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夏休み
修羅・・・場?
しおりを挟む「さて。この溜まりに溜まった問題のどれから手を付けようか・・・」
目の前に、というわけではないが、比喩的な表現で目の前にある問題の数々。
とは言ってもそこまで数自体が多いわけではない。いくつか解決したのもあるし。
一応一番の問題は王が不在のガーストだが、当面の間はあの家臣たちとガーランドでなんとかするらしい。まぁ、代わりの王を早く用意した方がいいのだが。
王殺しについても恐らく俺やチユキが罪に問われる事はないだろう。
城全体が凍るなど前代未聞だし、全てを目撃していた臣下たちは怯え切ってるからそうそう漏らす事もないだろう。
・・・あ、そういえば逃げた兵や臣下もいるらしいな。
後で探しに行かないと。
ソイツらにも余計な事を話さないよう「お話」しないと。
そして次、ノルトルン。・・・の前にラライナに行ってルークさんと話さなければならない。
勿論メアとの交際関係を。
これを先延ばしにしたらあまり良くないだろうし、有耶無耶にするなど以ての外。
ならノルトルンに返事をした残り一週間があるこの期間に行くしかない。
「って事で行くぞ、メア」
「何が!?」
何の脈絡もなくそう言い放つとメアからのツッコミが返ってくる。
「唐突ですね・・・」
「ねぇ、アイツいつもあんな感じなの?」
「ええまぁ・・・大体いつもあんな感じです」
あーしさんとカイトがコソコソと話している。
おいそこ、その話し方はやめろ。悪口じゃなくても若干傷付くから。
「んで、どこに行くって?」
「お前んち」
「俺んち?何しに行くんだよ?」
「そりゃあまぁ・・・なぁ?」
カイトをチラ見すると苦笑いで返してくる。
俺がメアの爺さんに会いに行く理由なんて今のところ一つしかないんだから察してくれと思う。
わざわざ一から言わないとダメなのか?だとしたら結構恥ずかしいんだが・・・。
・・・あの言い方なら少しは気も紛れるか?
「俺たちが恋人になった事を報告に行くんだろ?言わせんな恥ずかしい」
「あ・・・あぅ・・・」
「・・・いや、やめてくれよその反応。本当に恥ずかしくなるだらうが」
「だって・・・ジジイに言うなんて・・・」
「後回しにしても良い事ないぞ。こういうのはさっさと済ませるに限る」
実はメアに許嫁がいたとかシャレにならんからな。
「うーん・・・それはそうかもしれねえけど、さ。・・・でもやっぱり今はまだいいんじゃないか?アヤトも・・・まだ本当に俺の事が好きになったわけじゃないんだろ?」
「「・・・・・・は?」」
メアの発言に学園長は目を丸くし、あーしさんは眉間にシワを寄せ凄まじい形相で睨んで来た。
あまりの怖さに無条件で土下座したくなる程だ。
「あんた、ソレどーゆー意味?まさか好きでもないのになーなーで付き合ってんの?クズの類なの?バカなの?死ぬの?むしろ死ねよこのクズが!」
三段活用どころじゃない罵詈雑言が飛んでくる。
「いや待て、ここぞと言わんばかりに罵倒を注ぐんじゃない。あとクズを二回言ってるぞ」
「わざとだし。・・・つまりあんたは一方的に好意を向けられたから付き合ってるってだけなの?」
「・・・ま、実際そうだな。今まで異性を異性として好きになった事なんてないからな」
「・・・それってーー」
「先に言うが「男が好きなの?」とか言い出すなよ?ただ単に人付き合いがあまりなかっただけだから」
「あっ、そう。・・・ただのボッチで童貞だったわけね」
「・・・クソビッチ」
「はぁ!?」
「あぁ!?」
「二人とも落ち着いてくれ・・・」
互いに睨み合う俺たちの間に学園長が割り込んで仲裁する。
やっぱりコイツとは反りが合わない。
「アヤト君、珍しく大人気ないぞ?」
「当たり前だ、俺はまだ学生なんだし。それにコイツより年上だっていうのを言ってるなら、年下だから何を言われても我慢するなんてのは理由にはならない」
「また屁理屈を・・・」
「じゃあ学園長、あんたがいつまでも独身のまま生きていくしかない胸だけが自慢のロリ幼女と言われたらどうする?」
「うん、君が普段僕をどんな風に見てるかよく分かった。ちょっと表に出ようか」
笑顔が怖い。
軽い硬直状態が続くとメアが両手をパンッと合わせる。
「とにかく、だ。アヤトが俺の事を好きじゃなくてもそれは「まだ」の話だ。今は俺から抱き付いてるけど、いつかきっとアヤトの方から抱かせてやる!」
そう言ってニッと笑う。
やだこの子マジイケメン・・・。
だけど最後の言い方はちょっと誤解を生む。
「やだこの子マジイケメン・・・だけど最後のソレはちょっと意味が違ってくるからな?」
あーしさんが俺の考えていた事を大体代弁してくれた。
「ん?」と首を傾げるメアを横目にあーしさんに向き直る。
「ま、俺だって男なんだ。メアだってこんなに魅力的なんだから、理解する日だってそんなに遠くないさ」
そう言って肩に乗っているメアの頭を優しく撫でる。
それが予想外だったのか、変なニヤけた顔で顔を赤くした。
「あーはいはい、お熱い事で・・・」
あーしさんはやれやれと首を振りながら呆れ気味に言う。
するとタッタッタッと足音が聞こえ、ミーナが部屋に入って来たかと思えば俺の膝の上にぺたんと座る。
「・・・ミーナ?」
「・・・私も」
「え?」
一応聞こえてはいたが、何が言いたいのか分からずに聞き返す。
「アヤトの恋人はメアだけじゃない。私もアピールして振り向かせてみせる」
ミーナの発言に部屋が音を立てて凍り付いた気がした。
あーしさんの冷ややかな視線がめっさ痛いッス・・・。
「・・・ねぇ、クズ男」
遂には初めて呼ばれる名前にもクズが付いた。
「それはどんな言い訳してくれんの?」
「あーしさんがそこまで気にする事でもないだろ?」
「あーしさん言うなし。ただ・・・メアちゃんだっけ?そんな可愛くて良い子がクズ男に引っ掛かるってのは見過ごせないっしょ」
「クズと呼ばれる程何かした覚えはーー」
一瞬、恋愛とは関係ない自分自身のゲスっぽい所業を思い出す。
「ーーないんだが」
「今の間は何?」
「何でもない。ただ己の十八年を振り返っただけだ」
確かにアークのように女のケツを追い掛けたりはしていないが、別のところでゲスな事をしている自覚してしまった。
「ただまぁ、このタイミングでは言わないでほしかったなぁ・・・」
ミーナの頭を撫でると本人もまた猫のように頭を手に押し付けて来る。
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「そ?」
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なんだろうな、女の子に言い寄られてるっていうよりペットに懐かれてるように感じるのは。
「なんて言うか・・・本人合意の二股って凄いな・・・」
「俺だってビックリだよ。だけどこの世界じゃ一夫多妻なんて珍しくもないみたいだからな。コイツらがいいならいいんじゃないか?少なくとも俺は稼ぎに困らないから問題ないし、好かれてるならそれでいい」
「器がデカいのか節操無しなのか・・・」
「前者ともかく後者は俺じゃなくアークの方だろ」
「アーク?誰それ」
「アレ」
顎でクイッと部屋の外を示すと、向こうからラピィたちの怒鳴り声が聞こえて来る。
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「さーて何の事だか?確かに?お前に「胸何カップ?」って聞いたら「絶壁☆」って返答が来て「えっ、何、死ぬの?」としか言えなくなるような感じだが!!」
「・・・貴様、そこでジッとしていろ。今からこの自慢のダガーで貴様の愚息を削ぎ落としてアーコと改名してやろう」
「・・・おい、何言ってるんだ?なんでそんな口調になってるんだ?そのダガーで何する気だ?やめろ・・・ジリジリこっちに寄るんじゃない・・・やめろぉぉぉぉぉ!!」
・・・と言った面白い漫才をやっていた。
漫才というよりどっかのハーレム漫画にでも出てきそうな内容だったが。
「・・・何アレ」
「女好きで節操無しの末路」
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