層川は捕まえた木村の首に腕を回してヘッドロックをかける。
「うぅ! ギブギブ!」
「最高に面倒な後始末じゃないか! 塚本メチャ病んでるぞ!」
「ぅぅ…眼鏡とったら、好みとか、言ってたじゃん…ぅぅ…」
「あんな自殺一歩手前の女の面倒とか、ふざけんな!」
 層川と木村は身体が密着していて、見ている外部生たちは意外だったけれど、内部生たちは幼稚園の頃から馴染んだ光景なので気にしない。二人の仲は良くもないけれど、悪くもない、ただ付き合いは幼馴染みとして長いだけの気安い関係だった。
「ごめんて。ぅぅ…調子乗ってやりすぎたからさ、なんとかフォローして」
「やり過ぎだって何度も言ったろ。まったく……」
 層川はチャイムが鳴りそうなのでヘッドロックを解いて2組へ戻る。戻ると葉紀子の隣に座った。すでに朝のホームルームで席替えされ、学習をサポートするバディとして葉紀子の隣席になっている。
「………」
「………」
 葉紀子は感情に乏しい目で、まだ何も書いていない黒板を見つめている。層川は先が思いやられ、とりあえず声をかけてみる。
「よぉ、塚本」
「………」
「なんかオレがサポートすることになったけど、よろしくな」
「……ええ…」
 かろうじで返事はしてくれた。授業が始まり、ぼんやりとしていた葉紀子も少しずつ回復の兆しが見えてくる。とくに木村たちが教室から居なくなったことは大きいし、やはり好意を抱いていた男子にそばにいてもらえると、心が癒える。そして層川は理数系が得意で英語が苦手、葉紀子は逆なのでバディとしての相性もよかった。けれど、まだ女子トイレには気持ち的に行けない。
 シュゥゥゥ…
 お昼休みにオムツの中に、おしっこをしてしまった。
「…………ぐすっ……」
 葉紀子は恥ずかしくなって顔を赤くする。それで鈍い層川も気づいた。
「赤くなって、どうした? あ、おしっこしたのか?」
「っ……言わないで……」
「ごめん、ごめん、つい。オレさ、自分で思うんだけど、絶対に発達障害だよな、相手の気持ちが考えられないというか、つい思ったこと言うし」
「………」
 そんなことを言われても葉紀子は、どう答えていいかわからない。ただただ高校2年生にもなって教室でオムツにおしっこしてしまった事実が悲しいのと、そばに好きになった男子がいるのに濡らしたオムツを穿いているのが恥ずかしかった。茉莉那が来てフォローするために言う。
「層川くんはズバズバ言い過ぎなんだよ。でも…」
 そうやって赤くなるあたり元気になってくれてるのかも……昨日まではオムツにおしっこしてても何も感じてない雰囲気だったのに、ちゃんと恥ずかしがる気力が出てきたあたりいい兆候かも……って、これは本人の前で言えないけど、と茉莉那は層川と違い、余計なことは言わずに葉紀子を見守る。教室内の雰囲気も大きく変わっている。もとは内部生が多数派だったけれど、木村たち内部生の女子が多く転出となり、代わりに編入されたのは3組と4組の葉紀子イジメに一切の参加をしなかった外部生の女子たちなので今は女子の中では外部生が多数派となっている。さらに、それらの女子たちは思わぬ棚牡丹で上位クラスである2組へ編入となったのでお得感もあり、それで学習についていけないと困るので教師たちが相性の良さそうなバディの候補をあげてくれている。その候補には内部生の男子も含まれているので、さながら婚活パーティー会場のようになっていた。そして女子たちは露骨には訊かないものの、やはり男子たちの家柄が気になる。成績優秀なのは2組である時点で確かなので、もしも恋人関係になるなら、やはり将来の結婚を見据えた玉の輿を期待したい。優良校に入る努力をしてきた女子たちは、だんだん将来が見えてきて女性の努力だけでは公務員にでもならない限り安泰と子育ての両立はないと予測しているし、男性も本人の努力だけでは限界もあるし可能性と確率も低い、やはり家の経済力は大きいと頭がいいだけに気づきつつあるので、高校生活の恋愛も現実を見ている。そんな雰囲気に関わりなく層川は茉莉那に問う。
「そういえば、まだ鹿狩は休んでるのか?」
「ううん、今日は学校に来てるよ」
「そうか、なら、よかった」
「………」
 よくないよ……片方の睾丸が無くなったからなのかな……まっすぐ走れないって悩んでた……サッカー部のキャプテンが務まらないって………かわいそう……エッチも、ちゃんとできるのかな……おちんちん勃たなくなったら、やっぱり男の人って、すごく傷つきそう……女だって乳ガンでおっぱい無くなったら絶望だもん……、と茉莉那は将来の夫になる可能性が高そうな男子の心配をする。午後の授業も無難に終わり、茉莉那は生徒会業務が一人でやれそうな内容だったので葉紀子を帰宅させ、層川は弓道部の部活に出た。
「おつかれさまでしたァ」
 層川は部活が終わると駅近くのファーストフード店に入る。あまり星丘学園の生徒は行かない他の学校のなわばりだったけれど、すぐにケンカになるわけではなく基本的には平穏に使えるのでハンバーガーセットを頼み、葉紀子のために予習していると待ち合わせていた交際相手の女子が来た。友達らしき別の女子も連れている。
「高志くん、ごめん、待った?」
「いや」
 層川高志(たかし)はポテトを食べながら教科書を片付ける。
「高志くんが勉強してるなんて珍しいね。いつも勉強しないでも成績いいらしいのに」
「ああ、バディを組まされたし」
「なにそれ?」
「成績が落ちてるヤツをサポートする面倒臭い役割、そして生徒会の会計が自殺した話はしたよな。で、オレが新しい会計まであてられた」
「そっかぁ、忙しくなるんだね。あ、前に言ってた私の友達、ヨーコちゃん」
 そう言って小森響希(こもりひびき)は連れてきた陽子を指した。二人とも星丘高校よりワンランク偏差値が低い学校の制服を着ているし、その制服が店内では多い。
「はじめまして。桜井陽子です」
「どうも、層川高志っす」
 三人で座り、高校生らしい雑談をする。響希は県内トップ高に通う男子と付き合っていることを友達に自慢したいというわかりやすい虚栄心でテンションをあげて話していた。
「きゃはっは♪」
 響希は校則がゆるいので髪を明るく染め、スカートも膝上30センチまで短くしているため腿の美しいラインから股間のラインまでときどき見える。ピンク色のショーツを穿いていた。
「私なんて勉強しなかったら、あっという間にビリになったよ。まあ入学できたのも奇跡だったけどね。きゃはっ♪」
「お前のそのキャハって声、いつ聴いても可愛いな」
「っ、やん♪ もお! 高志くんのそういうとこ好き!」
 二人がのろけるので陽子はお腹いっぱいになってくるけれど、陽子の彼氏も部活が終わって合流してきたので四人でイチャつく。さすがに長居になってきて層川が提案する。
「近くのラブホにワリカンで行かないか?」
「きゃはっ♪ 高志くんのエロ!」
「「………」」
 陽子は彼氏と顔を見合わせ、陽子が問う。
「それって……四人で一部屋ってこと?」
「二部屋ならワリカンって言わないだろ」
「そうだけど……それだと、層川くんが私の身体を見るし……逆もあるし……」
「あ、嫌ならいいぞ。それか、男は目隠しするルールにするか」
「うーん………まだカラオケボックスの方がよくない? 二人ずつ使って、あとの二人がドアの前に立つ方が」
「オレはいいけど、女子の方がシャワーしたいって言うから」
「シャワーはしたいけど……」
 ラブホテルとカラオケボックスでは必要となる金額が違う。層川の家は裕福だったけれど、小遣いの月額は限られている。陽子たちも平均的な家庭の子なので自由に使えるお金は少ない。やりたい盛りなので抱き合いけれど、女子としては場所を選びたい。最高なのはラブホテルでシャワーを浴びてから、最低なのは近所の公園、ラブホテルだと愛されている気がするし、公園だと単なる性欲処理の相手にされている気がする。結局、話し合いでカラオケボックスに決まった。やや駅から遠くて古いカラオケ店に四人で入る。その店は個人経営で店番は年配の女性経営者、監視カメラはあるけれど、高校生がラブホ代わりに使うことで儲ける路線になってきているので怒られない。怒られないためにも四人はドリンクバーの無いカラオケ店にある自動販売機で一本200円という少し割高なペットボトルを買って、個室に入る。
「「「「ジャンケンポン」」」」
 順番を決め、まずは層川と響希が性行為を始める。陽子たちはドアの前に立ってガラス窓を塞いだ。響希はスカートの中に手を入れられながら言う。
「今日は、けっこう汗かいたから……」
「響希の匂い、嫌いじゃないぞ」
「……うん……ありがとう……」
 触られるだけでなく舐められると響希は恥ずかしいのと快感を覚えた。監視カメラの死角はドアのそばなので、そこに立つと陽子たちの後頭部が見える。
「もう入れていいか?」
「…うん……いいよ……。毎回、ちゃんとゴムつけるんだね」
 響希はコンドームを使ってくれる層川に感謝と淋しさを覚える。陽子の彼氏は頼まないとコンドームを使ってくれないらしいし、射精前にはコンドーム無しでの挿入を求められるので不安だと愚痴っていた。
「…んっ……」
「痛いか?」
「ううん、気持ちいい。……あんっ……おっぱいまで同時に摘まれたら喘いじゃうよ」
 響希はベッドが無いので立った姿勢で前屈みになり、陽子たちが立っているドアに両手をついているので喘ぐと二人へ聞こえそうで不安だったのに、男の手が乳首をリズミカルに刺激してくる。
「…んっ…あんっ…んっ…だ、だから喘いじゃうって…んっ…」
「たっぷり喘げよ。響希の声、可愛いぞ」
 層川は響希の声質と太腿が気に入っていたので褒める。女子へ背後から挿入しつつ乳首責めを続け、響希の弱点である耳も舐めた。
「んんっ! あっはん!」
 ひときわ大きく喘いでしまった。いくらカラオケボックスなので防音されていると言っても、ガラス一枚向こうの間近で響希が大きく喘ぐと陽子たちに聞こえてしまったようで、陽子の耳がピクリと動いた。それで響希は余計に恥ずかしくなると同時に優越感も湧いた。自分の彼氏が陽子の彼氏よりワンランク高い学校に所属していることが嬉しいし、身長も層川の方が高い。響希は入学してから成績がさがる一方で、もう授業についていけていない。その分、オシャレに力を注ぎ、メイクも巧くなったし、制服もギリギリまで改造した。そういう女としての努力が実った気がして、とても嬉しかった。
「…ハァっ……ハァっ……」
「ハァ……」
 性行為が終わったので二人は陽子たちと交替する。陽子も久しぶりに激しく彼氏と抱き合った。
「ハァっんっ、あっ、ああっ」
 陽子は夏休みの終わりに彼氏との関係が不安定になった。葉紀子のせいだった。葉紀子は傷ついた様子だったので慰めてあげるつもりで仲間の輪に入れてやったのに陽子の彼氏に色目を使っていた。男の方もまんざらでもない様子があって、怪文書を受け取ると確信に変わり激情にかられた。陽子は男女を問わず人望があって誰とでも友達になるけれど、不幸にして自分の顔の形は可愛くないことを自覚している。頬がぽっちゃりと膨らみ気味で、目も一重、鼻も低い上に鼻の穴が丸く見える感じで、せいぜい唇くらいしか可愛いところがない。それを努力して笑顔で補っていると周囲は、ヨーコちゃんのスマイルは可愛いね、と褒めてくれるけれどイコール無表情だとブサイクであるとわかっている。髪も普通の黒髪ではあるけれど、葉紀子ほどの髪質の美しさがないし、腋毛と陰毛は濃くて腋は剃っても黒ずみが残るし、陰毛もショーツからはみ出る部分は剃らないとカッコ悪いほど生える。すね毛も濃いので嫌になる。それでも立ち振る舞いと笑顔で周囲から可愛いと言ってもらえるよう努力し、やっと彼氏もつくった。なのに、葉紀子のような生まれつきの美人は普段は無愛想なくせに、ここぞというときだけ眼鏡をとって男に色目を使う、その一瞬で男を盗ろうとする。あまりに腹が立って叩いてしまったけれど後悔はしていないし、やっと彼氏との仲が修正できたので今日のセックスは激しくなった。
「んぅああうん! ハァっ……ハァ……」
「ヨーコ、可愛いな。これで3回イったな」
「…ハァっ……ハァっ……うん……次、いっしょに、お願い」
「わかった」
 陽子たちも性行為を終え、また層川たちと交替する。せっかく有料の空間に入ったので、できるだけ楽しみたいという若さだった。響希はソファに座った層川に跨る。もう監視カメラの死角はどうでもいい。どうせ注意されないし、スカートを短くしているおかげで脱がなくても邪魔にならずセックスできる。対面座位で層川と抱き合った。けれど、挿入されてから響希は困ったことに気づいた。
「……」
 うぅ……おしっこしたいかも……、と響希は体内から膀胱を圧迫されて強い尿意を覚えた。男に中から突かれ、膀胱がチャプチャプと揺すられ、おしっこしたくてたまらない。
「……」
 でも………せっかくの雰囲気なのに、おしっこしたいなんて言ったら……ムード無いバカ女だって想われるかも……、と響希は尿意を言い出せずに耐える。そして層川は二度目なので激しく突いても射精に至りにくい。じっくり女体を楽しんでくる。
「…ハァ…ハァ…」
「ハァ…うぅ…んぅ…」
 あうぅ……おしっこ漏れそう……おまんこは気持ちいいけど、おしっこが……はあぅぅ…我慢んぅぅ…と響希は対面座位のまま股間に力を入れて、おしっこを我慢する。そうすると膣にも力が入り、グッと締まる。その締まりに男は応えて、より激しく突く。
「ハァ! ハァ!」
「あああぅ! んぅうう! もう、もう……うう!」
 漏れちゃうぅぅうぅ、そんな激しくしないでぇぇ……、と響希は全身を硬くして、激しくピストン運動で突かれないよう男の背中に両腕を回して強く抱きつき、両足も男の腰に絡めてギュッと動きを抑えるようにした。なのに、男の力は強くて響希はより激しく突かれる。小さな響希の身体では男の手のひらにお尻を掴まれ上下されると何の抵抗もできない。おしっこしたい膀胱をズンズングリグリ突かれ、もう響希は限界だった。
「うはああぁぁん! んぅくうぅぅ!」
 プシャ!
 おしっこを漏らしてしまう。それでも男が突いてくるので、どんどん漏れる。
 プシュゥゥ!! プシュゥゥウ! シャァァ…
 そして響希は快感も覚えたのでよがった。
「んはぁぁ……んっ………んあぁぁ……」
 だらしなくチョロチョロと、おしっこを漏らして快感に浸る。
 チョォォォ…
 ぐったりと全身を弛緩させ、男に抱かれていないと倒れそうなほどだった。限界までおしっこを我慢して、おもらしとともに絶頂したので脳が真っ白になっている。
「ハァ………響希、お前……」
 層川はズボンを穿いたまま響希を抱いていたので、ぐっしょりと制服を濡らされたことに気づいた。響希も恥ずかしくなる。
「…うぅぅ……」
「すごい量の潮吹きしたなぁ……そんなに気持ちよかったか?」
「………うん…すごく…」
 恥ずかしそうに響希は誤解を肯定しておく。おしっこの匂いでバレないかと不安だったけれど、すでに男の鼻は響希の股間や腋の匂いに慣れていて鈍くなっている。響希が漏らしたおしっこは男のズボンに吸収され、床には水たまりをつくっていないのも幸いだった。
「そろそろ、あいつらと替わるか」
「…うん…」
 二時間レンタルなので30分交替を目安としている。響希はおしっこを漏らしてしまった部屋を友達と入れ替わるのは恥ずかしかったけれど、潮吹きだという層川の誤解に乗っておく。もしかしたら世の女性の潮吹きは半数くらいがおもらしではないかと思いつつ、層川とドアの前に立つ。室内では陽子たちが二度目の性行為を始め、響希は層川から立ったまま愛撫されて蕩ける。童貞だった層川のセックステクニックは日々、巧くなっている。天然の学習能力の高さに加え、自らインターネットなどを情報源として予習もしているので前戯だけでなく後戯も重要だという教示を守っていた。おかげで響希はショーツを穿くタイミングを失い、ノーパンのまま外に出た。
「じゃあな」
「じゃあね、また明日」
「うん、バイバイ♪」
「ああ」
 四人は別れて帰宅する。響希は家に帰ると、すぐにシャワーを浴びた。
「はぁぁ………17歳にもなって、おもらししちゃったよ……でも、バレなくてよかったぁ」
 明日に備えて身体を磨き、肌を整え、勉強はしなかった。もう成績は諦めている。それでも出席日数を満たしておけば卒業はできるはずだし、きっと層川は一流大学に入学してしまうけれど、その近くの大学で偏差値が低くて推薦がもらえるところに専願で入れば、なんとかなるつもりだった。
 
 
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