おもらしの想い出

吉野のりこ

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草津千夏のおもらし 万引きで娘が捕まって

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  夕方、千晶の父親だった草津昭人(くさつあきと)は金沢港で釣りをしていた。仕事が終わった後の、この時間が好きだった。 
「よし、5匹目、もう十分だな」 
 夕飯と朝食が手に入り釣り道具を自家用車に片付けると、道の駅まで移動して釣った魚を捌き、車内でカセットコンロにかけて煮る。夕食ができるまでの間、夕日を眺めた。 
「………万引きか……落ちるところまで落ちたな……」 
 仕事中に妻から電話があり、無視していたら職場にまで電話をかけられて娘の千晶が万引きして店に捕まったのだと言われた。そして妻は富山から戻る途中で事故渋滞のために動けなくなったので、店へ行ってほしい、と頼まれた。 
「さよなら……千晶……千夏……」 
 もう娘とも妻とも別れるつもりだった。そのつもりで家を出て長い。今まで通り仕事をして、けれど帰宅せず車中泊、朝食と夕食は釣った魚、昼食は社員食堂という生活だった。 
「落ち着くなぁ……」 
 愛車と釣り、これで十分という気がしている。結婚してからマイホームローンを背負い、年に一度の国内旅行、娘が生まれて習い事、塾代、気がつけば家計が破綻していた。妻に任せていて気づくのが遅れた。勤め先の業績悪化で基本給を1万円だけ下げさせてほしい、と社長が苦しそうに全社員へ報告したので、争議も起こらず受け入れた。けれど、すでに手遅れだった家計は火の車になった。 
「せめて、千晶が星丘に落ちなければ………いや、最初から安全圏の公立にして……あそこまで塾代をかけなければ………年間80万って……もう、ぼったくりじゃないか…」 
 それまでも毎年、かなりの金額だったらしいけれど、中学3年生になって受験直前の講座は高かった。気がつけば貯金はゼロ、むしろカードローンまであった。星丘に合格していた場合の入学金は愛車を下取りに出してということだったけれど、不満だった。下取り金額の低さにも、愛車を手放すことにも。だから落ちて公立を受験と聞いて安心したのに公立まで落ち、また私立、しかも底辺校で今までの塾代は何だったのかと思った。 
「もういいや、忘れよう、リセット、リセット」 
 人並みの暮らし、という妻の求めで、家、車、塾、旅行、そして人並みの暮らしを失った。帰宅する気が失せ、愛車と過ごしている。友人が銀行勤務から弁護士になっていたので相談し、離婚の意向と自宅の任意売却を伝えてある。 
「もう終わったことだ」 
 煮た魚を食べ、眠ろうとした。けれど、眠れない。 
「……さすがに、風呂に入りたいな」 
 冬とはいえ、何日も入浴しないで寝るのは寝付けないし、会社の同僚にも悪いので車でサウナのある施設に走った。テルネス金沢という温泉、プール、ゲームセンター、宿泊施設が合体した複合施設に一人で入る。少し入場料は高いけれど、先月の給料が手元にあるので余裕だった。妻が管理する銀行口座ではなく、社長に頼んで手渡しにしてもらっている。温泉に浸かり、サウナに入り、気まぐれにプールサイドへ出てみた。 
「生ビールと、タコ焼きを」 
「はい、生ビールとタコ焼きですね。かしこまりました」 
 プールサイドのカウチで一人、呑み始めた。とても寛ぐ。けれど、少し淋しい。そう思っていたら同じ年齢くらいの男性がそばに座った。 
「ここいいですか?」 
「ええ、どうぞ」 
 その男性も生ビールを注文したので、タコ焼きを勧めた。 
「どうも、ありがとうございます」 
「あなたも、お一人ですか?」 
「あ、いえ、私は家族と、ほら、あちらに」 
 男性が指した幼児向けプールには10人くらいの子供がいて、上は中学生くらい下は幼児で、どの子供が男性の子なのかわからない。ただ、全員が似たような顔をしているので、まさかと問う。 
「もしかして、あの10人、みんな、お子さんですか?」 
「ええ、まあ、11人います」 
「す……すごいですね………オレなんか一人育てるのが、やっとだったのに……。失礼ですが、どんなお仕事を? あ、自分はただのサラリーマンです。小松基地がらみの製造業をやってますが、なかなか苦しい」 
「うちは眼鏡の製造です。夏原グラス商会の社長をやってます」 
「ああ、あの福井に本社のある。なるほど、さすがだ。………オレなんて、子供一人、満足に養えなかった」 
「……離婚されたんですか?」 
「その手続きを始めたばかりです」 
「そうですか……」 
「ひどい親なんですよ、オレは。あなたは立派だ」 
「………。私もひどい親です」 
「そんなことはないでしょう?」 
「あの子たち以外に、もう一人、別の女性との子供がいました。けれど、二人を捨ててしまった」 
「そうですか………」 
 訊きたいけれど、その先を訊いていいものか迷っていると話してくれる。 
「別に私は立派ではない。眼鏡の会社も親から継いだものだし、何より大学生のころフタマタをかけた」 
「フタマタを? 女性に?」 
「ははは、まあ同性愛者ではないですから、女性に。たまたま偶然、バレンタインの日にね、別々の女性から本命のチョコをもらいました。それで魔が差したというか、二人にフタマタをかけた」 
「モテるんですね。どこの大学を?」 
「星丘です」 
「ああ、あの、秀才なんですな」 
「いえいえ、謙遜でなく、たいしたことないです。星丘が名門なのは高校までで、星丘大学は三流、いや、もっと下です。しかも自分は夜間部だ。誰でも入れますよ。あなた、来年受けてみてください、社会人枠は、本当に誰でも入れますよ」 
「ははは、今から大学生ですか、それは面白い」 
「私は大学生らしいノリでフタマタをかけた悪い男です。まあ、言い訳させてもらうと子供がほしかった。自分は一人っ子で、母が子宮の病気になったため、兄弟を望めなかった。母も淋しそうだったし、自分がたくさん孫を見せてやる、と。けれど、女性の中には不妊症の人もいる。なので、フタマタをかけて妊娠した方と結婚しよう、という卑怯なことを考えましてね」 
「なるほど………合理的ではありますね……」 
「結果、澄子(すみこ)…いえ、Aという女性の方が先に妊娠した。だから結婚した。けれど、あとになってBという、いえ、今の妻の方が好きだと気づいてしまったし、妻まで妊娠した。しばらくAには隠していたけれど、妻が二人目を妊娠したとき、Aとは別れると決めた。ひどい父親もあったものだ」 
「………私はフタマタでもないのに、捨てましたよ。どっちも、どっちですな」 
「子供さんは息子さん? 娘さん?」 
「娘です」 
「うちも、そうだった。2歳くらいだったか」 
「大きくなってから、お会いになったことは?」 
「夏に街で見かけて………不思議なほど、すぐにわかりました。まあ、制服だったので名札もあって余計ですし、肌の色が母親に似て、きれいな小麦色だった」 
「きっと、頭のいい子でしょうな」 
「………。いえ、やっぱり父親に捨てられた子ですから、もう典型的というか……制服のスカートを切って、パンツが見えそうなほど短く、いえ、実際、パンツが見えていた。私が声をかけようか、迷いながら追い、歩道橋を登っているとき、横にいた友達が落とした物を拾ってあげるさい、丸見えという状態で……そこで目が合い、目をそらされたので私は追うのをやめた」 
「娘さんは高校生ですか?」 
「いえ、今、まだ中学生で、あそこまで短くするとは………四月から高校生ですから……おそらく、ろくに勉強もせず、どこかの底辺校を中退でもして、ろくでもない男と付き合い……いや、私が、ろくでもない男ですな、はははは」 
「うちの娘も底辺校へ入るようです……入学金が用意できれば……ははは」 
「同じ学年ですか。なら、出会っているかもしれませんね」 
「そうですね」 
「もう一杯、呑みましょうか? タコ焼きのお礼におごりますよ」 
「ありがとうございます」 
 二人は二杯目の生ビールで静かに乾杯した。 
  
  
 夕方、草津千夏(くさつちなつ)は高速道路の事故渋滞で動けなくなり、尿意と焦りでパニック気味になっていた。 
「…ぅぅ……こんなときに……こんなときに……」 
 おしっこがしたい。けれど、渋滞で車は動かない。最悪の場合、外の路肩で排泄するとしても、近くにはバイクの集団もいるし、最近は多くの車がドライブレコーダーを装着している。路肩で、おしっこをする姿を撮られるかもしれないという恐怖は女性として大きかった。 
「会社の車を汚したら……」 
 おもらししてシートを汚すと社用車なので弁償かもしれない。パートを変えて生命保険の勧誘を始めたけれど、うまくいかない。れっきとした大企業なのに末端の勧誘員はハイヒールとタイトスカート、女子高生の制服みたいなリボンのついた上着という、男を誘う服装で営業に回る。先輩女性たちは枕営業にならない範囲で、うまく男を釣るのだと教えてくれたけれど、そうやって独身男性にまで不必要に高価な保険商品を売りつけるのは保険の勉強をすればするほど罪悪感がある。思い返すと夫も結婚前に1000万円もの死亡保険に入っていた。子供が生まれてからか、家を建ててからなら理解できるけれど、まったくの独身で三男の夫が死亡したとき1000万円入っても仕方ないとしか思えないのに、掛け捨ての保険に入っていた。その保険は5年前、無駄な気がして、ようやく解約している。 
「……はしたないけど……おもらしするよりマシ……」 
 千夏は運転席に座ったまま、タイトスカートを捲り上げると、カップホルダーに残っていたペットボトルの蓋を強く閉め、シートの中央、ちょうど股間にあたるあたりへ入れ込み、そこに座り直した。 
「はぁ……これで大丈夫」 
 ゆるんで、おもらししそうだった括約筋の補助としてペットボトルを押しあて、上半身の体重をかけることで尿道をロックした。これで膀胱は疼くけれど、おもらしすることはない。タイトスカートを捲り上げたので下半身が丸出しだったけれど、黒いストッキングを穿いているので遠目にはわからないはずだったし、車内は一人なので問題ない。 
「……千晶……どうして……万引きなんて……」 
 おもらし対策をすると別の問題を考え込む。もともと富山で見込み客に説明中だったのに電話が鳴って、娘が万引きして店が捕まえたと言われ、何もかも放り出して走った。なのに前方で観光バスが横転する事故があり、まったく進めない、戻ることもできない。どうして娘が万引きなんかしたのか、それは、だいたい予想がついてもいる。家計が苦しいのと、受験で成果を出さなかったことで、お小遣いを渡していない。受験に失敗した自棄もあったと思う。その程度の心理は母親として見抜けていた。だから後悔する。 
「……ぅぅ……ごめん………千晶……でも……あなただって、あれだけ勉強させたのに……」 
 もともと娘は少しトロい子だった。保育園で周りについていけないことがあったり、いただきますの前に一人で食べ始めたりして、保育士から発達障碍を指摘され小学校に入ってから検査を受けると、知能指数が85で正常域の下方と言われた。中央が100なのに娘は15も知能指数が低かった。なのに障碍者扱いしてもらえるのは75以下で娘は該当しない。普通に会話できて、ちゃんと勉強もしてくれる。少し我慢が足りないけれど、性格は素直な子だった。だから、しっかり幼児期から塾にも入れて学校の宿題もつきっきりで教えた。もしかして合格するかもしれないと期待して、星丘幼稚園も受験させたし、星丘小学校にも挑戦させ、星丘中学も周囲に黙って入試を受けた。けれど、ことごとく不合格で受験料を取られただけ。高校も同じだった。 
「……でも……野口英世だって………宮沢賢治だって……きっと発達障碍……」 
 発達障碍気味でも絶望しなくていい、と市役所の指導員に言われて娘には期待をかけた。おかげで公立中学に入っても期末テストの成績は上位をキープできた。友達も選ばせた。近所にいた夏原志澄実が塾にも行っていないのに成績がよく、なるべく関係をもつようにして母子家庭の悪い影響は受けず、いい影響だけ受けるように言って育てた。 
「あの子は知能指数……115くらいあるのかも……」 
 一見して制服スカートを短く改造したバカな子に見えるけれど、おさがりだということは聴いているし、本人は腿が見えるのを恥ずかしがっていた。なので娘と友達でいることを許し、たまには夕食も与えた。何度か娘が悪い影響を受けて自分もスカートを短くすると言い出したけれど、全力で止めたし志澄実もやめた方がいいと言ってくれた。総合的に、いい友人だった。ただ、苛つくこともあった。頭がいいのを鼻にかけている風は無かったけれど、娘の実力テストの結果が期末テストに比べてあがらないのを答案を見せて相談したら、ひっかけ問題に必ずひっかかってるね、と言った。他には一時的に家庭教師のようなことを頼んだら、これ昨日も説明したけど忘れたの? と言って娘を傷つけた。だから仕返しに夕食時に家族旅行の写真を見せつけてやった。千葉県や大阪にある有名な遊園地の公式ホテルに泊まった写真や優先パスでアトラクションに乗ったことを自慢した。そのときの志澄実の顔が、娘が傷ついたときと同じように泣きそうなのに笑顔をつくっている顔で、同じ人間なのだと感じて、それ以上の仕返しはやめた。ただ、悔しい。志澄実と千晶は同じ英単語や漢字を勉強しても、志澄実は3回で覚えるのに、千晶は20回かかる。千晶は7倍努力しないと志澄実に追いつけないし、どんなに努力させても学年で30番以上には入れなかった。 
「……別に、勉強ばっかりが人生じゃないはず……そんなことより、これから、どうすれば………」 
 夫が家を出ていた。下取りに出して学費に充てるはずの車に乗って。会社には出社している。けれど、給料が振り込まれなくなった。離婚したいと弁護士を通じて伝えてきた。自宅は任意売却するとも。高く売るためにも今月中に出て行けば養育費の足しにするとも。けれど、売ってもローン残高の方が大きい気がする。愛人でもいたの?! と夫の両親を通じて伝えてやったら、お前らが給料以上に使ってるのに愛人なんかできるか! と返ってきた。それを伝えてきた義母は、一言一句そのままだよ、と冷たく言った。もう夫側に関係修正の意志は皆無だとわかった。だから、一人でも娘を養おうと生命保険の仕事を始めたけれど、うまくいっていない。その矢先に娘が万引き事件を起こしてくれた。 
「……ぐすっ………ひぐっ…………私に、どうしろっていうのよ………みんなが、みんな……こんなときに……」 
 泣きそうになったけれど化粧が崩れないように指先で涙を拭いた。仕事柄、アイメイクも美しく仕上げているし、口紅もあざやかな色を選んでいる。男受けがいいように、ふわりとパーマもあてた。なので営業に行くと男性たちは下心丸出しでセクハラまがいの発言をしてくる。それに耐えて保険の説明をするという苦行が業務内容だった。 
「……せめて千晶のところに早く……警察を呼ばれるわけには……」 
 さっきから渋滞は1センチも進まない。完全に止まっている。路肩には、ときどきパトカーと救急車が走っている。普段はパトロール中のパトカーを見ると頼もしく感じるのに、今は赤色灯が怖い。パトカーが通る度に心臓が冷える。降りるべき高速インターはあと数キロ、千晶が捕まっている店舗も遠目に確認できる。なのに進まない。電話が鳴った。 
 チャリチャポンポン♪ 
 明るい音楽が今の気分に不似合いだったけれど、すぐに受話する。着信相手は店長の森山だった。 
「いつになったら来るんですか?」 
 挨拶無しの単刀直入だった。 
「すいません! 申し訳ありません! 事故で高速が止まってるんです!」 
「あ~……そういうウソはいいですから、あと何分ですか?」 
「本当なんです! 本当の本当に!」 
「へぇ……じゃあ、写メでも送れます? 渋滞してる証拠写真を」 
「送れます!」 
「そう。本当なんですね。わかりました。まあ、待ちます。早く来てくださいね。もう日が暮れる」 
「はい、必ず! 渋滞が終わったらすぐ! 申し訳ありませんでした。どうか、警察と学校には通報しないでください。お願いします!」 
「それは、あなた方の態度次第です。誠意があれば、応えますよ」 
 森山が電話を切った。 
「………誠意……」 
 より気持ちが沈む。なのに再び電話が鳴った。 
 トカトントン♪ 
 保険会社の上司からだった。 
「はい、もしもし、草津です」 
「客先を放りだして、どこに行ってるんだ?!」 
「す、すみません。こ、これには事情がありまして!」 
「せっかく上客を佐佐木くんから紹介させたのに!」 
「ほ、ほんとうに、どうにもならない事情でして…」 
「どんな事情だ?!」 
「………実は……娘が……」 
 言いたくないけれど本当のことを説明した。 
「そうか……大変だな……」 
「すみません」 
「………。とはいえ、君が使っているのは会社の車だし、ETCカードも私用で使うのは横領だよ」 
「っ、すみません! あとで精算します!」 
「だいたい、まだ一件も契約がとれないのに…」 
「一応……夫と私は契約するつもりです」 
「その保険料もまだだよね」 
「……せめて、最初の給料をもらってから…」 
「チッ…」 
 露骨に舌打ちされた。そして声のトーンを落として言ってくる。 
「君、もういいよ」 
「え………? いい、って、どういうことですか?」 
「だから、もういい。試用期間中だったよね、明日から来なくていいから。あと、車と制服、その他、今日中に返して」 
「……………それってクビということですか?」 
「それ以外、なにかある?」 
「…………私、これでも一生懸命…」 
「もういいから。そういうのいらない。試用期間だから、試してダメだった。はい、おしまい。ダメなのを、さっさと切るのもボクの仕事だから。あと、昨日、ボクが貸した千円、ちゃんと返してよ。それは人として」 
「………」 
 千夏が黙っていると、少し電話を遠くした声で言ってくる。 
「チッ、顔がいいから使ってみたけど、契約とれないなら枕くらいやれよ。トロいし頭悪い女。まだ賞味期限ギリで片町でもいけ」 
「………」 
 電話が一方的に切られた。 
「………人として…………」 
 千夏の脳内に保険会社の電話口が使う自動音声の、よりよいお客様サービスのためにお電話の内容を録音させていただいております、という虚しいフレーズが反響した。保険金請求にからむ外部からの電話は録音するけれど、内部での電話は記録を残していない。今、どれだけひどいことを言ったのか、公の場で訴えたいけれど、もう証拠はない。 
「………ぅぅ……」 
 千夏は呻いた。 
「…ぅーっ…ぅーーっ…」 
 ボロボロと涙が零れる。つけまつ毛が落ちた。 
「ぅーーーっ! ぅーーーーっ! ぅぃーーーきぃぃーーーっ!」 
 千夏は車のクラクションを叩くように鳴らした。 
「どいてよ!! 邪魔しないで!! きぃいいい!」 
 クラクションを鳴らし続け、さらにアクセルを全開まで踏む。 
 ブワアアアン! 
 轟音が響き、エンジン回転数はレッドゾーンに入った。 
「うぃいいいいいい!」 
 シフトレバーをパーキングに入れていたおかげで大暴走にならなかったけれど、一歩間違えば前の車列へ突進していたかもしれない。そのくらい追いつめられていた。まだまだクラクションを鳴らし、アクセルを踏み続ける。 
「うるせぇぞ!」 
 斜め前の大阪ナンバーの黒い車両から半グレのような男が二人、ドアを開けて降りてきて、千夏に近づいてきた。 
「ぅきーーーーーーいっ!! ぅきーーーーーっ!!!」 
「「………」」 
 ろくでもない雰囲気の男二人だったけれど、千夏の表情を見て顔を見合わせている。 
「…やばいわ、こいつ……」 
「あかんわ」 
「あかん女や」 
「ほっとこ」 
 パーマ髪を振り乱し、血走った目で泣きながらクラクションを鳴らす千夏を見て、やっかいごと避けるように車両へ戻っていった。周りにいるバイクの集団もうるさそうな顔をしつつも何も言わない。千夏が落ち着くまでには水温計がかなりあがっていたのでエンジンが傷んだかもしれない。 
「……ぐすっ……ひぐっ………」 
 さんざんにクラクションを鳴らしてアクセルを踏み、泣き止んだ千夏はティッシュで鼻をかみ、前を見る。あいかわらず渋滞したまま1センチも動かない。もう日が暮れて暗い。 
「………はぁ………お腹空いた………おしっこ、したい……」 
 涙が枯れた後に残ったのは生理的欲求だった。朝ご飯はバナナだけ、千晶にもダイエットしようね、と言って誤魔化したけれど、お金が無くて食材が無かったからだった。昨日、上司に借りた千円で昨夜の夕食を買った。お昼は食べていない。ペットボトルのスポーツドリンクだけ飲んだ。そのペットボトルのおかげで尿道が圧迫されて、おしっこは漏れずにいてくれた。 
「………………」 
 泣き疲れて千夏は、ぼんやりしてきた。周りの車両にいる人たちも寝ていたり、スマフォをいじっていたりする。寝ている場合ではなかったけれど、千夏も眠りに落ちた。 
 夢を見た。 
 千晶が保育園児だった頃の夢で、お迎えに行って、おもらしする夢だった。 
 おもらししたのは保育園児の千晶ではなく、母親の千夏だった。 
 色々と忙しくてトイレに行けず、お迎えの時間も迫っていて保育園に駆け込み、保育士さんがトイレトレーニング中の千晶が今日はおもらしせずにトイレへ行けましたよ、と報告してくれている最中に、千夏の股間が濡れてきた。自分でもビックリしたし、とてもとても恥ずかしかった。おもらしの最中も泣くほど恥ずかしかったし、漏らしてからの処理も恥ずかしかった。保育士さんが、拭きましょうか、と言ってくれたけれど、大人としてバケツと雑巾を借りて自分で拭いた。拭いている最中、千晶や他の保育園児たちが、どうして大人なのに千晶ちゃんのママはおもらししたの、と素朴で遠慮のない質問をぶつけてくるのが痛かった。千晶も恥ずかしかったようで家に帰ってから、もうママはおもらししないで、と泣かれた。いたたまれなくて保育園を替えた。 
 そんな遠い記憶が蘇ってくる夢を見て、目が醒めた。 
「……ぐすっ……千晶は……私のおもらしを覚えてるかな……」 
 まだ、ぼんやりとしていると後方の車両にクラクションを鳴らされた。 
 ビビ! 
 いつのまにか、前が進んでいる。 
「ああ、やっと…」 
 じわじわと動き出し、二車線のうち一車線が開けられたようで競い合って進み、なんとか高速をおりることができた。もう時刻は夜11時を過ぎている。下道はガラガラで飛ばせるだけ飛ばした。 
 キュッ! 
 タイヤを鳴らして千晶が待っている店の前に駐め、正面はシャッターが閉まっていたので裏口に駆け込む。鍵がかかっていたのでチャイムと森山の電話を同時に鳴らした。それで鍵を開けてくれる。 
「遅くなりました! 申し訳ありません!」 
「…………」 
 森山は小太りのハゲた男で30代後半か、40代前半、店の制服を着ているし名札をつけているので、わかりやすい。冷たい目で黙って千夏を見てきた。 
「すみません! 申し訳ありません! ご迷惑をおかけしております!」 
「…………」 
 さんざん泣いた後って顔だな……まあ、良質な方か……、と森山は万引き犯の親としてはマシな方だと千夏を見定めた。ひどい親だと本当に迎えに来ないし、警察でも何でも呼べ、と言ったり、迎えに来ても謝らない、そういう保護者たちに比べると、迎えに来るまでに泣いてしまう母親は好感が持てるし、子供の顔を見た途端に殴る父親にも好感が持てる、いつも内心でナイスパンチと思っている。 
「とりあえず入って」 
「はい、すみません、お邪魔します」 
「………」 
 さてと………お金にするか……それとも……このお母さん、美人だなぁ……やりたいなぁ……、と森山は金銭欲か性欲か、どちらを満たすか悩む。示談金は10万円と決めている。これが美味しい。それだけの利益をあげるには100万円を売り上げないといけないし、フランチャイズの本部にもロイヤリティーを取られる。けれど、万引きを警察に通報しないことで得られる示談金はレジを通さないし、税金の申告もしない。消費税も関係ない。まるまるポケットに入れられる。風俗なら2回分、豪華ランチなら10回分、とても美味しい臨時収入だったけれど、泣き疲れてメイクも落ちた母親というのも、そそる。娘のために身を捧げる母、たいてい可愛くないので現金を選ぶけれど、千夏の顔は好みだった。 
「千晶は、どこですか?」 
「こっち」 
「ぁ、…あの、その前におトイレを貸していただけますか?」 
「…はァ?」 
「すみません、渋滞で、ずっとトイレに行けなくて」 
「…………」 
 森山が千夏を見る。千夏はギュッと股間を押さえている。タイトスカートが食い込むほど、両手で股間を押さえていて、もう限界なのだと一目でわかった。 
「うぅ……」 
 ブルっと千夏が身震いする。運転席に座っている間は、股間に置いたペットボトルのおかげで圧迫されて我慢が助けられたけれど、立ち上がって歩いたことで膀胱が疼き、どうにも漏れそうで両手で押さえなければ失禁が確実だと自分でもわかっているし、黒いストッキングの脚を擦り合わせている。 
「…ハァ……ハァ……」 
「その前に、なにか言うことない?」 
「…す……すいません。この度は娘が、とんでもないことを……ぅぅ……はぅ…」 
 また千夏が身震いして、よろよろと横へよろけた。 
「ぅーっ…」 
「……」 
 娘と同じ声で可愛いな……、と森山は冷たい表情をつくりながら熱く想った。 
「ハァ……してしまい……ご迷惑をおかけして…んっ! …す、すみません! 先に、ぉ、おしっこ…ハァ…んっ…」 
 千夏の身体がビクビクと震える。膀胱が限界を超えて排泄反射が始まっている様子だった。 
「あぁっ…」 
「………。謝罪くらい、ちゃんと言い終えてくれないと」 
「んぅぅぅ……ごめんなさい……すみません……ぁ、ぁん」 
 千夏が悶え、酸素の足りない金魚のように口をパクパクとさせ、うつろな目に涙を浮かべた。その涙が零れると同時に、おもらしもする。 
 スーッ… 
 両手で押さえていても、おしっこが漏れてきてストッキングを濡らして流れていく。 
 スーーッ…スーー… 
 どんどんストッキングが濡れ、流れの筋が増える。 
「んっ…あんぅぅ…」 
「………」 
「くっあぁっ…」 
 膀胱がつらくて、身体がよろける。よろけて倒れないようにハイヒールの足をカッと開いてバランスを取るけれど、おもらしを押さえるために両膝は閉じている。その両膝の間を、おしっこが筋をつくって流れている。 
「ハァっ…ハァっ…」 
 息を乱して苦しみ、おしっこを漏らしている自覚があるので千夏は頬を赤くして、涙も流している。 
「ここ、食品も売ってるお店だから、おしっこなんかしないでくださいよ」 
「はッ、ぃぃい…」 
 千夏の膀胱がおしっこを出したくて収縮してくる。それを両手でなりふりかまわず押さえるのでタイトスカートがめくれあがっている。 
「…ハァ……ハァ…」 
「ハァ…ハァ…」 
 森山も見ていて興奮してきた。わざと千晶のような子供にも失禁させるのは万引きを懲りさせるためと、罪を認めないとき自白を強要するためで、これは警察で学んだ手法だった。日本の警察は暴行などの拷問は表立ってできないので、容疑者の性格や年齢によっては取調中に失禁へ追い込むことで人格を侮辱し、自白へ向ける。げんに千晶も自分の人権という理屈を忘れ、犬になった。そして、千夏のような完全な大人の女性になった美人のおもらしは森山の趣味に合う。中学生高校生はおもらしすると結局は幼児のようにワンワンと泣き出して幼児化する。大人の女性は強い羞恥心と幼児にまでは戻れない心理の中で、泣き方が見ものだった。 
「お願いで…す…ハァ…トイレ…」 
「ともかく、こちらへ、トイレもありますから」 
「んぅぅ…」 
 頷いたのか、礼をしたのか、頭をさげつつ、よろよろと千夏が歩く。ハイヒールなのでバランスが悪くて苦労する。もうポタポタと床に、おしっこが落ちている。おもらしを我慢しているというより、おもらししながら歩いていた。 
「さあ、こちらへ」 
 森山はトイレではなく千晶が待っているバックヤードの奥へ案内した。 
「っ、千晶…」 
「っ! お母さん!」 
 パイプ椅子に手錠でつながれていた千晶は母親へ駆け寄ろうとしてガタガタとパイプ椅子を引き摺りながら進む。千夏もよろよろと進む。 
「お母さんぅ、お母さんぅぅ! ごめんなさい、ごめんなさい、うわああああん!!」 
「千晶っ! 千晶、ううっ、うわあああん!」 
「…………」 
 同じ声で泣くんだなぁ……可愛いなぁ……母親になっても精神的には女の子かぁ……可愛い人だ……欲しいなぁ……でも、10万円も捨てがたい……両方は無理だからな……、と森山が想いながら見てると、千夏は娘を抱きながら、おもらししてしまう。 
 シュィィィ…… 
 熱いおしっこがタイトスカートから滝になって落ちる。 
 ピチャピチャピチャ… 
 床を打って鳴る。 
「ううっ、千晶…千晶ぃ、ぅう…」 
「お母さん、お母さんっ、本当に、ごめんな…ぇ?」 
 千晶は抱いてくれている母親の下半身が変に生温かいのと、足元から響く音、飛び散って千晶の足まで濡らしてくる液体に気づいて下を見る。 
「……お母さん………おしっこ、したの?」 
「っ…」 
 泣いていて赤かった千夏の顔が恥ずかしさで、より赤くなる。 
「だ、だって、渋滞で……千晶を迎えにくるのに、トイレも行けなくて……」 
「お母さん……ありがとう……。ぐすっ……ひぐっ…来てくれて! ……ひぐっ! 私、もう捨てられたのかと…ひくっ…ううっ! ううっ! うわあああん! ありがとおぉお! お母さーぁん!」 
 泣きながら千晶も、おしっこを漏らし始める。もう何度目のおもらしなのか千晶自身にもわからないけれど、森山に次々と飲まされたので今も膀胱に貯まっていて泣いてお腹がヒクつくと、おしっこが自然に漏れて止まらなかった。 
「千晶……怖かったのね…」 
「ううっ…お母さん……」 
 ギュッと千晶が母親に抱きつき、千夏も娘を強く抱きしめる。その光景を、しばらく眺めていた森山はゆっくりとした拍手をした。 
 パチ…パチ…パチ… 
 そして、ゆっくりと言う。 
「素晴らしい親子愛ですな」 
「「…ぐすっ……」」 
「それで、この惨状をどうしてくれるのですか? あなたたちのおしっこで、うちの商品はズブ濡れだ。いくらになるか」 
「「…………」」 
「床も、拭くだけでは、とてもとても。きちんと消毒して張り替えないと食品店としては社会的責任もありますから。あなたたちがお客さんの立場なら、嫌でしょう? 親子でおしっこ撒き散らした後、そのまま店を営業されたら」 
「「………」」 
「その話は、あとにして、とりあえず、もう遅いので万引きの件、どうしてくれますか?」 
「それは……本当に、申し訳ありませんでした。この通り、どうか、許してください」 
「ごめんなさい! 私が悪かったです! ごめんなさい! もうしません!」 
 千夏と千晶が頭をさげるけれど、それだけで許すつもりはなかった。あまり具体的な金額を先に言うと恐喝扱いされる可能性があったものの、どうやら親子そろってトロそうなので森山は言う。 
「うちでは万引きされた場合、示談に10万円をいただいております」 
「「10万………」」 
「ごめんで済めば警察は要りません。警察も、いつも刑務所に入れるわけではなく、罰金で済ますこともありますね。もう二度としてほしくないので、手痛い金額にするわけです。どうですか?」 
「……それで警察へも、学校へも通報されませんか?」 
「はい」 
「わかりました。なんとか支払います」 
「いえ、今すぐですよ」 
「っ……それは、……ちょっと……」 
「うちにはATMもあります」 
「……今は、口座にお金がなくて……」 
「旦那さんは?」 
「…………今、いなくて……」 
「示談金は、今すぐでお願いします」 
「………なんとか支払います。今は無理なんです」 
「そう言って何度、逃げられたことか」 
「どうか信じてください! 必ず用意します!」 
 深く千夏が頭をさげるので千晶も頭をさげる。最近、なんとなく家計が苦しいのは感じている。十万円という金額の大きさも感じられる。 
「私が高校生になったらアルバイトして払います!」 
「はぁぁ……何度も言いますが、今すぐです」 
「「………」」 
「クレジットカードお持ちですか?」 
「はい………」 
「それで新幹線の回数券を買ってチケットショップで換金してくれませんか? 朝まで付き合います」 
「……その方法は、もう使ってしまって……クレカは止められているんです」 
「…………。ちょっとクレカ、出してもらえます?」 
「はい」 
 千夏が森山に財布からクレジットカードを渡した。動くとハイヒールの中に貯まっているおしっこがクチュクチュと音を立てるし、ヌルヌルと滑るので歩きにくいし恥ずかしい。着替えたいけれど、そんなことを今は言い出せない雰囲気だった。おもらししたままの姿で万引きの示談という悲しい交渉を進める。森山はクレジットカードをレジに通してみて顔を曇らせた。 
「止まってますね………」 
「すみません」 
「他に、お金のアテありませんか? 旦那さんの給料前借りとか」 
「…………ひっ、ひくっ! ううっ! ううっ、あ、あの人は私たちを捨てたんです! もうアテなんてない! う、うう、ううわああん! 許してください、お金はもう、ないんです! ぜんぜん! ぜんぜん無いの! これだけ、これだけしかありません!」 
 千夏は土下座しながら財布を開いて森山に差し出した。 
「………39円……」 
 マジで無いな………レシートばっか……あ、昨日、うちでお総菜を買ってくれてる……この千円がラストの紙幣か……、と森山が思っていると千夏は啜り泣きつつ、どれだけ家計に困っているか、千晶にもお小遣いを渡さず万引きにおよばせてしまったと語った。聴き終えた森山はタメ息をつく。 
「……はぁぁ……で、同情しろと? この商売をしてますとね、多いんですよ、万引き。で、捕まえて、お金がなかったから、と泣いて土下座、もう見慣れてます」 
「「………」」 
 千晶も母親を真似て土下座していたけれど、親子での土下座も森山は見慣れていた。そして、金銭欲は諦めて性欲に気持ちを切り替えた。 
「娘さんは、ここにおいて。ちょっと二人で大人の話をしましょうか?」 
「………はい……」 
「お母さん……」 
「千晶は、待ってなさい。大丈夫だから」 
「……………」 
 とても心配だったけれど、千晶は何もできず、母を見送った。 
「……ぐすっ……お母さん……私のせいで……」 
 なんとなく、わかる。大人の話といっても、もう金銭の話でないとしたら、あとは中学3年生にも想像できた。 
「……あ、電気が?」 
 しばらくして販売スペースの照明がついた。そのためにマジックミラーの効果で今まで大鏡だった面が透けて見える。開店中のように鮮魚コーナーが丸見えになった。そこに千夏と森山が歩いてくる。 
「お母さんに…何する気なの…」 
 千晶が心配していると、千夏は衣服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ、タイトスカートをおろす。不安そうに千夏は周囲を見回す。 
「奥さん、大丈夫。店内は我々だけです」 
「………」 
 千夏はストッキングを脱ぎ始めた。ショーツもおろし、ブラジャーも外して、ハイヒールだけの全裸になった。あまりの恥ずかしさに千夏が声を漏らす。 
「あぁ…うぅ…」 
 いつも買い物に来る店で裸になっているという状況は千夏の羞恥心を極限まで高めた。近所の人たちも食材を買いに来る場所、町内会の人もPTAの父母も、あらゆる人が往来する店で今は裸になってしまった。せめて右手で胸を、左手で股間を隠して立っている。なのに森山が命令する。 
「両腕をあげて頭の後ろで組みなさい」 
「……ぅうぅ…」 
 言われたとおりにする。 
「足をもっと開いて」 
「…はい…」 
 肩幅の2倍も足を開かされた。 
「お母さん…………お母さんはマジックミラーだって気づいてない……」 
 千夏がバックヤードに入ってきたときは照明が消えていたので、千晶に見られているとは思っていない様子だった。森山が楽しそうに千夏の身体を見つめる。 
「キレイな腋ですね。子育て中だと、放置する人もいるのに、冬なのにキレイだ。脱毛したんですか?」 
「……はい…」 
 千夏の両腋には1本の腋毛も黒ずんだ毛穴もなくて真っ白だった。色白な体質なので毛が生えると目立つ。千晶へも高校生になったらレーザー脱毛しようね、と言ってくれたこともあるけれど、それはかないそうにない。 
「うぅ……」 
 千夏は腋の匂いを嗅がれて、恥ずかしそうに顔をそむけている。朝から生命保険の売り込みという嫌な仕事をして気持ちの悪い汗をかいたし、昼過ぎから娘の万引きを知った状態で渋滞に巻き込まれ、おしっこを長時間我慢し続け、結局は漏らしたという体験の間にかいた汗の匂いは強烈で制汗スプレーをふっていたのに、ひどく匂う。なのに森山は舐めてきた。 
「んっ、や……やめてください…」 
「お母さん……」 
「ほら」 
 森山はポケットから一万円札を出して千夏の鼻先に突き付けた。 
「咥えて。犬みたいに。それで、あげます」 
「…………」 
 迷いつつも千夏は一万円札を唇で咥えた。 
「フフ、美味しいでしょう。ヨダレがつかないうちに自分の財布へ入れなさい」 
「……はい…」 
 千夏は財布に紙幣を入れ込んだ。 
「お母さん………ぅぅ……お母さん……私のせいで……」 
 母親が女性としての尊厳を完全に踏みにじられている光景は胸が割れそうなほど悲しかった。森山は商品棚からペットボトルの麦茶をもってきた。 
「この錠剤を飲みなさい」 
「…………。これ、何ですか?」 
 得体の知れない薬を飲むのは不安すぎて問うていた。 
「大丈夫、おしっこがしたくなるだけの薬ですよ」 
「………」 
 利尿剤という言葉を千晶は知らないけれど、千夏は知っていた。そして千晶も、なんとなく温蔵庫から与えられた最初の開封されたペットボトルを飲んだ後、やたらおしっこがしたくなったので、入れられていたのだと感じた。 
「んくっ…んくっ…」 
 千夏が麦茶を飲み干している。 
「お散歩しましょうか、ワンちゃん」 
「……はい…」 
 千夏は店内を四つん這いで巡り始めた。頭がクラクラするほど恥ずかしい。理屈では閉店後なので無人だとわかっていても、街中の人に見られている気がする。 
「あ、そうだ。尻尾がない。これを入れなさい」 
 森山が野菜売場からラディッシュを一つ取り上げた。葉がついたまま販売されているラディッシュを千夏は尻尾のかわりに受け入れた。 
「ぐすっ……」 
「可愛いですよ、ワンちゃん」 
 ご褒美に一万円札をもらっている。散歩して千晶からは遠くなって見えなくなると、それはそれで不安になる。見えない場所で、どんな目に遭っているか、きっと想像を絶する恥辱だと考えた。 
「お母さん……あ、戻ってきた」 
 それほど広い店ではないので、すぐに見えるようになった。森山の手にはタラコとイクラのパックがある。千夏も千晶も好きな食べ物だった。 
「お腹が空いているらしいね。お昼も抜きだったと」 
「ワン!」 
「お母さん……犬語になって……」 
 強制されたのか、千夏は犬のように吠えている。尻尾を振るように、お尻も振っていた。森山はタラコとイクラのパックを開くと床に並べて置いた。 
「まだ、おあずけですよ」 
「きゅ~ん……」 
「イクラは醤油がないと」 
 森山は醤油を取りに行く。 
「わさび要りますか?」 
「いえ、ワン」 
「白ご飯もつけましょうか?」 
「ワンワン!」 
「お母さん………。店長、けっこう親切……でもないか、犬あつかいして……人のお母さんを……」 
 森山が白ご飯のパックも電子レンジしてから床に置き、イクラへ醤油をかけてから千夏に命令する。 
「それぞれ、一口ずつ食べなさい」 
「ワン」 
 千夏が犬のように四つん這いで床へ置かれたパックからイクラとタラコ、白米を食べた。 
「美味しい?」 
「ワン!」 
「また、おあずけです」 
「……きゅ~ん……こくっ…」 
 千夏が生唾を飲んでいる。一口だけ好物を味わった後に待たされるのは空腹感が強いだけにつらそうだった。 
「フフ、大きく口をあけて、ダラダラとヨダレを垂らしなさい。たくさん垂れたら、喰わせてやる」 
「はい……」 
 千夏は口を開けた。すぐにヨダレが垂れてくる。 
 ポタ……ポタ……たらーーーっ… 
 食欲が刺激され、どんどんヨダレが溢れている。 
「よし、喰え」 
「はふっ」 
 ガツガツと犬のように好物を食べ始めた。 
 キュゥゥ… 
 千晶も空腹だったので、お腹が鳴った。固形物を与えてもらっていない。ドリンク類ばかりで深夜になったので、お腹が空いてつらい。千夏は食べ終えて舌で唇を舐めている。森山が親切に紙ナプキンで口の周りを拭いてやっている。 
「さてと、一気に5万円にチャレンジさせるぞ」 
 今度は5枚もの一万円札をパッと床へ投げた。ヒラヒラと飛び散る。 
「そろそろ、おしっこしたいだろう。自分の一万円だと主張するためにマーキングしろ。ちゃんと濡らした札は手で拾って財布に入れていい。ただし、チャンスは60秒、はじめ」 
「っ…」 
 千夏は息む。こんなところで、おしっこをするのは、とても恥ずかしかったけれど、もう羞恥心が麻痺してきている。そして、おしっこは利尿剤のせいで貯まっていたので、すぐに出てきた。 
 ピーーっ… 
 ちゃんと5枚ともにかけるため、小出しにしている。 
 ピーーっ… 
 おしっこをかけて回り、すべての札を濡らした。 
「ハァ…ハァ…」 
 四つん這いでの作業だったので息を荒げている。 
「フフフ。いいぞ、拾え」 
「はい」 
 人間に戻って財布に紙幣を入れ込んでいる。 
「よかったな。これでノルマの10万円、達成だ」 
「……はい…」 
 恥辱に耐え、千夏の財布には示談金に相当する10万円と39円が入っている。右から左に巻き上げられるのだと感じていたけれど、森山は千夏のお尻を撫でながら言ってくる。 
「あと10万円、稼がないか? ボクも一度は女へ出したお金を引っ込めるのはダサいし、ここで一発、やらしてくれたら、10万円そのまま持って帰っていいよ」 
「…………」 
 千夏の目が揺れている。とっくに処女ではない。一度のセックスで10万円ももらえるなら、今夜の夕食にも困っている身で拒否できなかった。 
「……コンドームをつけてくれますか?」 
「無しなら10万円、つけるなら2万円」 
「…………」 
「いいよね? 無しで」 
「……」 
 黙って千夏は頷いた。 
「じゃあ、そこの鏡に向かってオナニーしてもらおうかな。濡れてないと痛いだろ」 
「………」 
「返事は?」 
「…はい…」 
 千夏がマジックミラーに向かって自慰を始めた。 
「………お母さん……」 
「フフ」 
 森山の視線が千晶の方へ向けられた。マジックミラーなので向こうからは見えないはずだけれど、だいたいの見当をつけている感じだった。そして今さらながら、向こうの声が聞こえるのに、こちらの声は届きにくいシステムに気づいた。開店中はフランチャイズ指定の音楽が鳴っているのでわかりにくいけれど、マイクで販売スペースの音声をバックヤードに回しているようで、今は千夏と森山の声がはっきり流れてくる。逆にバックヤードで怒鳴ったりしても販売スペースには声がいかないよう防音されている感じだった。 
「フフ、奥さん、こんな店の中でオナニーする気分はどうかな?」 
「うぅ……」 
 千夏は恥ずかしさで赤面している。命令されたとおり手で自分を刺激しているけれど、あまり濡れない様子だった。 
「手伝おうか?」 
「……お願いします…」 
 もう決めたことなので、後に引けず千夏は身体を触られるのを受け入れる。男の手が刺激してくると、だんだん声が湿っぽくなってきた。 
「…ハァ……んっ……」 
「どこが感じる? 言ってみなさい」 
「……」 
「乳首かな?」 
「………乳首より……腋を舐められるのが……一番……感じます」 
「素直な性格でいいね」 
「でも、今は匂いが…」 
「君の匂い、好きだよ。あ、君の名は?」 
「……千夏です」 
「千夏の匂い、いいよ」 
「…んっ……あはんっ…」 
 自分で告白した通り、千夏は腋が性感帯なので舐められて、すぐによがり始めた。自慰では濡れなかったのに、おしっこ以外の濡れをしている。よがったためにラディッシュが抜け落ちて床に転がる。 
「………お母さん…」 
 千晶が目をそむけている間に性行為が終わった。 
「ハァ…」 
 最終的には快感をえてしまった千夏が服を着たそうな顔をしている。森山はズボンを直して問う。 
「ビールか、酎ハイ、お茶、なにがいい? ボクはビールを呑むけど」 
「……酎ハイをお願いします」 
「味は?」 
「ライチがあれば」 
「あるよ。うちの店、よく来てくれてる?」 
 森山は商品が並んでいる冷蔵庫からビールと酎ハイを取り、二人で呑み始めた。森山が床にアグラをかいて座り、その膝に裸の千夏を座らせている。 
「はい、よく利用させてもらっています」 
「これからも、よろしくね」 
「…はい……」 
「おつまみ、なにか好きなの取ってきてよ。何でもいいよ」 
「はい……」 
 千夏は立ち上がって裸のまま店内を歩き、イクラとタラコをもってきた。全裸で店の物をお金も払わず、その場で食べ始めるという状況に困惑しつつも酔っている。森山が千夏の髪を撫でながら言う。 
「来月から、どこで暮らすの? 家、売られてさ」 
「……」 
「アテがないなら、アパートは、どう? この店の隣の隣に、あるアパート、ボクの所有なんだ。一室あいてる」 
「「………」」 
 千夏と千晶が記憶を呼び起こしてみる。店のそばに古いアパートがあった気がする。 
「2Kで風呂はガス、家賃3万。一発やらしてくれたら、3万円あげる」 
「……………。ご結婚されているんですか?」 
 千夏が男の薬指を見る。そこに指輪は無かったけれど、食品流通関係の仕事をしている男性は結婚指輪をしないことも多い。 
「いや、この歳まで……まあ、いろいろあって」 
「そうですか…」 
「ボクさ、若い頃に貯金しようとしてケチだったから、デート代とか必ずワリカンにしてたら、警察官だったからモテたのに、結婚までいかなかった」 
「あ~……そういうのありますね…」 
「おかげで今は店もアパートもあるし、資産2億だよ、借金8000万だけど」 
「すごい……」 
「ボクとさぁ、付き合ってよ」 
「……考えさせてください」 
「アパートは契約する? 保証人はつけてね、あと保証会社も」 
「両方ですか……」 
「付き合ってくれたら、ボクが保証人になってもいい。というか、ボク所有のアパートにボクが保証人って無意味なんだけど、うちの原則は保証人必須だから」 
「…………私が妊娠したら……どうしますか?」 
「ボクの子供だったら結婚してよ」 
「……………」 
「愛してるよ」 
「………どうも……。あの、お話の途中なんですけど、……おトイレ……いきたくて…」 
 麦茶と利尿剤に加えて酎ハイを呑んでいるので、おしっこが貯まってきていた。 
「話の途中だから我慢しろ」 
「うぅ……」 
 さっきまで優しかったのに急に怖い声で言われた。千夏は男の膝に座りながら尿意に悶える。 
「…ぅ……くっ……あの……、もう、漏れそうです…」 
「千夏、可愛いよ。そうやってモジモジしてる姿」 
「ハァっ……も……もう……本当に…」 
 千夏が立とうとしたけれど、抱き留められた。 
「あぁぁぁあっ…」 
 おしっこが漏れてしまう。 
 チュワァァ! 
 我慢した後なので、勢いよく噴き出し、男のズボンまで濡らした。 
「ハァ……ハァ……ぐすっ…」 
「あ~あ、おもらししたね、千夏」 
「……すみません…」 
「ねぇ、ボクと付き合ってよ。もう離婚するんだろ?」 
「…………娘を養っていかないと……まだ中学生ですから」 
「旦那が養育費をくれないなら、高校卒業まで食費くらいだすよ。その後は自立させなよ」 
「……………私と関係している間、娘には手を出さないと誓ってくれますか?」 
「うん、ボク、ロリじゃないし」 
「………………。よろしくお願いします」 
「よし、やった」 
 話が決まったので千夏は服を着て、森山とバックヤードに戻る。戻るとマジックミラーによって娘に見られていたことに気づいた。 
「千晶……見てた…の…?」 
「……ごめんなさい………なにもかも……私のせいで……ぅぅ…私のために…」 
「いいの、いいのよ」 
 また母子が抱き合って、啜り泣いた。森山は半額になった賞味期限が明日の牛肉と、バックヤードの床にあったダンボールに入っていて、おしっこで濡れたカップラーメンを袋に入れている。 
「これ、あげる。自分のおしっこだし、パッケージされてるから食べられるだろ。一箱は多いからボクも半分、食べるし」 
「「……ありがとうございます」」 
「これも、持って帰っていいよ。次からは買ってよ」 
 コミックスを差し出され千晶は首を横に振った。 
「遠慮します。もう漫画なんか読まないで、高校で勉強、頑張りますから」 
「お、いいね」 
 裏口まで見送られ、千夏と千晶は外に出た。 
「「はぁぁ………」」 
 外に出ると悪夢が終わったような気がしてタメ息が漏れた。近所の店が、こんな伏魔殿だとは思わなかった。見上げると3月の星空が見えて美しかった。 
「…………」 
「…………」 
 二人とも歩き出し、店から離れる。千夏は車を安全に運転できる気力がなかったのと、衣服がおしっこで濡れているので、メモ書きを挟んで駐車場に駐めたままにさせてもらい、歩いて帰宅する。途中、古いアパートが視界に入った。 
「「………」」 
 木造2階建て、合計10室、築20年くらい、古いけれど外壁を塗り直したばかりのようで真新しくも見える。 
「………」 
 シーちゃんのボロ屋よりマシ……、と千晶は志澄実の住居を比べて安心する。 
「………」 
 あの子のアバラ屋よりは、ずっといい……あれは人間の住むところじゃない……、と千夏も志澄実の住居と比べて安心した。千晶が母に言う。 
「……お母さん………あの店長さんと……」 
 付き合うの、結婚するの、どうするの、と質問を続ける気持ちになれなかった。千夏が察して娘の頭を撫でる。 
「あの人、相当にケチよ」 
「そうなの? ………色々くれたけど……」 
 千晶の手にはカップラーメンが入った袋がある。半額の牛肉も国産の霜降りで、めったに食べられない物だった。 
「千晶は………全部、見てたのよね……あの人と私のしてたこと……」 
「……うん……ごめんなさい…」 
「ううん、それは、いいの………ただ、あの人は、他人を愛せない人………たぶん、お金と自分の欲望を満たすことにしか興味がない……それも、できるだけ安く………まあ、逆に破産したりはしないから……それが賢いのかもしれないけど………」 
「……お金って……なんなの?」 
「…………なんなのかな……」 
 また夜空を見上げたけれど、千夏は寒さと尿意で身震いした。 
「ぅ~……」 
 サッと手で股間を押さえたので千晶が察した。 
「お母さん、おしっこしたいの?」 
「うん……」 
 千夏はあたりを見渡した。県道沿いの住宅街でコンビニは無い。千晶も身震いする。 
「私も、おしっこしたいよぉ」 
「どうしよぉ」 
「あうぅぅ……」 
「うぅぅ…」 
 二人とも何度も失禁させられたので尿道括約筋に力が入らないし、下半身が冷えて我慢ができない。 
「お母さん……お母さん……おしっこ……出る……出るよぉ」 
「うん、うん、……と、とにかく、家に……うっ! ああっ!」 
 千夏が先におもらしする。 
 チュワァァァ! 
 タイトスカートから、おしっこが流れ落ち、ストッキングを這い、足元のアスファルトに貯まって、モクモクと湯気を上げた。深夜の寒さで、湯気の量がとても多い。 
「ハァ………ハァ……」 
「お母さん……わ、私も出ちゃう……」 
「もう無理に我慢しなくていいから、しちゃいなさい」 
「うぅ…うん…はぅ…」 
 おもらしするのには迷いがあるけれど、ここでパンツを脱ぐのも嫌だったので千晶は力を抜いた。 
「ふぁぁ……」 
 おしっこが下着の中に溢れる。 
 シュワァァア! 
 温かさが、とても気持ちよかった。 
「ぁぁぁ……温かい……………あ、もう冷たい」 
「急がないと風邪ひくわね」 
 深夜なので歩行者はいないし、車もめったに通らないけれど、おしっこを漏らした姿で歩くのは恥ずかしい。そして寒いので二人は急いで家に帰った。 
「ハァ…ハァ…」 
「ハァ…ハァ……やっと、おうちに…」 
 千晶が玄関の天井を見上げる。ごく平凡な一戸建て住宅なのに、とても貴重に感じた。 
「……お母さん……この家……出て行かないといけないの?」 
「…………。………」 
 千夏が何か慰めになることを娘へ言おうとして、逆に何も言えなくてポロポロと涙を零した。 
「お母さん……ごめんね、ごめんね」 
「うう、ううん、千晶が謝らなくていいの、いいの」 
 また抱き合って泣いて、泣き止むと鍵をかけ玄関で下半身裸になる。床暖房をつけておいてから、何年かぶりに二人で風呂に入った。よく身体を洗って、パジャマを着て居間のソファに二人とも座った。もう午前2時過ぎ、卒業式のリハーサルのある日だった。 
「お母さん…………」 
「なぁに?」 
 娘が言いにくそうにしているので千夏は優しい声で促した。 
「……私……捕まったとき、学校の男子に見られたかもしれないの……」 
「そう………」 
「………学校、いきたくない……ちゃんと家で勉強するから、お休みさせて」 
「うん、もう卒業式も欠席でいいよ。嫌な想いするなら行かなくていい」 
「ありがとう!」 
「あと勉強も大事だけど、女はやっぱり、どんな人と結婚するか、これが大切だから高校でいい彼氏を探しなさい。底辺校って言っても、千晶みたいによく勉強したけど運が悪くて来ちゃう男子もいるだろうし、お金持ちで性格もいいけど、勉強だけは苦手な人もいるだろうから」 
「うん」 
 頷く千晶のお腹が空腹で鳴ったので、千夏はカップラーメンと肉炒めをつくる。 
「このキッチンとも……」 
 あと何回、ここで料理できるのか、そう想っていたら再び尿意が湧いてきた。 
「うぅ……利尿剤なんか……」 
 ちょうど肉の焼き加減の大切なところなので離れたくないのに、尿意は感じた途端に激しく出口をノックしてくる。 
「………もぉ、いいや……」 
 おしっこを料理しながら千夏は垂れ流した。 
「はぁ……」 
 キッチンの床に、おしっこが大きく拡がる。 
「お母さん………」 
「出ちゃった♪」 
「出ちゃったって………あぅ、また、私も」 
 同じタイミングで千晶も尿意に襲われた。自宅なので、すぐそこにトイレはある。トイレへ向かおうとすると千夏が言ってくる。 
「千晶もおもらししてよ。ママだけなんてヤダ」 
「お母さん……そんな子供みたいな…」 
「それに、どうせ、この家、誰かに盗られちゃうんだから、私たちのおしっこ、悔しいから染み込ませてやるの」 
「…………。……うん…」 
 千晶のおしっこもリビングに拡がった。二人で濡れたパジャマのまま温かい床暖に座ってカップラーメンを啜り、霜降り肉を頬張って朝を迎えた。 
  
  
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