最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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夏休み

断り方

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 「ただいま我が家ぁっ!」

 「ここ俺んちだけどな」


 結局一日を向こうに泊まり、イリアたちと別れを済ませてノルトルンから転移で屋敷へと戻った。
 その際に向こうにノクトとイリーナを置き、代わりと言っちゃなんだがユウキとクリララを連れて帰った。
 クリララは「どうせ夫妻二人共旅行に出掛けて丁度良いから、貴女も休暇を取りなさい」とイリアに言われたので早速連れて来たのだ。
 目的は勿論魔族の大陸へのご招待。
 すぐに行くわけじゃないが、旅行気分で俺たちと一緒に居てもいいだろうと言う結論となった。


 「まぁまぁ、そう言うなって。俺の家は俺の家。お前の家も俺の家ってよく言うだろ」

 「かなり規模のでかいジャ◯アン理論だな・・・」

 「「たっだいまぁ!!」」


 メアとラピィの二人も仲良く叫ぶ。
 似た者同士なのもあってすっかり意気投合している。


 「お、お邪魔しますだぁ・・・これから数日間厄介になるだよ」

 「いえいえ。ここを自分の家だと思って気にせず寛いでくださいね」


 更に後から来たクリララが恐る恐ると恐縮した感じに入り、ランカがいつも通り調子に乗っていた。

 他人の家を自分の家みたいに振る舞うコイツら・・・良い性格してるなぁ・・・。
 まぁ、良い傾向でもあるか。

 他の奴らも家に上がり背伸びや欠伸をしたりして気を緩ませていた。
 クリララ以外がこの家を我が家のように感じてくれる事を若干嬉しく感じた。


 「お帰りなさいませ、アヤト様」

 「お帰りなさい、皆様!」

 「「お帰り~!!」」


 ノワールとオルドラ以外の精霊たちのお出迎え。
 オルドラや竜の二人はどうせ居間で遊んでるんだろう。


 「お帰り、アヤト君♪」


 ついでにシトも来た。
 別にコイツは要らなかったかな・・・。


 「わぁお、凄く嫌そうな顔」

 「嫌な顔がお出迎えに来たからな」


 そう言うと「アッハッハ~!」と俺の言葉は笑って流される。
 上がって居間に行くと案の定将棋をしている三人がいた。
 作務衣男 VS 筋肉ダルマ精霊。
 着物女は隣で観戦。


 「おお、帰ったか」

 「よし、アヤト!貴様は我の相手をしろ!」

 「いきなりだな、完敗王」

 「・・・・・・」


 的確なあだ名を付けられ、目を見開き唖然として沈黙してしまう着物女。

 だってコイツが勝ったところ見た事ないんだもの。
 というか・・・


 「二人共、そろそろ名前付けた方がいいよなぁ・・・」

 「おっ、やっとか!待っていたぞ!」

 「何?貴様が我に名を付けると言うのか?嫌だね、貴様なぞにーー」

 「んじゃあ、お前は「着物女」のままね。そんでお前の方は・・・」

 「待て待て!なんだ着物女って!?」

 「しょうがねえだろ、名前がないって事は特徴で呼ぶしかねえんだから。それとも別のがいいか?負け犬とか噛ませ役とか・・・」

 「まけ・・・チッ、いいだろう。ここは大人しく名を付けられてやろう」


 相変わらずの上から目線。
 コイツの名前「目上さん」とかでいいんじゃないかと思えてくる。
 とりあえず名前を考える。

 作務衣と着物か・・・二人共見た目が妙齢って感じだからどうやって付けたものか。
 間違ってもこんな怖いおばさんに可愛い名前を付けたくないよな。とはいえあまり変な名前も・・・よし。


 「お前着物女は「リアナ」、おっさんは「グレイ」」


 二人の体がほのかに光る。


 「確かに承諾した」

 「フンッ、よもや人間に名付けられる事になろうとはな・・・」

 「あまりぶつくさ言うなよ、リアナちゃん♪」

 「黒の、貴様・・・!しかし貴様の方こそ灰色グレイとは・・・どっち付かずの貴様にはお似合いじゃないか?」

 「喧嘩すんなよ、小学生じゃあるまいし。とりあえずリアナちゃんは俺とチェスがしたいのか?」

 「貴様もガキのように便乗するな阿呆!!」


 と、怒鳴りながら机にチェス盤を置く。
 結局やるのかと呆れながら席に着いた。
 勝ちたいなら俺よりグレイや他の奴とやった方がいいんじゃないかとも思ったが、何気に笑ってるコイツを見ると勝ち負けより誰かと勝負が楽しくてやっているようだったし、何も言わないでおく。


 「あー、俺はもうちょっと寝るわ。イリアんとこだとあんま寝れなかったし」

 「ん。私も」

 「告。ではついでに私も」


 言葉通り眠そうにしていたメアとミーナがそう言って廊下へと出て行き、その後をヘレナが付いて行った。

 ついでって何だよ・・・?

 メアたちの足音からは階段を上がった音が聞こえず、代わりに扉を開く音が聞こえ、俺の部屋に入った事が分かった。
 もうアイツらは俺のベッドで寝るのがデフォルトとなっている。
 すると階段から降りる別の足音が聞こえて来ていた。
 この屋敷に戻ってるメンバーでここにいない奴っていうと限られてくるから予想はできた。
 扉が開かれ、そこからあーしさんが入って来た。


 「なんか賑やかいと思ったら帰って来てたんだ?おかー。なんかお土産ある?」

 「饅頭まんじゅう一つとメイド少女一つとイケメン一つ」

 「後ろ二つが意味分かんないんだけど。メイドとイケメンって何ーー」


 あーしさんが周囲を見渡し、ユウキを見つけると目を見開いて驚いたような表情をしていた。


 「イケメンとか言ってくれるなよ。照れるだろ?野郎に言われても嬉しかないが」

 「新谷・・・結城・・・?」


 ユウキがふざけてクネクネしてるとあーしさんがユウキの本名フルネームを呟く。
 「ん?」とユウキがあーしさんの方を振り向くと、その顔面に目掛けて拳が飛んで来た。


 「あっぶねぇ!?」


 間一髪避ける。
 アレをまともに受けていたら、鼻がへし折れていただろう。


 「ちょっと待って、何なのこの子!?初対面の俺に殴り掛かってくるとか・・・滅多に見ないバイオレンス娘だな!」

 「そうだぞー、何やってんのあーしさん?」

 「あーし自身恨みはないけど、ちょっとコイツにはムカつく事があったから。だから一発殴らせろし」

 「やだよ!?」

 「やるなら外でやれよ」

 「止めろよ!!」


 その間もユウキはあーしさんの拳を避け続ける。
 あの様子だと絶対一発じゃ済まないだろうから、一旦あーしさんを制止させる。


 「とりあえず落ち着け。落ち着いて何をされたかを話してからにしろ。納得のいく理由だったらもう止めないから」

 「・・・こんなん話すのもどうかと思うけど、は当事者だから聞いた方がいいかもね」


 あんたらって言うと俺も含まれてるのか・・・。

 あーしさんが深呼吸して落ち着き、ゆっくりと口を開く。


 「結果だけ言えば、あーしのダチがコイツにフラれたんよ」


 ・・・・・・・・・。


 「「あー・・・」」


 俺とユウキが「なるほど」といった感じの声を漏らす。
 前にも言ったが、ユウキはモテてたから何度も告白をされていた事はある。
 そしてソレらを全て蹴っているという事実がある。

 まさかフラれた逆恨み?


 「元々ソイツが告白した女を全員フってんのは知ってたから望み薄だったし、フラれたのは仕方ないとして・・・」


 あ、違った。


 「ソイツに告りに行ったダチが大泣きして帰って来たんだよ!!」

 「「えぇ・・・」」


 俺だけじゃなく、ユウキさえも納得のいかないという声を出す。


 「普通、告白して玉砕したら悲しくて泣くもんじゃないのか?」

 「そりゃあ長年思い続けてたとかそういうのだったら分かる。だけどアイツは顔がイケメンだからなんて軽い理由で告りに行ったんだ。フラれたからって大泣きするような性格はしてねえんだよ!明らかにコイツが何か言って泣かしたんだし!!」


 あーしさんがユウキを睨み、俺もまた説明を促すようにユウキの方を見る。


 「あー・・・一応心当たりはある」

 「やっぱお前がーー」

 「だけど勘違いしないでくれよ?泣かしたって言っても無意味な罵倒したわけじゃない」

 「なるほど、意味のある罵倒をしたと」

 「おう、揚げ足を取ってくるね。・・・まぁ、人によっちゃ罵倒と捉えられるかもしれない事は言ったけど・・・ーー」


 ーーーー


 ☆★ユウキ★☆


 できる限り当時の事を思い出して語る。
 この女の子の友達っていうならギャルっぽい子だろう。
 その時は確か・・・


 「好きです!付き合ってください!!」


 と、誰もいないタイミングを狙って突然告白される。
 こういうのはいつもよくあった。
 そしてその時も。


 「(また化粧濃いギャルが来たな・・・)残念だけど、ごめん」

 「えー?一回でいいからさー、付き合ってみない?今彼女いないんでしょ?」

 「まぁ、確かにいないけど・・・でも付き合う気はないよ」

 「ふーん・・・?もしかしてー、あの噂って本当なのー?」

 「噂・・・?」

 「結城君があの・・・なんて言ったっけ?ことりあぞび?」


 ちょっと頭が可哀相なのと、アイツの名前が馴染んでいなかったのが合わさり、そんな呼ばれ方をされていた。


 「小鳥遊たかなし、ね」

 「そうそう、小鳥遊!アイツといつもいるじゃん?だからいくら女の子に言い寄られてもOKを出さないのってホモだからって言われてるよ?」

 「そんな噂が・・・」


 俺はネコ耳少女やロリ萌えな女の子が好きなだけの至ってノーマルな男の子だ。
 だからそんな理不尽な言い掛かりはやめてほしい。
 え?普通じゃない?


 「そそ。それにその人近くにいるだけで危ないんでしょ?だったらさ、もし違うってんならそんな厄介者とはもう関わらないで、私と付き合ってよ!」


 その言葉も今までの女の子からもよく言われていた。
 これまでも女の子たちをフッてきた。
 そしてこの子も。


 「その言葉を聞けて良かったよ。だったらもう答えは決まった。NOだ」

 「え・・・なんで?」

 「君がどんな性格かは知らないけど、少なくともアイツを悪く言う奴と仲良くするつもりはない、という事だ。綾人がどんな奴かも知らずに噂だけを鵜呑みにしてバカにする奴とは・・・それこそ関わりたくない」

 「・・・・・・ウ」

 「だから断るんだ。それと、これ以上取り繕っても無駄だよ。何度言われても君を受け入れる事はしないから。だからこれでキッパリ諦めてくれ。できる事なら顔も見たくないけどね」


 「ウゥ・・・!」


 俺が言いたい事を言い終えると女の子は顔を覆って泣きながら走り去って行った。


 ーーーー


 ☆★アヤト★☆


 「ーーとまぁ、ここまでがいつもの流れだったんだけど・・・」

 「いつもそんな断り方してたのか・・・」

 「そりゃあホモ疑惑掛けられても仕方ないし」

 「いやいや、だってそうじゃない?自分の友達を悪く言われて関わるなとか知らない奴から言われたらかなり頭にクるぞ?なるべく優しい言い方しただけでも褒めてくれよ」


 最後の最後でしっかりトドメ刺しちゃってるけどね。


 「・・・ま、確かにそれは言えてるかもね。ごめん、何も知らないのに手を上げて」

 「ああ。・・・まぁ、それでも理由は関係なくフッたから殴りたいって言うんなら敢えて一発だけ受けるけど?」

 「え、マジで?んじゃ・・・」

 「え?ちょっ、まだ心の準ーー」


 ーードゴッ!

 待ったを掛けようとするユウキのみぞおちへとあーしさんの拳が深く打ち込まれ、ユウキは静かに気を失った。
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