最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

文字の大きさ
上 下
180 / 303
ex

ex スルースキルの高さ

しおりを挟む


 ☆★ユウキ★☆


 この城に帰って来てどれだけ経っただろう。
 この世界に来てどれだけ経っただろう。
 この世界には時計はあるのにカレンダーというものが存在しない。
 だったら毎年行う何かの行事などはどうやってやってるんだろうかと聞いたところ、で決めているのではなくがやって来たら「大体この時期にやろう」という事になるらしい。
 いや、そんな事はどうでもいいのだが、何が言いたいのかと言うと・・・


 「ゲームが・・・したい・・・」


 禁断症状の表れだった。
 ベッドの上で黒くなったスマホを片手にうつ伏せに寝ている。
 そのスマホは電源が切れて点かなくなっていた。
 この世界に来てからスマホを点けて電波が届かないただのガラクタだと確認してから机の中で放置していたのだが、ゲームをしなかったこの数日で恋しくなり、何となく手に収めていた。

 分かってるよ?こんな事をしてても意味の無いくらい。
 でもね、やらずにはいられない。言わずにはいられないのだよ。

 そんな俺の部屋の扉が小さくノックされる。


 「ユウキ様、いらっしゃいますか~?」


 開かれた扉の影からイリアがひょこっと顔を出す。
 俺の姿を確認すると酷く渋った顔をする。


 「大丈夫、ですか?その・・・随分やつれて見えますが」

 「あー・・・大丈夫大丈夫・・・大丈夫じゃないけど大丈夫・・・」


 そう言ってうつ伏せのまま手をヒラヒラとさせる。
 イリアは溜息を吐きながら部屋に入って来る。


 「何故突然そうなってしまったのかは分かりませんが、いつまでもダラダラしてるのは感心しませんね。たとえお客人で勇者と言えど」


 イリアは文句を言いながらベッドまで近付いて来ると下のシーツを引っ張られ、ゴンッと鈍い音を立てて転げ落ちてしまった。


 「いってぇ!」

 「あら、お目覚めになって?気分はどうです?」


 目を開けると逆さになったイリアが見えた。
 逆さになって見えるのはベッドから落ちた俺自身が逆さだからだけども。


 「美女に起こされるのはああ全く最高だね」

 「それはようございました」


 俺の軽口を受け流すイリア。
 軽く溜息を吐いて立ち上がる。
 首に手を置くとゴキリと音が鳴り、小さく「うっ」と声が出てしまう。


 「ところでご相談があるのですけれど」


 イリアが腰に手を当て凛とした雰囲気で言う。
 その顔を見ると少しだけ笑っているのが気になる。


 「だが断る!」

 「この城の兵士たちと模擬戦をしていただきたいのです」

 「その人の意見など無視して自分の意見を言うその姿勢、嫌いじゃないぜ・・・って模擬戦?」


 自分の勘違いでなければ、イリアは俺に兵士たちと戦えと言った気がした。


 「えぇ、いつもはナタリアが相手をしているのですが、ずっと同じ相手をして慣れてしまうというのも困るので。それにユウキ様の能力はそういう団体相手に適していると思いますの」

 「まぁ、確かに俺のは手数タイプだから多数相手には有効だけれども・・・え、本当にやる流れコレ?」

 「当たり前です。では行きますよ」


 俺の手を掴んで有無を言わさず引っ張ろうとするイリアだが、力があまりにも非力だったため「んー!んー!」と唸るだけで俺が一ミリも動く事はなかった。
 先程とは違う余裕のない表情をもう少し見ていたかったが、これ以上はイリアが泣きそうだったので意地悪はそこまでにして大人しく連行される事にした。
 兵士たちがいるであろう外の広い訓練所に着くと、三桁の人数を超える兵士の団体様とソレを纏めるナタリアの姿があった。


 「いらっしゃいましたかユウキ様。イリア様からお話があったとは思いますが、私と共に兵たちを鍛え上げてほしいのです」

 「だが断る!」

 「まずは私たちの訓練を見学してもらった後にユウキ様の出番となります。私自慢の精鋭たちですので、存分に力を振るうっていただいて構いませんので」

 「なるほど、今日の君たちはそういうスタイルで来るのね・・・。じゃあ、とりまそこに丁度良い椅子にでも座ってい見てるかね」


 そう言って入り口付近にある木材で作られた長椅子に座り、続けて横にイリアも座る。
 俺たちのソレを合図にナタリアさんは兵全員に聞こえるよう大声で伝える。


 「今日は王女様と勇者様も見ていらっしゃる!気合を入れるのは当たり前だが、無様な姿を見せるなよ!!」


 ナタリアさんのげきに兵たちも「応!!」と答える。
 見るからに屈強なおっさんたちが鎧を付けて木刀で打ち合いを始める。
 大声で牽制する姿にただ見てるだけのこっちまで気圧されそうになる。


 「この国の兵たちも凄いでしょう?純粋な身体能力ではユウキ様に劣るやもしれませんが、ソレを埋める事のできる経験が彼らにはありますの」

 「ああ、そうみたいだな。あの人たちを後で相手しなくちゃいけないと思うと逃げたくなるね」

 「ウフフ、逃がしません」

 「・・・逃げませんから。ただの比喩ですから今のは。だからその不気味な笑みをこっちに向けやがらないでください」

 「失礼な言い方ですわね・・・とにかく、魔王を倒して暇になっていただいたユウキ様には丁度良い暇潰しでしょう」

 「やだなーむさ苦しい男たちと時間を潰すなんて・・・」

 「あら?でしたら貴族のご令嬢方のお風呂上がりのマッサージでもして差し上げますか?勇者の肩書きを持つユウキ様なら皆よろこんでお体をお許しになると思いますわ」

 「ハッハー遠慮しておこう。童貞の身である俺には色々とキツそうだ」


 イリアの貫くような視線を軽口で流す。


 「潔い事で。では観念してむさ苦しい男たちと汗水を流して来て下さいませ」

 「両極端な選択肢だなぁ・・・まぁ、やるけど」


 あっちでもサッカーやらバスケやらの助っ人をしてたんだ、こっちでも似たようなもんだろ。
 それに俺には物を創り出す力がある。魔力がある限り剣や木刀などいくらでも創れるんだ、イージーモードだろ。

 なんて思っているうちにナタリアさんたちの訓練が終わっていた。
 しかし兵士の訓練というからどんな熾烈な内容になのかと思ったが、学生が部活でする走り込みや筋トレを少しキツくした程度だったというのが期待外れに感じる。
 ナタリアさんに手招きで呼ばれ、気怠さを感じながら立ち上がり歩いて行く。
 俺が近くまで寄るとナタリアさんは頷き兵たちに向き直る。


 「ではこれから特別訓練に切り替える!この度はイリア様の意向によりユウキ様と我らで実践式模擬戦を行う事となった!相手は魔族大陸で魔王を打ち倒した勇者だ!年下の子供などと驕らず全力で挑め!!」


 ・・・え?
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし
ファンタジー
主人公、柏木 和(かしわぎ かず)は「武人」と呼ばれる武術を極めんとする者であり、ある日祖父から自分が世界で最強であることを知らされたのだった。 そして次の瞬間、自宅のコタツにいたはずの和は見知らぬ土地で寝転がっていた―― 「……いや草」

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。