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武人祭
お昼はみんなで
しおりを挟む二コマの授業も終えて昼休み。
カイトたちも混じえて飯にしようと迎えに行く。
行く途中も廊下や教室の中から俺たちを見る視線を感じていたが、朝のように面倒事になる事はなかった。
まぁ、「俺たちだから」というより「高等部の三年が何故中等部に?」という理由だろう。
そしてカイトたちのクラスに着いたのだが、その教室の前で短い金髪をした少女、メルトと出会った。
「は?」
メルトも俺たちに気付くと睨み付けて来た。
なんでコイツは毎回出会い頭に相手を威圧するような事をするんだろうか?
「何よあんたら?」
「カイトたちを迎えに来たんだが?」
「なんでよ?」
「一緒に飯を食うため」
「勝手に食えば?」
遠回しに「アイツらはあたしが誘うからどっか行け」と聞こえた。
しかしここは少し意地悪をしてみよう。
「分かった、じゃあ勝手にさせてもらおう。おい、カイト、レナ!飯行くぞ!」
「なっ・・・ちょっと!?」
俺がカイトたちを呼ぶと、メルトは俺の胸ぐらを掴んで来た。
ノワールとココアから一瞬殺気が飛ばされたが、子供のやる事だと俺が何も言わずとも我慢してくれた。
「急にどうしたんだ?」
「どうしたって・・・あんた分かってて・・・!」
「エー?ナンノコトー?」
「師匠どうし・・・えっ、本当にどうしたんですか!?」
呼ばれて来たカイトとレナが胸ぐらを掴まれてる俺の姿に驚いていた。
「おー、カイト、レナ。飯行くぞ」
「「無視!?」」
カイトとメルトの声が仲良く重なる。
レナは特に気にした様子もなく「はい」と答える。
胆力が付いてきたのか、ただこういう状況に慣れてきたのか。どちらにしても少しずつ良い方向に向かっているようだ。
「愚痴愚痴文句を言うならお前も来ればいいじゃねえか」
「うっ・・・分かっ、たわよ・・・」
「私も同行してもよろしくて?」
すると横から背の高めの金髪ロールの少女、リリス・アーリアが会話に割り込んで来た。
取り巻きのような鬱陶しい男たちを侍らせてそこにいた。
「「・・・ちょっとやだわ」」
「・・・・・・」
俺とメルトが同じ意見となった。
そりゃそうだ、こんな野郎だらけな奴を引き連れて行きたくない。
リリスは男たちをシッシッと追い払い、こっちに向き直る。
「では行きましょうか♪」
正直、中学生で男を道具みたいに使ってる奴とご一緒したくないというのが本音なのだが。
このメンバーが揃ったのだから、ついでにサイも誘っておくことにした。
「・・・良いの、ですか?」
「むしろ来い。こちとら男の比率が低くて肩身が狭いんじゃ」
「・・・では、お言葉に甘えて」
ーーーー
「よし、体は少しは出来上がってるようだ。夏休み中ちゃんと言われた事はやったみたいだな」
昼食、人気のなくなった外の場所で弁当を広げる。
尻を汚したくないので収納庫からシートを取り出し、そこに座って弁当を開ける。
そして食事を始める前にサイの体を服の上からチェックする。
「・・・うむ!貴方の言われた方法を欠かさずやり続け、今では前よりあの剣をようやく振れるようになりました」
「それは何より。お前らはどうだ?メルトは・・・少しはレイピアを扱えるようになったようたな」
「当然よ。っていうか、なんで見ただけで分かるの?変態?」
「解せぬ」
「皆さん不公平ですわ。私だけ何も指示されなかったのに・・・」
リリスは少々頬を膨らませ拗ねていた。
「悪いな、魔術は本業じゃないから教えるのは苦手なんだよ。なんだったら先生を付けようか?」
「ええ、機会があれば」
そう言って優しく微笑む。
中学生から勉強熱心なのは良い事だ。・・・日頃の行いはともかく。
「それよりあんたら、夏休み中どこにいたのよ?」
「うむ?」
すでに食べ始めたカイトとレナは、メルトが自分たちに向けて質問されて頬張りながらそっちに向いた。
カイトがなるべく急いで飲み込み、口を開く。
「俺たちか?」
「決まってるでしょ?寮にいるかと思えば二人共引き払ったって言われたし・・・」
「ご、ごめん・・・今は師匠のお家に、住まわせてもらってる、から・・・」
「師匠?師匠って・・・」
「俺んちだ」
メルトは購買で買ったであろうサンドイッチを口に運ぼうとしたところで開けたまま停止する。
「あらあら。男女が同じ屋根の下、というのはよろしくないのではなくて?」
「前に他の奴にも同じ質問をされたが、実際こうも多く住まわせてると男女共同の寮と変わらない感じだよ」
「そうですか・・・ちなみにお家は近いので?」
「ああ、この学園の敷地内にある屋敷だ。前は幽霊屋敷とかで有名だったとか」
「ああ、あの・・・って、あのオバケ屋敷!?」
あまりの驚きにリリスの「ですますわ口調」がどこかに消えてしまっていた。
そして幽霊と言った筈なのにオバケと言い直されるのは何故だろう。
「え、でも、だって・・・あそこは本当に出ると噂なのですわよ?」
「確かにいたが幽霊じゃなかったよ」
「では一体何が・・・?」
リリスの疑問に答えるように黙って視線をココアに向ける。
一緒に釣られてリリスもココアの方を見ると、ウィンクして舌を出すテヘペロという表情をした。
リリスは「この方が・・・?」と口を開いたまま唖然とする。
「その件についてはお騒がせしてしまいお詫び申し上げますわ。何分気付いてほしかったものですから・・・」
「えっと、確か貴女は・・・?」
「この方に仕える闇の精霊王。名をココアと申します。今はこの学園の生徒としていますので、気軽に、そして仲良くしてもらえれば嬉しいです♪」
メルトもリリスも「えぇー・・・?」という表情をしたまま固まる。
サイに関しては話を聞いてないんじゃないかってくらい動じずに飯を食っていた。
「うむ・・・驚きだ」
一応聞いていたらしい。
それでももぐもぐと持ってきた自家製弁当を食べているのはそこまで驚いてないか、気にしてないかのどちらかだろう。「嘘つけ!」とツッコミたくなった。
だがそれも面倒なので、俺も気にせず飯を食い始める。
「しかしメルト・・・お前ソレだけで大丈夫なのか?」
「・・・何がよ」
固まっていたメルトが動き出し、再びサンドイッチを口にしたところで聞いてみる。
「飯。ソレだけじゃ腹は満たされないだろ」
「うるさいわね。コレだけで十分よ」
そう言って最後の一切れを食べ終えた時だった。
グゥー・・・。
「「・・・・・・」」
全員が沈黙する。
その音の出処はメルトの腹。
誤魔化すにも話題が思い付かないので普通に腹の音の事で話そうと口を開くと・・・
「メルト、今のーー」
「その口開いたら殺す」
メルトは顔を真っ赤にして今までで一番の睨みと殺気を向けてきた。
あまりの怖さに近くにいたカイトが「ヒッ!?」と怯えて箸から米を落してしまった。
多分何を言っても聞かないだろうから、弁当の蓋に鶏のササミや他いくつかの食い物を入れ、こんな事もあろうかと持ってきた割り箸と一緒に無言で差し出す。
「要らないわよ!!さっきので十分って言ってるでしょ!?」
「無理なダイエットは体を壊すぞ」
「ッ!?」
俺の一言にさっきよりも顔を赤くするメルト。
やはりダイエットをしている事はバレたくないようだ。
しかしだからと言ってここで口を出さないわけにはいかない。
「体重を減らしたいのなら食事を減らすんじゃなく内容を変えろ。特にコレみたいに鶏のむね肉ともも肉はカロリーが少ない。食事の量自体少ない方ならこういうやり方の方が良いと思うんだが?」
「・・・あっそ」
メルトはそれだけ呟くと、奪うようにササミの入った蓋を俺から受け取って食べ始めた。
受け入れた、というよりは諦めたようだった。
「もしこれからも俺たちと食べるんなら、お前の分の弁当も作ってもらおうか?」
チラッとココアを見ると微笑んで返してくれる。
「構いませんわ。そういうメニューを考える料理も楽しそうですもの♪」
「・・・だ、そうだ。どうする?」
メルトは未だに顔を赤くしながらも小さく頷いた。
何か文句を言ってくるかと身構えたが、意外と素直になってくれた事に少し笑ってしまった。
「何よ」
「いや?特に見た目は太ったわけでもないのに体重を気にするなんて、女子らしいなと思っただけだ」
「う、うるさいっ!」
流石に言い過ぎてしまったのか、食べ終わった蓋を俺にぶん投げてきた。
それを上手く受け止めて弁当の上に被せる。
「オヤ?これはこれハ!愛しのレナっちに・・・あの時の冒険者様じゃないカ♪」
そんな時、フードを深く被った少女の声をした奴が話し掛けて来た。
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